建設省計用発第三五号
昭和五四年一〇月一二日

建設事務次官から北海道開発局長、沖縄総合事務局長、建設省各地方建設局局長あて

通知


公共施設の設置に起因するテレビジョン電波受信障害により生ずる損害等に係る費用負担について


テレビジョン電波受信障害により生ずる損害等に係る「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」(昭和三七年六月二九日閣議了解)第三の事前賠償については、当分の間、左記により取り扱うこととしたので、通知する。

一 費用負担の要件

建設省の直轄の公共事業の施行に係る公共施設の設置により生じたテレビジョン電波受信障害(以下「電波障害」という。)により、自ら有するテレビジョン受信設備によりテレビジョン電波の受信を行っている者又は共同受信施設を有し、かつ、当該共同受信施設を通じテレビジョン電波を各戸に伝送する者(当該公共施設の設置に係る工事の完了以前から当該公共施設の設置により電波障害の生ずる地域において受信を行っていた者又は共同受信施設を有し、かつ、各戸に伝送していた者に限る。以下「受信者」という。)に社会生活上受忍すべき範囲を超える損害等が生ずると認められる場合においては、当該損害等をてん補するために必要な最小限度の費用を負担することができるものとする。

二 電波障害の程度及びその判定

前項の規定による費用の負担は、受信者に係る受信チャンネルのいずれか一つについて受信品位が別表一による評価5、評価4又は評価3であるものから評価2又は評価1となる場合に行うものとする。ただし、評価5、評価4又は評価3であるものが評価2に近い評価3となる場合においても個別の事情を勘案して費用の負担を行うことができるものとする。
なお、この判定のため、公共施設の設置に係る工事の着工前及び完了後においてテレビジョン電波の受信状況を把握するに際しては、日本放送協会等の専門の知識及び技術を有する機関の協力を得るものとする。

三 負担額の算定

第一項の規定により負担する費用は、別表二に掲げる電波障害の改善方法のうち通常のテレビジョン電波受信を可能とし、かつ、技術的及び経済的に合理的と認められる方法による改善措置に要する費用(受信者が従前の方法による受信を行うために通常要する費用を差し引くものとする。)とし、付録の式によって算定するものとする。

四 費用負担の請求期間

第一項の規定による費用の負担は、受信者から公共施設の設置に係る工事の完了の日から一年を経過する日までに請求があった場合に限り、行うことができるものとする。

五 費用負担の方法

(一) 第一項の規定による費用の負担は、共同受信施設の設置により改善する場合には、原則として、当該共同受信施設に係る受信者全員の同意を得て設立された組合の代表者に対し、当該共同受信施設の現物及びその他改善措置に要する費用に対する金銭又は金銭をもってするものとし、その他の場合には、受信者別に金銭をもってするものとする。
(二) 第一項の規定による費用の負担は、渡し切りとする。

六 経過措置

電波障害による損害等をてん補するために必要な費用の負担について、現に協議中のもの又はすでに協議済のものについては、第一項から第五項までの規定は適用しないものとする。


別表一

評価
内容
5

きわめて優秀

4

雑音又は混信が少なく良好な受信ができる。

3

多少の雑音又は混信はあるが実用になる。

2

受信できないことはないが雑音又は混信がはなはだしく実用にならない。

1

雑音又は混信により受像不能か、はなはだしく悪く、まったく実用にならない。
〔注〕 「放送局の検査及び検査に伴う措置に関する事務規程」(昭和三三年三月二八日付け郵政省電波監理局長通達五七)による。



別表二

電波障害改善方法
改善方法の内容
(1) 共同受信施設の設置

措置の対象となる一まとまりの区域内又はその近くで良好な電波を受信できる場所に受信アンテナ(親アンテナ)を設置し、そこで受信したテレビ電波を有線で伝送し、各戸に分配する方法

(2) 個別受信施設の設置

新たに個別アンテナを設置する方法

(3) 受信施設の移設又は改良その他必要な措置

従前の共同受信施設又は個別受信施設の受信アンテナの位置、高さ、方向等の調整、部品の改良等により改善する方法



付録

一 共同受信施設を設置する場合

負担額=設置費+維持管理費+諸経費

(一) 設置費は、受信アンテナ(親アンテナ)、幹線施設(送信伝送線、混合器、増幅器、分配器及び分岐器)、受信者の家屋軒先(共同受信施設を有する者にあっては、当該共同受信施設の幹線送信伝送線の先端部)までの引込線施設(引込線及び保安器)、受信方法の変更により受信者の家屋内に新たに設置を要することとなる施設及びこれらを支持するための施設の器材費並びに施設の建設に係る工事費の合計額とする。
(二) 維持管理費は、次により算定した額とする。

維持管理費=A×(((1+r)l−1)/r(1+r)l)+B×{(1/(1+r)m1)+(1/(1+r)m2)}−C×{(1/(1+r)n1)+(1/(1+r)n2)}

(イ) Aは、共同受信施設に係る年均等化経常費(電気料、借地料、電柱共架料、道路占用料、災害保険料等)及び保守費(定期点検費、故障修理費等)
(ロ) Bは、共同受信施設の器材の経年劣化に伴う部分的更改費
(ハ) Cは、受信者の従前の受信施設の更改費
(ニ) lは、共同受信施設の維持管理費の費用負担の対象となる年数。l=20とする。
(ホ) m1及びm2は、共同受信施設の設置後において、当該施設の部分的更改を要する年。m1=10、m2=20とする。
(ヘ) n1及びn2は、従前の受信施設の更改を要するとされる年。n1=10、n2=20とする。
(ト) rは、年利率。

(三) 諸経費は、共同受信施設の設置に伴い必要となるその他の経費とする。

二 個別受信施設を設置する場合

負担額=設置・更改費−従前の受信施設の更改費+諸経費

(一) 設置・更改費は、次により算定した額とする。

設置・更改費=D×{1+(1/(1+r)p1)+(1/(1+r)p2)}

(イ) Dは、個別受信施設の設置・更改費
(ロ) p1及びp2は、個別受信施設の設置後において当該施設の更改を要するとされる年。

p1=10、p2=20とする。

(ハ) rは、年利率。

(二) 従前の受信施設の更改費は、次により算定した額とする。

更改費=E×{1+(1/(1+r)q1)+(1/(1+r)q2)}

(イ) Eは、従前の受信施設の更改費
(ロ) q1及びq2は、従前の受信施設の更改を要するとされる年。q1=10、q2=20 とする。
(ハ) rは、年利率。

(三) 諸経費は、個別受信施設の設置に伴い必要となるその他の経費とする。

三 受信施設の移設又は改良その他必要な措置をとる場合

負担額=措置に要する経費+諸経費
(一) 措置に要する経費は、公共施設の設置後二〇年程度の期間通常のテレビジョン電波受信を可能とするために必要な経費(受信者が従前の方法による受信を行うために通常要する費用を差し引くものとする。)とする。
(二) 諸経費は、受信施設の移設又は改良等に伴い必要となるその他の経費とする。


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