建設省発計第一八号
昭和三八年四月一三日

建設事務次官から各地方建設局長、北海道開発局長あて

通達


建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準の運用方針


第一 建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準(昭和三八年建設省訓第五号)(以下「基準」という。)第九条(土地の正常な取引価格)は、次により処理する。

1 土地の正常な取引価格は、次の各号の一に該当する土地(以下「画地」という。)を単位として評価するものとする。ただし、当該土地の形状等から一体的に利用することが困難なものは、一体的な利用が可能な範囲をもって画地とするものとする。

(1) 一筆の土地(次号に該当するものを除く。)
(2) 所有者及び使用者をそれぞれ同じくし、かつ、同一の用途又は同一の利用目的に供されている一団の土地

2 評価に係る地域は、土地の用途的観点から、宅地地域、農地地域、林地地域、見込地地域及びその他の地域に区分し、必要に応じて、更に区分するものとする。この場合において、区分された地域を用途的地域という。
3 宅地地域、農地地域、林地地域及び見込地地域内の土地は、次に定めるところにより、原則として、標準地比準評価法により評価するものとする。

(1) 用途的地域を地域的特性に着目して同一状況地域に区分し、同一状況地域ごとに一の標準的な画地(以下「標準地」という。)を選定し、これを評価し、当該標準地の評価格から比準して各画地の評価格を求めるものとする。
(2) 標準地の評価格は、取引事例比較法により求めた価格を基準として、収益還元法又は原価法により求めた価格を参考として求めるものとする。ただし、取引事例比較法により価格を求めることが困難な場合は、収益還元法又は原価法により求めた価格を基準とするものとする。

4 その他の地域内の土地(鉱泉地、池沼、牧場、原野等)は、前項の(2)の規定に準じて、各画地を個別に評価するものとする。ただし、前項の(2)の規定に準ずることが困難なときは、近傍における土地の価格を参考とし、取得する土地の自然的条件、経済的条件等を比較考量して評価するものとする。
5 農地地域、林地地域及び見込地地域内にあって建物等の敷地の用に供されている土地は、第三項の規定にかかわらず、当該土地の近傍の建物等の敷地の用に供されていない農地、林地等の正常な取引価格に当該土地を建物等の敷地とするために通常要する費用を加算して得た額を標準として評価するものとする。
6 標準地及びその他の地域内の土地(以下この項において「標準地等」という。)の評価に当たっては、原則として、別に不動産鑑定業者に当該標準地等の鑑定評価を求めるものとする。この場合において、鑑定評価格と前三項の規定により求めた評価格との間に開差があるときは、必要に応じて、当該鑑定評価を行った不動産鑑定業者に当該鑑定評価格を決定した理由について説明を求めるとともに、前三項の規定により求めた評価格について、資料の選定及び活用、評価方式の適用の方法等を再検討して、標準地等の適正な評価格を求めるよう努めるものとする。

第一の二 基準第九条の二(地価公示区域における土地の正常な取引価格算定の準則)は、次により処理する。

地価公示法(昭和四四年法律第四九号)第六条の規定により公示された土地価格(以下「公示価格」という。)を規準とする方法は、公示価格に係る土地と標準地をそれぞれの土地の位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因について比較し、相互の価格に均衡を保たせることにより行うものとする。

第一の三 基準第一〇条(所有権以外の権利の目的となっている土地に対する補償)は、次により処理する。

控除すべき権利の価格の算定に当たっては、第一の四第一項ただし書の適用はないものとする。

第一の四 基準第一二条(地上権、永小作権及び賃借権の正常な取引価格)は、次により処理する。

1 同条に係る権利の正常な取引価格は、第一第一項に定める画地を単位として算定するものとする。ただし、同一の利用目的に供するため、同一の権利者が隣接する二以上の土地に権利の設定を受けており、かつ、それらの権利の取引が一体的に行われることが通例であると認められるときは、それらの土地からなる一の画地に権利が設定されているものとみなして算定するものとする。
2 同一の利用目的に供するため土地所有者が所有地に隣接する土地に権利の設定を受けている場合の第一の三及び前項の適用については、当該所有地に前項の権利を設定しているものとみなすものとする。

第二 基準第一六条(建物その他の工作物の取得に係る補償)は、次により処理する。

近傍同種の取引の事例がない場合の建物及び工作物の取得補償額は、次により算定した額とする。
1 建物の取得補償額は、次式により算定した額に、経過年数に比し、腐朽、破損の著しいもの、又は修繕等により改装したもの及び維持保存の程度が良好なもの等、それぞれの建物の状況に応じて相当と認める額を増減して得た額によるものとする。

延べ面積一平方メートル当たり推定再建設費×現価率×建物の延べ面積

2 工作物の取得補償額は、建物の場合に準じて算定するものとする。

第三 基準第一七条(立木の取得に係る補償)は、次により処理する。

1 同条第一項第一号又は第三号に掲げる補償額は、次の林木期望価方式により算定した額とする。

(Au+{Dn(1+r)u−n+…}−(B+V){(1+r)u−m−1})/(1+r)u−m

Au 伐期収入 当該地方の慣行伐期時における立木材積に、現在山元立木単価を乗じて算定する。
Dn 間伐収入 間伐収穫材積に現在山元立木単価を乗じて算定する。
B 地価 通常の山林経営を行う場合の標準的な地価を基準とし、近傍類地の取引価格を勘案して算定する。
V 管理費資本 当該山林経営上投下される森林組合費、森林火災保険料、森林見回り費等の年間経費の合計額を年利率で除して得た額。森林見回り可能面積、年間見回り回数、一人一日当たり賃金は、森林管理署、都道府県林務主管課、森林組合等で調査して定める。
u 慣行伐期齢 森林管理署及び都道府県林務主管課、森林組合等で、当該地方の慣行を調査するほか、森林法(昭和二六年法律第二四九号)第五条第二項の規定により都道府県知事が地域森林計画において定める標準伐期齢を参考として定める。
m 当該林齢
r 年利率
n 間伐年度

2 同条第一項第二号又は第四号に掲げる補償額は第一六第三項に、同条第一項第五号に掲げる補償額は第一七第二項に、同条第一項第六号に掲げる補償額は第一八に、それぞれ定めるところに準じて算定した額とする。
3 同条第一項第七号に掲げる補償額は、次式により算定した額とする。

R/r

R 平均年間純収益 評価時前三か年間についての平均年間粗収入から平均年間経営費を控除した額

経営費は地代、労賃(自家労働の評価額を含む。)、肥料代、農具及び役畜費、公租公課並びに雑費とする。なお、地代は、通常の竹林経営を行う場合の標準的な地価を基準とし、近傍類地の取引価格を勘案して算定する。

r 年利率

第四 基準第一九条(土石砂れきの取得に係る補償)は、次により処理する。

土石砂れきの価格は、当該土石砂れきを採取する土地の価格を上回らないものとする。

第五 基準第二〇条(漁業権等の消滅に係る補償)は、次により処理する。

同条に規定する補償額は、次式により算定した額を基準とする。
R/r

R 平年の純収益 評価時前三か年ないし五か年間の平均(豊凶の著しい年を除く。)魚種別漁獲数量に魚価を乗じて得た平均年間総漁獲額から平均年間経営費を控除した額

平均魚種別漁獲数量は、当該地域における実情を調査し、統計等の資料を参酌して定める。
魚価は、時価(当該年度が豊凶の著しい年であると認められるときは、平均魚種別漁獲数量に照応する平均価格)を基準として地域別、時期別及び漁法別に格差を勘案した魚種別の価格とする。
経営費は、漁船、漁網、漁具、建物、工作物等の減価償却費及び修理費、燃料費、雇用労働費、自家労働費、公租公課及びその他の経費(自己資本利子を除く。)とする。
自家労働費は、漁業別、漁法別及び漁業規模別(陸上、水上の別)に年間労働時間を算定し、これらの年間総労働時間に一人一時間当たりの自家労賃を乗じて得た額とし、自家労賃は、当該地域の漁業雇用労賃、農業労賃等を勘案して定める。
ただし、前記の方法により難いときは、その地域における漁家を抽出し経営調査を行って得た純収益率等を用いて計算するものとする。

r 年利率

第六 基準第二一条(鉱業権、租鉱権又は採石権の消滅に係る補償)は、次により処理する。

1 鉱業権出願中のものは、補償の対象としないものとする。
2 鉱業権に係る同条第二項の補償額は、次により算定した額とする。

(1) 操業している鉱山の鉱業権の場合

a×(1/(S+(r/((1+r)n−1))))−E
a 鉱山が毎年実現しうる純収益 年間可採鉱量に鉱石の平均単価を乗じて得た額から採掘に要する費用(起業費の減価償却費を含まない。)を控除して得た額。この場合において、年間可採鉱量は毎年一定とし、年間採掘実績、操業計画及び鉱山監督官庁、学識経験者等の意見等を参酌して決定するものとする。
s 報酬利率 九パーセントから一五パーセントの間において適正に定めた率
r 蓄積利率
n 可採年数 確定鉱量、推定鉱量及び予想鉱量の合計額(鉱量計算については日本工業規格(工業標準化法(昭和二四年法律第一八五号)第一七条第一項に規定する工業標準をいう。)による。)を基準として算定した今後の可採鉱量を年間可採鉱量で除して得た年数
E 今後投下されるべき起業費の現在価額

(2) 未着手のまま据置期間のある場合の鉱山の鉱業権の場合

(1/(1+r)m)×a×(1/(s+(r/((1+r)n−1))))−E
m 据置期間
a、s、r、n及びE (1)に定めるとおりとする。

(3) 開坑後予定収益を生ずるまでに期間のある場合における鉱業権の場合

a×(((1+r)n−1)/(r+s{(1+r)n+m−1}))−E
m 補償時から予定収益を生ずるまでの期間
a、s、r、n及びE (1)に定めるとおりとする。

(4) 探鉱中の鉱山又は未着手の鉱山であって、鉱量が不明であり、かつ、将来の収益が不確定のものにおける鉱業権の場合

Cn(1+r)n+Cn−1(1+r)n−1+‥‥+C1(1+r)+Co
Cn n年前に投下した費用 鉱業権設定申請のための調査測量費用、申請書の印刷代、印紙税、鉱業権設定登録税、鉱区税、探鉱中のものにあっては探鉱に要した費用等で有効かつ適正な費用をいう。
r 蓄積利率

(5) (1)から(3)までにおいて起業費とは鉱業用固定資産(鉱業権、主要坑道、鉱業用地、建物、構築物(軌道、索道、沈澱池、道路、水路、貯蔵場等土地に定着する設備をいう。)、機械及び装置、船舶、車両運搬具、工具、器具、備品等並びに水利権、特許権等の諸権利をいう。)の取得又は建設に要した費用並びに調査開発及び試験研究に要した費用(操業開始後の経費と認められるものを除く。)とし、起業費の現在価額は、次式により算定した額とするものとする。

E=(E1/(1+r))+(E2/(1+r)2)+……+(En/(1+r)n)
E1、E2‥‥En 今後の投下されるべき各年の起業費
r 蓄積利率

(6) 租鉱権が設定されている鉱業権に対する補償額は、当該租鉱権がないものとして算定した当該鉱業権の補償額から当該租鉱権に対する補償額を控除した額とする。

3 租鉱権に係る同条第二項の補償額は、前項に準じて適正に算定した額とする。ただし、設定行為に基づき租鉱権者が支払う租鉱料相当額を鉱山が毎年実現しうる純収益(a)から控除するものとする。
4 採石権に係る同条第二項の補償額は、採石権の設定契約の内容に基づき、第二項に準じて適正に算定した額とする。

第七 基準第二三条(水を利用する権利等の消滅に係る補償)は、次により処理する。

1 水を利用する権利(以下「水利権」という。)とは、行政官庁の特許又は慣行によって生じ、公水を継続的、排他的に利用する権利で潅漑、飲料、鉱工業、発電等の目的のために使用する権利をいう。
2 消滅させる水利権に関する補償額は、次により算定した額とする。

(1) 潅漑用水利権については、当該権利が行使されている土地の平均年間純収益額に、水利権の消滅による減少率を乗じて得た額を年利率で除して得た額その他それぞれ実情に応じて適正に算定した額
(2) 飲料用水利権については、その障害を除去し、又は予防する施設の設置が可能かつ適当である場合は、その施設を設置し若しくは改造して提供し、又はその施設の設置若しくは改造に要する費用相当額
(3) 鉱工業用水利権については、当該水利権をその用に供している事業の平均年間純収益額に水利権の消滅による減少率を乗じて得た額を年利率で除して得た額その他それぞれの実情に応じて適正に算定した額
(4) 特許を受けた後、その全部又は一部について未開発のまま放置されている水利権であって、将来の収益が不確定のものについては、その水利権に関して投下された適正な費用を現価に換算して得た額。この場合において、投下費用については、他の同種事業における資本投下の状況と比較する等適宜その適否を検討し、適正でないことが明らかに認められる費用は、補償の対象から除外する。

第八 基準第二四条(土地の使用に係る補償)は、次により処理する。

同条第一項の正常な地代又は借賃を算定するに当たっては、使用する土地の正常な取引価格に一定の率を乗じて得た額を参考とするものとする。

第九 基準第二六条(建物等の使用に係る補償)は、次により処理する。

使用する建物等に関する補償額の算定に当たっては、近傍又は類似の地域における使用対象建物等に照応する建物等の新規賃貸事例において標準的と認められる月額賃貸料を参考とするものとする。

第一〇 基準第二七条(権利の制限に係る補償)は、次により処理する。

漁業権等の制限に係る補償額は、次により算定した額とする。
(1) 当該事業の施行中及び施行後原状に回復するまでの期間当該漁業権等の行使ができなくなる場合又は行使に支障を生じる場合は、基準第二〇条の規定により算定した額に次の割合を乗じて得た額

Q=a×(((1+r)n−1)/(1+r)n)
Q 基準第二〇条の規定により算定した額に乗ずる割合
a 被害率 漁業権の行使が制限されることにより生ずる純収益の平均減少率
r 年利率
n 制限期間年数

(2) 河川等に工作物を設置することにより当該漁業権等の行使に支障を生じ漁獲が減少する場合は、基準第二〇条の規定により算定した補償額に被害率を乗じて得た額
(3) (1)又は(2)の場合において、従来の漁獲を維持しうる程度に魚族を復元(魚種の転換を含む。)することが可能であり、かつ、適当であってその復元に要する費用が、基準第二〇条の規定により算定した補償額に被害率を乗じて得た額と基準第四章第五節により算定した補償額との合計額の範囲内であるときは、これに要する費用相当額

第一一 土地等を取得する場合において、基準第二八条(建物等の移転料)は、次により処理する。

1 建物の移転料については、次により算定するものとする。

(1) 建物を移転させるときは、通常妥当と認められる移転先を残地又は残地以外の土地のいずれとするかについて認定を行った上で、当該認定に係る移転先に建物を移転するのに通常妥当と認められる移転工法の認定を行い、当該移転先に当該移転工法により移転するのに要する費用を補償するものとする。この場合において「移転」とは、従前の価値及び機能を失わないよう、土地等の取得に係る土地に存する建物を当該土地の外に運び去るすべての方法をいうものとする。
(2) 土地等の取得に係る土地に存する建物の一部が当該建物に比較してわずかであるとともに重要な部分でないため除却しても従前の機能にほとんど影響を与えないと認められる場合又は建物を再現する必要がないと認められる場合には、(1)の規定にかかわらず、通常妥当と認められる移転先の認定を要しないものとし、通常妥当な移転方法として除却工法を認定するものとする。
(3) 建物の移転に伴い、当該建物と一体の利用に供されていた他の建物等が残地に存することとなり、当該他の建物等を移転しなければ当該建物を従来利用していた目的に供することが著しく困難となる場合においては、建物所有者の請求により、当該他の建物等を移転するのに要する費用を補償するものとする。
(4) 通常妥当と認められる移転先の認定は、次の各号に定めるところによるものとする。

一 従前の建物と同種同等の建物を、植栽、自動車の保管場所その他の利用環境の面を考慮した上で残地に再現することができると認められるときは、残地を通常妥当と認められる移転先と認定するものとする。
二 従前の建物の機能を確保するために必要と認められる最低限の建物階数の増加又は建物の形状の変更並びにこれらに伴う床面積の増加、構造の変更又は設備の設置を行うことにより、従前の建物と同等の規模であり、かつ、植栽、自動車の保管場所その他の利用環境の面において従前の建物に照応する建物(第一一及び第一一の二において「従前の建物に照応する建物」という。)を残地に再現し、従前の生活又は営業を継続することができると認められるときは、残地を通常妥当と認められる移転先と認定できるものとする。
三 前二号に定める場合において、従前の建物が複数の用途に供されているときは、従前の建物と同種同等の建物又は従前の建物に照応する建物を残地に再現することができるか否かの判断を当該用途の一ごとに行うことができるものとする。
四 前三号の規定に基づき残地を移転先と認定した場合に必要となる補償額(建物の移転に伴い通常生ずる損失に対する補償額を含む。)に当該残地(借地権等の場合は残権利)に関する損失及び工事費に係る補償額(残地に関する損失及び工事費に係る補償額が残地の価額を超える場合は当該残地の価額とする。)を加えた額が、残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築することにより必要となる補償額(建物の移転に伴い通常生ずる損失に対する補償額を含む。)に当該残地(借地権等の場合は残権利)の価額を加えた額を超えることとなる場合は、前三号の規定にかかわらず、残地を移転先と認定しないものとする。

(5) (1)に掲げる通常妥当と認められる移転工法は、次のとおりとするものとする。

一 再築工法

残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築することが合理的と認められる場合に採用する工法(以下「構外再築工法」という。)及び残地に従前の建物と同種同等の建物又は従前の建物に照応する建物を建築することが合理的と認められる場合に採用する工法(以下「構内再築工法」という。)

二 曳家工法

曳家後の敷地と建物等の関係、建物の構造及び用途、建物の部材の稀少性の程度等を勘案して、建物を曳家することが合理的と認められる場合に採用する工法

三 改造工法

建物の一部(土地等の取得に係る土地に存する部分と構造上又は機能上切り離すことができない残地に存する部分を含む。)を切り取り、残地内で残存部分を一部改築し、又は増築して従前の機能を維持することが合理的と認められる場合に採用する工法

四 復元工法

文化財保護法(昭和二五年法律第二一四号)等により指定されている場合その他原形で復元することが合理的と認められる場合に採用する工法

(6) 建物の移転料は、移転工法ごとに次の各号に掲げる式により算定した額とする。この場合において、取りこわし工事費、切取工事費及び解体工事費には整地費及び廃材処分費を、曳家工事費には整地費を、補修工事費、切取面補修工事費、残存部の一部改増築工事費及び復元工事費には補足材費をそれぞれ含むものとする。

一 再築工法

建物の現在価額+運用益損失額+取りこわし工事費−発生材価額

ただし、(4)第二号に基づき残地を通常妥当と認められる移転先と認定したときは、階数の増加又は建物の形状の変化に伴う構造材、設備又は建物面積の変化等を考慮に入れて算定する従前の建物に照応する建物の推定建築費から従前の建物の推定再建築費を控除した額を上式に加えるものとする。
運用益損失額 従前の建物の推定再建築費と従前の建物の現在価額との差額に係る従前の建物の耐用年数満了時までの運用益に相当する額。建物の現在価額と運用益損失額との合計額は、従前の建物の推定再建築費に次式による再築補償率を乗じて算定するものとする。
再築補償率=(1−0.8(n/N)+α)+(0.8(n/N)−α){1−(1/(1+r)N−n+Nα)}
n 従前の建物の経過年数
N 従前の建物の標準耐用年数
α 価値補正率 従前の建物が木造建物である場合における柱の寸法及び屋根、内壁、外壁、柱、土台等の補修の状況を考慮した従前の建物の価値の補正率
r 年利率

二 曳家工法

曳家工事費+補修工事費

三 改造工法

切取工事費+切取面補修工事費+残存部の一部改増築工事費−発生材価額

四 復元工法

解体工事費+運搬費+復元工事費−発生材価額

五 除却工法

イ 建物の一部を切り取る場合

切取部分の現在価額+切取工事費+切取面補修工事費−発生材価額

ロ 建物を再現する必要がないと認められる場合

建物の現在価額+取りこわし工事費−発生材価額

(7) 借家人が附加した造作又は増築部分であって建物の本体及び構成部分として建物に附合するものに係る移転料は、建物所有者に補償するものとする。

2 工作物の移転料については、次によるほか建物の移転料の算定方法に準じて算定するものとする。

(1) 移転しても従前の機能を確保することが可能な工作物については、原則として、建物の復元工法に準じて算定するものとする。
(2) 建物に付随する工作物(大規模な工作物を除く。)については、原則として、建物の移転料として算定するものとする。
(3) 総合的美的景観が形成されている特殊な庭園については、庭園の構成物件の移転料のほか、現在の美的景観を形成するために要する造園費を加算できるものとする。

3 同条第二項ただし書の補償は、次によるものとする。

(1) 法令には、施設の改善について制限を課している条例及び要綱等の行政指導(成文化され、かつ、公表されているものに限る。)を含むものとする。
(2) 法令の規定に基づき改善を必要とする時期とは、法令の規定に基づき改善の時期が明らかである場合を除き、原則として、既設の施設の耐用年数満了時とする。
(3) 補償額は、次式により算定するものとする。

S×{1−(1/(1+r)n)}
S 既設の施設を法令の規定に適合させるために必要となる最低限の改善費用。既設の施設の構造変更を伴う場合にあっては既設の施設と同等の機能を有する施設の推定建築費から既設の施設の推定再建築費を控除した額を、設備の新増設を伴う場合にあっては設備の推定設置費から既設の設備の推定設置費を控除した額を、施設の面積が増加することとなる場合にあっては当該増加する面積に既設の施設の推定再建築費の単価を乗じて得た額を、それぞれ標準とするものとする。
r 年利率
n 施設の移転の時から法令の規定に基づき改善を必要とする時期までの期間(年)

4 移転料を算定する場合における職種別賃金は、当該地域の慣行によるものとし、具体的な算定に当たっては、公共事業労務調査等の統計資料及び実態調査等により定めることとする。

第一一の二 土地等を使用する場合において、基準第二八条(建物等の移転料)は、次により処理する。

1 建物の移転料は、残地を移転先と認定するとき、使用終了後に使用対象地に復帰することが困難なとき又は除却工法を移転工法として認定するときを除き、当該建物を使用対象地から除去し、使用終了後に当該使用対象地に従前の建物と同種同等の建物又は従前の建物に照応する建物を再現するのに必要な費用とし、第一一第一項(5)に規定する再築工法又は復元工法のうちから妥当な工法を認定し、使用開始時において補償するものとする。この場合において使用後の土地の形質等に著しい変化が見込まれるときは、当該変化を考慮するものとする。
2 工作物の移転料については、前項に準ずるものとする。
3 前二項に定めるもののほか、土地等を使用する場合における同条の処理については、第一一の例による。

第一一の三 基準第三一条(動産移転料)は、次により処理する。

1 動産移転料は、梱包、小運搬、積込み及び積卸しに要する労力費、貨物自動車運賃、荷造材料費並びにその他の雑費の合計額とする。この場合において、貨物自動車運賃は、屋内動産(通常引越荷物として、取り扱うことが適当な動産をいう。)にあっては時間制運賃により、一般動産(屋内動産以外の動産をいう。)にあっては距離制運賃により算定するものとする。
2 土地等を使用する場合における使用終了後に従前地に移転する動産に対する補償の額は、前項の規定により算定した額と同額とし、使用開始時において補償するものとする。

第一一の四 基準第三二条(仮住居等の使用に要する費用)は、次により処理する。

1 同条第一項の補償額は、仮住居の権利金等の一時金相当額と家賃との合計額とする。
2 仮住居の権利金等の一時金相当額は、当該地域における借家等の際に要する権利金等の一時金の額を考慮して、第一二の例により定めるものとする。ただし、当該地域において権利金等の一時金を支払う慣行のない場合は、補償しないものとする。
3 家賃は、次式により算定した額とする。

(1) 土地を取得する場合

一 自用地又は借地で自家自用のとき。

標準家賃(月額)×仮住居補償期間(月)

二 借家で基準第三四条の借家人に対する補償の対象とならないとき。

(標準家賃(月額)−現在家賃(月額))×仮住居補償期間(月)

(2) 土地を使用する場合

一 自用地で自家自用のとき。

標準家賃(月額)×仮住居補償期間(月)−使用対象地の地代補償額(月額)×使用期間(月)

二 借地で自家自用のとき。

標準家賃(月額)×仮住居補償期間(月)−使用対象地の借地権者(建物所有者)に対する地代補償額(月額)×使用期間(月)

三 借家で基準第三四条の借家人に対する補償の対象とならないとき。

(標準家賃(月額)−現在家賃(月額))×仮住居補償期間(月)

(3) (1)及び(2)における標準家賃は、当該地域における同種の賃貸事例の家賃から比準して算定した額を基準とし、仮住居の使用の実情に応じて適正に補正した額とする。この場合において、事例の敷地面積が小さい等の事情により、標準家賃に含まれる地代相当額(月額)が、使用対象地の地代補償額(月額)より少ないと認められるときは、(2)第一号及び第二号に掲げる式においては、使用対象地の地代補償額(月額)に代えて標準家賃に含まれる地代相当額(月額)を控除するものとする。
(4) 仮住居補償期間

イ (1)における仮住居補償期間は、各移転工法別の建物等の工事期間に前後の準備期間を加えた期間とするものとし、工事期間は通常の木造建物の場合にあっては曳家工法において二か月、残地における再築工法において四か月を標準として、耐火建築又は構造複雑な建物、規模の大きい建物等にあってはその実情に応じてそれぞれ定めるものとする。
ロ (2)における仮住居補償期間は、イに定める期間に土地の使用期間を加えるものとする。

4 土地の使用に係る場合において、仮住居期間が長期にわたるときの仮住居等の使用に要する費用の補償は、当該仮住居に係る契約の更新に伴い必要となると認められる一時金相当額を補償するものとする。
5 当該地域において、仮住居を賃借りすることが著しく困難であると認められる場合においては、前四項の規定にかかわらず、既設の建物を改造し、仮住居の用に供する仮設建物を新設し、又は仮設組立建物等の資材をリースするのに要する費用を補償することができるものとし、既設の建物を改造する場合の補償額は当該建物の改造に要する費用相当額(電気、水道等の附帯施設に要する費用相当額を含む。)とし、仮住居を新設する場合又は仮設組立建物等の資材をリースする場合の補償額は次式により算定する。ただし、この場合における仮住居の規模、構造及び設備等は従前の生活機能を維持するために必要なものとする。

(1) 土地を取得する場合

一 自用地又は借地で自家自用のとき。

仮設建物の建設費又は資材のリース料(電気、水道等の附帯施設に要する費用及び敷地の借入れに要する費用を含む。以下「仮設建物の建設費等」という。)+撤去費−発生材価格

二 借家で基準第三四条による借家人に対する補償の対象とならないとき。

仮設建物の建設費等+撤去費−(発生材価格+現在家賃(月額)×仮住居補償期間(月))

(2) 土地を使用する場合

一 自用地で自家自用のとき。

仮設建物の建設費等+撤去費−(発生材価格+使用対象地の地代補償額(月額)×使用期間(月))

二 借地で自家自用のとき。

仮設建物の建設費等+撤去費−(発生材価格+使用対象地の借地権者(建物所有者)に対する地代補償額(月額)×使用期間(月))

三 借家で基準第三四条による借家人に対する補償の対象とならないとき。

仮設建物の建設費等+撤去費−(発生材価格+現在家賃(月額)×仮住居補償期間(月))

(3) 仮住居の敷地の借入れに要する費用が使用対象地の地代補償額よりも少ないと認められるときは、(2)第一号及び第二号の式においては、使用対象地の地代補償額に代えて仮住居の敷地の借入れに要する費用を控除するものとする。

6 同条第二項の補償については、次によるものとする。

(1) 商品、機械その他の動産を倉庫業者等に委託して一時保管する必要があると認められる場合においては、その保管料及び荷役料を補償するものとする。
(2) (1)の場合において、保管を委託すべき倉庫業者等がないときは、前項に準じて算定して得た額を補償することができるものとする。

第一一の五 基準第三三条(家賃減収補償)は、次により処理する。

同条の補償額は、次式により算定するものとする。
1 土地を取得する場合

従前の建物の家賃(月額)×(1−α)×補償期間(月)

α 管理費及び修繕費相当額を考慮し、〇・一の範囲内で適正に定めた率

2 土地を使用する場合

(1) 土地の使用期間中に移転建物を建築する場合

従前の建物の家賃(月額)×(1−α)×補償期間(月)

α 第一項に定める率

(2) 土地の使用期間中に移転建物を建築せず、使用期間満了後従前地に再建する場合

イ 自用地上の建物であるとき。

従前の建物の家賃(月額)×(1−α)×補償期間(月)+得られることが見込まれる更新料相当額−使用対象地の地代補償額(月額)×使用期間(月)

α 第一項に定める率

ただし、建物の自用部分と賃貸部分とが併存する場合において控除すべき使用対象地の地代補償額は、賃貸部分に係る部分のみとするものとする。

ロ 借地上の建物であるとき。

従前の建物の家賃(月額)×(1−α)×補償期間(月)+得られることが見込まれる更新料相当額−使用対象地の借地権者(建物所有者)に対する地代補償額(月額)×使用期間(月)

α 第一項に定める率

ただし、建物の自用部分と賃貸部分とが併存する場合において控除すべき使用対象地の地代補償額は、賃貸部分に係る部分のみとするものとする。

3 補償期間

第一項及び前項(1)の補償期間は第一一の四第三項(4)イの規定に定める期間とし、前項(2)の補償期間は第一一の四第三項(4)ロに定める期間とするものとする。この場合において、基準第三四条の借家人に対する補償を行う場合(建物の移転が構外再築工法によるときを含む。)は、これらの期間に借家人の入退去の準備に要する期間(原則として各一か月)を加えることができるものとする。
なお、やむを得ない事由により、建物の移転に関する補償契約の締結以前に基準第三二条又は第三四条の規定による補償を得て借家人が移転することにより、建物の全部又は一部を賃貸している者が家賃を得ることができない場合は、相当と認められる期間を加えることができるものとする。

第一二 基準第三四条(借家人に対する補償)は、次により処理する。

1 同条第一項の賃借りを継続することが困難となると認められるときとは、次に掲げるときとするものとする。

(1) 建物の移転先を残地以外の土地と認定したとき又は建物の移転工法として構内再築工法を認定したとき。ただし、移転後の建物で賃貸借を継続することが確実であると認められるときは、この限りでない。
(2) 建物の移転先を残地と認定し、かつ、建物の移転工法として構内再築工法以外の工法を認定した場合において、新たな一時金の支出等従前の契約条件の著しい変更が確実であると認められるとき。

2 同条第一項の補償額は、次の(1)及び(2)に掲げる借家の際に要する一時金の区分に応じて、(1)及び(2)に掲げる式により算定した額を標準として定めるものとする。ただし、当該地域において一時金を支払う慣行のない場合は、補償しないものとする。

(1) 賃貸借契約において借家人に返還されないことと約定されている一時金

標準家賃(月額)×補償月数
標準家賃 従前の賃借建物に照応する建物(従前の建物が狭小なため当該地域に照応する建物がないと認められる場合は当該地域に存在する借家事例を勘案の上、二〇パーセントの範囲内で借家面積を補正した建物とすることができるものとする。この場合において、借家人が高齢である等の事情があるため生活圏が限定され当該生活圏外への転居が著しく困難と認められるときは、当該生活圏において従前の居住を継続するのに社会通念上相当と認められる規模の建物(借家面積を四〇パーセント増加補正した建物を限度とする。)とすることができるものとする。以下同じ。)の当該地域における新規賃貸事例において標準的と認められる月額賃貸料とする。
補償月数 従前の賃借建物に照応する建物の当該地域における新規賃貸事例において標準的と認められる一時金の額を月額賃貸料で除して得た数とする。

(2) 賃貸借契約において借家人に返還されることと約定されている一時金

(標準家賃(月額)×補償月数−従前貸主からの返還見込額)×(((1+r)n−1)/(1+r)n)
標準家賃及び補償月数 (1)に定めるとおりとする。
従前貸主からの返還見込額 現賃借時に支払われた一時金の額のうち、建物の移転による契約終了に伴い貸主から借家人に契約上返還されることとなる金額をいう。ただし、現賃貸借契約終了時において修繕費等原状回復に要する費用又は借家人の債務の不履行が存在する場合において、それらについて貸主が借家人に返還しないこととなる金額は、返還見込額に含めるものとする。
r 年利率
n 賃借期間 従前の賃借建物において賃借りを継続したであろうと認められる期間であって、一〇年を標準とする。

3 同条第二項の補償額は、次式により算定した額とする。

(標準家賃(月額)−現在家賃(月額))×12×補償年数
標準家賃 従前の賃借建物に照応する建物の当該地域における新規賃貸事例において標準的と認められる月額賃借料とする。
補償年数 標準家賃と現在家賃との差額の多少等に応じ、五年の範囲内で適正に定める年数

第一三 基準第三五条(改葬の補償)は、次により処理する。

墳墓の改葬の補償は、次の各号に掲げる費用の合計額とする。この場合において、墳墓の改葬の方法等については、当該地方の慣行によるものとする。
1 遺体又は遺骨の移転については、土葬、火葬の別により掘り上げ、埋戻し、運搬及び埋葬に要する費用
2 墓碑類の移転については、構造及び形状により通常妥当と認められる工法に基づき、これを移転するために要する費用
3 柵垣等については、これを移転並びに補修するために要する費用

第一四 基準第三六条(祭し料)は、次により処理する。

1 祭し料は、神社、仏閣、教会、墓地等の宗教上の施設の種類、格式及び移転規模等並びに移転に際して行われる諸制式、宗派及び当該地方の慣行等を考慮し、解体式、しゅん功式等に要する費用を適正に算定するものとする。
2 個々の墳墓の改葬に伴う弔祭料は、読経供養費、供花供物費その他通常必要とする費用を適正に算定するものとする。

第一五 基準第三七条(移転雑費)は、次により処理する。

1 従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等とは、次の(1)から(3)までに掲げる土地等とする。

(1) 次の各号に掲げる手続等がとられていることにより、近い将来建物等の敷地の用に供されることが明らかであると認められる土地等の取得又は土地等の使用に係る空地(たな卸資産を除く。以下「建設予定地」という。)の所有者又は借地人が建物等の敷地の用に供するために当該建設予定地に代えて必要とする土地等

一 建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第六条による確認若しくは確認申請又は同法第一五条による届出
二 農地法(昭和二七年法律第二二九号)第五条による許可、許可申請又は届出
三 土地に係る権原の取得条件として付された建築着工期日の制限があること。
四 都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第二九条による開発行為の許可又は許可申請
五 都市緑地保全法(昭和四八年法律第七二号)その他の法令による建築物等の新築の許可又は許可申請

(2) 継続して資材置場、貯木場、自動車の保管場所、製品干場その他の作業場等の用に供されており、かつ、その用に応ずるためのフェンス、アスファルト舗装等の施設が整備されている土地等の取得又は土地等の使用に係る土地の所有者又は借地人が引き続きこれらの用に自ら供するために必要とすると認められる土地等
(3) 事業の施行により経営地の全部又は大部分を取得され、かつ、当該地域における農地の需給状況からみて代替農地の取得が客観的に可能な場合において農地の耕作者が必要とする代替農地

2 移転先又は代替地等の選定に要する費用は、次により算定する。

(1) 建物等の所有者及び借家人又は前項に掲げる所有者、借地人若しくは耕作者が自ら移転先等を選定する場合(以下「自己選定の場合」という。)においては交通費及び日当に選定に要する日数を乗じて得た額とし、宅地建物取引業者に依頼して選定することが適当であると認められる場合(以下「業者選定の場合」という。)においては交通費及び日当に選定に要する日数を乗じて得た額に宅地建物取引業法(昭和二七年法律第一七六号)第四六条第一項の規定による宅地建物取引業者の報酬額に相当する額を加えた額とする。
(2) (1)に掲げる報酬額に相当する額は、次の各号による。

一 建物等の所有者又は前項に掲げる所有者若しくは借地人が依頼する場合においては、事業の用に供するため土地等を取得するときは当該土地等の価額(借地人の場合においては評価された借地権の価額)を基礎として算定した売買の媒介報酬相当額とし、事業の用に供するため土地等を使用するときは当該土地等の貸借に必要な媒介報酬相当額とする。ただし、残地が存する場合は、移転先又は代替地等を取得又は貸借するのに処分する必要があると認められる面積の範囲内の当該残地に係る土地等の価額相当額を加算して売買又は貸借の媒介報酬相当額を算定するものとする。
二 借家人(次号に該当する場合を除く。)が依頼する場合においては、従前の賃借建物に照応する建物の貸借に必要な媒介報酬相当額とする。
三 仮住居等を必要とする者については、仮住居等の面積に相応する借家の貸借に必要な媒介報酬相当額とするものとする。

3 法令上の手続に要する費用は、次の(1)から(5)までに掲げる費用のうち必要とされるものの合計額とする。

(1) 建築物確認申請手数料、建築物確認申請手続業務報酬額及び建築物の設計、工事監理等業務報酬額
(2) 建物の滅失登記、表示変更の登記、表示の登記及び保存登記に要する費用(登録免許税を含む。)。ただし、表示登記はなされているが保存登記がなされていないときは表示登記に係る費用のみとし、表示登記がなされていないときは補償しないものとする。
(3) 事業の用に供するため取得する土地等(移転先又は代替地等を取得するために処分する必要がある残地に係る土地等が存する場合は、当該土地等を含むものとする。)について権原の登記がなされている場合は、当該権原が所有権のときは移転の登記に、その他の権利のときは抹消及び設定の登記に要する費用(登録免許税を含む。)
(4) 建物等の移転又は代替地等の取得若しくは使用に伴い必要となる住民登録、印鑑証明、転出・転入証明等の官公署等に対する法令上の手続に要する費用
(5) (1)から(4)までの手続のために必要な交通費及び日当

4 転居通知費、移転旅費その他の雑費は、次のうち必要とされる費用の合計額とする。

(1) 書状による転居通知のための費用
(2) 当該地域の慣習による引越あいさつのための物品の購入費用
(3) 建物等の所有者及び借家人又は第一項に掲げる所有者、借地人若しくは耕作者が負担することとなる建物の移転又は代替地等の確保(従前と同種の権原に限る。)のための契約に要する費用(印紙税を含む。)
(4) 移転に伴い転校を余儀なくされる場合の新規教材購入費等の費用
(5) 当該地域の実情に応じて必要とされる地鎮祭、上棟式、建築祝のための費用
(6) 世帯人数に応じた移転のための交通費及び日当

5 建物等の所有者及び借家人又は代替地等を必要とする者が就業できないときとは、これらの者が移転先等の選定、移転前後の動産の整理、移住、法令上の手続、移転工事監督その他の事由のため就業できなくなる場合をいう。
6 就業できないことにより通常生ずる損失の補償額は、当該地域における平均的な労働賃金(日額)に就業不能日数を乗じて得た額を基準として算定する。この場合において、就業不能日数は、建物等の種類、構造及び移転工法等に応じて適正に定めた日数とする。
7 土地等の使用に係る場合において、当該使用の終了後に従前地へ移転するときに必要となる雑費の補償額は、第三項、第四項及び前項の規定に基づき算定するものとし、使用開始時において補償するものとする。ただし、前項の算定に当たっては、移転先の選定に要する日数を考慮しないものとする。

第一五の二 基準第三八条(立木の移植補償)は、次により処理する。

1 移植することが相当であると認められるときとは、果樹等の収穫樹にあっては同条により算定した補償額が基準第四一条により算定した補償額を上回らないときとし、庭木等にあっては第一八の二第一項に規定するとき以外のときであって、かつ、基準第三八条により算定した補償額が基準第四一条の二第一項により算定した補償額を上回らないときをいう。ただし、天然記念物等特殊な価値を有する立木にあってはこの限りでない。
2 移植に伴う枯損等により通常生ずる損失額は、当該立木の正常な取引価格に一〇パーセントを乗じて算定した額とする。ただし、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる率によるものとする。

一 移植適期以外の時期に移植する場合(第三号に該当する場合を除く。) 三〇パーセントを超えない範囲内で適正に定めた率
二 移植が困難であると認められる樹種又は老齢樹を移植適期に移植する場合 四〇パーセントを超えない範囲内で適正に定めた率
三 移植が困難であると認められる樹種又は老齢樹を移植適期以外の時期に移植する場合 五〇パーセントを超えない範囲内で適正に定めた率

3 収穫樹の移植に伴う減収による損失額は、次式により算定した移植後の各年における推定減収額の前価合計額とする。

粗収入×減収率×(1−α)/(1+r)n

粗収入 移植しない場合の各年における推定収穫量に補償時における当該地方の平均的な当該果実の生産者価格を乗じて求めた額とする。この場合において、各年における推定収穫量は、あらかじめ、当該地方における収穫樹の樹種別及び樹齢別の収穫量のすう勢を調査して作成したそれぞれの各年における標準推定収穫量を基準として、果樹園等にある収穫樹にあっては当該収穫樹の収穫量、品質等を考慮しその二〇パーセントの範囲内で適正に定めた量を加算し、又は減額して、果樹園等にある収穫樹以外の収穫樹にあってはその五〇パーセントに相当する量を標準として、それぞれ求めるものとする。
n 移植後から回復時までの各年度(原則として四年を限度とする。)
r 年利率
α 生産費のうち減収に伴い不要となる経費分として、〇・一を標準として適正に定めた率によるものとする。

第一六 基準第三九条(用材林の伐採補償)は、次により処理する。

1 同条第一項第一号に掲げる補償額は、次式により算定した額とする。

(林木期望価方式により算定した林木期望価額)−(市場価逆算方式により算定した山元現在立木価額)
(Au+{Dn(1+r)u−n+……}−(B+V){(1+r)u−m−1}/(1+r)u−m)−Mm×f(A/(1+n’r’)−E)

林木期望価額の算定は、第三第一項に準じて行う。

A 素材の最寄市場単価

評価時前三か年間の平均市場単価。平均市場単価は、当該立木から生産される素材の樹種別、材種別、長級別、径級別、品種別の出材割合に基づいて算定する。

r’ 伐採事業の総資本月収益率

伐採事業の危険率等を考慮して月〇・八パーセントから一・二パーセントの範囲内で定める。

n’ 資本回収期間

当該立木を伐採開始後、その素材を搬出及び運搬して最寄市場において販売するまでの事業期間で、概ね四か月ないし八か月とする。

E 素材の単位材積当たりの事業費合計

素材を搬出及び運搬して最寄市場において販売するまでの伐採費、造材費、小運搬費及び運搬費等の経費の合計額

f 利用率

素材材積(利用材積)の立木幹材積に対する割合とし、当該立木の樹種別に伐採、搬出の便非及び当該地方の慣行を考慮して定める。

Mm 当該立木の当該林齢における材積

2 同条第一項第二号イ及びロに掲げる額は、次により算定した額とする。

(1) イの人工林については、次の林木費用価方式により算定した額とする。

(B+V){(1+r)m−1}+C1(1+r)m+C2(1+r)m−1+……+Cm(1+r)−{Da(1+r)m−a+……}

B 地価(第三第一項参照)
V 管理費資本(同右)
m 当該林齢
C1、C2……Cm初年度、2年度……m年度に要した造林費

当該森林の造林に要する新植費、補植費、下刈、蔓切り、雪起、伐除等の手入費等の経費

Da m年度以前a……年度に得べき間伐収入
r 年利率

(2) ロの天然生林については、第三第一項の林木期望価方式に準じて算定した額とする。

3 同条第二項の規定により伐期到達立木について補償する額又は同条同項の規定により伐期末到達立木(その幹及び枝条部が市場価格のないものを除く。)について同条第一項の規定による補償額に加算する額は、それぞれ次の各号に掲げる額とする。

(1) 通常妥当と認められる伐採方法、伐採時期等を選定できないことによって伐採搬出に要する費用が増加すると認められる場合は、次式により算定した額

Mm×f×E×α
Mm、f、E それぞれ第一項に定めるところによる。
α 〇・三を超えない範囲内で適正に定めた率

(2) 通常妥当と認められる伐採方法、伐採量、伐採時期等を選定できないことによって木材価格が低下し、又は木材の正常な取引価格に至らない価格で処分しなければならないと認められる場合は、次式により算定した額

Mm×f×(A/(1+n’r’))×α
Mm、f、n’、r’、A それぞれ第一項に定めるところによる。
α 〇・二を超えない範囲内で適正に定めた率

第一七 基準第四〇条(薪炭林の伐採補償)は、次により処理する。

1 同条第一項第一号及び第二号に掲げる補償額は、第一六に準じて算定した額とする。
2 同条第一項第三号に掲げる補償額は、次により算定した額とする。

(1) 人工植栽による薪炭林の台木については、植栽後第三回伐採までの範囲内における耐用年数に応じて次式により算定するものとする。

(R1/(1+r)u)+(R2/(1+r)2u)+(R3/(1+r)3u)
R1、R2、R3 各伐期時の粗収入の見込額から、各期間の支出費用の後価合計額を控除した額
u 慣行伐期齢

森林管理署及び都道府県林務主管課、森林組合等で当該地方の慣行を調査するほか森林法第五条第二項の規定により都道府県知事が地域森林計画において定める標準伐期齢を参考として定める。

r 年利率

(2) 天然萌芽による薪炭林の台木については、次式により算定するものとする。

R/((1+r)u−1)
R 伐期時における収益見込額

天然萌芽による場合は、人工植栽による場合と異なり、収益性が低いので、この収益見込額の算出に当たっては、森林管理署、都道府県林務主管課、森林組合等で当該地方の実情を調査して定めるものとする。

u及びr (1)と同じ。

第一八 基準第四一条(果樹等の収穫樹の伐採補償)は、次により処理する。

1 同条第二項第一号に掲げる額は、次式により算定した額とする。

A1(1+r)n+A2(1+r)n−1+……+An(1+r)
A1、A2……An 初年度、2年度……n年度に要した育成投下経費(地代、管理費、造園費等)
n 樹齢
r 年利率

2 同条第二項第二号に掲げる額は、次式により算定した額とする。

(R1/(1+r))+(R2/(1+r)2)+……+(Rn/(1+r)n)
R1、R2……Rn 各樹齢に応ずる年間純収益額

平均収穫量に単価を乗じて得た粗収入から経費を差引いた額

n 残存効用年数
r 年利率

3 第一項及び前項の算式中「A1、A2……An」及び「R1、R2……Rn」は、当該地方における樹種別及び樹齢別の標準的な数値を使用することができるものとし、これらの数値を使用する場合においては、果樹園等にある収穫樹にあっては管理の状況、収穫量、品質等を考慮して二〇パーセントの範囲内で適正に定めた額を加算し、又は減額して算定するものとし、果樹園等にある収穫樹以外の収穫樹にあっては五〇パーセントに相当する額を標準として算定するものとする。

第一八の二 基準第四一条の二(庭木等の伐採補償等)は、次により処理する。

1 庭木等を伐採することが相当であると認められるときは、次の各号に掲げるときとする。

一 樹齢、樹種、移植時期等に鑑み、移植することが困難であると認められるとき。
二 移転工法として構内再築工法等を認定した場合、庭の大部分が取得され、又は使用される場合等において、残地が庭木等の移植先とならないと認められるとき。
三 庭木等が大きいこと等により移植先へ運搬することが困難であると認められるとき。

2 庭木等の正常な取引価格とは、伐採する庭木等と同種又は根本周、株周、胸高直径、樹高、枝張等に応じた価格が類似する種類であって同等の立木の植木市場における取引価格(運搬及び植込みのための費用を含む。)を基準とし、伐採する庭木等の用途、樹勢及びせん定その他の管理状況並びに当該庭木等の存する土地の状況等を勘案して算定する価格とする。ただし、これにより難いと認められる場合にあっては、立木価格に精通した者の鑑定価格を参考とする方法その他の適切な方法により算定する価格によることができるものとする。
3 当該庭木等が防風、防雪その他の効用を有し、かつ、当該効用を維持し、又は再現する特別の事情があると認められる場合は、前項の規定にかかわらず代替工作物の設置に要する費用その他の当該効用を維持又は再現するのに通常要すると認められる費用に相当する額を庭木等の正常な取引価格に代えることができるものとする。
4 建物等を移転することに伴い庭木等を移転することが相当であると認められるときとは、次の各号に掲げるときとする。

一 建物等を残地以外の土地に移転することに伴い、当該庭木等の所有者から当該庭木等の移転の請求があり、当該請求が相当であると認められるとき。
二 建物等を残地に移転する場合であって、当該庭木等が建物等の建築予定土地(建築工事に必要な土地を含む。)内に存することとなるとき。

第一八の三 基準第三九条から第四二条までに規定する伐採除却に通常要する費用相当額には、廃材の処分に要する費用を含むものとする。
第一九 基準第四三条(営業廃止の補償)は、次により処理する。

1 通常営業の継続が不能となると認められるときとは、営業所、店舗等が次の各号のいずれかに該当し、かつ、個別的な事情を調査の上、社会通念上当該営業所、店舗等の妥当な移転先がないと認められるときとする。

一 法令等により営業場所が限定され、又は制限される業種に係る営業所等
二 特定地に密着した有名店
三 公有水面の占有を必要とする業種その他の物理的条件により営業場所が限定される業種に係る営業所等
四 騒音、振動、臭気等を伴う業種その他の社会的条件により営業場所が限定される業種に係る営業所等
五 生活共同体を営業基盤とする店舗等であって、当該生活共同体の外に移転することにより顧客の確保が特に困難になると認められるもの

2 営業の権利等で資産とは独立して取引される慣習があるもの(以下「営業権等」という。)の価格は、正常な取引価格によるものとし、正常な取引価格は近傍又は同種の営業権等の取引価格を基準とし、これらの権利及び補償の対象となる権利等について営業の立地条件、収益性、その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定する。

近傍又は同種の営業権等の取引事例がない場合においては、当該営業権等の正常な取引価格は次式により算定した額を標準とする。
R/r
R 年間超過収益額 過去三か年の平均収益額から年間企業者報酬額及び自己資本利子見積額を控除して得た額

この場合において自己資本利子見積額は自己資本額に年利率を乗じて得た額とする。

r 年利率

3 資産、商品、仕掛品等の売却損の補償については、次によるものとする。

(1) 建物、機械、器具、備品等の営業用固定資産の売却損の補償額は、その現在価格から現実に売却し得る価格を控除して得られる価格とし、これらの現在価格の五〇パーセントを基準とする。ただし、これらの資産が解体処分せざるを得ない状況にあるとき、又はスクラップとしての価値しかないときは、その解体処分価格又はスクラップ価格と現在価格との差額を補償するものとする。
(2) 商品、仕掛品、原材料等の営業用流動資産の売却損の補償額は、その費用価格(仕入費及び加工費等)から現実に売却し得る価格を控除して得られる価格とし、費用価格の五〇パーセントを標準とする。

4 解雇予告手当相当額の補償額は、解雇することとなる従業員の平均賃金の三〇日分以上とする。この補償及びその他の営業補償における平均賃金とは、労働基準法(昭和二二年法律第四九号)第一二条に規定する平均賃金を標準とし、同条に規定する平均賃金以外のものでも、通常賃金の一部と考えられる家族手当等は、その内容を調査の上平均賃金に算入できるものとする。
5 同条第一項第三号に規定する転業に通常必要とする期間は、雇主が従来の営業を廃止して新たな営業を開始するために通常必要とする期間であって六か月ないし一年とし、この間の休業手当相当額は、この期間に対応する平均賃金の一〇〇分の八〇を標準として当該平均賃金の一〇〇分の六〇から一〇〇分の一〇〇までの範囲内で適正に定めた額とする。
6 同条第一項第四号に規定する転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては所得相当額)は、営業地の地理的条件、営業の内容、被補償者の個人的事情等を考慮して、従来の営業収益(又は営業所得)の二年(被補償者が高齢であること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合においては三年)分の範囲内で適正に定めた額とする。この場合において法人営業における従前の収益相当額及び個人営業における従前の所得相当額は、売上高から必要経費を控除した額とし、個人営業の場合には必要経費中に自家労働の評価額を含まないものとする。

第二〇 土地等を取得する場合において、基準第四四条(営業休止の補償)は、次により処理する。

1 同条第一項の補償については、次によるものとする。

(1) 通常休業を必要とする期間は、第一一の四第三項(4)イに定める期間とするものとする。
(2) 固定的な経費とは、公租公課、電気、ガス、水道、電話等の基本料金、営業用資産(建物、機械等)の陳腐化による減価償却金及び維持管理費並びに借地地代、借家家賃、機械器具使用料及び借入資本利子(必要最少限のものに限る。)、従業員のための法定福利費、従業員のための福利厚生費等をいう。
(3) 従業員に対する休業手当相当額は、その休業期間に対応する平均賃金の一〇〇分の八〇を標準として当該平均賃金の一〇〇分の六〇から一〇〇分の一〇〇までの範囲内で適正に定めた額とする。ただし、次の各号に掲げる場合には、減額し、又は補償しないものとする。

一 同一経営者に属する営業所が他にあり、そこで従業できるとき。
二 営業所の休止に関係なく、外業(外交、注文取等)に従事できるとき。
三 従業員が一時限りで臨時に雇用されているとき。

(4) 一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額は、次式により算定するものとする。

得意先喪失補償額=従前の一か月の売上高×売上減少率×限界利益率
売上減少率 営業再開後、従前の売上高に回復するまでの間において、従前の一か月間の売上高を一〇〇とした場合の売上高の減少分
限界利益率 個々の営業体の営業実態、営業実績等に基づき次式により算出する。
(固定費+利益)÷売上高

2 同条第二項の補償については、次によるものとする。

(1) 仮営業所を設置して営業を継続することが必要かつ相当であると認められるときとは、次の各号に掲げるときとする。

一 銀行、郵便局等公益性の強い事業で、その営業活動を休止させることが社会通念上妥当でないとき。
二 仮営業所を設置するのに適当な場所が存すると見込まれ、かつ、同条第二項による補償額が同条第一項による補償額相当額以下であるとき。
三 急施を要する工事等のため、仮移転をさせる必要があるとき。

(2) 仮営業所の設置の費用は、営業を継続するために通常必要とする規模及び設備を有する仮営業所を設置するために要する費用で、仮設組立建物等の資材をリースする方法、建物等を借家する方法又は仮設建物等を建築する方法のうちから業種、建物規模、地域の状況等により通常妥当なものとして認定した方法に従い、第一一の四に準じて算定する費用とする。この場合において、営業所の部分と住居の部分を分離できないときは当該住居の部分を設置するために要する費用を含めることができるものとする。
(3) 仮営業所を設置する場合における同条第一項第四号の店舗等の移転に伴い生ずる損失は、仮営業所への移転及び再築建物等への移転のいずれについても算定するものとする。

第二〇の二 土地等を使用する場合において、基準第四四条(営業休止の補償)は、次により処理する。

1 土地等を使用する場合においては、原則として、仮営業所を設けて営業を継続するものとして補償を行うものとする。
2 立地規制等により営業の一部を継続することができないと認められるときは、基準第四五条の規定を準用するものとする。
3 前二項に定めるもののほか、土地等を使用する場合における同条の適用については、第二〇の例による。

第二一 基準第四五条(営業規模縮小の補償)は、次により処理する。

経営効率が低下することにより、通常生ずる損失額は、原則として縮小部分に相当する従前の収益又は所得相当額の二年分以内で適当と認められる額とする。

第二二 基準第四六条(農業廃止の補償)は、次により処理する。

1 農具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額は、次式により算定した額とする。

(1) 農業用建物及び工作物

再建設費/耐用年数×残存年数−売却価格

(2) 大農具

新品価格/耐用年数×残存年数−売却価格

(3) 動物及び植物(立毛補償及び果樹等の収穫樹の伐採補償を受けるものを除く。)

現有価格−売却価格

(4) 農業用流動資産

階層別保有価額×売却損率
階層別保有価額 農家経済調査(農林水産省)による農業生産資材在庫価額と未処分農産物在庫価額の合計額
売却損率 三〇パーセントないし五〇パーセントの範囲内で当該地域の実情に応じて適正に定めた率

2 解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額は、営業廃止の例に準じて算定した額とする。
3 同条第一項第二号の補償については、次によるものとする。

(1) 転業に通常必要とする期間は三年以内とする。
(2) 所得相当額は、次式により算定する。

農業粗収入−農業経営費
農業粗収入 過去三年間の平均収穫量を基準として、補償時の農産物価格より算定する(畜産及び養蚕についてもこれに準じて算定するものとする。)。
農業経営費 種苗費、肥料費、諸材料費、水利費、防除費、畜力費、建物費、農具費、雇用労働費、借入資本利子、地代その他の経費とし、自家労働の評価額及び自己資本利子見積額は経費に算入しない。

第二三 基準第四七条(農業休止の補償)は、次により処理する。

1 同条第一号の固定的な経費等は、次の各号に掲げるものとする。

一 公租公課
二 施設の減価償却費
三 施設の維持管理費
四 その他第二〇第一項(2)に定めるところに準じて必要と認められる経費

2 農業休止期間が長期にわたる場合であって、その補償額が農業廃止の場合の補償額を超えるときは、農業廃止の場合の補償額とする。

第二四 基準第四八条(農業の経営規模縮小の補償)は、次により処理する。

1 農業の経営規模の縮小に伴う資本の過剰遊休化に対する補償額は、次に掲げる額の合計額を標準として算定する。

(1) 経営規模別固定資本額の差額に対応する売却損相当額
(2) 経営規模別流動資本額の差額に対応する売却損相当額

2 農業の経営規模の縮小に伴う労働の過剰遊休化に対する補償額は、次の額を標準として算定する。経営規模別家族労働費の差額(基準第四六条第一項第二号の転業に通常必要とする期間に対応する差額)

第二五 基準第四九条(農業補償の特例)は、次により処理する。

農地の正常な取引価格が収益還元法により算定した農地価格を上回る場合は、次式により算定した額を補償額とする。ただし、算定額が負の値となるときは、零とする。
H−(X−Y)
H 基準第四六条から第四八条までの規定により算定して得た額
X 第一第三項の規定により算定した土地の正常な取引価格に取得面積を乗じて得た額
Y 収益還元法により算定した農地価格に取得面積を乗じて得た額

第二六 基準第五〇条(漁業廃止の補償)は、次により処理する。

1 各人別に補償交渉を行うことが困難な場合には、当該地域において漁業権等を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会を交渉の相手方とすることができる。ただし、当該漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の総会の議決を経た場合又は関係者全員の委任を受けている場合に限るものとする。なお、補償金の支払いに当たっては委任状等必要書類を整理するものとする。
2 同条第一項第一号の補償については、次によるものとする。

(1) 漁具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額は、次により算定した額とする。

一 漁船船体、漁船機関、漁網、養殖施設、電気器具等については、現有価格(新品価格―償却分)から売却価格を差引いた額とする。現有価格及び売却価格については、都道府県水産主管課、精通者等の意見を参酌して決定する。
二 網干場、舟小屋、網倉、投石、集魚施設、船溜り等の損失額は、その施設の償却未済分とし、次のイ及びロにより算定した額とする。

イ 網干場、舟小屋、網倉等の施設

再建設費/耐用年数×残存年数

ロ 投石、集魚施設等

再投下経費/効用が継続する期間×残存効用期間
施設の再建設費、耐用年数、再投下経費、効用が継続する期間等については、都道府県水産主管課、精通者等の意見を参酌して決定する。

(2) 解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額は、営業補償の例に準じて算定した額とする。

3 同条第一項第二号に規定する転業に通常必要とする期間は四年以内(大規模な法人企業については二年以内)とする。

第二七 基準第五一条(漁業休止の補償)は、次により処理する。

1 同条第一号の固定的な経費等は、施設の減価償却費、公租公課、借入資本利子、組合経費、経営維持修繕費、雇用労働費等とする。
2 漁業休止期間が長期にわたる場合であって、その補償額が漁業廃止の場合の補償額を超えるときは、漁業廃止の場合の補償額とする。

第二八 基準第五三条(残地等に関する損失の補償)は、次により処理する。

1 土地の一部を取得することにより、その残地に関して生ずる損失の補償額は、次により算定した額とする。

(1) 残地に関して生ずる損失の補償額は、次式により算定した額とする。

{取得に係る当該画地の評価格−当該残地の評価格×(1−売却損率)}×当該残地の面積

(2) 残地の評価格は、標準地の評価格に補正率を乗じて得た額とし、補正率は、当該残地に係る面積狭小による補正、奥行短小による補正、間口狭小による補正、不整形による補正等を考慮して定めるものとする。
(3) 残地の売却損率は、建物の移転先地又は第一五第一項に掲げる土地を取得するため当該残地を早急に売却する必要があると認められる場合に考慮することとし、当該残地の評価格、早急な売却の必要性の程度等を勘案の上、〇パーセントから三〇パーセントまでの範囲内で適正に定めるものとする。

2 前項の場合において、借地権等の権利の目的となっている土地については、次により処理する。

(1) 借地権等の残権利に対する補償額は、同項の規定により算定して得た額に借地権等の割合を乗じて得た額とする。
(2) 残地の所有権に対する補償額は、同項の規定により算定した額から借地権等の残権利に対する補償額を控除した額とする。
(3) 建物の移転先地又は第一五第一項に掲げる土地の借地権等を取得するため残地の借地権等を売却する必要があると認められる場合であって、当該残地の借地権等の市場性が相当程度減ずるときは、当該借地権等の残権利を有する者に対して、残地の面積に対応する従前の借地権等の価格相当額から(1)により算定した額を控除した額を限度として適正に算定した額を補償することができる。

3 土地の一部を使用(空間又は地下のみを使用する場合を除く。)することによりその残地に関して生ずる損失の補償額は、使用期間中の土地の有効利用度の低下分とし、次式により算定する。この場合において、従前画地及び残地のそれぞれの有効利用度は、土地の評価格又は一平方メートル当たりの年賃貸料相当額としてとらえるものとする。

年土地使用料×(A−B)/A×((1+r)n−1)/(r(1+r)n)×残地面積
A 従前画地の有効利用度
B 残地の有効利用度
r 年利率
n 使用期間

第二八の二 基準第五四条(残地等に関する工事費の補償)は、次により処理する。

1 同条による工事に伴い建物その他の工作物を移転し、又は立木を伐採し、若しくは移植する必要が生じた場合は、これに通常要する費用及びこれに伴い通常生ずる損失を補償するものとする。
2 前項に規定する建物その他の工作物の移転の方法は、通路の新設等の工事に伴うものについては再築工法、曳家工法又は改造工法のうちから、盛土又は切土の工事に伴うものについては再築工法又は揚家工法(建物の基礎を盛土し、若しくは切土した敷地に築造し、又は嵩上げし、これに従前の建物を定着させる方法)のうちから、敷地条件その他の事情を考慮し、通常妥当な工法を採用するものとする。ただし、これらの工法により難い事情が存するときは、適当と認められる他の工法を採用できるものとする。
3 第一項に規定する通常生ずる損失は、次の各号に掲げるものとする。

一 仮住居に要する費用
二 動産移転料
三 家賃の減収額
四 借家人に係る費用
五 移転雑費
六 営業上の損失(仮営業所設置又は営業休止に係る損失)
七 基準第二八条第二項ただし書の損失に準ずる損失
八 その他必要と認められる費用

第二八の三 基準第五四条の二(残地の取得)は、次により処理する。

1 同条第一項第二号に規定する土地所有者の生活再建上支障となると認められるときとは、残地に利用上の制限が生ずることにより、残地を他の者に処分することが困難となると認められるときをいう。
2 土地所有者からの取得の請求に係る残地が二か所以上あるときは、それぞれの残地について、同条第一項の要件を満たしているか否かを判断するものとする。

第二九 基準第五五条(立毛補償)は、次により処理する。

1 粗収入見込額は、豊凶著しい年を除き、当該立毛作物の評価時前三年間の平均収穫量に当該作物の生産者価格を乗じて得た額と副産物の価格との合計額とする。
2 農業経営費は、肥料費、諸材料費、防除費、建物費、農具費、雇用労働費、自家労働費、公租公課、借入資本利子及びその他の経費とする。
3 同条第一項の場合において、当該立毛に市場価格があるときの補償額は第一項により算定した額から当該立毛の現在処分価格(生産者価格とする。以下同じ。)を控除した額とし、市場価格の有無及び現在処分価格については、都道府県農務主管課等で当該地方の実情を聴取して定めるものとする。
4 同条第二項に掲げる補償額は、当該土地についてすでに投下した種苗費、肥料費、耕耘、整地その他の労働費(自家労働の評価額を含む。)等の経費の合計額とする。

第三〇 基準第五六条(養殖物補償)は、次により処理する。

1 移植に要する経費は、荷造り、運搬費その他移殖に通常要する経費とする。
2 移殖に伴う減収予想額は、水産動物については斃死及び肥育率の低下等による減収予想額、水産植物については枯損、収穫量の減少、品質の低下等による減収予想額とし、都道府県水産主管課等で当該地方の実情を聴取して定めるものとする。

第三一 基準第五七条(特産物補償)は、次により処理する。

同条第一項の補償額は、次式により算定した額とする。

R/r
R 平年の純収益

豊凶の著しい年を除き評価時前三年間の平均収穫額から年間総経営費を控除した額とする。
経営費は、管理、採取等の労働費(自家労働の評価額を含む。)、地代、公租公課及び諸材料費等とし、都道府県農務主管課等により調査した資料を基準として定めるものとする。

r 年利率

第三一の二 基準第五八条(土地等の返還に伴う補償)は、次により処理する。

1 使用する農地を原状に回復することが必要と認められる場合の補償は、次によるものとする。

(1) 原状回復に通常要する費用は、水利施設の復旧費、客土費、一定期間の肥料費等従前と同程度の生産能力を有する農地に復するための費用とする。
(2) 原状回復に通常必要な期間は、水利施設の復旧工事及び客土工事に要する期間に加え、施肥等による地味の回復が必要であること及び作付適期に作付けできないことを考慮して、適正に定めるものとする。

2 同条第二項の返還時の状態のまま引き渡す場合の損失に対する補償額は、使用開始時の土地と返還時の土地の使用開始時における評価額の差額相当額とし、使用開始時において補償するものとする。

第三一の三 基準第五八条の二(造成費用の補償)は、次により処理する。

1 周辺の類似する地域とは、原則として、同一市町村内における類似する地域とする。
2 補償額は、次式により算定するものとする。

(A+B−C)×S
A 移転先の平方メートル当たり素地価格 ただし、従前地の宅地に係る権原が地上権、賃借権等である場合においては、素地に同種の権利が設定された場合の当該権利の評価額相当額の平方メートル当たり価格とする。
B 平方メートル当たり造成費用単価 なお、造成費用は造成工事費、間接経費及びその他の経費とする。
C 従前の宅地又は従前の宅地に係る地上権等の平方メートル当たり価格 ただし、具体の移転先が予定されている場合において、造成後の移転先地又は移転先地に係る地上権等の平方メートル当たり評価格がこれを上回るときは、当該評価格とする。
S 補償面積 従前の宅地面積(移転先を取得するために処分する必要があると認められる残地が存する場合は、当該残地の面積を含むものとする。)又は周辺地域における標準的な宅地面積のいずれか小さい面積。ただし、従前の宅地面積が周辺地域における標準的な宅地面積を超える場合において従前の宅地に住居用又は生業用の建物があるときは当該建物を移転するのに通常妥当な面積とし、従前の宅地面積が著しく狭小な場合において従前の宅地に住居用又は生業用の建物があるときは当該建物を移転するのに法令上最低限必要な面積とする。

第三一の四 基準第五九条(その他通常生ずる損失の補償)に規定するその他通常生ずる損失の補償の処理については、次に掲げるほか適正に行うものとする。

(1) 土地等の取得又は土地等の使用に伴い工場敷地内の従業員宿舎を生産施設と分離して構外へ移転する場合における通勤費その他の建物等の一部を分割して移転することに伴い通常増加すると認められる費用については、その二年分を限度として適正に算定した額を補償するものとする。
(2) 借地権等の残存する残地に賃借人所有の建物を再築することが妥当と認められる場合又は土地の使用終了後に当該土地に賃借人が建物を再築することが予定される場合において、土地所有者に再築に係る承諾料を支払う必要があると認められるときは、従前の建物の残存耐用年数に対応する当該承諾料の運用益損失額を補償するものとする。

第三一の五 基準第六〇条(隣接土地に関する工事費の補償)は、次により処理する。

1 同条による工事に伴い建物その他の工作物を移転し、又は立木を伐採し、若しくは移植する必要が生じた場合は、これに要する費用及びこれに伴い通常生ずる損失を考慮して同条を適用するものとする。
2 前項に規定する建物その他の工作物の移転の方法は、第二八の二第二項に準ずるものとする。
3 第一項に規定する通常生ずる損失は、第二八の二第三項第一号、第二号、第五号、第六号のうち仮営業所設置に要する損失等とする。

第三二 基準第六一条(少数残存者補償)は、次により処理する。

1 ダム築造等の大規模な工事の施行によって、生活共同体の大部分が移転するため、残存者が生業を維持し、又は生活を継続することが社会通念上ほとんど不可能となると認められるときは、残存者の移住を認めるものとし、移住に要する費用及び移住に伴い通常生ずる損失を補償するものとする。
2 ダム築造等の大規模な工事の施行によって、生活共同体の相当部分が移転するため残存者に受忍の範囲を超えるような著しい損失が生ずると認められるときは、次により算定した額を基準として補償するものとする。

(1) 営業規模の縮小による損失については、基準第四五条により算定した額
(2) 水利費、組合費等従前の社会生活を営むために必要な費用の増加額については、個々の実情に応じて適正に算定した額

第三三 基準第六二条(離職者補償)は、次により処理する。

1 同条の補償を受ける者は、常雇(雇用期間を特に定めることなく雇用される者)並びに臨時雇のうち雇用契約の更新により一年を超える期間にわたり実質的に継続して同一事業主に雇用されたものとする。
2 同条の補償額は、次式により算定した額を基準とする。

賃金日額×補償日数−失業保険金相当額
賃金日額 算定時前六か月以内に被補償者に支払われた賃金(雇用保険法(昭和四九年法律第一一六号)第四条に規定する賃金をいう。)の総額をその期間の総日数で除して得た額の一〇〇分の八〇を標準として当該額の一〇〇分の六〇から一〇〇分の一〇〇までの範囲内で適正に定めた額
補償日数 五五歳以上の常雇については一年とし、臨時雇及び五五歳未満の常雇については、その者の雇用条件、勤続期間、年齢、当該地域における労働力の需給関係等を考慮して、一年の範囲内で適正に定めた日数
失業保険金相当額 雇用保険金受給資格者について、受給予定額を算定する。


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