建設省都計発第一七七号・建設省住街発第一〇八号
平成七年一二月二七日

各都道府県知事あて

建設省都市局長建設省住宅局長通知


高度利用地区の指定について

高度利用地区の指定については、昭和六一年一二月二七日付け建設省都計発第一一七号、建設省住街発第九五号都市局長・住宅局長通達をもって高度利用地区指定標準を通知しているところであるが、市街地の土地の高度利用と都市機能の更新を一層推進する上で地域特性等を踏まえた高度利用地区の的確かつ柔軟な活用を図るため、今般、高度利用地区指定標準を高度利用地区指定に当たっての参考とする目安としての指針に改め、住宅供給の促進等に資するため容積率の最高限度の引上げ等所要の改善を行うこととした。
ついては、今後は別添のとおり定める「高度利用地区指定指針」を目安としつつ、地域特性等に応じた総合的な判断に基づいた弾力的な運用に配慮するとともに、市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新が必要な地区については、積極的な高度利用地区の指定を図られたい。
なお、昭和五一年四月一日建設省都計発第二五号都市局長、住宅局長通達「高度利用地区の指定について」は廃止する。
以上、貴管下市町村に対して、この旨周知徹底方取り計らわれたい。



(別添)

高度利用地区指定指針

1 指定方針

(1) 高度利用地区は都市の合理的土地利用計画に基づき、建築物の敷地等の統合を促進し、小規模建築物の建築を抑制するとともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することにより、用途地域内の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図ることを目的として指定する。
(2) 高度利用地区は、当該地区の土地利用の状況及び将来の動向等を十分勘案して指定するものとする。この場合において、地区の住宅確保の必要性についても十分配慮するものとする。
(3) 高度利用地区は、大都市等の都心地域であって、都市基盤施設が公共輸送機関を含めて現に高い水準で整備され、建築物の建替えを通じて都市機能が望ましい姿に更新されるよう誘導することが特に必要な地区においては、敷地内空地の確保に替えて、誘導すべき建築物の用途を特定し、これに対応して容積率の最高限度を定める方法による指定ができるものとする。
(4) 高度利用地区の指定は、2の指定標準を目安としつつ、都市整備の目標、公共施設の整備状況、周辺市街地の土地利用の動向等の地区の特性を踏まえ、総合的な判断に基づいて弾力的に運用するものとする。
(5) 高度利用地区の指定に当たって地域地区及び都市施設に関する都市計画の変更が必要となるときは、当該変更を行うものとする。

2 高度利用地区指定標準

(1) 対象地区

高度利用地区は次に掲げる要件に該当する区域について指定する。
イ 次のいずれかに該当すること

1) 用途地域内における枢要な商業地、業務地又は住宅地として高度に土地利用を図るべき区域であって、当該区域内に現に存する建築物の相当部分の建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)が現に指定されている容積率より著しく低い区域
2) 用途地域内で土地利用が細分化されていること、公共施設の整備が不十分なこと等により土地の利用状況が著しく不健全な地区であって、都市環境の改善上又は災害の防止上土地の健全な高度利用を図るべき区域
3) 大都市等の都心部に存し、現に都市基盤施設が高い水準で整備されており、かつ、高次の都市機能が集積しているものの、建築物の老朽化又は陳腐化が進行しつつある区域であって、建築物の建替えを通じて都市機能が望ましい姿に更新されるよう誘導を図るべき区域
4) 区域の大部分が第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域内に存し、かつ、大部分が建築物その他の工作物の敷地として利用されていない区域で、その全部又は一部が中高層の住宅街区として整備されるべき区域
5) 1)から4)に掲げるもののほか、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るべき区域

ロ 当該区域の土地利用の高度化を図るために必要な幹線道路等の公共施設が整備されていること、又は当該公共施設に関する都市計画が定められていること。

(2) 地区の規模及び形状

イ 地区の規模

高度利用地区は、適正な街区群が形成される規模を有する地区について定めるものとする。ただし、市街地再開発事業又は住宅街区整備事業の実施のため特に必要がある場合には適正な一街区が形成される規模の地区について定めることができる。

ロ 地区の形状

高度利用地区の境界は、原則として道路、河川その他の土地の区域を明示するのに適当な地形、地物等により定めるものとし、その形状はできる限り整形とする。

(3) 容積率の最高限度等

容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合(以下「建ぺい率」という。)の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限は、当該高度利用地区の土地利用の状況及び将来の動向等を勘案し、建築物の敷地等の統合を促進し、小規模建築物の建築を抑制するとともに建築物の敷地内に有効な空地を確保することができるよう、以下により定める。
イ 容積率の最高限度

容積率の最高限度は、当該地区の存する地域において用途地域に関する都市計画により定められた容積率の最高限度(以下「基準容積率」という。)が三〇〇%未満の場合には基準容積率に二〇〇%を加えた数値、基準容積率が三〇〇%以上の場合には基準容積率に三〇〇%を加えた数値を上限として、次の1)、2)及び3)に定めるところにより定める。
この場合において、敷地規模に応じて、それぞれ別に適切な容積率の最高限度を定めることができるものであるが、基準容積率に一五〇%を加えた数値以上の数値を容積率の最高限度として定める場合には、別表のとおり当該容積率の最高限度の適用を受ける敷地の最低規模を定める。
1) 容積率の最高限度は、基準容積率に、当該高度利用地区における建築基準法第五三条第一項の規定による建ぺい率から当該高度利用地区に関する都市計画においてハの1)により定める建ぺい率の最高限度を減じた数値が一〇%又は二〇%の場合には五〇%、当該数値が三〇%以上の場合には一〇〇%を加えた数値を、その他の場合には基準容積率を上限として定める。

なお、容積率の最高限度を基準容積率を超えて定める場合には、併せて壁面の位置の制限を定める。

2) 壁面の位置の制限により、道路に接して、幅員四m以上(歩道と一体として確保される場合又は主要な歩行者道線として想定する必要のない場合は幅員二m以上)の空地(梁下の高さが四m以上のピロティ状の部分が突き出している空地を含む。)が確保される場合には、1)による容積率の最高限度にそれぞれさらに五〇%を加えた数値、また、これに加えて、広場等の有効な空地が確保される場合には、1)による容積率の最高限度に、それぞれさらに一〇〇%を加えた数値を上限として、容積率の最高限度を定めることができる。
3) 住宅の立地誘導を図るべき区域において建築物の延べ面積のおおむね四分の一以上を住宅の用に供する建築物については、当該区域の特性を勘案し、1)及び2)による容積率の最高限度に、それぞれさらに一〇〇%を加えた数値を上限として、容積率の最高限度を別に定めることができる。
4) 建築物の一部において、屋内型の広場スペース、集会所、ホール、ギャラリー等文化機能若しくは交流機能の用に供する部分を備えた建築物については、1)、2)による容積率の最高限度に、それぞれさらに一〇〇パーセントを加えた数値を上限として、容積率の最高限度を別に定めることができる。

ロ 容積率の最低限度

容積率の最低限度は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るために定めることとされているものであり、当該区域内の高度利用を促進するよう、基準容積率の数値の範囲内で適切な数値を定める。

ハ 建ぺい率の最高限度

1) 建ぺい率の最高限度は、建築基準法第五三条第一項の規定による建ぺい率を超えないように(2)に該当する場合を除く。)一〇%の整数倍の数値をもって定める。
2) 建築基準法第五三条第三項又は第四項の各号の一に該当する建築物については、次により建ぺい率の最高限度を定める。

(i) 建築基準法第五三条第三項各号のいずれかに該当する建築物にあっては1)により定める数値に一〇%を、同項各号のいずれにも該当する建築物又は同条第四項第一号に該当する建築物にあっては1)により定める数値に二〇%をそれぞれ加えた数値をもって建ぺい率の最高限度とする。

この場合において、建築物の敷地が防火地域の内外にわたり、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物であるときは、その敷地はすべて防火地域内にあるものとみなす。

(ii) 建築基準法第五三条第四項第二号又は第三号に該当する建築物については建ぺい率の最高限度は定めない。

ニ 建築物の建築面積の最低限度

建築物の建築面積の最低限度は、当該区域における敷地規模の現状、容積率の最高限度等を総合的に勘案して、当該区域における市街地環境の悪化を招くことのないよう定める。

ホ 壁面の位置の制限

壁面の位置の制限は、当該高度利用地区内の建築物の利用者等の通行のために必要な空地を確保する場合、植込み、芝生等を整備するために必要な空地を確保する場合等市街地の環境の向上を図るため有効な空地を確保するために必要な場合において、敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。)に接して空地を確保することができるよう当該道路の幅員、歩行者の通行量、建築物の配置、建ぺい率の最高限度等を勘案して適切に定める。
なお、壁面の位置は、立体的に定めることもできるので、例えば、上階部分の壁面の位置より下階の歩行者部分の壁面の位置を道路境界線から後退して定めて道路に面して歩行者のための空間を確保する場合その他やむを得ない場合においては、立体的に定めて差し支えない。

3 機能更新型高度利用地区に係る特例

次の(1)に掲げるすべての要件を満たす地区については、容積率の最高限度等の適用を2(3)の規定に代えて、次の(2)によることができる。
(1) 機能更新型高度利用地区の適用地区

次に掲げる要件のすべてに該当する地区であること。

1) 都市の中心部にあって、現に高次の都市機能が集積していることにより都市の中心的な核としての役割を果たしている地区であるとともに、複数の鉄道路線等が結接している等公共交通の広域的なネットワーク上卓越した立地条件にあること。
2) 高度利用地区を指定しようとする区域内若しくはその近傍において車道の車線数が四以上の道路を有するとともに、当該区域内において歩道又は地下道等による歩行者ネットワークが十分に整備されていること。
3) 地方公共団体により、高度利用地区を指定しようとする区域を含む地域の望ましい更新の姿を示した構想が策定されており、当該構想において、更新により誘導すべき建築物の用途や施設が明確に提示されていること。

(2) 容積率の最高限度等

容積率の最高限度及び最低限度、建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限は、地区の特性を勘案し、以下により定める。
イ 容積率の最高限度

容積率の最高限度は、基準容積率の一・五倍以下で、かつ、基準容積率に三〇〇パーセントを加えた数値を上限として、次の1)、2)及び3)に定めるところにより定める。
この場合において、地区の状況を踏まえつつ、容積率の最高限度を敷地規模に応じてそれぞれ異なる数値として定めることは差し支えない。
1) 容積率の最高限度は、誘導すべき建築物の用途を特定した上で、当該用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の三分の二以上の建築物(以下「誘導用途建築物」という。)について、基準容積率に二〇〇パーセントを加えた数値を上限として、当該地区の土地利用及び公共施設の状況を勘案して適切な数値で定める。この場合、容積率の最高限度の定め方は、基準容積率と同じ数値を定めた上で、誘導用途建築物に係る容積率の最高限度を別に定める。この場合、誘導すべき建築物の用途は、建築基準法別表第二の規定に用いられている用語を使用するなど、疑義の生じないように定める。
2) 幅員が五・五メートル以上の歩道(壁面の位置の制限により敷地内に設けられる歩道状空地の部分とあわせて五・五メートルの幅員が確保される場合を含む。)に面して主たる出入口を設ける場合又は地下道若しくは立体遊歩道等に直結する場合については、誘導用途建築物に係る容積率の最高限度について、1)による数値に一〇〇パーセントを加えた数値を上限として容積率の最高限度を定めることができる。
3) 建築物の一部において、屋内型の広場スペース、集会所、ホール、ギャラリー等文化機能若しくは交流機能の用に供する部分を備えた建築物については、1)、2)による誘導用途建築物に係る容積率の最高限度の数値とは別に、これらの建築物に係る容積率の最高限度を定めることができる。この場合、別に定める容積率の最高限度は、基準容積率に一〇〇パーセントを加えた数値を上限として定める。

ロ 容積率の最低限度

容積率の最低限度は、2(3)ロの規定に従って定める。

ハ 建ぺい率の最高限度

建ぺい率の最高限度は、2(3)ハの規定に従って定める。

ニ 建築物の建築面積の最低限度

建築物の建築面積の最低限度は、2(3)ニの規定に従って定める。

ホ 壁面の位置の制限

誘導用途建築物に係る容積率の最高限度として基準容積率に一五〇パーセントを加えた数値以上の数値を定める場合には、高度利用地区を指定しようとする区域内の主要な道路(歩行者専用道路及び交通規制により歩行の円滑な通行が図られている道路を除く。)に設けられた歩道の幅員が四メートル未満の場合については、歩道上の空地の幅員が道路に設けられた歩道の幅員を含めて四メートル以上確保されるように、当該主要な道路に面して壁面の位置の制限を定める。
なお、壁面の位置は、立体的に定めることができるので、例えば、上階部分の壁面の位置より下階の歩行者部分の壁面の位置を道路境界線から後退して定めて道路に面して歩行者のための空間を確保する場合その他やむを得ない場合においては、立体的に定めて差し支えない。

4 高度利用地区の区域の大部分が第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域内に存し、かつ、大部分が建築物その他の工作物の敷地として利用されていない区域における高度利用地区の特例

高度利用地区の区域の大部分が第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域内に存し、かつ、大部分が建築物その他の工作物の敷地として利用されていない区域における高度利用地区については、原則として基準容積率と同一の数値をもって容積率の最高限度を定める。
また、当該高度利用地区内において住宅街区整備事業が施行される場合は、当該事業の事業計画で定められた施設住宅区以外の施行地区(以下「施設住宅区以外の施行地区」という。)内の建築物については、容積率の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度を下回ることができる旨定め、又は、施設住宅区以外の施行地区についての容積率の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度は、(3)のロ及びニによる数値を下回る別の数値を定めることができる。



(別表)

容積率の最高限度
当該容積率の最高限度の適用を受ける敷地の最低規模
基準容積率に 一五〇%加えた数値
五〇〇m2
基準容積率に 二〇〇%加えた数値以上
一〇〇〇m2


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