建設省経動発第四六号
平成七年三月三〇日

各業界団体の長あて

建設省建設経済局長通知


不動産特定共同事業法の運用について


不動産特定共同事業法(平成六年法律第七七号。以下「法」という。)は平成六年六月二九日に、不動産特定共同事業法施行令(平成六年政令第四一三号。以下「令」という。)は同年一二月二六日に、不動産特定共同事業法施行規則(平成七年大蔵省・建設省令第二号。以下「規則」という。)は本年三月一三日に、それぞれ公布され、いずれも本年四月一日から施行される。
法、令及び規則の実施に当たっては、左記の点に留意の上、法の目的である事業参加者の利益の保護を図るとともに不動産特定共同事業の健全な発達に寄与するため、制度の的確かつ円滑な運用に特段の配慮をされるよう、貴団体加盟の業者に対する周知徹底及び指導を行われたい。

第一 不動産特定共同事業契約の定義関係

法第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約から、契約(予約を含む。)の締結の態様、当事者の関係等を勘案して収益又は利益の分配を受ける者の保護が確保されていると認められる契約(予約を含む。)として除かれるものが令第一条各号に掲げる「不動産特定共同事業から除かれる契約」である。
(1)

1) 令第一条第一号に掲げる契約は、法第二条第三項第一号に掲げる契約で株式会社と株主が当該株式会社の利益の分配のために締結するものは、商法の規定により既に株主の利益の保護が図られていると認められることから、不動産特定共同事業契約から除外するものであること。
2) したがって、株主以外の者からも出資を募る場合又は株主から当該株式会社の利益の分配として行うもののほかに追加出資を募る場合まで含むものではなく、これらの場合は、法第二条第三項の定義に照らして改めて不動産特定共同事業契約に当たるか否か判断することとなるものであること。
3) また、契約の締結の態様が令第一条第一号に類するものとして不動産特定共同事業契約から除外されるものが規則第一条第一号及び第二号に掲げる契約であること。

イ) 同条第一号に掲げる契約は、法第二条第三項第二号から第四号までに掲げる契約で令第一条第一号と同様に株式会社が株主に対して当該株式会社の利益の分配のために締結するものであること。

出資等の目的である財産が利益の分配すなわち配当相当額の範囲にとどまり、令第一条第一号と同様、商法の規定により株主の利益の保護が既に確保されていると認められるものとして除外するものであるが、株主以外の者からも出資等を募る場合又は株主から利益の分配として行うもののほかに追加出資等を募る場合まで含むものではないことは、2)と同様であること。

ロ) 同条第二号に掲げる契約は、株式会社がその株主と締結する法第二条第三項第一号から第四号までに掲げる契約で、当該株主の所有する株式が当該契約に係る出資又は賃貸若しくは賃貸の委任を行う当事者(事業参加者)としての権利及び義務(いわゆる契約上の地位)に転換されるものであって、かつ、その地位がすべて株式から転換される場合のものである。このように、その地位がすべて株式、すなわち株主としての権利及び義務から転換されること、転換される際に株主として商法の規定によりその利益の保護が図られていること等により不動産特定共同事業契約から除外されるものであるが、株主以外の者からも出資等を募る場合又は株主からその株式から転換される出資等相当分のほかに追加出資等を募る場合まで含むものではないことは、2)と同様であること。

(2)

1) 令第一条第二号に掲げる契約は、親会社がいわゆる一〇〇%子会社に対して出資を行う匿名組合契約であり、一般にこうした親会社は、子会社の行う事業のリスクを自ら回避できるだけの経営上の支配力を有していると考えられることから、その当事者の関係等を勘案して本法の保護の対象とはしないものであること。
2) したがって、当該親会社に加えて他の事業参加者からも出資を募る場合は、これに含まれず除外されないものであること。

(3)

1) 令第一条第三号に掲げる契約は、法第二条第三項第三号に掲げる契約のうち、対象不動産を共有することとなった原因が、不動産特定共同事業契約締結以前に、不特定又は多数の者に宅地建物取引業者により、又はその代理若しくは媒介により販売されたことによるもの(いわゆる「事前販売型」のもの)以外のものを除外するものであること。
2) したがって、例えば相続によって共有となった不動産を目的とする賃貸又は賃貸委任契約は、不動産特定共同事業契約から除かれるものであること。
3) 令第一条第三号に規定する「販売」とは、不特定又は多数の者に対する売却を意味し、例えば等価交換及びこれらに類すると認められるもの又はあらかじめ特定された者のみに対する売却は含まれないものであること。

(4)

1) 令第一条第四号に掲げる契約は、契約に係る権利を表示する証券又は証書が発行されるもので、その募集につき証券取引法又は同法に相当する外国の法令の適用があるものについては、これらの法令によって既に投資家の利益の保護が確保されていると認められることから重ねて本法の保護の対象とはしないものであること。
2) また、契約の締結の態様がこれに類するものとして、規則第二条では、契約に係る権利を表示する証券又は証書(その募集につき、証券取引法又はこれに相当する外国の法令の適用のあるものに限る。)が発行による代わりに登録による場合を規定したものであること。

この場合も、1)と同様に既に証券取引法又はこれらに相当する外国の法令により投資家の利益の保護が確保されていると認められるため、不動産特定共同事業契約から除外されるものであること。

(5) 令第一条第五号に掲げる契約は、法第二条第三項各号に掲げる契約で、国内で契約の締結の勧誘が行われ、契約の当事者が一時的に外国に移動して外国において締結されるもの(すなわち、その後の収益又は利益の分配等の行為が国内で行われる場合に事業参加者の利益の保護の確保がすでに図られているものとは認められないもの)以外の契約とされていること。
なお、1)法第二条第三項第二号に掲げる契約には、例えば、森林組合法(昭和五三年法律第三六号)第九条第七項又は第一〇一条第六項の規定に基づき森林組合法又は森林組合連合会が行う事業に係る契約等、特別法の規定に基づき設立された組合が行う同法に基づく事業に係る契約は含まれないこと、2)法第二条第三項第三号に規定する契約に関し、単に、宅地建物取引業者が賃貸又は賃貸の委任を受けることを約束して不動産を売却する行為自体は、私法上の契約又は宅地建物取引業にすぎない行為であり、不動産特定共同事業には当たらないこと及び宅地建物取引業者が不動産特定共同事業法第二条第三項第三号に規定する賃貸又は賃貸委任の目的となることを示さずに、単に賃貸又は賃貸委任の目的であることを約して行った不動産の販売又は媒介若しくは代理に係る不動産の賃貸又は賃貸の委任を受け、第三者に賃貸を行う行為も不動産特定共同事業には当たらないものであること。

第二 許可の申請等関係

(1) 法第四条第一項の規定により許可に付することができる条件は、不動産特定共同事業の適正な運営を確保するため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであってはならないとされていること(同条第二項)及び当該条件違反は許可の取消事由となり得ること(第三六条第四号)に十分留意すること。
(2) 許可申請書について

1) 法第五条第一項第一号の「商号又は名称」は、他の不動産特定共同事業者の商号又は名称に著しく類似し、社会通念上、事業参加者が当該他の不動産特定共同事業者と誤認するおそれが極めて高いと判断される「商号又は名称」又は事業参加者に公的機関等著名団体のごとき誤解又はこれらと特別の関係があるかのごとき誤解を与え、取引の公正を害するおそれのある「商号又は名称」が使用されていないものであること。
2) 法第五条第一項第二号の「役員」とは次に掲げる者をいうこと。

イ) 株式会社又は有限会社にあっては、代表取締役、取締役及び監査役
ロ) 合名会社又は合資会社にあっては、代表社員及び社員
ハ) 民法第三四条に基づき設立された社団又は財団にあっては、理事及び監事
ニ) 外国の法令に準拠して設立された法人にあっては、イ)からハ)までに相当する役職を有する者

(3) 添付書類について

1) 許可申請書の添付書類において必要な官公署が証明する書類は、申請日前三月以内に発行されたものでなければならないこと。
2) 法第五条第二項第一号に規定する「これに代わる書面」とは、寄付行為又は外国法人にあっては、定款若しくは寄付行為に準ずる書面をいうこと。
3) 法第五条第二項第二号に規定する「これに代わる書面」とは、外国法人である場合における本国における主たる事務所に係る登記簿の謄本又はこれに準ずる書面及び国内の主たる事務所に係る登記簿の謄本をいうこと。
4) 規則第五条第二項第二号に規定する「これに代わる書面」とは、国内に在留する外国人である場合にあっては外国人登録証明書の写し又は外国人登録済証明書及び別記様式一の「誓約書」、国内に在留しない外国人である場合にあっては本国の住民票の写し又はこれに準ずる書面及び別記様式1の「誓約書」をいうこと。
5) 規則第五条第二項第四号に規定する「これらに代わる書面」とは、不動産特定共同事業者が商法適用会社以外の法人である場合における賃借対照表等に準ずる書面をいうこと。

(4) いわゆる特別目的会社の取扱いについて

規則第七条に規定する「発行済株式の総数又は出資の総額」を契約締結法人が「所有している法人」(以下「特別目的会社」という。)の申請の際には、規則第七条第二号のその営む不動産特定共同事業に関して事業参加者に対する債務について親会社である契約締結法人が連帯して負担する旨を記載した書面を作成し、許可申請書に添付しなければならないこと。

(5) 許可申請書の送付について

都道府県知事は、許可申請書の提出があったときは、当該書面に不備等がないか確認の上、許可権者が都道府県知事の場合にあっては当該申請書の写し二部を、許可権者が主務大臣の場合にあっては当該申請書の正本一部及び写し一部を建設大臣に送付すること。

(6) 許認可の申請に対する処分に係る標準処理期間について

1) 許認可の申請で主務大臣が処分庁となるものに対する処分に係る標準処理期間については、原則として、申請の提出先とされている都道府県知事から主務大臣に到達するまでの期間を一〇日間とし、主務大臣に当該申請が到達した日の翌日から起算して当該申請に対する処分の日までの期間を九〇日間とすること。

なお、標準処理期間は、申請者が許認可を求める際の申請の内容が標準的なものであって、かつ、処分庁の処理体制も通常であることを前提とした上で必要となる期間であること。

2) 標準処理期間には次の期間は含まれないものであること。

イ) 不備な申請を補正するために要する期間
ロ) 申請の処理の途中で、申請者が申請内容を変更するために必要とする期間
ハ) 審査のために必要なデータを追加することとなった場合に要する期間

第三 許可の基準関係

法第七条に規定する「許可の基準」のうち、第一号及び第二号に掲げる基準にあっては、この基準に適合しなくなったときは、法第三六条の規定による許可の取消しができる、いわゆる継続要件であること。
(1) 最低資本金等基準について(第一号)

最低資本金等基準は、不動産特定共同事業者は多数の事業参加者から資金等を集め、長期間にわたって収益又は利益の分配を行うことを約する契約の締結又はその代理・媒介を業として行うことから、事業参加者の利益の保護を図るため一定の財産的基盤を有する法人に行わせる必要があるため設けられたものであること。
具体的には、契約締結法人にあっては直接投資家から出資等を受ける者であるため、特別目的会社を除き一億円以上、代理媒介業務のみを行うものにあっては直接出資等を受けたり、運用を行うものではないため、契約締結法人より低く、二千万円以上とする基準を満たす必要があることとしたものであること。

(2) 約款の許可基準について(第五号)

法第七条第五号に規定する不動産特定共同事業契約約款の許可基準の取扱いについては、令第五条及び規則第八条に規定するもののほか、次によるものとすること。
なお、法第二条第三項各号に掲げる契約の種別ごとに約款の記載内容については、(財)土地総合研究所による「不動産特定共同事業の約款等に係る研究会報告書」(平成七年三月)を参考とし、適切な約款の作成に努められたい。
1) 令第五条第一項第一号関係

約款は、法第二条第三項各号に掲げる契約の種別及び出資の目的が金銭であるか現物であるかの別ごとに作成するものとし、法第三条第一項の許可を受けた後に他の約款を新たに追加する場合にあっては、法第九条第一項の規定により約款の追加の認可を要するものであること(第六(1)2)に該当する場合を除く。)。

2) 令第五条第一項第二号関係

イ) 対象不動産の所在地(地番まで表示)、土地面積及び延床面積等、売買、交換又は賃貸借の別並びに対象不動産の用途を表記する欄を設けるものとすること。

ただし、区画整理事業における仮換地前の保留地については、次の記載があることをもって特定に関する記載があるものとすること。

・設立許可を受けた土地区画整理組名及び土地区画整理事業名
・当該土地区画整理組合の設立認可番号
・当該土地区画整理事業の施行区域
・予定されている保留地の面積
・不動産特定共同事業の対象となる保留地の面積

ロ) 対象不動産は、客観的にみて一体性を有するものに限るものとすること。

3) 令第五条第一項第四号関係

イ) 金銭による出資を受ける契約については、出資額及びその支出期日並びに出資予定総額及び総口数(又は持分割合)を表示できる欄を設けるものとすること。
ロ) あらかじめ定められた出資又は費用の額を超えて負担を求める場合とは、修繕のための費用等必要性が明白な場合に限るものとし、かつ、事業参加者の同意を得るものとする等公正な手続があらかじめ定められていること。

4) 令第五条第一項第五号関係

あらかじめ明確な定めがあれば、無期限のものも認められること。

5) 令第五条第一項第六号関係

対象不動産を取得することができない場合、出資が予定した金額に満たない場合であって不動産特定共同事業者が出資を行わない場合等やむを得ない事由がある場合には、不動産特定共同事業契約が終了する旨の定めがあるものであること。

6) 令第五条第一項第七号関係

イ) 契約が解除され、又は組合から脱退した場合において不動産特定共同事業者が持分等を買い取る等持分を処分する場合にあっては、その価格の決定方法について明確かつ公正な定めがあること。この場合において、処分基準価格の決定に当たり第三者による評価を求めることとするなど具体の定めが必要であること。
ロ) 事前販売を行う契約にあっては、当該事前販売に係る売買契約書において、法第二六条の契約の解除が行われた場合にあっては、当該売買契約についても解除されることとなるよう措置すべきであること。

7) 規則第八条第一項第一号関係

匿名組合契約にあっては、所有権は営業者に帰属する点に特に留意すべきであること。

8) 規則第八条第一項第二号関係

一定の利回りや収益を保証する行為まですべて禁止するものではないが、将来、対象不動産を出資金の全額若しくはこれを超える金額又は売買価額若しくはこれを超える価額に相当する額で買い取る旨の約定等実質的に元本保証に当たる行為は禁止されていること。

9) 規則第八条第一項第三号関係

「業務及び財産の状況に係る情報」とは、次に掲げるものをいうこと。
イ) 法第二八条の規定により交付される財産管理報告書
ロ) 法第二九条の規定により閲覧される業務及び財産の状況を記載した書類
ハ) 法第三〇条の規定により作成、保存される事業参加者名簿

10) 規則第八条第一項第四号関係

イ) 第二項第六号ロの趣旨にかんがみ、対象不動産の一括売却は、同号ロに掲げる場合を除き、契約締結から一年間はこれを行ってはならないものであること。
ロ) 対象不動産を売却したときは、売却代金を速やかに事業参加者に分配するものとし、再運用は行わないこと。

11) 規則第八条第二項第六号及び第七号関係

事業参加者は、原則として、不動産特定共同事業契約を解除又は組合を脱退することはできないものであること。ただし、やむを得ない事由が存する場合であって他の事業参加者の利益を損なうおそれがないと不動産特定共同事業者が認めた場合又は死亡、破産その他これらに準ずる場合については、この限りでない。

12) 規則第八条第二項第六号、第七号及び第一三号関係

「その他これらに準ずる場合」とは、事業参加者について生ずる事由であって、次に掲げるもの等とすること。
イ) 契約上の権利及び義務の全部(以下「契約上の地位」という。)であって破産財団に属するものを破産管財人が解除又は譲渡する場合
ロ) 会社更生法(昭和二七年法律第一七二号)第五四条に基づき管財人が会社財産に属する契約上の地位を処分する場合
ハ) 会社清算(特別清算を含む。)において、清算人が会社財産に属する契約上の地位を処分する場合
ニ) 会社整理において、管財人が会社財産に属する契約上の地位を処分する場合
ホ) 債権者の申立てによる民事執行法(昭和五四年法律第四号)上の強制執行により契約上の地位が処分された場合
ヘ) 合併により被合併法人が所有する契約上の地位を保有することとなる場合
ト) 手形交換所において取引停止処分を受けた場合
チ) (準)禁治産の宣告を受けた場合
リ) 民法六八〇条の規定による除名を受けた場合

13) その他

金銭による出資を受ける契約については、次の各号に掲げる事項を記載すること。
イ) 不動産の取得の時期の予定に関する事項
ロ) イ)により定められたときまでに対象不動産を取得できなかった場合の処置に関する事項
出資の目的となる金銭につき、イ)により定められた日まで運用を行う場合においては、規則第八条第二項第一四号の規定を準用するものとすること。

(3) 人的構成・財産的基礎について(第六号)

法第七条第六号に規定する「不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎及び人的構成を有するものであること。」の取扱いは、次によるものとすること。
1) 次に掲げる要件のすべてに該当する場合は、不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎を有するものとして取り扱うことができること。

イ) 最終の決算において当期利益を有し、かつ、翌事業年度以降も同様であることが見込まれるなど、許可申請の日における最終の決算状況が概ね良好であり、かつ、翌事業年度以降も引き続き良好と見込まれること。
ロ) その他金融支援を受けていないなど財務内容に不良がないこと。

2) 次に掲げる要件のすべてに該当する場合は、不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる人的構成を有するものとして取り扱うことができること。

イ) 担当役員・責任部署が確定しているなど、不動産特定共同事業を公正かつ適確に遂行できる組織体制であること。
ロ) 役員が他の法人(不動産特定共同事業者を含む。)の常務に従事し又は事業を営んでいる場合にあっては、当該役員が他の法人の常務に従事し又は事業を営むことによって、当該不動産特定共同事業の公正かつ適確な遂行に支障が生ずるおそれがないこと。
ハ) その他役員又は使用人のうちに、過去において不動産特定共同事業に関し不正又は不当な行為をするなど、不動産特定共同事業の運営に不適切な資質を有する者がいないこと。

第四 変更の認可関係

(1) 約款の変更の認可について(第九条)

1) 法第七条第一号、第四号及び第五号の規定は、法第九条に規定する変更の認可について準用し、その取扱いは第三及び第五に準ずることとすること。
2) 法第九条に規定する変更の認可のうち約款の追加又は変更は、令第五条及び規則第八条の規定により定められた事項以外の事項の変更については、規則第一〇条の規定により「軽微な追加又は変更」とされており、認可を受ける必要はないこと。また、約款の追加又は変更のうち、単に字句を修正する程度のものについては、この趣旨に照らして当然認可を受ける必要はないものであるが、当分の間、変更後の約款を都道府県知事に提出するものとすること。

(2) 変更の届出について(第一〇条)

法第一〇条に規定する変更の届出については、第二の(2)、(3)及び(5)に準じて取り扱うものとすること。

第五 業務関係

(1) 業務遂行の原則について

1) 不動産特定共同事業者は、法第一四条第二項の規定の趣旨にかんがみ、投機的土地取引の抑制を図るとともに、不動産の適正かつ合理的な利用の確保に努めること。
2) したがって、不動産特定共同事業者は、例えば、地価の上昇による転売益のみを目的として対象不動産を短期的に売却する行為を行ってはならないものであり、同項に違反したと認められる場合には、第三四条又は第三五条に規定する指示又は業務停止処分の対象となるものであること。

(2) 標識の掲示について

1) 法第一六条に規定する「公衆の見やすい場所」とは、事務所の内外を問わず事業参加者が容易に見ることができる場所をいうものであること。
2) 標識の材質については、金属等長期の使用に耐え得るようなものを用いるものとすること。

(3) 業務管理者の要件について

規則第一七条第一項に規定する不動産特定共同事業の業務に関し三年以上の実務の経験を有する者と同等以上の能力を有する者として主務大臣が定める基準は、平成七年三月二七日付大蔵省・建設省告示第三号及び第四号で告示されたところである。同告示によれば、次の1)又は2)に掲げる者とされていることに留意すること。
1) 不動産コンサルティングに関する知識及び技術の審査・証明事業規程(平成四年建設省告示第一二七七号)第二条の規定に基づく審査・証明事業として平成四年建設省告示第一七五九号により認定を受けた不動産コンサルティング技能試験・登録事業に係る登録者
2) ビル経営管理に関する知識及び技術の審査・証明事業認定規程(平成三年建設省告示第六六号)第二条の規定に基づく審査・証明事業として平成三年建設省告示第一一一四号により認定を受けたビル経営管理士審査・証明事業に係る登録者

(4) 規則第一七条第一項に規定する業務管理者の要件のうち、「不動産特定共同事業の業務に関し三年以上の実務経験を有する者」としての要件を満たす者については、別記様式2による実務経験証明書を、不動産コンサルティング技能試験・登録事業又はビル経営管理士審査・証明事業の登録者としての要件を満たす者については別記様式3による業務管理者資格届出書を、それぞれ許可申請書に添付して提出するものとすること。
(5) 広告及び事業の開始時期の制限について

法第一八条及び第一九条の規定は、いわゆる「青田売り」に対する制限であるが、その趣旨は、宅地建物取引業法(昭和二七年法律第一七六号)第三三条及び第三六条の規定の趣旨と同様であり、政令に定める許可等の処分の内容も同一のものとなっていること。

(6) 誇大広告の禁止について

1) 不動産特定共同事業者は、法第一八条第三項の規定により、不動産取引による利益の見込み及び規則第一八条に規定する事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をすることが禁止されているが、次のような表示はこれらに該当し、禁止されるものであること。

イ) 手数料が無料又は実際のものより著しく低額であるかのように誤解させるような表示
ロ) 不動産特定共同事業に係る不動産取引により確実に利益を得られるかのように誤解させたりして、事業参加者の投資意欲を不当にそそるような表示
ハ) 出資金の全額若しくはこれを超える金額に相当する金銭を支払うべき旨の表示又はこれを行っていると誤解させるような表示
ニ) 法第五条の許可申請書に記載した商号又は名称と異なるものを用いた表示
ホ) 当該不動産特定共同事業者に有利な不動産特定共同事業契約の締結又はその代理若しくは媒介の実績のみを掲げる行為
ヘ) 根拠を示さずに、不動産特定共同事業に係る販売の実績、内容又は方法が他の不動産特定共同事業者よりも著しく優れている旨を掲げる表示
ト) 社会的に過剰宣伝であると批判を浴びるような過度の宣伝と認められる表示

2) 1)のほか、不動産特定共同事業者は、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和三七年法律第一三四号)又は「屋外広告物法」(昭和二四年法律第一八九号)に基づく都道府県の条例その他法令に違反するおそれのある広告をしてはならないものであること。

(7) 不当な勧誘行為等の禁止について

1) 法第二〇条及び第二一条に規定する不当な勧誘等の行為については、同条及び規則第一九条に規定する行為のほか、これらの規定の趣旨にかんがみ、次に掲げる行為も適切ではないこと。

イ) 相手方の業務又は生活の平穏を害するような時間帯に訪問し、又は電話をかけること。
ロ) 勧誘に対する拒絶の意思を明らかにした者に対し、執拗に勧誘すること。
ハ) 社会的に過剰な営業活動であると批判を浴びるような勧誘を行うこと。

2) 規則第一九条に規定する「特別の利益を提供すること」とは、特定の事業参加者に割り増しして利益等の分配を行うことその他不動産特定共同事業契約に関し生ずる利益について特別の利益を提供することをいうものであること。
3) 法第二二条の規定は、不動産特定共同事業者が不動産特定共同事業契約の締結の勧誘の際、不動産特定共同事業に関する金銭等の貸付け又はその媒介等を行うことを禁止する趣旨であること。したがって、いわゆる事前販売時において、持分の購入代金に関し金銭の貸付け又はその媒介等を行う行為は「不動産特定共同事業に関する」ものではないので本条により禁止されるものではないこと。

(8) 不動産特定共同事業契約の成立前の書面の交付について

法第二四条に規定する不動産特定共同事業契約の成立前の書面の交付については、以下の点に留意すること。
なお、この書面には、規則第二〇条第一項第六号から第一九号までに掲げる事項として規則第八条の規定に基づき記載された約款の内容を記載しなければならない。
1) 規則第二〇条に基づき書面に記載すべき出資の単位については、以下のとおり取扱うものとすること。

イ) 不動産特定共同事業契約に係る金銭の出資額については、原則として一億円以上とすること。

ただし、資本金等の額が一〇億円以上で、かつ、その資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本金等の額以上である法人又は当該法人が設立した特別目的会社にあっては、その額を一千万円まで引き下げることができること。

ロ) 現物の出資額については、五百万円以上とすること。

2) 不動産特定共同事業者が自ら行う事前販売(その代理又は媒介を含む。)を伴う不動産特定共同事業にあっては、法第二四条第一項の規定により、契約が成立するまでの間に当該契約の内容及びその履行に関する事項について書面を交付して説明することが必要であるとともに、いうまでもなく、「事前販売」契約に関し宅建業法第三五条に規定する重要事項の説明についても、これを行うことが必要であるがこの場合においては、当該不動産特定共同事業者が宅建業法第三五条に規定する重要事項の説明と併せて法第二四条第一項に規定する重要事項の説明を同時に行うことが望ましいものであること。
3) 規則第二〇条第三号は、規則第七条第二号に規定する契約締結法人が連帯して債務を負担するときは契約の内容を明示することを含むものであること。
4) 規則第二〇条第六号に規定する対象不動産を特定するために必要な事項は、対象不動産の所在地(地番まで表示)、土地面積及び延床面積を含むものであること。
5) 規則第二〇条第九号は、法第二七条に規定する「分別管理」は、出資財産の独立性が確保され、事業参加者の出資財産に対する優先権が確保される信託法(大正一一年法律第六二号)第二八条に基づく分別管理とは異なる旨を明示することを含むものであること。

(9) 不動産特定共同事業契約の成立時の書面の交付について

法第二五条に規定する不動産特定共同事業契約の成立時の書面の交付については、以下の点に留意すること。
1) 法第二五条に規定する書面には、同条第一項第一号から第七号及び規則第二一条第一項第三号から第九号までに掲げる事項として、規則第八条の規定に基づき記載された約款の内容を記載しなければならないこと。
2) 法第二五条第一項第二号に規定する不動産取引の目的となる不動産を特定するために必要な表示は、対象不動産の所在地(地番まで表示)、土地面積及び延床面積を含むものであること。
なお、この書面には、法第二七条に規定する「分別管理」は、出資財産の独立性が確保され、事業参加者の出資財産に対する優先権が確保される信託法第二八条に基づく分別管理とは異なる旨を明示すること。

(10) 財産の分別管理について

「分別管理」の実務上の取扱については、規則第二二条の規定により法第三二条に規定する「業務に関する帳簿書類」及び組合等の収支状況書等を対象不動産が同一である不動産特定共同事業契約ごとに分けて作成、保管するものとし、不動産特定共同事業契約に係る財産を、自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業契約に係る財産と、計算上、分別して管理することが求められていること。
また、併せて、対象不動産が同一である不動産特定共同事業契約ごとに預金口座を分けて管理することが望ましい。

(11) 法第四四条に規定する「不動産特定共同事業者が締結した不動産特定共同事業契約に基づく業務を結了する目的」は、私法上の契約を確実に履行させるためのものをいい、事業参加者の利益を損なうものであってはならないこと。(附則第二条第一〇項においても同様であること。)

第六 その他

(1) 主務大臣等について

1) 法第四九条に規定する「主務大臣」の区分については、金銭により出資を行い、かつ契約終了時の出資の返還等が金銭により行われる不動産特定共同事業契約については、大蔵大臣及び建設大臣を主務大臣とし、それ以外の例えば現物により出資を行うもの又は契約の終了時の出資の返還等が現物で行われるものについては建設大臣を主務大臣とするものであること。
2) 不動産特定共同事業者が法第三条第一項の許可を受けた後次の各号のいずれかに該当し引き続き不動産特定共同事業を営もうとする場合においては、主務大臣の変更が生じ新たに許可を受ける必要があるため、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、第一号に該当する場合にあっては大蔵大臣及び建設大臣に、第二号に該当する場合にあっては建設大臣に、法第五条に規定する許可申請書を提出する必要があること。

イ) 建設大臣の許可を受けた者が法第四九条第一項第一号に掲げる事項に係る事業を行おうとするとき。
ロ) 大蔵大臣及び建設大臣の許可を受けた者が法第四九条第一項第二号に掲げる事項に係る事業のみを行おうとするとき。

(2) 経過措置について

法の施行日である平成七年四月一日時点において、現に不動産特定共同事業を営んでいる者についての取扱いは、法附則第二条の規定により以下のとおりとされていること。
1) 平成七年四月一日時点において、現に不動産特定共同事業を営んでいる者は、同日から六か月間(平成七年九月三〇日まで)に限り、法第三条の許可を受けることなく、引き続き不動産特定共同事業を営むことができること。

ただし、次の場合にはそれぞれに規定する日までとなること。
イ) 当該期間中に第五条の許可申請を行い、第六条若しくは第七条の不許可処分があったとき 当該不許可処分のあった日
ロ) 第三六条の廃止命令があったとき 当該廃止命令のあった日
ハ) 当該期間中に第五条の許可申請を行ったあと九月三〇日を経過したとき その申請について許可又は不許可の処分がある日

2) この場合において、その者は許可を受けた不動産特定共同事業者とみなされ(以下「みなし事業者」という。)、また、これらの事務所を代表する者等は業務管理者とみなされ、この法律の一定の規定が適用されること。
3) みなし事業者は、平成七年四月一日から二週間以内(同年四月一四日まで)に附則第二条第五号の規定により主務大臣又は都道府県知事に一定の事項を届け出なければならないこと。

なお、附則第二条第八号の規定により、この届出をせず、又は虚偽の届出をした者は三〇万円以下の罰金に処することとなっているので、特に留意すること。

4) 1)の「不動産特定共同事業を営んでいる者」には、以下の者が該当すること。

イ) 既に不動産特定共同事業契約を締結し、契約に基づき収益等を分配中の者
ロ) 既に不動産特定共同事業契約を終了し、残余財産を分配中の者
ハ) 不動産特定共同事業契約の締結行為の途上にある者
ニ) 不動産特定共同事業契約の締結の申込み勧誘中の者


別記様式〔略〕


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