建設省経収発第一九一号
平成六年九月二八日

各都道府県事業認定担当部局長あて

建設省建設経済局総務課長通知


行政手続法の施行に伴う土地収用法に基づく事業認定等に関する事務の運用上の留意事項について


行政手続法(平成五年法律第八八号。以下「法」という。)は、臨時行政改革推進審議会の答申(平成三年一二月一二日)に基づき、行政庁の処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的として制定されたものであり、平成五年一一月一二日に公布され、本年一〇月一日から施行されることとされている。また、行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成五年法律第八九号)が法公布日と同日で公布されたが、この中で土地収用法の一部が改正され、収用委員会の行う処分についての適用除外に関する規定等について、法の制定に伴う必要な改正が講じられたところである。
今後、法を踏まえて、土地収用法に基づく事業認定等に関する事務(以下「事業認定等に関する事務」という。)についても、法の規定にのっとった、より一層適切な事務遂行を行うことが強く要請されるところである。
ついては、法を踏まえた事務執行に関する一般的留意事項については「行政手続法の施行に当たって」(平成六年九月一三日付け総務事務次官通知。別添1)のとおりであるが、特に事業認定等に関する事務の運用に当たっては、更に左記の事項に留意の上、遺憾のなきを期されるとともに、この旨、貴管下関係機関にも周知徹底取り計らわれたい。

1 申請に対する処分について

(1) 申請に対する処分について

申請に対する処分については、事業認定等に関する事務のうち、以下のものが該当することとなるので、審査基準の設定等及び標準処理期間の設定等を行うよう必要な措置を講ずるとともに、処分を行うに当たっては、申請に対する審査・応答、拒否処分に伴う理由の提示、情報の提供等法第二章の規定にのっとり適切な運用を図ること。
土地収用法第一一条第一項に基づく許可
土地収用法第一四条第一項及び第三項に基づく許可
土地収用法第一六条に基づく認定
土地収用法第二八条の三第一項に基づく許可
土地収用法第八九条第一項に基づく承認
土地収用法第一二二条第一項に基づく許可
土地収用法第一三八条第一項により準用される同法第一六条、第二八条の三第一項、第八九条第一項及び第一二二条第一項に基づく認定、許可及び承認

(2) 審査基準の策定等について

法第五条は、審査基準の策定等について定めているが、同条に基づく所管事務の取扱いについては以下の点に留意すること。
1) 審査基準については、(1)に掲げるそれぞれの処分ごとに、これまでの建設省から発せられた通達等、過去における処分実績及び「申請に対する処分に関する審査基準の指針(別添2)」を参考として、できるかぎり具体的なものとすること。
2) 審査基準を公にすることについては、少なくとも、審査基準を収録する法令通達集を事務所に備え置くなどにより行うこと。

(3) 標準処理期間の設定について

法第六条は、標準処理期間の設定について定めているが、同条に基づく所管事務の取扱いについては以下の点に留意すること。
1) 標準処理期間の設定については、「土地収用法における標準処理期間の運用状況の調査の結果について(別添3)」を参考として、事務の迅速な処理が図られるよう、適切に設定すること。

なお、土地収用法第一六条に基づく認定については、同法第一七条第三項で三か月が法定されているので留意されたい。

2) 標準処理期間は、あくまでも標準的な処理期間であり、申請に対する処分が当該期間を徒過したことをもって、直ちに不作為の違法となるものではないので、この旨を十分了知の上、いたずらに長期の標準処理期間を設定することなく、適切に設定すること。

2 不利益処分について

(1) 不利益処分について

不利益処分については、事業認定等に関する事務のうち、以下のものが該当することとなるので、処分の基準の設定を行うよう努めるとともに、処分を行うに当たっては適切な手続きを確保する等法第三章の規定にのっとり、適切な運用を図ること。
土地収用法第三〇条第三項に基づく告示
土地収用法第一二八条第三項に基づく納付命令
土地収用法第一二八条第四項に基づく納付命令の督促
土地収用法第一三八条第一項により準用される同法第三〇条第三項並びに第一二八条第三項及び第四項の規定による告示、納付命令及び納付命令の督促

(2) 処分の基準について

法第一二条は不利益処分の基準の設定等について定めているが、これについては、(1)に掲げるそれぞれの処分ごとに「不利益処分に関する処分基準に関する指針(別添4)」を参考として、できるかぎり具体的なものとすること。

(3) 不利益処分をしようとする場合の手続きについて

法第一三条第一項は、不利益処分をしようとする場合の手続きについて定めているが、同条に基づく所管事務の取扱いについては、以下の点に留意すること。
1) 土地収用法第三〇条第三項の規定により告示を行おうとする場合の起業者の事情の聴取の規定は、行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律により削除され、今後は法第一三条の規定が一元的に運用されるものであること。

このため、今後は、この処分をしようとする場合には、聴聞の手続きを採ることが法定されたものであること。

2) 同条第二項第四号の規定により、土地収用法第一二八条第三項に基づく納付命令、同法第一二八条第四項に基づく納付命令の督促並びに同法第一三八条第一項により準用される第一二八条第三項及び第四項の規定による納付命令及び納付命令の督促については、適用除外とされていること。

3 行政指導について

事業認定に関する事務のうち、地方公共団体の機関が行う行政指導については、法第四章の規定の適用はないこととされているが、法第四章の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るための必要な措置を講ずること。

4 届出について

事業認定に関する事務のうち、届出については、法第五章の規定にのっとり、適切な運用を図ること。


(別添1)略



(別添2)

申請に対する処分に関する審査基準についての指針

1 土地収用法第一一条第一項に基づく許可(事業の準備のための立入の許可)

(1) 立入の許可申請があった事業が土地収用法第三条各号の一に掲げる事業に該当すること。(形式的に土地収用法第三条各号に該当していれば足り、具体的に土地収用法第二〇条の各号の要件を満たしている必要はない。)
(2) 許可申請者が土地収用法第八条第一項に定義される起業者であること。(1)事業の施行に先立って行政庁の許可等の手続が必要な場合に、この許可等を受けていなくてもよいが、学校法人や社会福祉法人等については、設立の許可手続がなされていること、2)代理人の申請による場合は代理権限証書が添付されていること。)
(3) 土地収用法第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査をする必要があること。(事業のために土地の収用又は使用を必要とすること。したがって、単に官民境界設定の調査のための立入りは本条の適用はない。)
(4) 申請書、添付書類及び図面等により、立ち入ろうとする土地の区域及び期間が明確にされており、その区域及び期間が当該事業の準備のために必要な範囲内であること。

2 土地収用法第一四条第一項に基づく許可(障害物の伐除、土地の試掘等のための許可)

(1) 土地収用法第一一条及び第一二条の手続がなされていること。(当該土地の所有者は占有者が立入りについて同意している場合は、この限りではないが、申請された事業が土地収用法第一一条の許可要件に適合していること。)
(2) 許可申請者が土地収用法第八条第一項に定義される起業者又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者であること。(1)事業の施行に先立って行政庁の許可等の手続が必要な場合に、この許可等を受けていなくてもよいが、学校法人や社会福祉法人等については、設立の許可手続がなされていること、2)代理人の申請による場合は代理権限証書が添付されていること、3)受任者等の申請による場合は、委任状等が添付されていること。)
(3) 第三号各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査をするに当たって、障害物の伐除、土地の試掘等を行うやむを得ない必要があること。(事業の準備には、土地収用法第三五条に基づく調査も含まれる。)
(4) 当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者が正当な理由なく拒否している場合、所有者が所在不明の場合等同意を得ることができない合理的な理由があること。
(5) 土地の所有者及び占有者に、あらかじめ、意見を述べる機会が与えられること。
(6) 申請書、添付書類及び図面等により、対象となる障害物及び土地の数量、範囲等が特定されており、障害物の伐除、土地の試掘等の方法、規模、区域、期間が技術的、社会的にも妥当であること等必要な範囲内であること。(測量又は調査の必要性、土地所有者及び占有者が受けるべき不利益の程度等から判断すること。)

3 土地収用法第一四条第三項に基づく許可(山林、原野等の障害物の伐除の許可)

(1) 土地収用法第一一条及び第一二条の手続がなされていること。(当該土地の所有者又は占有者が立入りについて同意している場合は、この限りではないが、申請された事業が土地収用法第一一条の許可要件に適合していること。)
(2) 許可申請者が土地収用法第八条第一項に定義される起業者又はその命を受けた者若しくは委任した者であること。(1)事業の施行に先立って行政庁の許可等の手続が必要な場合に、この許可等を受けていなくてもよいが、学校法人や社会福祉法人等については、設立の許可手続がなされていること、2)代理人の申請による場合は代理権限証書が添付されていること、3)受任者等の申請による場合は、委任状等が添付されていること。)
(3) 第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査をするに当たって、障害物の伐除、土地の試掘等を行うやむを得ない必要があること。(事業の準備には、土地収用法第三五条に基づく調査も含まれる。)
(4) 障害物が山林、原野その他これらに類する土地にあること。
(5) 伐除を行うことにより障害物の現状を著しく損傷しないこと。
(6) 第三条各号の一に掲げる事業の準備のための測量又は調査を行うに当たって、当該障害物の伐除を緊急に施行する必要があり、しかも、必要な範囲内で行うものであること。(土地の立入りに伴う障害物の伐除に限定されていること。)
(7) あらかじめ所有者及び占有者の同意を得ることが困難であること。(所有者及び占有者が不明、所在不明、あるいは多数に及ぶ等のため、あらかじめ意見を述べる機会を付与したり、障害物の伐除の三日前までに通知するなどの事前手続きをとる時間的な余裕がない場合が想定される。)

4 土地収用法第一六条に基づく認定(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(事業の認定)

(1) 事業が第三条各号の一に掲げるものに関するものであること。
(2) 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。
(3) 事業が公益性を有すること。
(4) 収用し、又は使用しようとする土地が必要最小限であること。
(5) 当該土地がその事業の用に供されることによって限られるべき公益の利益が、当該土地がその事業の用に供されることによって失われる利益に優越すること。

5 土地収用法第二八条の三第一項に基づく許可(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(土地の形質の変更の許可)

(1) 起業者の同意があること、又は、起業者が同意をしない場合でも、土地の形質の変更が災害の防止その他正当な理由に基づき必要があると認められること。(必要性については、事業認定を受けた事業の施行時期、当該土地の事業完成後の利用方法、当該土地の形質変更の内容、規模、期間及び当該土地の従来の利用方法等を総合的に勘案して判断すること。)

6 土地収用法第八九条第一項に基づく承認(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(土地の形質の変更、工作物の新築等に係る承認)

土地の形質の変更、工作物の新築等がもっぱら補償の増加のみを目的とすると認められないこと。(当該行為の程度、権利者が当該行為を必要とする程度、承認した場合に生ずる補償の増加額、当該土地が事業のために必要となる時期、事業完成後の利用方法及び起業者の意向等を総合的に勘案して判断すること。)

7 土地収用法第一二二条第一項に基づく許可(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(非常災害の際の土地の使用に係る許可)

(1) 既に被害が発生している場合、若しくは被害の発生が確実に予見される場合等非常災害に際したものであること。
(2) 事業が非常防止、被害の除去及び拡大防止といった公共の安全の保持を目的とするものであること。(公共の安全に対する侵害の排除又は阻止をいい、公共の福祉の増進は含まない。)
(3) 第三条各号の一に掲げる事業を特に緊急に施行する必要があること。(形式的に収用法第三条各号に該当していれば足り、具体的に土地収用法第二〇条の各号の要件を満たしている必要はない。したがって、事業認定を受けている必要はない。)
(4) 使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間(六月をこえないこと。)が必要な範囲内であること。(公益上の必要性と土地所有者の被る被害と比較衡量すること。)
(5) 許可申請者が土地収用法第八条第一項に定義される起業者であること。(1)事業の施行に先立って行政庁の許可等の手続が必要な場合に、この許可等を受けていなくてもよいが、学校法人や社会福祉法人等については、設立の許可手続がなされていること、2)代理人の申請による場合は代理権限証書が添付されていること。)



(別添3)

土地収用法における標準処理期間の運用状況調査の結果について

本年二月に行った運用状況の調査による全国の平均的な標準処理期間は以下のとおりである。
1 土地収用法第一一条第一項に基づく許可 二週間
2 土地収用法第一四条第一項に基づく許可 一か月
3 土地収用法第一四条第三項に基づく許可 二週間
4 土地収用法第二八条の三第一項に基づく許可(第一三八条第一項において準用する場合を含む。) 二週間
5 土地収用法第八九条第一項に基づく許可(第一三八条第一項において準用する場合を含む。) 二週間
6 土地収用法第一二二条第一項に基づく許可(第一三八条第一項において準用する場合を含む。) 標準処理期間の設定になじまない。



(別添4)

不利益処分に関する処分基準についての指針

1 土地収用法第三〇条第三項に基づく告示(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(事業の廃止又は変更についての職権による告示)

起業者が事業の全部又は一部を廃止し、又は変更したために土地を収用し、又は使用する必要がなくなったことが、明らかであること。

2 土地収用法第一二八条第三項に基づく納付命令(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(物件移転費用等の納付命令)

(1) 市町村長が、代行に要した費用を明渡裁決に係る補償金から徴収することができないとき、又は徴収することが適当でないと認められること。(具体的には、既に補償金の払渡し若しくは供託がなされているとき、義務者が受けるべき補償金がないとき、又は補償金が代行費用に充たないときが想定される。)
(2) 代行が完了しており、代行に要した費用が確定していること。

3 土地収用法第一二八条第四項に基づく納付命令の督促(第一三八条第一項において準用する場合を含む。)(物件移転費用等の納付命令の督促)

(1) 納付義務者が土地収用法第一二八条第三項の規定によって通知された期限を経過しても同項の規定により納付すべき金額を完納していないこと。
(2) 督促の期限が妥当なものであること。
(3) 納付義務者において土地収用法第一二八条第三項の規定に基づく命令を知り得なかった等特段の事情が存在しないこと。


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