今般、国会等の移転先候補地(以下「候補地」という。)が選定されたところであるが、国会等の移転が過去に例を見ない国家的プロジェクトであることに鑑みると、候補地選定後に投機的取引が集中し地価が上昇する可能性があることは否定できないところである。
また、国会等移転審議会(以下「審議会」という。)の答申においても、「移転先候補地における投機的土地取引と地価の高騰を断固として排除することが必要であり、審議会は、監視区域の指定等、現行制度を最大限に活用して、万全の対策を速やかに講じるよう、政府及び関係地方公共団体に対して、強く要請する」との指摘がなされているところである。
候補地の選定に伴う土地投機対策については、国会等の移転に関する法律(平成四年法律第一〇九号。以下「移転法」という。)第五章に規定されており、また、国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号。以下「法」という。)に基づく土地取引規制については、「監視区域制度の機動的な運用について」(平成六年一二月一六日6国土利第二〇五号・6国土地第三六五号土地局長通達。以下「運用通達」という。)等を踏まえ的確に運用していただいているところであるが、候補地の選定に伴う監視区域制度の運用について下記のように定めたので、その運用に当たって、遺漏のないよう努められたい。
第一 候補地等における監視区域の指定について
1 候補地等における監視区域の指定について
候補地において急激な地価上昇のおそれがあることの判断に当たっては、運用通達第三の規定にかかわらず、国会等の移転が過去に例を見ない国家的プロジェクトであることを踏まえて、審議会の答申後遅滞なく判断するものとし、今般選定された候補地の区域のうち、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域については、移転法第二四条の規定に基づき、可及的速やかに監視区域を指定するものとする。
また、審議会の答申において将来候補地となる可能性があるとされた地域における急激な地価上昇のおそれがあることの判断に当たっても、運用通達第三の規定にかかわらず、国会等の移転が過去に例を見ない国家的プロジェクトであることを踏まえて、審議会の答申後遅滞なく判断するものとし、当該地域の区域のうち、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域については、法第二七条の六第一項の規定に基づき、可及的速やかに監視区域を指定するものとする。
2 指定に係る周知措置について
監視区域を指定する場合における周知措置については、法第二七条の六第三項において準用する法第一二条第五項の規定により指定後に行うことで足りることとしているが、効率的な執行に留意し、事前に積極的に行うものとする。
第二 監視区域の指定の解除、区域の減少及び届出対象面積の変更について
1 監視区域の指定の解除及び区域の減少について
今般指定される監視区域の全部又は一部について、指定の事由がなくなったと認められる場合には、速やかに指定の解除又は監視区域の減少を行うものとする。
2 届出対象面積の変更について
第三の調査により把握された地価動向、土地取引状況等を的確に踏まえ、必要に応じ、届出対象面積の変更を行うものとする。
第三 調査の的確な実施について
今般指定される監視区域の指定後における地価の動向、土地取引の状況等についての調査は、必要に応じ当該監視区域の周辺地域も調査対象とするものとし、当該監視区域における届出対象面積の変更、当該監視区域の周辺地域での新たな監視区域の指定、監視区域の指定解除等の措置に的確に反映することができるよう詳細かつ迅速に行われたい。
第四 その他
1 届出者等の負担の軽減について
今般指定される監視区域における制度運用に当たっては、現在の社会経済情勢等を踏まえ、届出者等の負担の軽減を図るための措置を適切に講じることが重要である。
このため、「国土利用計画法に基づく届出・勧告制の運用について」(平成九年六月一一日付け9国土利第一四七号・9国土地第一八二号土地局長通達)の届出・勧告制の運用の考え方を踏まえ、添付図書の簡素化、審査期間の短縮化等により、届出等手続きの一層の簡素化・迅速化を図り、届出者等の負担の軽減に努められたい。
2 投機的土地取引等の未然防止について
公的な大規模プロジェクトの予定されている地域においては、従来から、投機的な土地取引が見受けられることが多く、ともすれば地価の上昇につながるおそれがあると指摘されており、国会等の移転が過去に例を見ない国家的プロジェクトであることに鑑みると、候補地選定後の投機的土地取引の発生等が懸念されるところである。
このため、投機的土地取引の発生等を未然に防止する観点から、法第二七条の七第一項において準用する法第二七条の四第二項第一号括弧書の規定により届出を要することとなる一団の土地の認定について特に厳正に処理するとともに、特定の利用目的を有せず転売等を目的とすると認められる取引については、法第二七条の八第一項第二号に該当する場合が多いと考えられることから、同号の審査を的確に行うものとする。
3 関係機関及び府県相互の連携確保
今般指定される監視区域における制度運用に当たっては、関係部局・関係市町村と十分な連絡調整を行うとともに、国土庁とも緊密な連絡調整を行われたい。
また、効果的な規制が行われるよう、関係府県間の相互の連絡調整を密にされたい。