国土利用計画法(以下「法」という。)及び同法の附属法令は、昭和四九年一二月二四日から施行されたが、貴職におかれては、左記事項に留意のうえ、法の適正かつ円滑な施行に遺憾のないようにされるとともに、速やかに関係事項を貴管下市町村に周知方取り計らわれ、国土行政の運営に万全を期されたく、命により通達する。
第一 国土利用計画法の目的と基本理念について
一 法の目的
近年における人口、産業の大都市への集中に伴い、大都市地域においては、土地利用の混乱、地価の高騰等、国民生活に著しい弊害がもたらされていることに加えて、更に、ここ数ケ年にわたる土地の投機的取引の増大による全国的な地価の異常な高騰、土地の大量買占め、乱開発による自然環境の破壊等により、土地問題の解決が国民の最大かつ緊急な要請となってきている。法は、このような状況にかんがみ、国土利用計画及び土地利用基本計画の策定、土地取引の規制の強化、遊休土地に関する措置等を規定し、土地の投機的な取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去するとともに、乱開発の未然防止と遊休土地の有効利用の促進を通して、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的としたものである。
二 基本理念について
法は、第二条に国土利用の基本理念に関する規定を設け、この基本理念に基づいて総合的かつ長期的な国土利用政策の展開を目指しているものである。従って、この基本理念は、およそ、国、地方公共団体を通じて国土利用に関するあらゆる計画の作成に当たって尊重されなければならないことはもとより、官・民・法人・個人の別なくすべての国民の土地に関する行動の指針となるべきものであって、国民のための限られた資源である土地について、公共の福祉優先の思想の定着を図ろうとしているものである。
第二 国土利用計画
法第四条の国土利用計画は、法第二条に示された国土利用の基本理念に即して、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、長期にわたって安定した均衡ある国土の利用を確保することを目的として策定されるものであり、国土の利用に関する行政上の指針となるものである。
なお、国土利用計画は、国、都道府県及び市町村の各段階相互において十分意見の調整を図りつつ、策定されるものである。
第三 土地利用基本計画等
一 土地利用基本計画の性格と当面策定される計画について
(1) 法第九条の土地利用基本計画は、土地取引規制、開発行為の規制、遊休土地に関する措置を実施するに当たっての基本となる計画である。即ち、都市計画法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法等(以下「個別規制法」と云う。)に基づく諸計画に対する上位計画として行政部内の総合調整機能を果たすとともに、土地取引に関しては直接的に(法第一六条第一項第三号及び第二四条第一項第二号)、開発行為については個別規制法を通じて間接的に(法第一〇条)規制の基準としての役割を果たすものである。
(2) 土地利用基本計画は、上記のごとく制度運用のかなめとしての役割を果たすものであり、従って個別規制法による既存の各種土地利用計画との調和を図りつつ、法施行後可及的速やかに策定されることが望ましい。よって、計画の策定に当たっては、都市計画法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法、自然公園法及び自然環境保全に基づく地域区分を基礎とし、これに必要最小限の修正を加えると云う方針の下に策定作業を進めているところであるが、将来予定されている国土利用に関する全国計画、都道府県計画の策定をまって必要な改訂を加え、適正かつ合理的な土地利用の確保のため、逐次、その内容の充実を図ってゆく方針である。
二 土地利用規制の原則について
法は、「土地利用基本計画に即して適正かつ合理的な土地利用が図られるよう、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係地方公共団体の長は、この法律に定めるものを除くほか、別に法律で定めるところにより、……土地利用の規制に関する措置、その他の措置を講ずるものとする。」(法第一〇条)とし、具体的規制措置は個別規制法に委ねている。
個別規制法には、それぞれ固有の立法目的が存在し、その目的に従って規制内容、その基準も自ら定められるものであるが、法第一〇条の規定により、個別規制法に明文の規定がない場合においても当然「公害の防止、自然環境及び農林地の保全、歴史的風土の保存、治山、治水等に配慮しつつ」運用することが要請せられるものである。
第四 土地取引の規制
一 取引規制の趣旨
土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去し、かつ、適正、合理的な土地利用を確保するため、全国にわたり土地取引の規制の強化が図られるべきであるという基本的考え方の下に、一定要件を充足し緊急に地価の抑制を図るべき地域については許可制(法第一二条から第二二条まで)を、その他の地域(監視区域及び注視区域を除く。)については一定規模以上の取引(一定規模以上の一団の土地を構成する個々の部分の取得する場合を含む。)については事後届出制(法第二三条から第二七条の二まで)を、地価が相当程度上昇し、地価の抑制を図る必要がある地域については、一定規模以上の取引(一定規模以上の一団の土地を構成する個々の部分の取引を含む)については注視区域における事前届出制(法第二七条の三から第二七条の五まで)を、地価の抑制を図るため小規模な取引についても監視を強化する必要がある地域については、都道府県知事又は指定都市の長が定める面積以上の取引(当該面積以上の一団の土地を構成する個々の部分の取引を含む)については監視区域における事前届出制(法第二七条の六から第二七条の九まで)をそれぞれ設け、土地取引について行政が直接介入し、価格及び利用目的等から審査を行うこととしたものである。
二 規制区域の指定
(1) 法第一二条は、土地の投機的取引、地価の動向等について一定の要件を充足する地域については規制区域として指定するものとし、第一一条の思想を具体化し、規制区域指定の方針を宣言している。
(2) 全国にわたり土地取引規制の強化を図るべきものとしている法第一一条の趣旨にかんがみ、各都道府県ごとに特殊な事情が存在する場合には、監視区域の指定の有無にかかわらず遅滞なく指定を行うことはもとより、別途通達する「規制区域指定について」の考え方を参考とし、各都道府県ごとに要件充足の蓋然性が高い地域、特に監視区域として指定された区域については常時土地取引の動向を精査する等の措置を講ずることにより、緊急の事態に対応しうるよう規制区域指定の体制整備に万全を期せられたい。
(3) なお、法第一三条に規定する規制区域指定等に係る内閣総理大臣の指示代行権については、地方自治の本旨に則り、都道府県知事の権限を最大限に尊重するものとし、その行使は極めて非常例外の場合に限定されるものである。
三 土地取引規制の考え方
(1) 規制区域内の土地売買等の契約については、その規模の大小を問わず、都道府県知事の許可を必要とするが、これは二重価格の回避及び契約単位の細分化等による脱法行為の防止等のための措置である。
しかしながら、取引の規模、当事者の性格、土地利用目的の内容如何によって取引の社会的影響が異なることも否定できない事実であるので、投機的取引でないことが通常推認されるような自己居住を目的とする小規模な個人間の取引等については、原則的に市町村長の意見に委ね、敏速に処理する等の運用面における配慮も必要である。
(2) 法第一七条は、許可申請について都道府県知事の判断期間を申請のあった日から起算して六週間以内に制限している。
これは、規制区域内の取引規制が許可を受けないで締結した契約を無効とすること等極めて強い効力をもつものであるので、その反面として六週間以内に処分がない場合には、「許可があったものとみなして」取引活動に支障なからしめたものである。
従って、都道府県知事は申請を受理した場合には、法第一六条の許可基準に照らし、適確に審査するとともに、可能な限り事後に予定される各種法令に基づく開発規制とも調整を図ることが望ましいが、このことによって実質的に六週間の期間制限が形骸化することのないよう配慮されたい。
(3) なお、大規模な開発に伴う用地買収等のように当事者の一方が多数の相手方を対象にして大規模な土地取引を行う場合については、事柄の性質上用地買収主体等から申出があれば、法に基づく申請の審査手続を円滑ならしめるため事前指導を行うことが適当である。この場合の手続要領については、別途通達する予定である。
(4) 以上(2)及び(3)の措置の趣旨は届出制度についても同様に尊重されるべきものである。
四 許可の基準――価格審査について
(1) 本法における土地取引の規制に関する措置においては、法の目的達成のため、土地価格の規制に大きな役割が期待されている。このため、法第一二条の定めるところにより指定される規制区域内においては、その指定の公告の時において地価が凍結されるとともに、規制区域外においても届出の時における適正な時価により価格規制が行われるものである。この趣旨にかんがみ、地方公共団体においては適正な地価の把握及びその審査に万全を期せられたい。
(2) これに関連し、本法の国会審議の過程において現況地目宅地についてはその価格は市場相場の七〜八割程度を政策的な目標とする旨の要望がなされているので、この国会での審議を尊重し、価格の算定等に関して政令が作成されているものであるが、この目標を達成するためには地方公共団体による土地価格の分析、把握が適切になされることが重要である。
国土庁においては、さきに土地鑑定委員会から国土庁長官になされた建議「国土利用計画法の施行に際し不動産の鑑定評価上とくに留意すべき事項について」(昭和四九年一一月六日付け四九国鑑委第五号)を尊重し今後の地価の評価を行うよう地方公共団体に通達(昭和四九年一一月一一日付け四九国土地第一〇五号の三)したところであるので、この趣旨に十分留意されたい。
(3) 上記の要望に応えるためには、都道府県が法施行に伴う土地取引の規制に当たって、土地は国民全体の限りある資産であり有効に利用されるべきものであることを再認識し、土地を商品化したり投機の対象とする考え方や行動はこれを厳しく排除するという基本的な姿勢に立って適正な土地価格の判定を行わなければならない。
(4) 価格審査の実務及びその運用方針については、別途通達するものであるが、とくに許可申請につき不許可又は届出につき勧告を行う必要があると認める場合においては、政令で定めるところに従い適切な評価がなされていることについて適確な検証を行うとともに、「適正を欠く」又は「著しく適正を欠く」の判断に誤りのなきよう運用の万全を図られたい。
五 許可の基準――土地利用目的について
法第一六条第一項第二号、第三号及び第四号の規定は、土地利用目的の見地から許可基準を定めているが、これらの運用に当たっては次の点に留意されたい。
(ア) 第二号イからホまでの規定は、明確に投機的取引のおそれがないものを例示したものと考えられるが、その解釈に当たっては、区域内の正常な社会経済活動の円滑な運営を確保すると云う観点から弾力的に取扱うべきものであること。
(イ) 各号の審査に当たっては、土地売買等の契約前の段階においては、設計図書等の詳細な資料の提出は、一般的に極めて困難であることに留意して運用すべきものであること。
六 許可制の特例措置について
(1) 許可制の適用除外について
法第一四条第二項は、土地売買等の契約について政令による適用除外を認めているが、政令では、原則的に次のような考え方に基づき除外すべき場合を定めている。
(ア) 法第一四条第一項の規定上当然に許可の必要がないとされている民事訴訟法上の裁判又は土地収用法上の裁決と同様な効力をもつ民事訴訟法上の和解、家事審判法上の調停、土地収用法上の和解等の場合
(イ) また、農地法、公有水面埋立法等土地売買等の契約についてそれぞれの法令上都道府県知事等の許可が必要とされ、かつ、法令上明定されたその許可の基準に国土利用計画法の許可基準の趣旨が含まれていると解される場合
(2) 国、地方公共団体等の特例
(ア) 法第一八条においては、土地売買等の契約の当事者の一方、又は双方が国又は地方公共団体等である場合においても、法はこれらについて許可の適用除外とすることなく、「協議の成立をもって許可とみなす」こととしている。
(イ) これは、従来各種公共事業等による用地買収が地価をつりあげているとの批判があったことに応えんとするものであり、従って、協議に当たっては法第一六条第一項の許可基準、特に同項第一号の基準への該当の有無を中心に協議するとともに、公共事業の円滑な施行に支障のないよう審査手続の簡素化、事前包括予備協議の活用等により敏速な審査に努められたい。
(ウ) 法第一八条の政令で定める法人としては、国又は地方公共団体に準ずる公共性の強いものとして原則として法人税法別表一に記載された公共法人のうちから、その業務の遂行上、土地の売買等が継続反復して必要であり、かつ、現行の個別規制法においても国又は地方公共団体に準じて扱われているものについて限定的に規定したものである。
七 届出制について
(1) 法第二三条以下は届出・勧告制度について規定しているが、届出制度の運用についても、許可制に関する上記三、四及び五の考え方は十分生かされるべきである。
(2) 事後届出制においては、取引価格について勧告等を行わないこととしているが、土地の利用目的については、適正かつ合理的な土地利用を図る観点から、審査・勧告等を行うこととしているので、別途通達するところによりその適正な審査に努められたい。
(3) 事後届出制において取引価格について届出を要することとしたのは、注視区域の指定等機動的に地価対策を実施するため、取引価格を監視する必要があるからであり、届出された取引価格については別途通達するところにより適切な処理に努められたい。
(4) 法第二三条第二項、第二七条の四第二項又は第二七条の七第一項において準用される第二七条の四第二項は、事後届出、注視区域における事前届出又は監視区域における事前届出の適用除外についてそれぞれ規定しているが、これらの運用については次の点に留意されたい。
(ア) 法第二三条第二項第一号かっこ書及び第二七条の四第二項第一号かっこ書(第二七条の七第一項において準用する場合を含む。)の「一団の土地」の解釈については、別途通達する「一団の土地について」によることとされたいが、その具体的適用に当たっては、届出の要否について判断が難しいケースが少なくないと思われる。この場合においては、法が原則を届出においている趣旨にかんがみ、関係者に対し疑わしき場合は原則的に届出するよう指導するとともに、その反面違反者に対する法第四七条第一号の罰則適用については十分慎重に取扱うこと。
(イ) 法第二七条の四第二項第二号(第二七条の七第一項において準用する場合を含む。)の政令及びこれに基づく総理府令の規定により、分譲住宅地等についての特例措置として、あらかじめ土地に関する権利の移転又は設定の対価として予定している価額が法第二七条の五第一項第一号に該当しないことについて都道府県知事の確認を受け、かつ、当該確認に係る価額を超えない価額で土地に関する権利の移転又は設定を行う場合に、事前届出制の適用除外とすることとした事前確認制を設けることとしたが、これは、あらかじめ取引内容が類型的に確定し事前に審査し得るという取引の特質によるほか、需要者側からみて偶々一団地の一部分を構成する分譲宅地等を購入する場合に限り届出義務が課せられることの不均衡を是正する見地から定められたものであり、その運用に当たつては八によるものとすること。
(5) 法第二七条の四第三項(第二七条の七において準用する場合を含む。)は、届出をした日から六週間は一般的に契約の締結を禁止することとし、その例外として勧告又は勧告しない旨の通知(以下「不勧告通知」という。)を受けた場合は契約を締結して差し支えないこととしている。これは一方において法第二七条の五第二項(第二七条の八第二項において準用する場合を含む。)において都道府県知事の判断期間を六週間と限定していることとの関係から、届出をした日から一般的に六週間契約の締結を禁止することとし、他方において勧告をした後又は勧告をしないこととした後においてまで契約締結を禁止することは適切ではないことから、勧告又は不勧告通知を受けた後は契約締結の禁止を解除することとしているものである。
この趣旨にかんがみ、別途通達するところにより制度の的確な運用に努めるとともに、制度の趣旨を届出者に対して十分周知するよう努めること。
八 事前確認制の運用について
事前確認制の運用に当たっては次の点に留意されたい。
(1) 事前確認の審査期間は、土地取引の円滑化を図る見地から総理府令で原則として六週間以内とされているが、この期間内においても、審査期間が定められている趣旨にかんがみ、審査は極力速やかに行うものとし、審査の結果当該対価として予定されている価額について確認をすることとした場合には、直ちに申請者に対し確認の通知を行うものとすること。
(2) 都道府県知事は、審査の結果確認をしないこととする場合においては、それが実質的に届出制における勧告と類似の効果をもつこと、改めて届出が行われれば勧告の対象となる公算が大であること等の事情を考慮し、制度のより一層適正な運営を期するため、あらかじめ土地利用審査会の意見を聴くものとすること。
九 注視区域について
(1) 注視区域制度は、局地的な地価の上昇に機動的に対応することが求められており、このため、国土利用計画法第二七条の三第一項の注視区域の指定に係る基準(平成一〇年総理府告示第二五号)に該当する場合には、遅滞なく指定を行うことはもとより、別途通達するところにより、各都道府県又は指定都市ごとに要件充足の蓋然性が高い地域については常時地価の動向、土地取引の状況等を調査することにより、注視区域指定の体制整備に万全を期されたい。
(2) 注視区域を指定した後においても、地価の動向、土地取引の状況等を別途通達するところにより的確に調査し、周辺地域についての新たな指定、注視区域の解除等を機動的かつ効果的に行うよう留意されたい。
(3) 注視区域制度は、地価が相当な程度上昇する地域などにおいて価格について審査・勧告等を行う制度であることから、その趣旨にかんがみ、届出に係る価格については、適切な審査に努められたい。
一〇 監視区域について
(1) 監視区域の指定は、都道府県知事又は指定都市の長が地域の実情を勘案の上行うこととされているところであるが、急激な地価の上昇又はそのおそれがある場合には、遅滞なく指定を行うことはもとより、別途通達するところにより、各都道府県又は指定都市ごとに要件充足の蓋然性が高い地域については常時地価の動向、土地取引の状況等を調査することにより、監視区域指定の体制整備に万全を期されたい。
(2) 監視区域は、都市計画法第七条第一項の市街化区域内に限らず全国において指定することができるので、市街化区域以外の地域においてもリゾート整備等の開発プロジェクトに伴い投機的土地取引が生ずるおそれのある場合等における活用に留意されたい。
(3) 監視区域を指定、監視区域の解除した後においても、地価の動向、土地取引の状況等を別途通達するところにより的確に調査し、届出対象面積の変更、周辺地域についての新たな指定等を機動的かつ効果的に行うよう留意されたい。
(4) 監視区域に所在する土地について土地に関する権利の移転の届出があった場合には、価格、土地利用目的の審査と併せて、その取引が投機的取引と認められるかどうかの観点から審査することとされているが、これは地価の急激な上昇等がみられる監視区域において、投機的取引が土地の需給関係のひっ迫をさらに助長し、当該土地を含む周辺の地域の適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすことを防止しようとするものであり、別途通達するところによりその厳格な審査に努められたい。
一一 国等の適正な地価の形成についての配慮
土地売買等の契約の当事者の一方又は双方が国等である場合には、法第二三条第二項第三号の規定により、届出の適用除外とされているが、法第二七条の六においては、国等は土地売買等の契約を締結しようとする場合には、適正な地価の形成が図られるよう配慮するものとしているところである。
この趣旨にかんがみ、国有地等の処分に当たっては、関係行政機関は必要に応じ、緊密な連絡、情報交換を行うことにより、効果的かつ総合的な地価対策に資することとしているところである。
したがって、貴職におかれても、法第二七条の六の規定の趣旨が徹底されるよう、関係部局間の連絡を密にする等その運用に遺憾のないようにされたい。
第五 遊休土地に関する措置について
(1) 法第六章に規定された遊休土地に関する措置は、許可又は届出に際して行われる土地利用目的の審査を事後的に補完する意味をかねて、一定規模以上の遊休土地についてその所有者等の自発性を極力尊重しつつ勧告等の措置を講じその積極的活用を図ろうとするものである。
従って、法第二八条の遊休土地である旨の通知は、極力弾力的に運用し、所有者等の個別具体的事情は計画書の審査に際して考慮することとされたい。
なお、建築又は整備投資抑制等、国又は地方公共団体の施策に協力した結果として未利用となっているものについては遊休土地に関する利用計画の届出に際し当事者等から事情を聴取し、勧告等に当たってはその事情を十分に配慮することとされたい。
(2) 法第二八条は、法施行後三年経過しなければ実質上適用がないのに対し、昭和四四年一月一日以降法施行日までに取得された土地については、法施行日から二年間を限り、遊休土地の通知を行うことができることとなっているが、これは昭和四四年から実施されている土地の供給促進を目的とした長期保有土地の譲渡所得にかかる分離軽課措置が、個人の土地放出については相当な効果をあげたものの、当該土地が主として法人企業に取得されてそのまま保有され、必ずしも最終需要に結びつかず投機的に保有されているとの批判に対し、土地税制の改善による法人の土地譲渡益に対する分離重課、特別土地保有税の創設と並んでこの間に取得された土地の利用促進を図ると云う趣旨に基づくものである。
(3) 遊休土地制度の活用に当たっては、緊急な公的使用計画のある土地を重点に通知を行い、遊休土地の買上げが現下の地価低落傾向の歯止めとなることのないよう配慮されたい。
第六 国土利用計画地方審議会及び土地利用審査会について
これらについては、既に土地局長通達「国土利用計画地方審議会及び土地利用審査会について」(昭和四九年八月一日付け四九国土利第二号)において通達済であるので、その趣旨に沿って運用することとされたい。
第七 執行体制について
(1) 国土利用計画法上取引規制等に関する権限の相当部分は、都道府県知事に委ねられているので、本法運用の成否は専ら都道府県における執行体制の整備にかかっているものといっても過言ではない。
従って、国土庁としてもこれに必要な予算財源措置の確保、都道府県等職員研修の実施、事務処理要領の策定等、万般にわたって努力いたしているところであるが、都道府県におかれても本法の施行宣しきを得るか否かが都道府県の住民の福祉にも密接な関連をもつことにかんがみ、市町村に対する指導、都道府県庁内関係部局との連絡調整体制の整備等に努力されたい。
(2) なお、都道府県知事の権限は、法律上地方自治法第一五三条第二項の規定に基づき市町村長に委任することができるが、その場合には事務の性格、市町村の体制整備状況等を勘案し、市町村長と十分連絡調整の上行われたい。