建設省経動発第四八号・建設省住民発第三五号
平成五年五月一〇日

業界団体の長あて

建設省建設経済局長・建設省住宅局長通達


特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例に関して宅地建物取引業者が特に留意すべき事項について


特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例については、租税特別措置法の一部を改正する法律(平成五年法律第一〇号)、租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(平成五年政令第八七号)及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(平成五年大蔵省令第四七号)が公布され、本年四月一日から施行されたところである。本特例に関しては、制度の円滑な運用を図るため、特に左記の事項に留意しつつ対応されるよう貴団体傘下の事業者等に周知徹底願いたい。

1 居住用財産の買換え特例の適正な活用について

今般、租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第三六条の二に規定する居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例及び同法第三六条の五に規定する居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(以下「居住用財産の買換え特例」という。)が拡充され、同法第三六条の六に規定する特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(以下「特定の居住用財産の買換え特例」という。)が適用されることとなった。(別添資料1〔略〕)
この居住用財産の買換え特例の拡充は、生活大国を実現していくためには住生活の充実が何よりも重要であることから、住替えによる居住水準の向上を支援するという住宅政策上の観点から行われたものである。しかしながら、居住用財産の買換え特例は、昭和六〇年代初期の地価高騰時に地価高騰を波及させた事例が一部にみられたことから、昭和六三年度税制改正において大幅に縮減されたものであり、このような経緯に鑑み、今回の拡充に当たっては、地価等土地対策との整合を図る観点から所要の要件が付されているところである。本制度の適用に当たっては、その要件に十分配慮するとともに、万が一にも投機的取引に利用される等により地価等土地対策の面で支障を生じることがないよう制度の適正な活用に努められたい。また、今回の拡充に当たっては、居住用財産の譲渡に係る特別控除(租税特別措置法第三五条)及び居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法第三一条の三)はそのまま存続することとされ、特定の居住用財産の買換え特例との選択適用が可能とされている。このため、買換え特例の適用を受けることによって常に税負担が軽減されるわけではないので、顧客に対してこの点について十分に説明を行われたい。

2 価格要件について

一 価格要件の内容

特定の居住用財産の買換え特例の適用に当たっては、譲渡資産の譲渡に係る土地又は土地の上に存する権利(以下「譲渡土地等」という。)の対価の額及び買換資産の取得に係る土地又は土地の上に存する権利(以下「買換土地等」という。)の対価の額が、当該譲渡又は取得に係る適正な対価の額である次の金額以下であることが必要である(以下「価格要件」という。租税特別措置法第三六条の六第一項、租税特別措置法施行令第二四条の五第一項)。
ア 国土利用計画法第一四条第一項の規定による許可(以下「許可」という。)を受けて譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得をした場合……当該許可に係る予定対価の額
イ 国土利用計画法第二三条第一項の規定による届出(以下「届出」という。)をし、かつ、同法第二四条第一項又は同法第二七条の四第一項の規定による勧告を受けないで譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得をした場合……当該届出に係る予定対価の額
ウ 国土利用計画法施行令第一七条第七号又は第八号に掲げる場合に該当するため届出をしないで譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得をした場合……当該譲渡又は取得に係る予定対価の額
エ アからウまでに掲げる場合のほか、特定の居住用財産の買換え特例の適用を受けようとする個人(以下「適用申請者」という。)が、国土庁長官及び建設大臣の定めるところにより、譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額(譲渡又は取得に係る対価の額として予定している金額をいう。以下同じ。)につき不動産取引に精通している民法第三四条の規定により設立された法人で国土庁長官及び建設大臣が指定したもの(以下「指定公益法人」という。)に対して申請をし、かつ、当該法人からその申請した金額が適正である旨の認定を受けた場合……当該認定を受けた予定価額
この場合において、譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得の対価の額が、上記アからエまでの金額以下であることを証する書類としてそれぞれ次の表に掲げる書類を確定申告書に添付することが必要である(租税特別措置法施行規則第一八条の四第一項)。

取引の区分
確定申告書の添付書類
1) 前記ア(許可)の場合
・都道府県知事の国土利用計画法施行令第一三条第一項に規定する通知に係る同項の文書の写し
・譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類
2) 前記イ(届出)の場合
・都道府県知事(指定都市にあっては、当該指定都市の長。3)において同じ。)の国土利用計画法第二四条第一項又は第二七条の四第一項の規定による勧告をしなかった旨を証する書類の写し
・譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類
3) 前記ウ(事前確認)の場合
・都道府県知事の国土利用計画法施行規則第二一条第一項の規定による確認をした旨の通知に係る文書の写し
・当該確認に係る同条第二項に規定する申請書及び明細書の写し
・譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類
4) 前記エ(指定公益法人の認定)の場合
(1) 指定公益法人の認定を受けた場合には、以下に掲げる書類

・指定公益法人の譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額が適正である旨の認定の通知に係る文書の写し
・譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類

(2) 国土利用計画法第一八条に規定する国等(以下「国等」という。)に対して譲渡土地等の譲渡をし、又は国等から買換土地等の取得をした場合には、以下に掲げる書類

・譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得の相手方が国等である旨を証する書類
・当該譲渡又は取得に係る対価の額を明らかにする書類

(3) 新住宅市街地開発法第四五条第一項の規定による施行者から同法及び同法第二二条第一項の認可を受けた処分計画に従って買換土地等の取得をした場合には、以下に掲げる書類

・当該施行者から交付を受けた都道府県知事の当該処分計画の認可をしたことを証する書面の写し
・当該施行者からの当該取得が同法及び同法第二二条第一項の認可を受けた当該処分計画に従って行われたものである旨を証する書類(当該買換土地等に係る同法第二一条第三項に規定する処分価額の記載のあるものに限る。)
・当該取得に係る対価の額を明らかにする書類

なお、前記アからウまでの国土利用計画法の適用を受ける取引については、指定公益法人に対して価格審査の申請は行うことができないこととされている。
また、次のア又はイに該当する場合においては、指定公益法人から受けた譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額が適正である旨の認定の通知に係る文書の写し及び譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類を確定申告書に添付すればよいこととされている(租税特別措置法施行規則第一八条の四第二項及び平成五年三月三一日付け国土庁・建設省告示第一号)。
ア 譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額が指定公益法人の認定を受けた譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額を超えることとなった場合又は当該認定を受けた申請に係る譲渡資産若しくは買換資産に係る予定価額を超える価額で当該譲渡資産の譲渡若しくは買換資産の取得に係る契約を締結した場合
イ 災害その他のやむを得ない事情により譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額につき指定公益法人の認定を受けない譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得をした場合
この指定公益法人による予定価額又は対価の額が適正である旨の認定の申請に関する手続等については、別添国土庁・建設省告示(平成五年三月三一日付け国土庁・建設省告示第一号。以下「告示」という。)のとおりである。

二 価格要件の施行にあたっての留意事項

ア 適用申請者が、前記2の一のウに掲げる国土利用計画法施行令第一七条第七号又は第八号に掲げる場合に該当するため届出をしないで譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得をする場合には、確定申告書に添付する書類として都道府県知事(地方自治法第二五二条の一九第一項の指定都市にあっては、当該指定都市の長。)の国土利用計画法施行規則第二一条第一項の規定による確認をした旨の通知に係る文書の写し及び当該確認に係る同条第二項に規定する申請書(申請書に係る別紙明細書を含む。)の写しが必要である。このため、当該確認を受けた者は、適用申請者からの請求に応じて遅滞なく当該書類を交付するよう努められたい。

なお、同条第二項に規定する申請書に係る別紙明細書は、当該適用申請者以外の者に関する事項を伏せて交付して差し支えないものである。

イ 指定公益法人による予定価額又は対価の額が適正である旨の認定の申請に当たっては、宅地建物取引業法(昭和二七年法律第一七六号)第二条第三号に規定する宅地建物取引業者(以下「宅地建物取引業者」という。)が当該認定の申請に係る申請代理人となることが多いものと考えられることから、次の事項に留意しつつ、当該申請代理に係る業務(以下「申請代理業務」という。)を適正に行うよう努めること。

(1) 居住用財産の買換え特例の適用を受けるためには、価格要件を満たす必要があり、特に、国土利用計画法に基づく許可又は届出が必要でない譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得については、当該譲渡又は取得の相手方が国等である場合又は新住宅市街地開発法に基づく認可を受けた処分計画に従って買換土地等を取得する場合を除いて、当該譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る契約を締結する日前六週間までに、指定公益法人による予定価額又は対価の額が適正である旨の認定の申請を行い、当該認定を受ける必要があることを顧客に対して十分説明を行うこと。
(2) 特定の居住用財産の買換え特例の適用を受けるために、確定申告書の添付書類として、譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る対価の額を明らかにする書類が必要とされている。この書類は、売買契約書等において土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)の対価の額と建物及びその附属設備又は構築物(以下「建物等」という。)の対価の額が区分されている場合には、当該売買契約書等であるが、売買契約書等において土地等の対価の額と建物等の対価の額が区分されていない場合には、別記様式第一の「土地等の価額及び建物等の価額に係る確認書」を作成して、当該確認書及び売買契約書等を添付書類として差し支えない。

この場合において、譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額について指定公益法人の認定を受けた予定価額を超える価額で当該譲渡土地等の譲渡若しくは当該買換土地等の取得に係る契約を行ったとき及び当該認定を受けた申請に係る譲渡資産若しくは買換資産に係る予定価額を超える価額で当該譲渡資産の譲渡若しくは買換資産の取得に係る契約を締結したときは、指定公益法人が行った当該認定の通知については、租税特別措置法施行規則(昭和三二年大蔵省令第一五号)第一八条の四第一項第四号イに規定する認定の通知には該当しないものであることを顧客に対して十分説明を行うこと。

(3) 宅地建物取引業者が、指定公益法人による譲渡土地等の譲渡又は買換土地等の取得に係る予定価額又は対価の額が適正である旨の認定のために必要な限度において、指定公益法人又は宅地建物取引業者等に対して宅地又は建物の取引事例を提供する場合においては、宅地建物取引業法第四五条及び第七五条の二に規定する「正当な理由」があると解されるものであること。
(4) 申請代理人である宅地建物取引業者は、申請に係る譲渡資産又は買換資産の取引の媒介又は代理に係る報酬とは別に申請の代理に係る手数料を受領することができるものであるが、その額は実費の範囲内で、申請者の負担も勘案して適正なものとすること。


<別添資料>


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