各地方建設局用地部長あて
記
基準額
|
事務費の率
|
五、〇〇〇万円以下の金額
|
七%
|
五、〇〇〇万円をこえ一〇、〇〇〇万円以下の金額
|
六%
|
一〇、〇〇〇万円をこえ三〇、〇〇〇万円以下の金額
|
五%
|
三〇、〇〇〇万円をこえる金額
|
四%
|
![]() |
(参考) 公共施設管理者負担金制度とその運用について
一 序論
公共用地の取得難は、最近ますます深刻化の傾向を辿っていて、これに対する基本的対策を講ずる必要があることはすでに周知のとおりであるが、公共用地取得難の例外として注目されているのが土地区画整理事業である。土地区画整理事業は、一定の区域の土地について区画形質の変更を行なうとともに換地操作によって公共用地が生み出されるわけで、特定の個人の土地が買収とか、土地収用の対象とすることなく土地区画整理事業施行地区内の土地に対する公共減歩によって公共用地が確保される事業であって、公共施設管理者は法令の規定により、換地処分の結果、労せずして公共用地が取得できるのである。
土地区画整理事業の本体は、公共施設の整備改善及び土地の合理的利用を増進して健全な市街地の造成を図ることにあるが、健全な市街地環境を確保するためには、街路、公園、水路等の公共施設を新設又は改良して宅地の区画を適正にして土地の利用増進を図らなければならない。土地区画整理事業は、他の公共事業と異なりこれらの行為を一挙になしうることが本質的特色とされている。土地区画整理事業の本体である公共施設の整備改善及び宅地の利用増進の両者は、密接不可分の関係にあるのであって公共施設を整備改善することなしに宅地の利用増進を図ることはできないので、土地区画整理事業の本体は第一には公共施設を整備改善することであるといえる。
一方、公共施設の整備改善を行なう義務は本来当該公共施設の管理者にあるということは、ここで述べるまでもない。従って、土地区画整理事業施行地区内では、土地区画整理事業施行者にとっても公共施設を整備改善する責務があり、また、公共施設管理者にとっても本来その管理に係る公共施設の整備改善の義務があるわけである。然るに従来は、土地区画整理事業施行者と公共施設管理者との間の事業施行上及び財政負担上の調整規定がなかったため、土地区画事業施行区域内については、概ね、土地区画整理事業施行者の負担において公共施設が整備改善されていたわけである。土地区画整理事業の事業費は、土地区画整理法第一一八条に明定しているとおり施行者自身が負担することが原則とされ、公共用地を減歩によって生み出すために莫大な事業費を費すこととなるわけであるが、これに反し、公共施設の管理者は、前にも述べたように換地処分によって労せずして公共用地が確保される。
これでは、あまりにも、土地区画整理事業施行者に酷であり、公共施設管理者に有利であるので、土地区画整理事業施行者と公共施設管理者との間の費用負担の調整を図ることにした制度が「公共施設管理者負担金制度」で土地区画整理事業の有力な財源の一分野として重要な役割を果している。
二 替費地又は保留地処分方式
公共施設管理者負担金制度が法律によって確立する以前においても区画整理によって生み出された公共施設用地を公共施設の管理者が替費地又は保留地として買収し、土地区画整理事業施行者を援助していた例は相当古くからあり、公共用地造成補償費制度が建設省計画局長通達によって正式に取り扱われるまでこの方法がとられ、特に国庫補助対象の街路事業については年々この種の取り扱いが増加する傾向にあったが、次の諸点で運用上問題があった。
(イ) 公共用地は、公共減歩によって生み出されるという区画整理上の本質論に照らし、適当でないこと。
(ロ) 換地予定地の指定又は仮換地の指定のみの状態における替費地又は保留地は、その土地の使用収益権は一応停止状態にあるとしても、当該土地又は当該土地に関する権利の処分権は、依然としてそれらの権限のある者にあるのであって土地区画整理事業施行者には処分権限のない土地であるので、処分権限のない他人の土地を区画整理事業施行者が第三者(公共施設の管理者)に売り渡すということはできないのであるが、替費地又は保留地は換地処分があればその効果として土地区画整理事業施行者に帰属することとなるので、これを前提として売買の予約として取り扱っていたようである。もちろん権限のない土地の売買の予約であるから所有権移転登記は当然できないわけであってこの点に従来の保留地買収方式は致命的難点があった。
(ハ) 公共施設管理者の側においても、国又は地方公共団体の会計事務処理上の取扱いでは、土地又は物件の買入れの場合の代金の支払は動産については引渡しがあってから、不動産については登記が完了してからでないと行なわないこととされているが、保留地処分方式では、前にも述べたように権限のない土地の売買の予約であるため移転登記ができないので会計事務処理上代金の支払に難点がある。また、概算払、前金払等の支出の特例については、概算払したものについては、通常、当該年度中に相手方の履行(移転登記の完了)及び概算払額に対する精算が行なわれなければならず、前金払したものについては当該年度中に相手方の履行がなされなければならないので、施行者が権限を取得する(換地処分によって替費地又は保留地の所有権を取得する。)までに長年月を要する土地区画整理事業によってはこれら支出の特例も認められないこととなる。
前記の(ロ)とうらはらの関係にある難点である。
(ニ) 代金の支払については、土地区画整理事業の完了をまって換地処分の後に支払う方法があり最も妥当な方法であると考えられるが、土地区画整理事業施行者側にとっては、支払われる土地代金等が重要な事業財源である関係から土地区画整理事業完了後に代金が支払われるのでは事業遂行上、重大な支障がある。
三 公共用地造成補償費制度
替費地又は保留地処分方式には多くの難点があったが、土地区画整理事業の重要な財源として注目されるようになり、くり返し運用されていたが、これを一歩押し進めて「公共用地造成補償費」制度として正式に運用されるようになったのは、建設省の直轄事業である富山県の小矢部川改修工事及び国道八号線の改良工事に必要な土地を富山県石動町施行の石動第二土地区画整理事業によって生み出したときからであるが、この際に昭和三〇年二月二二日付建設計発第三九号及び第二三五号「他の公共事業を施行するに当り土地区画整理事業を併用する場合の措置について」(建設省計画局長通達)が通達され、それ以後は、この通達によって運用されてきたわけである。
「公共用地造成補償費」という名称は、国の歳出予算の目の細分「用地費及び補償費」の内容にこの費目がつけ加えられ、「公共事業に必要な土地を土地区画整理事業施行の結果として造成せしめる場合の補償金」と説明されてからこの用語をそのまま用いることになったようである。
公共用地造成補償費の内容は、公共施設管理者が直接用地取得を行なうこととした場合における用地取得費相当額を土地区画整理事業施行者に支払い、土地区画整理事業施行者は支払を受けた金額に見合う用地を公共施設管理者に引渡しを行なうというものである。これは従来の保留地処分方式を進化させたもので保留地処分方式で難点とされていた事項は概ね解消されている。
この制度の概要について更に説明すると、手続的には、まず第一にあらかじめ、土地区画整理事業施行者と公共施設管理者が協議して公共施設の内容、公共施設管理者が負担する費用の額、その負担方法、公共施設用地の引継ぎの時期、換地処分の予定の時期等について協定を結ばなければならない。
土地区画整理事業施行者側においては、この協定に基づき、事業計画において当該公共施設の内容及び公共施設管理者の費用負担額を定める必要があり、かつ、公共用地造成補償費に対応する土地を公共施設管理者において使用できるよう措置し、遅くとも、改良事業の完了後一年以内に換地処分を行なう義務を負う。公共施設管理者側においては、土地の買収価格相当額の公共用地造成補償費の支払義務を負うが、この金額の支払後は、当該公共施設用地は改良事業に使用することができることとなる。
協定において定められる公共施設の負担額は、当該公共施設用地の「買収価額相当額」であるが、買収価額相当額とは、当該公共施設用地を公共施設管理者が直接買収することとした場合に通常必要とされる費用の額であり、土地買収費のほか、当該土地の上に存する物件移転費を含めた額とされている。
公共用地造成補償費の反対給付としては、土地区画整理事業施行者は、公共用地達成補償費の対象となった土地にある物件を移転し、公共施設管理者が当該公共施設に関する改良事業に実施できる状態にしたうえで当該公共施設管理者に引き継がれる。
以上のようにして公共施設管理者と土地区画整理事業施行者の協力によって生み出す公共用地は現在ではかなりの数に達し、また、公共用地管理者負担金は、土地区画整理事業の重要な財源となるに及び、通達による運用から法制化への足がかりとして重要な経過的な役割を果している。
四 公共施設管理者負担金制度
四―一 法律上の根拠
公共施設管理者負担金制度が法令上の根拠をもつに至ったのは、昭和三三年に施行された土地区画整理法の一部を改正する法律により、土地区画整理法第一一九条の二が追加されてからで、同条には、
(公共施設管理者の負担金)
第一一九条の二 (イ) 都市計画として決定された幹線道路その他の重要な公共施設で政令で定めるものの用に供する土地の造成を主たる目的とする土地区画整理事業を施行する場合においては、施行者は、他の法律の規定に基づき当該公共施設の新設又は変更に関する事業を行なうべき者(以下本条において「公共施設管理者」という。)に対し、当該公共施設の用に供する土地の取得に要する費用の額の範囲内において、政令で定めるところにより、その土地区画整理事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めることができる。
(ロ) 施行者は、前項の規定により公共施設管理者に対し、土地区画整理事業に要する費用の全部又は一部を負担することを求めようとする場合においては、あらかじめ、当該公共施設管理者と協議し、その者が負担すべき費用の額及び負担の方法を事業計画において定めておかなければならない。
と規定され、従来とかくあいまいな性格なものであったものを負担金として法律によって明らかにされ、この規定に基づき、公共施設管理者に対し費用の負担を求められることになり、公共施設管理者負担金が土地区画整理事業の有力な財源の一分野として認識されるに至ったわけである。
第一項において、1)都市計画として決定された幹線街路その他の重要な公共施設の用に供する土地の造成を主たる目的とした土地区画整理事業を施行する場合においては、公共施設管理者負担金の負担が求められること。2)公共施設管理者負担金の限度は、当該公共施設の用に供すべき土地の取得に要する費用の額の範囲内の額であること。3)土地区画整理事業に要する費用の負担が求められること等が規定され、第二項においては、土地区画整理事業施行者が公共施設管理者に対して公共施設管理者負担金を求める場合の手続が規定されている。
四―二 公共施設用地の造成を主たる目的とした土地区画整理事業
公共施設管理者負担金の負担を求めることができるのは、前にも述べたとおり都市計画として決定された幹線街路その他の重要な公共施設の用に供する土地の造成を主たる目的とした土地区画整理事業を施行する場合に限られるのであるが、公共施設用地の造成を「主たる目的とした土地区画整理事業」の認定はむずかしい問題である。というのは、土地区画整理事業の目的が「公共施設の整備改善」及び「宅地の利用増進」であって、この両者は車の両輪のような関係を有するもので、この両者を切り離して考えることはできないからで、具体的には両者のうち、どちらを主とした土地区画整理事業であるかは一概に断定することは困難であるからである。見方によってはすべての土地区画整理事業が「公共施設の整備改善を主たる目的とした土地区画整理事業」といえるし、また、宅地の利用増進を主たる目的とした土地区画整理事業ともいえる。ただ一般的にいえることは、土地区画整理事業の施行地区面積のうち、公共施設となるべき土地の面積の占める割合が大であれば「主たる目的とした土地区画整理事業」の範ちゆうに入るということがいえる。
重要な公共施設の範囲は、土地区画整理法施行令に定められているとおり、都市計画として決定された幹線街路、運河、水路、公園、緑地又は広場、道路法にいう道路、河川法にいう河川、港湾法にいう港湾施設又は漁港法にいう漁港施設である公共施設、運河法にいう運河、海岸保全施設である公共施設に限られている。
四―三 公共施設管理者負担金の性格
公共施設管理者負担金が法令上の根拠をもつ負担金として制度的に確立されるまでは、前にも述べたように或る時期においては「保留地処分方式」として行なわれ、その後「公共用地造成補償制度」として取り扱われてきたわけであるが、負担金の性格もそのつど変遷を示している。当初の保留地処分方式として取り扱っていた頃は、土地の買収に対する「対価」として支払われ、支払の内容についても区々であり、土地代相当額のみの場合のときもあり、土地代及び物件移転費相当額の場合のときもありで、その都度適宜運用されていたようである。その後公共用地造成補償費として公に取り扱われるようになってからは、公共用地を造成させるために必要な費用を土地区画整理事業施行者に補償するという補償金的性格が現われて内容も土地代相当額に物件移転補償費相当額を加算した額として取り扱われてきている。先般、土地区画整理法が改正されて公共施設管理者負担金となってからは、明らかに「土地区画整理事業費に対する負担金」となったわけであるが、このことは、後にも説明するが重要な意義を有するもので、この制度が確立されるまでは土地の評価額及び移転費等の積算額そのものが協定額に直結することとされていたのに反し、公共施設管理者負担金制度のもとでは、土地代の評価及び物件移転費の算出は、単に「土地の取得に要すべき費用の額」即ち、管理者負担金の最高限度額の算出の役目を果すにすぎないものとなっている。公共施設管理者と土地区画整理事業施行者が協議して、その額の範囲内で、かつ、その額を参考としながら土地区画整理事業費の負担金である公共施設管理者負担金の額を具体的に協定するわけである。
四―四 覚書の交換及び協定の締結
公共施設管理者負担金の手続としては、重要な公共施設の用に供する土地の造成を主たる目的とした土地区画整理事業の施行者が、公共施設管理者に対して土地区画整理事業費の負担を求めようとする場合には、あらかじめ、負担額、負担方法等について当該公共施設の管理者と協議のうえ、事業計画においてそれらの事項を定めておかなければならないこととされている。この協議は、従来必要に応じてその都度行なわれている事例が少くないのであるが、必要の都度協議していたのでは、土地区画整理事業施行者にとっては、全体の事業の実施計画に対する資金計画の見通しが立たず、計画的な事業の実施に支障があり、また、負担を求められる公共施設の管理者の側にとっても費用負担のための措置がとられないため協議に応じられない場合等も考えられる。
また、公共施設管理者負担金の根拠規定である土地区画整理法第一一九条の二の規定が、あくまで、土地区画整理事業施行者が公共施設管理者に対して土地区画整理事業費の負担を求める場合の根拠規定にすぎず、公共施設管理者に負担義務を課しているものではないので、施行者側が重要な財源として予定していても、公共施設管理者側が応じてくれるかどうか常に不安定な状態におかれることとなる場合も少くない。
そこで、昭和三六年五月一五日付建設計発第一四六号「土地区画整理法第一一九条の二に規定する公共施設管理者負担金の取扱いについて」(建設省計画局長通達)でも、土地区画整理事業施行者は、事業の実施に先立って、当該公共施設の管理者に対して求める公共施設管理者負担金の全体額、負担年度、負担方法、公共施設の範囲等について当該公共施設の管理者と協議のうえ、全体の「覚書」を交換するよう指導しているわけである。
さらに、前記の昭和三六年五月一五日付建設計発第一四六号の建設省計画局長通達によれば、各年度ごとの負担金については、当該公共施設管理者負担金の(全体の)覚書に基づいて年度ごとに、当該年度の負担金の額、負担の時期、精算方法等について公共施設管理者と土地区画整理事業施行者とが協議して「協定」を締結しなければならないこととされている。(覚書、協定書の内容、様式等については、建設省計画局長通達を参考とされたい。)
四―五 公共施設管理者負担金の限度
公共施設管理者に対して土地区画整理事業施行者が負担を求めることのできる公共施設管理者負担金の最高限度は、「当該公共施設の用に供する土地の取得に要すべき費用の額」であって、この額をこえた負担金の負担を求めることはできない。「土地の取得に要すべき費用」とは、土地の買収費、物件移転費及び通常損失の補償費等の合計額であるが、具体的には、土地代については、事業計画策定時(事業施行中のものについては、協定の時点)における土地の評価額であり、建物、工作物、立竹木その他の物件の移転補償費及び通常損失の補償費については、土地区画整理事業による換地先への移転という特殊事情は考慮しないで評価した通常必要とされる費用及び損失の額であるとされている。
更に、昭和三六年五月一五日付建設計発第一四六号「土地区画整理法第一一九条の二に規定する公共施設管理者負担金の取扱いについて」(計画局長通達)によれば、前記の費用のほか、工事雑費及び事務費を含むものとされている。土地の買収、物件の移転等には通常これらの費用が必要とされるので、土地の取得に要すべき費用の額に含めて取り扱うこととしたものと考えられる。
公共施設管理者負担金の限度を定めている趣旨は、公共施設管理者が直接施行することとした場合の評価額よりも管理者負担金の方が上廻るものであれば公共施設管理者負担金制度を活用するまでもなく、公共施設管理者が直接施行した方が建設経済に合致するとの配慮のあらわれであると考える。
四―六 負担金の額の決定
公共施設管理者負担金は、当事者が協議して、当該公共施設用地の取得に要すべき費用の額の範囲内で適宜決定すればよいわけであるから、公共施設用地の取得に要すべき費用の額をそのまま公共施設管理者負担金の額とする場合もあろうし、土地代相当額のみの場合も、移転費相当額のみの場合も、また定め方によって、土地の取得に要すべき費用の額の半額で又は一〇分の一等の額で決定される場合もありうる。これらはすべて公共施設用地の取得に要すべき費用の額の範囲内であるから適法な定め方であるといわなければならない。公共施設管理者負担金には、必ず土地代と物件移転費が含まれると理解している者が少くないようであるが、これは誤りで土地の取得に要すべき費用の額の範囲内であればいくらでもよいわけである。また、決定の内容も土地代相当額何円、物件移転費等補償費相当額何円、工事雑費相当額何円、事務費相当額何円というように決定する必要はなく、ただ単に、公共施設管理者負担金何円と決定すればよいわけである。ただ、公共施設管理者負担金の額は公共施設用地の取得に要すべき費用の額の範囲内でなければならないこととされているので、公共施設用地の取得に要すべき費用の額の精算は厳格に行なうとともに、公共施設管理者負担金がその額の範囲内であることを立証できるよう資料を整えておく必要があることはもちろんである。
公共用地造成補償費制度では、公共用地の買収価額相当額がそのまま公共用地造成補償費の額となったのであるが、公共施設管理者負担金制度では、「土地の取得に要すべき費用の額」の範囲内で公共施設管理者負担金の額を定めることとされ、大きく変っている点が注目されなければならない。
四―七 土地区画整理事業の実施設計
公共施設管理者負担金が土地区画整理事業費の全部又は一部の負担金であることは前にも述べたとおりであるが、公共施設管理者負担金が土地区画整理事業費に対する負担金である以上負担金の対象となる土地区画整理事業の実施設計についても当事者が協議して確定しておかなければならない。負担金が土地区画整理事業費の全部の負担である場合には当然当該土地区画整理事業施行者の施行する土地区画整理事業の全部が負担対象事業となるわけであるが、負担金が土地区画整理事業費の一部の負担金である場合には、協議によって土地区画整理事業の全部を負担金の対象となる土地区画整理事業と定めてもよいし、或る特定の区域(公共施設の影響範囲)に限定して、そこで行なう土地区画整理事業を負担金の対象となる土地区画整理事業と決定してもよい。また、特定の工事内容(例えば、物件移転)のみを負担金の対象となる土地区画整理事業と定めてもよいこととされている。いずれにしても公共施設管理者負担金の対象となる土地区画整理事業の実施設計は負担金の協議の際に確定しておかなければならないわけである。
昭和三六年五月一五日付建設計発第一四六号の建設省計画局長通達によれば、一部負担の場合には、なるべく、公共施設管理者負担金の負担対象区域又は負担対象の事業内容をしぼって土地区画整理事業の実施設計を定めるよう指導している。この趣旨は、負担金の支払が、後で説明するように「負担金に対応する土地区画整理事業が完了したとき」又は「負担金に対応する土地区画整理事業の進捗状況等に応じて」支払うこととされているため、一部負担の場合についても土地区画整理事業の全部を負担対象事業と定めた場合には、公共施設管理者負担金の原因となった用地はすでに全部管理者側に引継いだにもかかわらず、土地区画整理事業の全部が完了していないため、協議して定めた管理者負担金のうち、残っている土地区画整理事業に対応する負担金については支払が受けられないという事態が起りうるので、このようなことのないようにするための配慮と思われる。
四―八 公共施設管理者負担金の支払時期等
公共施設管理者負担金の支払の時期が公共用地造成補償費の支払時期と大きな違いを示していることには、注目しなければならない。公共用地造成補償費の支払の時期は「施行者が公共施設用地を公共施設管理者が使用することができるよう措置したとき」とされており、具体的には、土地代相当額については仮換地指定後、すなわち、当該土地の従前の権利者の使用収益権が停止されたときであり、物件移転補償費相当額については、当該物件の移転が完了したとき又は移転工事に着手したとき(半額)が原則とされていた。
公共施設管理者負担金の支払の時期は、前記の昭和三六年五月一五日付建設計発第一四六号の建設省計画局長通達の例によれば、「当該年度の負担金に対応する土地区画整理事業が完了したとき」とされ、例外として「負担金に対応する土地区画整理事業の進捗状況等に応じ、負担金の前金払又は概算払をすることができる。」とされている。具体的な支払に際しては、負担金に対応する土地区画整理事業の「完了後」に支払う場合には公共施設管理者が完了検査を実施して協定で定めた実施設計どおりに事業が実施されたことを確認したうえで支払えばよいわけである。しかし、公共施設管理者負担金が土地区画整理事業施行者にとって重要な財源となるものであるから全部の事業が完了してから支払われたのでは財源としての意味がなくなるわけで、従って概ね概算払又は前金払の取扱いとなるものと思われる。そこで負担金に対応する土地区画整理事業の「進捗状況等に応じて前金払又は概算払」をする場合には、四半期程度に支払時期を分割して、当該四半期経過後、経過した四半期において実施した負担金に対応する土地区画整理事業の進捗状況等(工事の出来形、工事費の支払状況等)の検査を実施したうえで、その進捗状況等に応じて負担金を支払うのが適当であると考える。
ところで、公共施設管理者負担金の支払時期及び支払内容が公共用地造成補償費のそれとの相違は、公共施設管理者負担金が「土地区画整理事業費の負担金」であり、公共用地造成補償費が「土地区画整理事業施行者に対する補償金」であるという負担金と補償金の性格の相違の端的な現われであるということが理解される。
四―九 公共施設管理者負担金の使途
土地区画整理事業の工事内容は、複雑多岐にわたっているため工事費の内容も広範なものとなっているが、街路、公園、水路その他の公共施設の整備費、これらの用地確保のための物件移転費、軌道、地方鉄道、電柱、電話、地下埋設物等の移設費、宅地等の整地費、換地諸費、損失補償費、減価補償費等に大別できるが、公共施設管理者負担金は、これらの土地区画整理事業費の一部又は全部の負担金として支払われるものであるので、これらの事業費のすべてに充当してさしつかえないこととされている。しかし、具体的な事業費の範囲は、公共施設管理者負担金の協議の際に定めた公共施設管理者負担金に対応する土地区画整理事業の実施設計に計上された事業内容に限定されることはもちろんである。
公共用地造成補償費制度の頃の補償費の使途は、物件移転費相当額については、そのまま物件移転費に、土地代相当額については、使途を制限せずすべての土地区画整理事業費に充当してさしつかえないこととされていたが、公共用地造成補償費の対象となっている公共施設に直接関連性のある工事費に充当するよう指導されていた。
五 運用上の問題点
五―一 最近における都市内の土地の価額の上昇率は、他の物価・賃金等の上昇率と比較にならない程激しいものがある。これを理由として国庫補助の対象とされている公共施設管理者負担金について土地区画整理事業施行者との協定額を年々増額して行く例があるが、管理者負担金は、法律で「土地の取得に要すべき費用の額の範囲内」で負担すべきこととされているため、土地代を評価したり、物件移転費を精算したりして、負担金の額を決定しているわけであるので、管理者負担金の額の変更は物価の変動、賃金の上昇その他特別の事情によって土地区画整理事業の資金計画の変更を必要とする場合は土地区画整理事業の資金計画内容となっている保留地処分金等を勘案し管理者負担金の額の変更をすべきであると考える。
五―二 現在の取扱いでは、国庫補助の対象とされている公共施設管理者負担金については、公共施設管理者から提出される国庫補助金交付申請書は、公共施設管理者負担金に対応する土地区画整理事業の実施設計をもって国庫補助事業の内容とすることとされているが、これは、公共施設管理者負担金制度となってから日が浅く関係者が不慣れである等の理由もあって、暫定的措置として、このような取扱いをすることとなっているものと思われるが、国が国庫補助金を交付するのは、公共施設の管理者に対して公共施設の用に供する土地を取得する費用の一部としてであって、間接補助金ではないから土地区画整理事業施行者に補助金を交付するわけではない。従って、公共施設管理者に補助金を交付する立場における国は、公共施設管理者が補助対象とされている公共施設用地を適法な手段で、適正な価額で取得するものであるかどうか等について指導、監督を行なえばそれが必要にして、かつ、十分であると考える。そこで、公共施設管理者負担金に対応する土地区画整理事業が協定で定めた区画整理事業の実施計画通りに実施されたかどうかは、公共施設管理者負担協定の当事者である公共施設管理者がその責任において監督すべき問題であると考える。従って、私見によれば、公共施設管理者から国に提出される国庫補助金交付申請書の内容は公共施設管理者が公共施設となるべき土地を取得するという内容にすれば十分であり、土地区画整理事業の実施設計を内容とする必要はないのではないかと考える。この問題については、今後更に検討する余地がある。
五―三 土地区画整理事業施行者が公共施設の整備に関する工事をどの程度まで行なうかについては、各土地区画整理事業の事業計画において定められるが、土地区画整理事業の本体が公共施設の設備改善を行なうことにあることにかんがみ、公共施設として機能が発揮できる状態になるまでの工事を行なったときをもって、当該公共施設の整備に関する工事が完了したときとするのが適当であると考える。現在、公共施設管理者負担金の対象となっている土地区画整理事業の多くは、公共施設となるべき土地にある物件の移転工事が完了したときをもって当該公共施設の整備が完了したときとし、それ以後の工事は公共施設管理者において行なうこととして取り扱っている例が多いようであるが、公共施設となるべき土地を単に更地としただけでは、公共施設の整備に関する工事が完了したことにはならないのではないかと考えられる。今後なお検討の余地がある。(土地区画整理法第一〇六条第二項参照)
五―四 国庫補助の対象とされている公共施設に関する事業で、土地区画整理事業施行区域内において実施しているものに公共施設管理者負担金の取扱いでなく、移転工事を土地区画整理施行者に委託する形式をとって実施している例があるようであるが、このような取扱いは公共施設管理者負担金制度の趣旨に照らし、適当でないと考える。これは公共施設管理者負担金は、用地費相当額及び移転補償費相当額等を必ず交付しなければならないという公共用地造成補償費制度と混同した概念のもとに公共施設管理者負担金とせず、委託費として取扱っているようであるが、公共施設管理者負担金は前にも述べたように「土地の取得に要すべき費用の額」の範囲内であれば物件移転費相当額のみであろうと、それ以下であろうと一向にさしつかえないわけである。従って、公共施設管理者側が物件移転費のみしか考慮していない場合であっても、公共施設管理者と土地区画整理事業施行者の協力によって公共施設用地を生み出す場合(物件移転も含めて)には、公共施設管理者負担金として取り扱うべきものと考える。今後更に検討する必要がある。
|
![]() |
(参考) 土地区画整理法第一一九条の二に規定する公共施設管理者負担金の取扱いについて
(昭和三六年五月一五日)
(建設計発第一四六号)
(建設省計画局長から各都道府県知事、五大市長あて通知)
土地区画整理法(以下「法」という。)第一一九条の二に規定する公共施設管理者の負担金の取扱いについては、今後左記によることとするから遺憾のないようにされたい。
なお、貴管下関係市町村(五大市を除く。)及び土地区画整理組合等に対しても周知徹底方お願いする。
記
一 土地区画整理事業の施行者(以下「施行者」という。)が公共施設の管理者(以下「管理者」という。)に対して、法第一一九条の二の規定により管理者の負担金の負担を求めようとする場合においては、その内容について覚書を交換するものとする。
二 施行者は、前項の覚書に基づき、年度ごとに当該年度の負担金の額、負担の時期及び精算方法等について管理者と協定を締結するものとする。
三 第一項の覚書及び前項の協定書には、次に掲げる図書を添付するものとする。
(一) 覚書に添付するもの
(イ) 当該土地区画整理事業の事業計画(負担金に対応する区域又は工事内容を定めた場合においては、当該区域又は工事内容に係る事業計画の部分を明らかにすること。)
(ロ) 当該公共施設の用に供する土地の丈量図及び公共施設管理者負担金調書(別紙参照)
(二) 協定書に添付するもの
(イ) 当該年度の土地区画整理事業の実施設計(負担金に対応する区域又は工事内容を定めた場合においては、当該区域又は工事内容に係る実施設計の部分を明らかにすること。)
(ロ) 当該公共施設の用に供する土地のうち、当該年度の負担金の算出の基礎となった部分の丈量図及び当該年度の公共施設管理者負担金調書
四 法第一一九条の二第一項に規定する「公共施設の用に供する土地の取得に要すべき費用の額」とは、当該公共施設の用に供する土地等を買収することとした場合における用地費及び補償費のほか、工事雑費及び事務費を含むものとする。
五 土地区画整理事業に要する費用の一部に管理者の負担金を充てる場合においては、施行者は管理者との協議により負担金の額に対応する区域又は工事内容を定めるものとする。この場合においては当該区域又は工事内容に係る土地区画整理事業が終了したときは、管理者が当該公共施設の用に供する土地の全部を使用しうるように定めるものとする。
六 土地区画整理事業(前項の場合においては、当該区域又は工事内容に係る土地区画整理事業)に対する年度ごとの管理者の負担金は、進捗実績に応じて支出されることも可能であるから負担金の概算払等を受けようとする場合には、これが手続き等に関し特に管理者と協議すること。
なお、国又は公共団体の負担金の支出に関しては、次のような概算払の特例が認められているから参考とされたい。
(一) 国の行なう負担金の支出は、年度ごとの事業の完了をまって精算払によることが原則とされているが、建設省所管会計事務取扱規程(昭和三五年建設省訓令第一号)第二八条の規定により支出官が建設大臣の承認を受けた場合においては、当該事業の進捗状況を勘案して概算払をすることができる。
(二) 単に公共団体が負担金を支出する場合は、当該公共団体の内部規定に従って精算払又は前金払若しくは概算払による。
なお、当該負担金が建設省所轄の国庫補助事業の内容として支出される場合においては負担金の前金払又は概算払をしたときは、当該補助事業者である公共団体は、補助金等の概算払に関する通牒(各都道府県土木部長、出納長あてに建設大臣官房会計課長から毎年度各会計別等により通牒される。)に従い、当該前金払又は概算払に係る国庫補助金の概算払を受けることができる。
七 覚書及び協定書の事例を別紙一及び二に掲げたから参考とされたい。
八 この通牒は、昭和三六年五月一五日から適用する。
九 昭和三〇年二月二二日付け建設計発第三九号、計画局長通牒は、廃止する。
なお、既に同通牒に基づく措置がなされているものについて、次年度よりこの通牒によるものとする。
なお、覚書を交換し、協定を締結した場合においては、計画局所管の国庫補助金に係る負担金の場合を除き、当該覚書または協定書の写し及び関係図書を添付して報告されたい。
|
![]() |
別紙一 <別添資料>![]() |
![]() |
別紙二 <別添資料>![]() |
![]() |
別紙〔略〕 |
![]() |
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport |