宅地建物取引業法及び積立式宅地建物販売業法の一部を改正する法律(昭和五五年法律第五六号)、宅地建物取引業法施行令及び地方公共団体手数料令の一部を改正する政令(昭和五五年政令第二一三号)及び宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令(昭和五五年建設省令第一四号)は、それぞれ本年五月二一日、八月一九日及び一一月二九日に公布され、大部分の規定は本年一二月一日又は翌年四月一日から施行されることとなつた。
今回の宅地建物取引業法の改正は、免許の基準の強化、取引主任者制度の改善、自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限、媒介契約に関する規制、事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等の措置を主たる内容とし、購入者等の利益の保護と宅地建物の流通の円滑化を図ることを目的としたものである。
このため、これらの改正法令の趣旨及び内容について、宅地建物取引業者はもちろん一般国民に対してもあらゆる機会をとらえて周知徹底を図るほか、その施行に当たつては、左記の事項に留意のうえ、遺憾のないように取り計らわれたい。
一 法の目的の改正について
宅地建物取引業法(以下「法」という。)の目的として「宅地建物取引業の健全な発達を促進すること」を追加し、宅地建物取引業者の健全な経営の確保や資質の一層の向上を図ることとしたので、その趣旨を体し、指導に当たること。また、取引主任者の講習が効果的に実施され、所期の目的が達成されるよう配慮するとともに、業界団体との連絡を密にし、積極的に業界の育成を図ること。
二 免許の基準の強化について
情状の特に重い不正不当行為等により免許の取消処分を受けた者について新たに免許を受けることができない期間を五年に延長し、また、情状の特に重い不正不当行為等のため免許の取消処分の聴聞の公示が行われた後廃業等の届出を行つた者について新たに五年間の免許取得禁止期間を設ける等免許の基準を強化し、宅地建物取引業者の資質の向上を図ることとしているので、免許に当たつては、これらの点について十分審査を行うこと。また、悪質な行為を防止し、業界の社会的信用を保持するためには、特に免許の審査が肝要となるので、新規免許のみならず免許の更新に当たつても、必要に応じて申請者を事情聴取する等により、法の厳正な運用を図ること。
三 取引主任者制度の改善について
取引主任者については、重要事項の説明等契約の成立に際し枢要な役割を担つているにかかわらず、名義貸し等の不正行為が少なからずみられるのが実情である。このため、取引主任者について、登録の基準を強化するとともに、重要事項の説明等の際に都道府県知事が発行する取引主任者証を提示することを義務付け、また、三年ごとの講習の受講の義務付けによりその資質の向上を図ることとしたが、今回の制度改正の実をあげるために必要な職員の確保、予算の計上等所要の措置を講ずること。
四 業務に関する規制の強化について
(一) 誇大広告等の禁止の強化
誇大広告等の対象として「将来における利用の制限、環境又は交通その他の利便」を加えているが、これは、宅地建物の所在地又は周辺地の発展性等について実際よりも著しく有利であると人を誤認させる表示を不当な広告として禁止することとしたものである。この点に関し、最近の悪質事例として市街化調整区域及び市街化区域の見直しを暗に表示し、主に投資目的の取引を誘引する広告が多発しているので、これらについては、積極的に告発手続をとる等により法の趣旨を徹底すること。また、「代金に関する金銭の貸借のあつせん」に関する誇大広告も禁止の対象とされたが、これは、最近におけるローンの普及に伴いローンの条件を不当に表示して取引を誘引し、購入者に損害を負わせる事例が多発していることにかんがみ設けたものであるので、この点を特に留意し、必要な指導監督に当たること。
(二) 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限
宅地建物の取引において宅地建物取引業者が他人所有の宅地建物等を売買の対象としながら、後になつてその所有権を取得することができないために一般購入者が不測の損害を被る事例がみられることにかんがみ、宅地建物取引業者に対し、その者の所有に属しない宅地建物について自らが売主となつて売買契約を締結する行為を原則として禁止することとした。したがつて、この趣旨に従い、一般購入者の被害の発生の防止に特に配慮して適切な運用を行うこと。
(三) 重要事項説明の充実
宅地建物の取引に係る紛争を防止し、適正な契約関係を成立させるためには特に重要事項説明を徹底させる必要があるので、書面を交付して説明すべき事項を拡大し、また、マンシヨン等の区分所有建物について敷地の権利の種類及び内容等を説明をすべき事項に加えることとした。このため、今回の制度改正の内容について特に一般国民への周知を図るとともに、列記されていない事項で重要と目される事項についても十分な説明が行われるよう、業界団体を通じて必要な指導を行うこと。
(四) 事務所等以外の場所においてした契約の申込みの撤回等
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約についてその買受けの申込み又は契約の締結が事務所等以外の場所においてなされた場合には、申込者又は買主に五日間の自由な申込みの撤回又は契約の解除の余地を認めているが、これは、従来、別荘地の分譲、山林の現状有姿分譲等につき特異な状況下での好ましくない販売行為が行われてきたことにかんがみ、一般購入者等の保護の観点から特に設けたものである。このため、別荘地の分譲、山林の現状有姿分譲等と目されるものについては特に厳正な法運用を行うとともに、この制度の一般国民への周知を図ること。なお、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、申込みの撤回等に伴う損害賠償や違約金の支払いの請求はできず、また、すでに受領した手付金や申込証拠金等も返還しなければならないので、この制度の適用のある事案についてはすでに支払われた金銭の返還について特に指導を行うこと。
五 媒介契約の規制について
媒介契約の明確化・書面化は、不動産流通市場の整備の前提条件となるものであるので、今回の改正で媒介契約の規定を設け、その明確化・書面化を図るとともに、専任型式の媒介契約について必要な規制を行うこととした。この制度は、現実の取引に対する影響が大きいので、その施行までに二年の猶予期間を置いている。この点については、法改正の際の附帯決議で「媒介契約の標準約款を作成するとともに、宅地建物取引業者、依頼者双方に十分周知徹底を図ること」とされていることに留意すること。なお、この規定の施行前においても、その趣旨に従つた運用がなされるのが望ましい。
六 不動産公正取引協議会への参加の指導等について
不動産取引に関する不当な顧客の誘引の防止及び公正競争の確保のため、不動産公正取引協議会の設置及び不動産の表示に関する公正競争規約の設定により業界自身による自主規制が行われてきたところであり、相当の成果をみているものと思料される。しかしながら、なおこの協議会へ加入していない宅地建物取引業者もみられるので、法改正の際の附帯決議にもあるとおり、未加入の宅地建物取引業者に対してこの協議会に加入し、公正競争規約を遵守するよう指導すること。
七 苦情処理体制の整備について
宅地建物の取引に係る苦情・紛争は依然として跡を絶たない実情にあるので、迅速かつ適切な解決を図るため苦情処理体制の整備・強化を図るよう努めるとともに、業界団体との連絡を密にし、その苦情処理体制を整備・強化するよう指導を行うこと。
八 業界団体への加入の際の入会金等の額の適正化について
宅地建物取引業の業界団体は業の適正な運営と健全な発達を図り、宅地建物取引業者の資質の向上を図ることを目的として設立され、所期の目的に寄与してきたものと思料される。業界団体には今後とも加入希望者が増加するものと見込まれるが、ついては、新たな加入に際し加入業者が負担しなければならない入会金等は、団体設立の目的及びその活動状況に照らし、適正かつ合理的な額であることが望ましいので、貴職の許可に係る業界団体についてこの額が妥当でないと思料される場合には、必要な指導を行うこと。