55国土利第一〇二号
昭和五五年四月一日

各都道府県知事あて

国土事務次官通達


国土利用計画法の的確な運用等について


本日、昭和五五年地価公示が官報に公示されたが、その結果によれば、用途別、地域別には差異があるものの、前年に比し変動率が上昇しており、とくに、三大都市圏の住宅地における上昇が目立っている。これは、旺盛な住宅地の需要に対して供給が不足していることが主要な原因であり、これまでのところ、土地の投機的取引が集中して生ずる徴候はみられないと判断されるが、このような地価の動きからみて、今後の土地取引の動向については、充分注意を要するものがある。
このような状況に対処するため、先般の物価問題に関する関係閣僚会議の決定において、地価についても、別添(写)のとおり、「投機的な土地取引を防止するため、国土利用計画法の的確な運用、地価動向の監視強化、土地取得関連融資の自粛の徹底等の施策を推進する。」こととされ、国土庁としても、この趣旨に沿い、監視体制の整備その他国土利用計画法運用のための措置の充実に努めているところである。
これらの点については、貴職におかれても、かねてから格段の御尽力をいただいているところであるが、このような情勢にかんがみ、土地の投機的取引及び地価の高騰等の事態が万が一にも生じないようにするため、「国土利用計画法の施行について」(昭和四九年一二月二四日付け49国土利第六〇号国土事務次官通達)等に則り、なお一層、土地取引及び地価動向の監視を強化し、国土利用計画法の的確な運用に万全を期することとされたい。
以上、命により通達する。



〔別添〕

当面の物価対策について

(昭和五五年三月一九日)
(物価問題に関する関係閣僚会議)
最近の物価動向をみると、卸売物価はこのところ原油等海外産原材料価格の高騰、円安傾向等により、上昇を続けており、消費者物価は一部野菜価格の高騰があり、また卸物価上昇の影響が次第に波及しつつある。電灯、電力及びガスの料金改定が行われる等から、今後の物価動向は一層警戒を要するものと考える。
このような局面において、適切な総需要の管理、便乗値上げの防止等物価対策に全力を傾注し、海外要因による価格上昇等の影響を最小限にとどめることが、今後の物価安定の要件であり、これが、ひいては、経済の安定的成長にも資するものである。
政府は総合的な物価対策を積極的に推進し、先般来、日本銀行は公定歩合引上げを行い、また政府、日本銀行は外国為替市場の安定のための対策を実施しているところである。
最近の一層警戒すべき物価情勢にかんがみ、消費者物価上昇率六・四%程度の政府見通しにそって、全力を挙げて物価安定に努めることとし、当面、左記の対策を講ずるものとする。地方公共団体においても、国と同様の方針により物価対策を推進するよう協力を要請する。
この際、生産性の向上が物価安定に欠くことのできない要件であることにかんがみ、各界が一層の生産性向上に努めることを期待する。
一 財政、金融政策の運営にあたっては

(一) 公共事業等の執行については、引続き、物価動向に細心の配慮を払うものとし、五五年度予算成立後の執行についても、別途、早急に目標を定めて、当面、抑制的な事業施行を図るものとする。
(二) 金融政策については、引締め基調を堅持し、通貨供給量を監視しつつ、引続き、適切な金融調節に努める。

二 個別物資に関する対策

(一) 最近の商品市況にかんがみ、業種別、品目別に需給価格動向をきめ細かく調査、監視し、値上がりの著しい物資について、実態の把握に努め、必要に応じ、供給の確保のための備蓄の放出、原材料の出荷要請等、機動的な対策を実施する。
(二) 灯油等石油製品については、供給の確保を基本としつつ、引続き、元売、小売段階における価格監視を実施する。
(三) 特定不況産業安定臨時措置法に基づく特定不況産業について、需給、価格動向を注視し、必要に応じ、需給対策等を講ずるものとする。
(四) 競争制限的行為による違法な価格引上げを防止するため、独占禁止法の厳格な運用に努める。また、同調的値上げの動きを注視する。

三 公共料金の取扱い

(一) 経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分考慮して、厳正に取扱う。
(二) 公共料金の一部(夜間遠距離通話料金等)については、その引下げを図る。

四 電灯、電力及びガスの料金改定に伴う措置

電灯、電力及びガスの料金改定に伴うコスト上昇については、極力合理化努力により吸収し、便乗値上げ等不当な価格形成を行わないよう関係業界に要請するとともに、関連物資の需給、価格動向の調査、監視に努める。また電気税の課税について所要の調整を行う。

五 生鮮食料品等の価格の安定

(一) 野菜について、先般の緊急価格安定対策を推進するとともに、今後需給の動向を注視しつつ機動的に対処する。
(二) 牛肉について、需給事情に即した適切な輸入、売渡し及び国産牛肉の特別販売等を推進する畜産物価格の安定に努める。
(三) 水産物について、必要に応じ、輸入割当制度の適切な運用、生産者団体等に対する出荷指導等に努め、供給の確保を図る。
(四) その他、生鮮食料品等の生産出荷体制の整備、取引改善の指導、小売価格及び外食価格の動向の監視、消費者情報の提供等に努める。

六 省資源、省エネルギー対策の推進

物価対策の観点からも、資源とエネルギーを大切にする国民運動の一層の展開を図るとともに、石油消費節減対策、省資源対策について周知徹底を図る。
この一環として、紙等の資源のリサイクルの重要性を啓蒙普及するとともに、各省庁、政府関係機関においては、四月一日の省エネルギーの日を期して執務環境の整備を行い、古紙の一斉放出を行う。

七 地価の安定

地価についても、投機的な土地取引を防止するため、国土利用計画法の的確な運用、地価動向の監視強化、土地取得関連融資の自粛の徹底等の施策を推進する。


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