土地収用制度については、昭和六三年八月三〇日付け建設省経収発第一四一号、平成元年七月一四日付け建設省経整発第五三号・建設省河総発第一八二号・建設省道一発第三〇号等により活用が図られてきたところであるが、その後、平成元年一二月に制定された土地基本法(平成元年法律第八四号)第二条の規定において土地については公共の福祉が優先するという基本理念が明確化され、また、平成二年六月には、平成三年度から一〇年間の公共投資総額を四三〇兆円とする公共投資基本計画が定められるという状況の中で、国民が豊かさを実感できる住宅・社会資本整備の推進のため、用地取得の円滑化、土地収用制度の適切な活用が従前にも増して求められているところである。
ついては、事業認定申請及びその審査の一層の迅速化・円滑化を図るため、左記のとおり事業認定関係事務処理要領を定めたので、事業認定申請に当たっては、左記要領により、迅速かつ円滑な事務処理を行うこととされたい。
一 目的
本要領は、土地収用法(昭和二六年法律第二一九号。以下「法」という。)に基づく事業認定申請及びその審査について、事務処理を進めるに当たっての起業者の留意事項等の必要事項を定め、併せて全体の手続を明示することにより、事務処理の迅速化・円滑化を図るとともに、土地収用制度の適切な活用の推進に資することを目的とする。
二 事務処理の手順について
本要領においては、事務処理の迅速化・円滑化を図る観点から、事業認定申請準備作業の熟度に応じた各段階の手続の進め方及び留意事項を明確化するものである。
事業認定申請に関する事務処理については、案件登録、事前相談、事前審査及び本審査の四段階に分けて行うこととする。
各段階の手続の詳細については、四に掲げるところによる。
三 事業認定申請準備作業の合理化等について
(一) 事業認定の適期申請の徹底について
事業認定の申請を事業の完成期限等を見込んだ適切な時期に行うべきことについては、平成元年七月一四日付け建設省経整発第五三号・建設省河総発第一八二号・建設省道一発第三〇号(以下「ルール化通達」という。)により通達されたところであるが、事業認定申請準備作業の迅速化・円滑化を図るためにも、同通達に基づき、起業者において、概算要求、実施計画及び用地のヒアリングの場を活用することを始め、計画担当、事業実施担当及び用地担当の各部局相互間の事業認定申請等に関する連絡・調整機関の設置等の方法により、収用手続を見合わせている理由の再検討、収用手続への移行の促進等を行うことが望ましい。
なお、ルール化通達においては「一の事業認定申請単位における用地取得率が八〇パーセントとなった時、又は用地幅杭の打設から三年を経た時のいずれか早い時期を経過した時までに、収用手続に移行するものとする」とされているところであるが、これは、当該割合又は時期に達するまでに収用手続に移行することを禁止しているものではない。
(二) 関係機関との調整の円滑化について
(一)に掲げるものを除くほか、事業認定に関する事務を始め土地収用制度の活用に当たっては、計画担当、事業実施担当及び用地担当の各部局相互間の協力関係が不可欠であることに留意し、事業の計画段階から十分な連絡調整を行うこと。
(三) 事業認定申請準備作業の合理化について
事前審査に必要な書類の作成等については、事業認定申請マニュアルの活用等により迅速化に努めること。
また、既存図面の活用等できるだけ事務負担の軽減を図ることが望ましい。
なお、法第四条に規定する土地の管理者に対する意見照会等については、事前審査には必要ないものであるが、書類の作成等の作業と並行して進めることが望ましい。
四 事業認定申請準備作業の各段階における手続の進め方、留意事項等について
(一) 案件登録について
1) 概要
案件登録は、事業認定申請予定調書の提出及び総括ヒアリングの実施から構成されるものである。
事業認定申請予定調書は、当職が当該年度における事業認定の件数及び事業の概要を把握し、審査体制の整備及び審査スケジュール作成上の資料とするため、起業者に対し提出を求めるものであり、総括ヒアリングは、当職が具体の事業に係る事業認定申請書(添付書類を含む。以下同じ。)案及び参考資料の作成についての起業者からの相談等に応じるものである。
毎年度末、事業認定申請予定調書(以下「調書」という。)の様式を送付するので、起業者においては、翌年度に事前審査及び事業認定申請を希望する案件について調書を作成し、当職に提出すること。
2) 総括ヒアリングについて
総括ヒアリングは、調書に記載した案件について事業認定申請書案及び参考資料の作成上あらかじめ当職と調整を要する事項(事業認定申請単位、都市計画との関連等)がある場合等に、起業者の申出に応じて当該年度のおおむね四月から五月にかけて実施することとする。
なお、登録した案件についての総括ヒアリングは、事業認定申請書案及び参考資料の作成上あらかじめ当職と調整を要する事項がある場合等に限って行うものであり、調書に記載した案件すべてについて概要の説明を受けるものではない。この点、従前の取扱いと異なることとなるので、留意されたい。
(二) 事前相談について
1) 概要
事前相談は、個別の事業毎に、事業認定申請準備作業着手前又は事業認定申請準備作業中に、書類作成の方法、公益性、土地利用の合理性等について当職の意見を求める必要がある場合等に、起業者の申出に応じて当職が実施するものである。
2) 留意事項
事前相談は、起業者の申出に応じて必要がある場合に行うものとする。起業者においては、その適切な活用により事前審査等の事業認定事務の円滑化を図るよう努めること。特に大規模、長期的な事業等については、事務処理の円滑化を図る観点から、事業認定申請準備作業着手前又は事業認定申請準備作業中に、公益性、土地利用の合理性等について、事前相談により当職の意見を求める等その活用を図ることが望ましい。
なお、起業者において当職の意見を求める必要等のない場合には、事前相談は不要であるので、念のため申し添える。
(三) 事前審査について
1) 概要
事前審査は、本申請後の事務処理の円滑化を図る観点から、当職が、起業者から個別の事業について事業認定申請書案及び参考資料の提出を受け、その内容、様式等について起業者との間で調整を行うものである。
2) 標準事務処理期間の設定について
事業認定申請に係る事務は起業者にとり必ずしも定常的な事務ではないこと、専門技術的な作業を伴うものであること等から、事業認定申請事務手続に相当期間を要している事案が多く見られるところである。
このような状況を踏まえ、事務処理の迅速化・円滑化を図るために、事前審査開始前日から事業認定告示までの期間を当面最大限六か月程度とし、当職としては、事業計画等に特に問題がない限り、原則として当該期間内に事業認定の告示がされるよう手続を進めることとする。
標準事務処理期間等の取扱いに関しては、以下の点に留意されたい。
(ア) 標準事務処理期間の計算に当たっては、用地買収交渉の状況等から起業者の要請により事前審査等の手続を中断している期間を除くものとすること。
(イ) 事前審査は、起業者が事業認定申請書案の内容、様式等を整えた段階で開始するものとし、事前審査開始日とは、当庁が、整えられた事業認定申請書案に基づいて、説明を受けた日とすること。
なお、事業認定の告示希望時期から六か月以上前に事前審査を開始することは何ら差し支えないものであるので、念のため申し添える。
3) 事前審査に係る事務の迅速かつ円滑な遂行について
標準事務処理期間内に事務処理を完了するためには、起業者側における迅速かつ円滑な事務処理が不可欠である。起業者においては、以下の点に留意して迅速かつ円滑な事務処理を行うこと。これが履行されない場合は、標準事務処理期間内に事務処理が完了しないことがあり得るので、留意されたい。
(ア) 申請関係書類の差換え、補正等起業者側における対応を必要とする措置に関しては、速やかにその具体的な内容を起業者側に示しその実行を促すこととするので、起業者側としてもそれに迅速に対応するように努めること。
(イ) 事前審査に入った後に事業計画の変更がないよう、事前審査を受けるまでには、起業者において最終的な事業計画を確定させること。
(ウ) 事前審査に入った後に事業認定の告示が不要となったり用地買収交渉の状況等により作業の中断をするような事態になった場合には、当職に速やかに連絡すること。
4) 手続遅延の場合の措置について
起業者側の事由等により標準事務処理期間内に手続が完了しないことがやむを得ない事態に至った場合その他標準事務処理期間内に手続が完了しないやむを得ない事情がある場合には、適当な時期に手続が遅延せざるを得ない事情等について起業者に通知することとする。
5) 事前審査開始時期に関する留意事項
事前審査の開始時期については、事業認定告示の希望時期と標準事務処理期間とを勘案し適切な時期とする必要がある。このため、起業者においては、できるだけ早期に事業認定申請書案を当職に提出するよう努めること。
(四) 本審査について
1) 概要
本審査は、事前審査により実質的な審査が終了した案件について、当庁が、法の規定に基づき、事業認定申請書を受理し、公告・縦覧等の手続を執った後、事業認定に関する処分を行うに至る手続である。
2) 留意事項
本審査に当たっては、事前審査等において当職に提出した書類を本審査に必要な書類として活用することも可能である。
事前審査が完了した場合には、起業者は速やかに本申請を行うこととするとともに、法第二四条第二項の規定に基づく事業認定申請書の縦覧が速やかに行われるよう、関係市町村と事前に調整を行うことが望ましい。
なお、事前審査終了後速やかに本申請が行われない場合、本申請後速やかに事業認定申請書の公告・縦覧が行われない場合又は事業認定申請書の縦覧期間内に法第二五条第一項の規定に基づく意見書の提出があった場合には、標準事務処理期間内に事務処理が完了しない場合があるので、留意されたい。