建設省厚発第三二号
昭和四二年一月三〇日

各地方建設局長あて

建設事務次官通知


地方建設局用地事務取扱規程の制定及び施行について


今般地方建設局用地事務取扱規程(昭和四二年建設省訓第一号)が別紙のとおり制定され、昭和四二年四月一日より施行されることとなったので、左記の事項に留意のうえ、その適正な運用をはかられたい。
なお、建設省の直轄の公共事業の用地取得のための手続に関する訓令の施行について(昭和三九年三月二八日付け建設省発計第一一七号)は、廃止する。

一 実施計画の承認申請について

(一) 実施計画の承認の申請に当たっては、第三条第一項の趣旨に従い、地方建設局の関係内部部局相互間の緊密な連絡のもとに必要な調整を図り、用地取得の難易及びその程度に応じて必要と認められる十分な用地取得期間を確保し、工事着手に関する計画にそごを生ずることのないような合理的な計画を作成するよう努めること。なお、必要に応じて前年度において用地を取得することを内容とする計画をも考慮すること。
(二) 実施計画の承認の申請に当たっては、第三条第二項の趣旨に従い、できるだけすみやかに必要な基礎調査、設計協議、実施設計等の作業を終え、実施計画の承認後、遅滞なく、用地取得のための調査に着手できるよう努めること。なお、同項の規定は、実施計画の承認前に、用地杭を打設することを禁止する趣旨でないこと。
(三) 実施計画の承認の申請に当たっては、十分に基礎調査等を行ない、用地杭打設後において、みだりに用地取得区域が変更されること等によって用地の計画的取得に支障を及ぼすことのないように努めること。

二 事業認定の申請について

(一) 第六条第一項第二号に該当するものであると判断して事業認定の申請をしなかった工事について、その後の調査又は用地交渉の結果、収用手続によらなければ用地取得ができないものがあることが判明した場合には、遅滞なく、事業認定の申請手続をとり、その告示があったときは、直ちに収用手続へ移行するものとすること。
(二) 第六条第一項第三号の「やむを得ない理由」とは、工事事務所の職員の事務処理能力、実施計画の承認に係る工事の箇所数等から、実施計画の承認後三月以内にすべての箇所について事業認定を申請することが客観的に不可能であり、実施計画の承認に係る工事箇所のうち若干のものは事業認定の申請をあとまわしにしなければならないような場合をいうものとすること。ただし、多目的ダムに準ずるような大規模な工事であって、事業認定申請のために必要な準備に要する期間が客観的に前記期間では不足であると認められるものについては、特例としてこの理由に含めることも、場合によってはやむを得ないものとすること。

二の二 手続保留の申立てについて

第六条の二の「特別の理由がある場合」とは、次の場合等をいうものであること。
(一) 当該事業について、予算措置が十分になされていないため、起業地の一部について手続保留の申立てを行なう必要があると認められるとき。
(二) 当該事業に関して、土地収用法第四六条の二第一項の補償金の支払の請求が多数提出されることがあらかじめ予想され、一時に多数の見積りによる補償金の支払又は裁決申請を行なうことが工事事務所の職員の事務処理能力等から著しく困難であると認められるため、起業地の全部又は一部について手続保留の申立てを行なう必要があると認められるとき。

二の三 標準地等の鑑定評価について

第六条の四の「鑑定を徴する必要のない場合」とは、同条に例示する場合のほか、たとえば河川、道路等の事業が競合し、一方の事業において鑑定評価を徴しているため、当該鑑定評価格を他方の事業に援用し得る場合等をいうものであること。

三 用地取得が完了しない土地における工事の禁止について

土地等の権利者の所在が不明であるような場合には、必らず収用手続又は不在者の財産管理人の選任手続を経て用地取得を完了するものとし、無権原のまま工事に着手することのないよう留意すること。

四 調査について

(一) 第九条の規定による事務所長みずからの現地踏査による土地等の概況のは握については、特に意を用いること。
(二) 第一〇条の規定により現地において補償対象物件を調査する場合においては、できるだけ二名以上の職員をして当たらしめる等調査の公正を確保するよう努めること。
(三) 調査に当たっては、調査表に必要な調査事項を記載するものとし、また、調査表、土地実測平面図、建物平面図には、必らず調査又は作成年月日、調査者又は作成者の氏名を明らかにすること。
(四) 主要な物件について撮影した写真は、撮影者、撮影年月日、撮影方向その他必要事項を明記し、該当調査表との関連を明らかにして整理、保管すること。

五 局長の承認事項について

(一) 第一四条第一項ただし書の軽微な事項その他の事項で局長が定めるものは、補償金額の算定の適正が確保される範囲内のものとすること。
(二) 第一四条第一項第一二号の規定により地方建設局の実情に応じ局長が必要であると認めて定める補償は、補償金額の算定の適正を確保するため必要な最小限のものにとどめることが望ましいこと。
(三) 用地交渉を円滑に推進させるため、書類による承認申請手続にさきだって、承認に係る事項その他について、本局、事務所間で事前に十分な打ち合わせを行なう等の措置を考慮するものとすること。

六 用地交渉について

(一) 用地交渉に当たっては、できるだけ二名以上の職員をして当たらしめる等交渉の公正を確保するように努めること。
(二) 事務所長は、定例的に用地交渉記録簿の供覧を求め、必要に応じてその詳細の報告を求める等用地交渉の経過を正確には握するよう努めること。

七 収用手続について

収用手続を進めるに当たっては、土地収用法等の定めるところに従って遺漏のないよう十分注意すること。

八 契約締結の際の印鑑証明書の提出について

所有権移転の登記の嘱託のための書類として、必要な場合に印鑑証明書の提出を求めることはもちろんであるが、その他の場合においても、住家建物の移転を内容とする契約その他補償金額が高額である補償契約については、特に印鑑証明書を提出させることにより、契約締結行為の真正を期するものとすること。

九 支払条件の明示について

第二二条ただし書の支払条件を明示する必要がないと認められるときとは、建物の所有者から、借家(借間)人が移転した後当該建物に新たな借家(借間)人を入居させない旨を確約する書面を提出させたうえ借家(借間)人と移転契約を締結するとき、又は細目公告後において借家(借間)人と移転契約を締結するとき等、将来収用手続において、補償金額の全体に実質的な影響を及ぼすおそれのないときをいうものであること。

一〇 検査について

(一) 第二五条第一項に規定する検査は、次の事項等について行なうものとすること。

(イ) 土地の取得又は使用を目的とする契約にあっては、当該土地の引渡しを受けたこと。
(ロ) 土地に関する所有権以外の権利の消滅を目的とする契約にあっては、当該土地の明渡しを受けたこと。
(ハ) 前期(イ)又は(ロ)の場合において、取得又は使用をする土地又は権利の消滅に係る土地に移転すべき物件があるときは、当該物件を当該土地の区域外へ移転したこと。
(ニ) 借家(借間)人の移転補償契約にあっては、借家(借間)人が建物所有者に当該建物を明渡したこと。

なお、漁業権等特殊な権利の消滅又は制限に関する補償、少数残存者補償、離職者補償、農業補償、営業補償、残地補償等相手方に積極的な給付を求めていないものについては、検査の必要はないこと。

(二) 契約金額が六〇万円をこえない契約については、検査調書の作成を省略することができるものとされているので(予算決算及び会計令第一〇一条の九第一項、契約事務取扱規則(昭和三七年大蔵省令第五二号)第二三条)、この場合においては、給付の完了を確認した旨を支払請求書に附記すれば足りること。

一一 直接支払いの原則について

第二七条第一項の補償金を委託代理人に支払わなければならない特段の理由があると認められるときとは、次の場合等をいうものであること。

(イ) 取得等に係る土地等の共有である場合において、共有者の一人から他の共有者の委任代理人として支払いの請求があったとき。
(ロ) 銀行、金庫、公庫又は信用協同組合、農業協同組合その他貯金の受入を行なう協同組合を委任代理人として支払いの請求があったとき。

一二 用地事務取扱細則について

第三〇条第一項に規定する用地事務取扱細則は、できるだけすみやかに作成するものとするが、その制定前においては、とりあえず現在各地方建設局で定めている用地事務処理要領等について訓令と抵触する部分を改正し、用地事務を運営するものとすること。

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