建設省都計発第九六号、建設省住街発第八九号
平成五年六月二五日

各都道府県知事、各政令指定都市の長あて

建設省都市局長、建設省住宅局長通知


地区計画制度の運用等について


都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成四年法律第八二号)において、総合的な土地政策の一環として、土地利用計画の詳細性を高めることが重要であるとの認識の下、用途地域の細分化及び市町村の都市計画に関する基本的な方針の創設と併せて、地区計画制度の拡充が図られたところである。今後の地区計画制度の運用については、「都市計画法及び建築基準法の一部改正について」(昭和五六年八月五日付け建設省都計発第一〇九号建設事務次官通達)、「都市計画法及び建築基準法の一部改正について」(昭和五六年一〇月六日付け建設省計民発第二九号、建設省都計発第一二二号、建設省住街発第七二号建設省計画局長、建設省都市局長、建設省住宅局長通達)、「都市計画法及び建築基準法の一部改正について」(平成二年一一月二〇日付け建設省都計発第一六六号建設事務次官通達)及び「住宅地高度利用地区計画制度及び用途別容積型地区計画制度の運用について」(平成二年一一月二〇日付け建設省都計発第一六七号、建設省住街発第一四六号建設省都市局長、建設省住宅局長通達)によるほか、今回の制度拡充について左記Iに掲げる事項に留意し、遺憾のないようにされたい。
また、都市をゆとりと豊かさを真に実感できる人間居住の場として整備し、個性豊かで快適な都市づくり、とりわけ地域社会共有の身近な都市空間を重視したまちづくりを一層広範に推進するため、左記IIに掲げるところにより、市町村が定める都市計画である地区計画、住宅地高度利用地区計画その他の都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一二条の四第一項各号に掲げる計画(以下「地区計画等」という。)の策定が積極的に進められるよう取り計らわれたい。
なお、貴管下関係機関に対しても、周知方よろしくお願いする。

I 地区計画制度の拡充について
第一 地区整備計画における容積率の特例

地区整備計画において定める容積率(建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)の最高限度について、従来の地区計画の手法に加え、容積率の最高限度を公共施設の整備状況等に対応して二重に定めること及び用途地域において定められた容積率(以下「指定容積率」という。)に基づく地区整備計画の区域内の総容積の範囲内で建築物の容積を適正に配分することが可能とされ、また、これに対応した建築規制に関する規定が整備されたので、これらの措置については、次の事項に留意の上、地区の特性に応じた容積率規制の適切な運用を図ること。
一 誘導容積制度(都市計画法第一二条の五第四項及び建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第六八条の三第一項関係)

(一) 趣旨

土地の有効利用が必要とされているにもかかわらず、公共施設が未整備のため、土地の有効利用が十分に図られていない地区が広範に存し、また、そのため都心に近い既成市街地で土地の有効利用がなされていない地域を残存しつつ市街地が外延的に拡大するという都市構造上の問題が生じている状況に対応し、公共施設を伴つた土地の有効利用を誘導することを目的として、適正な配置及び規模の公共施設がない土地の区域において、地区整備計画に区域の特性に応じた容積率の最高限度(以下「目標容積率」という。)と区域内の公共施設の整備の状況に応じた容積率の最高限度(以下「暫定容積率」という。)を併せて定め、公共施設の整備状況に応じ、暫定容積率又は目標容積率を適用する制度(以下「誘導容積制度」という。)が創設されたところであること。

(二) 制度の活用

イ 誘導容積制度については、次の基本的な考え方を踏まえて、その積極的な活用に努めること。

(イ) 都市における土地は、必要な公共施設を備えて、地域の特性に応じた有効利用がなされるべきであり、当該区域における土地の有効利用により、適切な都市の空間構造の形成や都市機能の増進が図られるべきであること。
(ロ) 公共施設が未整備のため、当該地区の特性に応じた土地の有効利用が図られていない区域においては、積極的に、本制度の活用が図られるべきであること。

ロ 誘導容積制度の活用については、次のような場合が想定されるので、参考とすること。

(イ) 老朽化した木造共同住宅が密集している地域等居住環境が不良な住宅市街地において、公共施設を整備しつつ、建築物の建て替え等を誘導し、適正かつ合理的な土地利用の促進、居住環境の向上等を図る必要がある場合
(ロ) 計画的宅地化を図るべき市街化区域内農地の存する地域、新たに市街地として開発整備を図るべき地域等において、公共施設を整備しつつ、良好な市街地の形成を図る必要がある場合
(ハ) 未整備な幹線道路の沿道の地域において、幹線道路及び地区の公共施設を整備しつつ、一体的に土地の有効利用を図る必要がある場合

ハ 土地区画整理事業等により公共施設を整備する地区においては、これまで通常当該公共施設の整備が確実となった後に必要な用途地域の変更を行ってきたところであるが、必要に応じ、誘導容積制度を適用する地区計画を定めることにより、早期に用途地域の変更を行うことが可能となること。このため、今後は、土地区画整理事業等を実施する場合に、円滑な事業の執行及び適切な土地利用規制の実施を図るため、当該方式の活用に配慮すること。

(三) 区域の設定

誘導容積制度を適用する地区整備計画の区域は、公共施設の整備と土地の有効利用を一体的に行うべき土地の区域として、適切な広がり及び形状を有するものとなるように定めること。

(四) 地区計画策定の基準

誘導容積制度を適用する地区計画の策定は、従来の地区計画策定の基準によるほか、次の基準によること。
イ 地区計画の方針

区域の整備、開発及び保全に関する方針(以下「地区計画の方針」という。)において、当該地区の都市構造上の位置付け、当該地区において実現すべき市街地像、公共施設の整備を図りつつ土地の有効利用を誘導することの必要性等を明らかにするとともに、必要となる地区施設の整備方針、建築物等の整備に当たっての規制・誘導の方針等を明らかにすること。

ロ 地区整備計画

(イ) 容積率の最高限度

1) 目標容積率は、指定容積率以下で、当該地区整備計画の区域の土地利用の適正な増進が図られ、かつ、良好な環境の各街区が形成されるように定めること。
2) 暫定容積率については、土地利用の現況、公共施設の整備状況等を勘案の上、適正に定めること。なお、指定容積率の変更と併せて誘導容積制度を適用する場合には、変更前の指定容積率にも配慮して暫定容積率を定めること。
3) 地区整備計画の区域内の用途地域の指定状況、土地利用の現況及び動向、公共施設の整備状況等によって必要がある場合は、当該区域を区分して目標容積率若しくは暫定容積率を定め、又は当該区域の一部について目標容積率及び暫定容積率を定めることが可能であること。

(ロ) 地区施設の配置及び規模

1) 地区施設の配置及び規模は、必ず定めることとされており、当該地区の実情に応じて、少なくとも主として地区内の居住者等の利用に供されることが想定される道路、公園その他の施設であって、地区内の土地の有効利用に必要となるものを、地区施設として定めること。
2) 地区施設としての道路は、当該地区の土地の有効利用に必要な配置及び規模を有するように定めること。

なお、誘導容積制度は、建築基準法第五二条第一項の規定による前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう地区施設としての道路の幅員設定には十分配慮すること。

(ハ) その他留意事項

誘導容積制度の適用が考えられるが、必要な地区施設の配置及び規模を定めることが当面できない場合には、まず、地区整備計画において、暫定容積率に相当する容積率の最高限度を定め、地区施設の配置及び規模を定めることが可能となった段階で、地区整備計画を変更し、誘導容積制度を適用することを考慮すること。

(五) 誘導容積制度に係る建築制限

イ 建築条例

暫定容積率及び目標容積率はいずれも建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づいて市町村が定める条例(以下「建築条例」という。)により建築基準法上の制限とすること。

ロ 特定行政庁の認定

建築基準法第六八条の三第一項の規定に基づく特定行政庁の認定は、具体の建築計画、公共施設の整備状況等を見定めつつ、総合的な判断に基づいて行うこと。

(六) その他留意すべき事項

イ 誘導容積制度を適用する地区整備計画の区域内において適正な配置及び規模の公共施設が整備された場合には、都市計画担当部局と建築担当部局は協議の上、都市計画及び建築条例を適切に見直すこと。なお、当該区域のうち、公共施設の整備と一体的に土地の有効利用を行う単位として適切な一団の土地について適正な配置及び規模の公共施設の整備が行われた場合には、当該一団の土地について見直すこととして差し支えないこと。
ロ 特定行政庁の認定は、誘導容積制度の趣旨を実現する上で重要な役割を果たすものであり、また、地区施設の整備状況等を適切に見定める必要があることから、地区計画の策定及び特定行政庁の認定の運用に関し、都市計画担当部局と特定行政庁の緊密な連絡調整を図ること。

二 容積の適正配分(都市計画法第一二条の五第五項及び建築基準法第六八条の三第二項関係)

(一) 趣旨

適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、それぞれの地区の特性に応じて、容積率規制の詳細化を図り、良好な市街地環境の形成及び合理的な土地利用を図るため、地区整備計画の区域を区分し、当該各区域に、当該地区整備計画の区域内の指定容積率の数値に当該数値の定められた区域の面積を乗じたものの合計の範囲内で、建築物の容積を適正に配分して容積率の最高限度を定めること(以下「容積の適正配分」という。)及び当該各区域内の建築物について、当該地区整備計画において定められた容積率の最高限度を指定容積率とみなすことが可能とされたものであること。

(二) 制度の活用

イ 容積の適正配分は、良好な都市環境の形成、都市機能の増進等の都市計画上の必要性を見極め、かつ、地区整備計画に適切に壁面の位置の制限等が定められることにより周辺の市街地環境の悪化を来さないことを確認した上で、その適用を図るべきものであること。
ロ 容積の適正配分は、次のような場合に行うことができること。

(イ) 誘導容積制度を適用して公共施設を整備しつつ土地の有効利用を図る上で、都市計画に定められている道路等主要な道路に面する区域に高い容積率を定めることにより、当該区域において合理的な土地利用を促進するとともに当該主要な道路と接続する道路の整備を促進する等、容積の適正配分によつて公共施設の整備を促進することが必要な場合
(ロ) 土地利用上一体性のある区域において、住宅供給の促進、文化施設その他の公益上必要と認められる施設の整備その他都市機能の増進等のため指定容積率を超えて有効・高度利用を図るべき区域及び樹林地、オープンスペース等の保全又は形成、伝統的建造物の保存、良好な景観・街並みの保全又は形成等のため低い容積率を適用すべき区域がある場合

(三) 区域の設定

イ 容積の適正配分を行う地区整備計画の区域及び地区整備計画の区域を区分して異なる容積率の最高限度の定められた区域(以下「容積の適正配分に係る各区域」という。)は、それぞれ、良好な都市環境の形成や都市機能の増進を図るために区域の特性に応じて建築物の容積を配分する区域として、適切な形状及び規模を有する区域となるよう定めること。
ロ 容積の適正配分は、現に適正な配置及び規模の公共施設が整備されている地区又は誘導容積制度が併用されることにより適正な配置及び規模の公共施設が整備されることが確実な地区に限って行うこと。この場合、適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域とは、例えば、道路についてみれば、当該地区の規模及び形状、その区域内の建築物の建築その他の土地利用の計画等を考慮し、当該地区の道路網がその周辺の道路と一体的に、かつ、適正な規模で形成されている区域をいうこと。

(四) 地区計画策定の基準

容積の適正配分に係る地区計画の策定は、従来の地区計画策定の基準によるほか、次の基準によること。
イ 地区計画の方針

地区計画の方針を定めるに当たっては、地区計画の目標として、当該地区において目標とする市街地像及びその実現を図るための容積の適正配分による合理的な土地利用の必要性について明らかにするとともに、地区整備計画の区域及び容積の適正配分に係る各区域の土地利用の方針及び建築物等の整備に当たっての規制・誘導の方針を明示すること。

ロ 地区整備計画

(イ) 容積率の制限

1) 容積率の最高限度

1) 容積の適正配分に係る各区域の容積率の最高限度の数値については、当該地区計画の目標に即し、都市機能の増進、良好な都市環境の形成等に寄与するように適切に定めること。
2) 都市計画法第一二条の五第五項後段の規定の適用については、地区整備計画の区域内における道路等建築物の建築が想定されない土地の区域の面積は、地区整備計画の区域の面積及び容積の適正配分に係る各区域の面積から、それぞれ除外すること。
3) 容積の適正配分に係る各区域の容積率の最高限度の数値は、原則として、指定容積率に一・五を乗じて得た数値を超えないこと。また、指定容積率を上回る局所的な高容積率の設定により、近隣の環境に著しい支障を来すことのないよう適切に定めること。
4) 指定容積率を下回る容積率の最高限度については、一〇分の五を下回らないように定めること。

2) 容積率の最低限度

容積率の最低限度については、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、当該区域内の合理的な土地の高度利用の促進を図るために定めることとされたものであり、指定容積率の数値の範囲内で適切な数値を定めること。

(ロ) 建築物の敷地面積の最低限度

建築物の敷地面積の最低限度は、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、小規模な敷地において高度利用されることによって市街地環境の悪化を招くことを防止するために定めることとされたものであり、当該区域における敷地規模の現状、敷地の共同化の実現可能性、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における良好な市街地環境が維持・形成されるよう定めること。

(ハ) 壁面の位置の制限

壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置を含むものに限る。)は、容積率の最高限度を指定容積率を超えて定める区域において、市街地環境の悪化を防止するために、敷地内に道路に接して適切な規模の空地を確保することが有効であることから定めることとされたものであり、当該区域における道路等公共施設の整備状況、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、良好な市街地環境の各街区が形成され、又は保持されるよう適切に定めること。

(ニ) 地区施設の配置及び規模

容積の適正配分に係る容積率制限の特例は、建築基準法第五二条第一項第一号、第二号、第三号又は第四号に対する特例であり、前面道路の幅員による容積率制限に係る特例ではないことから、本制度の趣旨が適切に生かされるよう地区施設としての道路の幅員設定については十分配慮すること。

(五) 容積の適正配分に係る建築制限

容積の適正配分を行う場合には、地区整備計画において、指定容積率を超える容積率の最高限度を定める区域について容積率の最低限度、敷地面積の最低限度及び壁面の位置の制限(道路に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)を建築条例に定めるとともに、指定容積率以下の容積率の最高限度を定める区域について当該容積率の最高限度を建築条例に定めること。この場合において、地区計画の案を策定する段階から都市計画担当部局と建築担当部局との緊密な連絡調整を行うこと。

三 誘導容積制度、容積の適正配分及び用途別容積の併用

(一) 誘導容積制度と容積の適正配分の併用

(イ) 二の(二)のロの(イ)に掲げる場合のほか、地区の特性から区域を区分して建築物の容積を適正に配分する必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う必要がある場合には、誘導容積制度及び容積の適正配分を併せて適用し、目標容積率について、容積の適正配分を行い、建築基準法第六八条の三第一項及び第二項を適用すること。なお、暫定容積率については、公共施設が未整備である状況に対応して定められるものであることから、容積の適正配分の対象とならないこと。
(ロ) 容積率の最高限度は、目標容積率及び暫定容積率のいずれも建築条例により建築基準法上の制限とすること。この場合において、地区計画の内容(暫定容積率を除く。)に適合し、かつ、特定行政庁の認定を受けたものについて、当該目標容積率を指定容積率とみなしてこれを適用すること。

(二) 誘導容積制度と用途別容積の併用

(イ) 地区の特性から、住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う等の必要がある場合には、誘導容積制度及び用途別容積(住宅の用途に供する建築物に係る容積率をそれ以外の建築物に係る容積率以上に定めることをいう。以下同じ。)を併用し、目標容積率を用途別に定め、建築基準法第六八条の三第一項及び第三項を適用すること。なお、暫定容積率は、公共施設が未整備である状況に対応して定められるものであることから、用途別容積の対象とならないこと。
(ロ) 容積率の最高限度は、目標容積率及び暫定容積率のいずれも建築条例により建築基準法上の制限とすること。この場合において、地区計画の内容(暫定容積率を除く。)に適合し、かつ、特定行政庁の認定を受けたものについて、当該目標容積率を指定容積率とみなしてこれを適用すること。

(三) 容積の適正配分と用途別容積の併用

(イ) 地区の特性から、区域を区分して建築物の容積を適正に配分し、併せて住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要がある場合には、容積の適正配分及び用途別容積を併用し、建築基準法第六八条の三第二項及び第三項を適用すること。
(ロ) この場合において、容積率の最高限度については、「住宅地高度利用地区計画制度及び用途別容積型地区計画制度の運用について」(平成二年一一月二〇日付け建設省都計発第一六七号、建設省住街発第一四六号建設省都市局長、建設省住宅局長通達。以下「平成二年局長通達」という。)記の第二の四の(二)の(ホ)の規定について、「指定容積率」とあるのは「容積の適正配分により指定容積率とみなした容積率の最高限度」と読み替えて適用すること。ただし、これにより算定される数値にかかわらず、指定容積率の数値に一・五倍を乗じて得た数値を超えないようにすること。

(四) 誘導容積制度、容積の適正配分及び用途別容積の併用

(イ) 地区の特性から、区域を区分して建築物の容積を適正に配分し、併せて住宅の用途に供する建築物に係る容積率の制限の特例を設ける必要があるが、適正な配置及び規模の公共施設がないためその整備を併せて行う必要がある場合には、誘導容積制度、容積の適正配分及び用途別容積を併せて適用し、目標容積率について、建築基準法第六八条の三第一項、第二項及び第三項を適用すること。なお、暫定容積率は、公共施設が未整備である状況に対応して定められるものであることから、容積の適正配分及び用途別容積の対象とならないこと。
(ロ) この場合において、目標容積率については、平成二年局長通達記の第二の四の(ニ)の(ホ)の規定について、「指定容積率」とあるのは「容積の適正配分により指定容積率とみなした容積率の最高限度」と読み替えて適用すること。ただし、これにより算定される数値にかかわらず、指定容積率の数値に一・五倍を乗じて得た数値を超えないようにすること。
(ハ) 容積率の最高限度は、目標容積率及び暫定容積率のいずれも建築条例により建築基準法上の制限とすること。この場合において、地区計画の内容(暫定容積率を除く。)に適合し、かつ、特定行政庁の認定を受けたものについて、当該目標容積率を指定容積率とみなしてこれを適用すること。

第二 市街化調整区域における地区計画(都市計画法第一二条の五第一項第二号関係)

(一) 趣旨

市街化調整区域は、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る観点から都市計画区域を区分して、市街化を抑制すべきとされた区域であり、集落地域整備法(昭和六二年法律第六三号)の対象地域に限って、集落地区計画制度に基づく詳細な土地利用規制が行われてきたが、集落地域以外の市街化調整区域内の地域においても、許容されている開発行為、建築行為を適切に規制・誘導し、良好な都市環境の維持・形成を図っていくため、詳細な土地利用計画を定める必要性が高まっている。
このため、市街化調整区域における開発地等の都市的土地利用の行われている土地の区域又は行われることが確実な土地の区域について詳細な土地利用計画を策定して、開発行為、建築行為を都市計画上適切に規制・誘導することを目的として、地区計画制度の適用対象地域が拡大され、従来の市街化区域並びに市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域内の用途地域が定められている土地の区域に加えて、市街化調整区域においても地区計画が定められることとされたものであること。

(二) 制度の活用

イ 地区の特性にふさわしい良好な都市環境の維持・形成を図る必要がある場合には、市街化調整区域にあっても、周辺における市街化を促進することがないこと等に配慮しつつ、積極的に、詳細な土地利用計画制度である地区計画制度の活用が図られるべきであること。
ロ 市街化調整区域における地区計画については、次のような地区において適用が想定されるものであるので、参考とすること。

1) 住居系の計画開発地において、周辺の景観、営農条件等との調和を図りつつ、市街化調整区域におけるゆとりある居住環境の形成、必要な公共・公益施設の整備等を行う地区
2) 幹線道路の沿道等の流通業務、観光・レクリエーション等を主体とする開発が行われる地区等の非住居系の計画開発地で、必要な公共公益施設の整備を行いつつ、周辺の環境・景観と調和する良好な開発を誘導する地区
3) 既存住宅団地等において、市街化調整区域におけるゆとりある良好な都市環境の維持・増進を図る地区

ハ ロの1)及び2)の地区においては、都市計画の効果的な推進のために、次のように地区計画の策定を活用することも想定されること。

1) 市街化調整区域における計画開発地において、開発の初期の段階から、地区計画を定め、良好な都市環境の形成を図るための詳細な土地利用規制を行うことにより、円滑かつ効果的に、地区にふさわしい良好な環境の市街地の形成を図ること。
2) 隣接又は近接して行われる複数の計画開発が相互に連携することによって一体的でより良好な環境の市街地の形成が図られる場合に、当該開発区域の各々において、相互に連携を図りながら地区計画を定めることにより一体的に規制・誘導を行うこと。

(三) 区域の設定

市街化調整区域における地区計画の区域は、地区にふさわしい良好な市街地環境の形成を図るとともに、周辺の景観、営農条件等との調和を図る上で、適切な規模及び形状を有するものとなるように定めること。

(四) 地区計画策定の基準

イ 地区計画の方針

地区計画の方針においては、市街化調整区域の性格を踏まえ、自然環境の保全、ゆとりある良好な市街地環境の維持・形成、周辺の景観、営農条件等との調和、地域の活性化等について、地区の特性から必要な事項を、当該地区計画の目標として明らかにすること。

ロ 地区整備計画

当該地区計画の方針に即して、地区の特性にふさわしい良好な都市環境の維持・形成を図るため、地区施設の配置及び規模、建築物等に関する事項並びに土地の利用に関する事項について必要な事項を適切に定めること。なお、土地の有効・高度利用の促進を図る土地利用規制である容積率の最低限度、建築面積の最低限度及び高さの最低限度については定めないものであること。

(五) その他留意すべき事項

イ 市街化調整区域に地区計画を定めるものとすることにより、市街化を抑制すべき区域であるという市街化調整区域の性格は変わるものではないこと。
ロ 市街化調整区域における計画開発地で、将来市街化区域への編入が想定される区域において地区計画を定める場合には、必要に応じ、都市施設の都市計画決定も行うこと。

第三 地区整備計画についての要請(都市計画法第一二条の五第九項関係)

(一) 趣旨

地区計画制度については、近年、地区の特性に応じたきめ細かなまちづくりに対する要請の高まりに応じてその策定実績が着実に増加しているが、今後さらに地区計画の策定を広く推進していく上で、土地所有者等のまちづくりに対する気運の高まり、市街地整備の熟度等を的確に受け止め、地区にふさわしい良好な都市環境の維持・形状を円滑に進めることが求められている。
このような状況を踏まえ、地区計画の方針のみが策定されている地区において、土地所有者等の合意の上に、地区整備計画の的確な策定に資するため、地区計画制度において、住宅地高度利用地区整備計画及び再開発地区整備計画についての要請制度と同様に地区整備計画を定めるべきことを土地所有者等が要請することができることとされたものであること。

(二) 制度の活用及び運用上の留意事項

イ 地区整備計画についての要請制度を踏まえて、先行して地区計画の方針を策定するとともに土地所有者等の創意工夫によるまちづくり活動を支援する方式を適切に活用して、地区計画制度が一層広く推進されるよう努めること。
ロ 地区計画の方針のみが定められた地区において、地区整備計画の策定に向け、当該地区の土地所有者等の合意形成が円滑かつ的確になされるよう、適切な指導に努めること。
ハ 要請を受理した場合には、当該要請の前提となった協定の内容を地区計画の方針に照らして支障のない限り尊重して、地区整備計画の策定に努めること。なお、地区整備計画の要請制度は、要請がない場合に市町村が能動的に地区整備計画を定めることを妨げるものではないこと。
ニ 地区整備計画が決定された後は、地区計画に定められた内容に沿った建築行為、開発行為等が行われなければならないことから、要請に当たっては、土地所有者等の間で地区計画の方針に照らして適切に建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事項についての合意が存在していることを客観的に明らかにする協定が締結されていることが要件とされているものであるので、この点に留意すること。

II 地区計画等の推進について
第一 市町村の都市計画に関する基本的な方針と連携した地区計画等の策定推進

改正法により創設された市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)において定められた地域別のあるべき市街地像の実現を図る上で、地区計画等の活用が重要であること、また、この基本方針の策定が、地区の特性にふさわしい良好な環境を備えた特色ある市街地像を実現する地区計画等の策定を促進することが期待されるものであることにかんがみ、基本方針において地区計画等の策定を推進することが必要と考えられる地区のおおむねの位置・区域及び計画に定めるべき主要な事項の方針等を明示することとし、これにより地区計画等の一層の策定推進に努めること。

第二 土地所有者等によるまちづくりに関する活動に対する支援

今後、地区計画等制度の推進に当たっては、地区整備計画の要請制度が創設されたことも踏まえ、地区計画等の策定が予定される地区の土地所有者等のまちづくりに関する活動が円滑かつ積極的に行われるよう、適切な指導に努めるとともに、土地所有者等による協議会の設立・運営に対する支援、コンサルタントの派遣等に努めること。
また、よりきめ細かく、良好な市街地環境の形成・保全を図るため、土地所有者等による自主的な規制が行われることが適当である場合には、建築協定制度又は緑化協定制度の積極的な活用について指導し、より良好な都市環境の形成等に努めること。

第三 各種事業手法との連携

地区における目標とする市街地像について、地域社会の合意形成を図りつつ、その実現を図るため、地区計画等の策定を基本に、各種事業手法との連携を一層強化することにより、当該事業の円滑な推進にも配慮しつつ、建築行為、開発行為の規制・誘導と併せて一体的に地区施設等の整備を図ることが重要であること。このため、地区計画等の区域の特性、周辺市街地の状況等を勘案して、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、住宅地区改良事業等の各種事業手法と積極的に連携を図ること。また、必要に応じ、街路事業、公園事業、下水道事業等の公共施設の整備事業との連携に努めること。

第四 建築基準法の各種制度の活用

(一) 予定道路の指定がある場合の容積率制限の合理化

地区計画等に定められた道について予定道路の指定がある場合、建築基準法第六八条の七第五項の規定に基づく特定行政庁の許可による、建築基準法第五二条第一項の規定による前面道路の幅員による容積率制限についての特例措置が設けられたので、予定道路の指定を機動的に行うことにより、地区計画等に定められた道の整備の促進を図ること。なお、建築基準法第四六条に基づく壁面線の指定がある場合にも同様の特例措置が建築基準法第五二条第五項に規定されているので、留意すること。

(二) 総合的設計による一団地の建築物の取扱い

誘導容積制度を適用する地区整備計画の区域内において、建築基準法第八六条第一項の規定に基づき、一団地内に二以上の構えを成す建築物を総合的設計により建築する場合において、特定行政庁が支障がないと認めるものについては一団地単位で誘導容積制度に係る特定行政庁の認定を行うことが可能であるので、必要に応じ適切な活用を図ること。

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