宅地建物取引業法の一部を改正する法律(平成七年法律第六七号)及び宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令(平成七年建設省令第一三号)が平成七年四月一九日に公布され、同法の一部及び同省令が同日から施行されることとなった。
今回の宅地建物取引業法の改正は、媒介契約制度の充実及び指定流通機構制度の整備、業務に関する禁止事項及び宅地建物取引主任者に対する指示処分の追加、免許の有効期間の延長、一定の届出事項の廃止等の措置を主たる内容とし、宅地及び建物の取引の公正を確保し、購入者等の利益の保護・増進と宅地建物の流通の一層の円滑化を図ることを目的としたものである。このため、これら改正法令の趣旨及び内容については、宅地建物取引業者はもちろん一般国民に対してあらゆる機会をとらえて周知徹底を図るほか、その施行に当たっては、下記の事項に留意の上、遺憾のないよう取り計らわれたい。
1 媒介契約制度の充実と指定流通機構の法的位置付けの明確化等について
(1) 媒介契約制度の充実
1) 指定流通機構に登録される物件情報を拡大することにより、依頼者の利益の保護・増進及び不動産取引市場の透明性の向上を図る観点から、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、目的物である物件に係る一定の情報を建設大臣が指定する者(指定流通機構)に登録しなければならないこととしたこと。
2) また、登録義務の確実な履行の確保を図る観点から、登録した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、登録を証する一定の書面を引き渡さなければならないこととしたこと。
3) さらに、当該宅地建物取引業者は、登録に係る物件の売買等の契約が成立したときは、指定流通機構にその旨を通知しなければならないこととすることにより、指定流通機構が保有する情報の的確性を高めることとしたこと。
4) その他登録義務の確実な履行及び指定流通機構の登録情報の拡大に資する観点から、媒介契約が成立したときに、作成することとされている書面に記載すべき事項に「指定流通機構への登録に関する事項」を追加することとしたこと。
(2) 指定流通機構の法的位置付けの明確化
拡大された登録義務の受け皿となる指定流通機構の法的信頼性を高める観点から、その指定は、民法第三四条の規定に基づき設立された法人であることその他一定の要件を満たす者について建設大臣が行うこととすること等により、機構の法的位置付けの明確化を図ることとしたこと。
(3) 指定流通機構に対する監督措置の拡充
指定流通機構は、登録業務の実施方法、料金等に関する登録業務規程を定め、建設大臣の認可を受けなければならないこととしたほか、機構の利用者である宅地建物取引業者に対する不当な差別的取扱いの禁止、登録業務の休廃止についての建設大臣への届出義務等所要の監督規定を整備し、機構の適正な業務遂行の確保を図ることとしたこと。
(4) 施行期日
以上の改正規定については、依頼者及び宅地建物取引業者の契約関係に変更を加えるものであるため、双方に対する十分な周知徹底を図ることが必要であること及び流通機構の整備を前提として施行されなければならないものであることにかんがみ、それらの施行までに公布の日から二年間の周知期間を置くこととしていること。ただし、これら改正規定の円滑な施行を確保するため、建設大臣による指定に関し必要な手続その他の行為は、改正規定の施行前においてもすることができることとしたこと。
2 重要事項説明制度の充実・合理化について
重要事項として契約成立前に説明すべき事項のうち、法令に基づく制限に関する事項等一定の事項については、契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買等の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。)に応じて契約成立前に説明すべき事項を政令又は省令で定めることができるようにすることとしたこと。この改正規定については、最近における貸借媒介等の契約の増大に伴い、消費者保護を図りつつ業者の負担の軽減を図る観点から、専ら貸借の契約の場合について、政省令で省略・追加することができるようにすることがその趣旨であり、今後これらの政省令の整備を行い、公布の日から一年以内の政令で定める日から施行することとしていること。
3 免許の有効期間の延長等負担の軽減について
(1) 宅地建物取引業に係る免許の有効期間の延長
負担の軽減を図るとともに、普段の指導監督の充実を図る観点から、宅地建物取引業に係る免許の有効期間を三年から五年に延長する一方、免許に条件を付することができることとしたこと。
(2) 免許申請書及び変更の届出の簡素化等
1) 免許申請書の記載事項及び宅地建物取引業者名簿の登載事項から役員、個人、政令使用人及び専任の取引主任者の住所を削除することとし、これにより、変更届けの対象事項からもそれらの者の住所が削除されることとなったこと。
2) また、変更届けの提出期限を二週間から三〇日に延長することとした。
3) なお、衆議院建設委員会の附帯決議において、消費者の保護の観点から変更届けの励行を指導することが求められており、その趣旨も十分踏まえ、宅地建物取引業者に対し、これら改正趣旨の周知徹底を図り、当該届出制度についてより一層的確な運用が図られるよう十分指導すること。
(3) 契約締結等を予定しない案内所の開設についての届出の廃止
宅地建物取引業法第五〇条第二項の規定により開設する際の届出が必要とされている事務所等以外の場所(契約締結等を予定せず、専任の取引主任者の設置義務のない場所)については、その届出を廃止することとしたので、宅地建物取引業者に対し、その周知徹底を行うとともに、消費者保護の観点から引き続き所要の標識の掲示を行うよう十分指導すること。
(4) その他試験事務を指定試験機関へ委任した場合及び委任を撤回した場合に都道府県知事が行うこととされていた建設大臣への報告を廃止することとした。
(5) 施行期日等
(2)、(3)及び(4)の改正規定については、公布の日から施行することとし、併せて免許申請書等の様式の変更を行うための宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令が同日付けで公布されたので留意されたいこと。
また、(1)の改正規定については、公布の日から一年以内の政令で定める日から施行することとしていること。
4 業務の適正な遂行の確保について
(1) 宅地建物取引業の免許等の基準(欠格事由)の強化
宅地建物取引業の免許、取引主任者の登録の基準等として新たに暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反し、罰金の刑に処せられた場合を追加することとしたので、免許及び登録に当たっては厳正な審査に努めること。
(2) 業務に関する規制・監督の充実
1) 最近における宅地建物取引の実情等にかんがみ、宅地建物取引業者、その代理人、使用人その他の従業者の業務に関する禁止事項として宅地建物取引業に係る契約の締結をさせ、又はその解除等を妨げるため相手方を威迫する行為等を追加することとしたこと。
2) 取引主任者に対する指導監督の機動性の向上を図る観点から、都道府県知事の監督処分として指示処分を追加することとしたこと。
3) これらの的確な運用を図るため、その具体的な運用のあり方については、追って通知することとしていること。
(3) 宅地建物取引主任者資格試験の改善
1) 宅地建物取引業に携わる者の資質向上を図る観点から、適切な講習の受講者を拡大するため、建設大臣が指定する者が行う講習を受講した者については、試験の一部を免除する措置を導入することとしたこと。
2) また、併せて受験資格については、その今日的意義を勘案し、廃止することとしたこと。
(4) 施行期日
以上の改正規定については、公布の日から一年以内の政令で定める日から施行することとしていること。