建設官発第一二二〇号
昭和二六年一二月一五日

各都道府県知事あて

建設省管理局長通牒


土地収用法第三章事業の認定の規定運用に関する件


新土地収用法によれば、都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行うこととせられているが、同処分は収用の要件である憲法第二九条第三項に規定されている公共のための必要ということを決定する処分であり、収用手続に入る前提処分であって、これによって収用の能否が第一次的に決定せられ、又これによって、事実上は収用が決定的となることが多く、収用法上最も重要な意義を有するものである。従って、新法は、同処分の重要性に鑑み起業者の立場を顧慮するとともに又利害関係人の権利の保護に欠くることなきよう配慮をなし、これに関する必要規定を整備し、且つ、同処分に対しては旧法を改めて、再審査、訴願等の途を開く等誤なきを期している次第である。ついては、右趣旨に依り、同法第三章事業の認定の規定を運用するに当っては、左記事項に留意のうえ、迅速且つ適確に事業の認定に関する処分を行われるよう、万遺漏なきを期せられ度く右特に依命通牒する。

一 事業の認定に関する同法第二〇条の規定の運用については、左記各号により慎重を期せられたい。

(イ) 同条第一号の要件については、事業が第三条各号の一に掲げるものに該当するや否やを審査すること。
(ロ) 同条第二号の要件を審査するに当っては、起業者が地方公共団体である場合はその議会の議決の有無、一般法人である場合は当該法人として正式に意思が決定されているや否や等に留意して起業者の意思を確め、又当該事業の施行について行政機関の許可、当該事業の施行に必要な財源に対する措置の有無等に留意し、事業遂行の能力を確むる等致されたい。
(ハ) 同条第三号の要件の審査に当っては、例えば他により適当な地点がありや否や、当該特定の土地等が必要なりや否やを具体的に事案に即し、判定すること。
(ニ) 同条第四号の要件の審査に当っては、「公共のための必要」の有無に特に留意すること。即ち、収用の要件である事業の公益性は、申請に係る事業の個々について判断すべきものであるから、前期(イ)の要件を具備することをもって足れりとせず、具体的事案に即し慎重に公益性の有無を判断すること。例えば、第三条第三〇号の事業の如きは、起業地の選定を誤り易く、その結果、公共のための必要の要件を具備せざるに至ることなしとせず、又第三一号又は第三二号の事業については、地方公共団体の事務又は事業の用に供する施設であることのみでは未だ土地を収用する公益上の必要があると断定し難い場合が多く、これらの場合には特に公共の利益の有無について慎重且つ公正な判断を必要とする。その他、第三条列記のすべての事業についても同様の留意が必要であって、事業の公益性が一般に納得しうる客観性がありや否やを、具体的事業及び当該特定の土地等につき、精査せられたい。

二 右の要件に関する諸点の判断に当っては、特に左記に留意すること。

(イ) 第一八条第一項第四号による「事業の認定を申請する理由」、同条第二項各号による起業者の説明内容を審査すること。
(ロ) 第二五条の規定による利害関係人の意見、特に反対意見を十分吟味し、その当否を審査すること。
(ハ) 以上(イ)及び(ロ)によってなお判断の基礎が得られない場合は、第二一条から第二三条に規定する手続によって資料を整備する外、起業者に参考資料の任意提出、口頭による任意説明等を求めるのが適当である。尚、事業の認定の判断は、具体的且つ特定の事業の個々について判断すべきであるから、書面審査に留まらず必ず現地の実地調査を行うのが大切である。実地調査に当っては、特に公正を疑われることなきよう措置せられたい。

三 右一及び二による審査を経て、事業の認定に関する処分、即ち事業の認定又は事業の認定の拒否の処分を行うときは、その理由として第二〇条各号についてその判断の経路を書面により明らかにし、第二六条第二項に規定する「事業の認定に関する書類」の中に一活しておかれたい。
四 手続並びに処分の迅速について

新法は、事業の認定に関する手続を周知ならしめた結果、認定に関する処分に到るまでに若干の期間が必要であるが、その本旨は、所定の手続によって判断に必要な資料を適確に整備し、これによって却って審査の促進を図るにあるのであり、又事業の認定に関する手続を訴訟手続によらず特に行政手続とするの立法上の主義を採用したのは、迅速な措置を期する所以なのである。従って、新法の運用に当って手続が退廷することなきよう特に御留意ありたく、例えば第一九条の規定による書類の欠陥の補正等は直ちにこれを行い、又第二四条の規定による書類の送付縦覧、第二六条の規定による事業の認定の告示等法律上必要な手続は速かにこれを措置する外、手続を迅速に進めるについて特段の配慮を致されたい。

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