10国土利第二一六号・10国土地第二二九号
平成一〇年八月二六日

各都道府県知事・各指定市の長あて

国土庁土地局長通知


注視区域制度等の運用について


国土利用計画法の一部を改正する法律(平成一〇年法律第八六号。以下「改正法」という。)によって創設された注視区域制度については、「国土利用計画法の一部を改正する法律の施行について」(平成一〇年八月二六日付け10国土利第二一四号・10国土地第二二七号国土事務次官通達)をもって通達されたところである。これに伴い、注視区域制度等の運用指針について、別紙のように定めたので、その運用に当たって遺漏のないよう努められたい。



(別紙)

○注視区域制度等の運用指針

第一 注視区域の指定について

1 今回の国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号)の改正によって、従前の全国にわたる一律の大規模な土地取引についての事前届出制に代えて、土地の利用目的、取引価格等を取引後に届け出る事後届出制及び注視区域制度を設けたところであるが、これは、長期にわたる地価の下落等を背景に、土地取引に係る規制を合理化し、土地取引の円滑化に資することを目的として、改正が行われたものである。

注視区域制度については、今後とも、経済状況などの変化あるいはプロジェクトの実施などに伴う局地的な地価の上昇が生じることも予想されることから、機動的に地価の上昇に対応するため、地価が相当程度上昇している区域等に限り、事前届出制を実施する制度として設けられたものであり、その趣旨に十分留意されたい。

2 注視区域制度においては、地価が相当な程度を超えて上昇した場合のみならず、そのおそれがある場合にも指定することができるとされており、今回、注視区域制度が設けられた背景にかんがみれば、注視区域の指定は地価の上昇の予兆を的確に捉えて機動的に指定することが重要であることから、一年間の地価の動向を踏まえた指定基準のほか、四半期毎の短期的な地価の動向等を踏まえた指定基準を明らかにしたものである。
3 「国土利用計画法第二七条の三第一項の注視区域の指定に係る基準」(平成一〇年総理府告示第二五号。以下「基準」という。)においては、最近の経済社会や土地をめぐる状況にかんがみ、注視区域の指定の際の判断要素となる地価の上昇についても、指定の検討の対象となっている地域の地価上昇率が五パーセントを超えていることに加えて、それが土地利用をはじめとする諸社会事象に対して実質的に及ぼす影響の程度を勘案し、指定の必要性を判断することとした。

したがって、基準第一号において、「実質的な一年間の地価上昇率が五パーセントを相当程度下回ると認められる場合を除く」と規定しているのは、一年間の地価上昇率が五パーセントを超えている地域においても、直ちにこのことをもって注視区域の指定ができるとは限らず、当該地域における物価や所得が相当程度上昇している場合などには、これらの要因を総合的に勘案した上で、実質的に指定の必要性を判断すべきである趣旨を明らかにしたものである。

4 基準第二号ロと第三号において、公的な大規模プロジェクトの予定されている地域について、指定の特例的基準を定めたのは、こうした大規模プロジェクトについては、従来から、投機的な土地取引が見受けられることが多く、ともすれば地価の上昇につながるおそれがあると指摘されていることから、要件を緩和したものであるが、併せて公的に位置づけられた大規模プロジェクトの用地の取得を円滑に進めるためにも、注視区域の指定において特別の配慮を払うべきものであるので、その趣旨に十分留意の上、対応願いたい。
5 注視区域の指定の際の区域の決定については、「国土利用計画法の施行について」(昭和四九年一二月二四日付け49国計総第六六号・49国土利第六一号計画・調整局長、土地局長通達)第三の一の(3)と同様である。ただし、基準第三号により指定する区域については、現に事業が実施される予定の区域に限るものとする。

なお、一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超える地価の上昇又はそのおそれが、都府県又は指定都市の区域を越えて広範に生じている場合には、相互の連絡調整を密にし、効果的な規制が行えるよう区域を決定されたい。

第二 注視区域の指定の解除及び区域の減少について

注視区域については、その機動的指定が要請される一方で、この制度が権利の制限としての性格を有していることから、その解除についても的確に行うべきであることはいうまでもない。注視区域は五年以内の指定期間を定めて指定することとしているが、これは注視区域の指定事由が消失した後もいたずらに指定を継続することを避ける趣旨であるので、必要かつ十分な範囲で期間を定めることはもちろん、指定の際にその根拠となった地価の上昇のおそれがなくなったにもかかわらず、漫然と単におそれがあるという理由のみで指定を継続することのないよう、注視区域の指定の解除については、別途、通達するところにより解除の要件を明示することとしているので、留意することとされたい。
また、注視区域の一部について指定の事由がなくなったと認められる場合は、解除の場合に準じて的確に注視区域の減少を行われたい。

第三 調査の的確な実施について

注視区域指定後における地価の動向、土地取引の状況等についての調査は、当該注視区域の周辺区域での新たな注視区域の指定、注視区域の指定の解除等の措置に的確に反映することができるよう正確かつ迅速に行われたい。
また、注視区域の指定要件充足の蓋然性が高い地域については、地価の動向等を常時注視していくものとする。

第四 監視区域制度の運用指針について

1 監視区域の指定に関しては、「監視区域制度の運用指針について」(平成二年六月一一日付け2国土利第一八八号・2国土地第一一六号土地局長通達)をもって、指定の具体的要件を明示しているところであるが、今回、注視区域の指定に関して当該地域の地価上昇率だけでなく、物価や所得の上昇率などを総合的に勘案して実質的な指定の必要性を判断することとしたことにかんがみ、今後の監視区域の指定においても、同様の取り扱いを行うものとするので、留意されたい。
2 また、監視区域の解除に関しては、今回、注視区域の指定要件と併せて解除要件が明示されたことに伴い、再度、現在指定されている監視区域について、その指定の妥当性を検討されたい。検討の結果、指定の要件に該当しなくなっている場合には、速やかに、指定の解除、注視区域への指定替えその他適切な措置を講じられたい。ただし、監視区域の指定の事由となった事業の円滑な実施が困難となることが見込まれる等やむを得ない事情がある場合には、改正法の施行の日から一年以内に、基準及びこれに関係する通達に照らし、適切な措置を講じられたい。


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