建設省都計発第八三号
平成九年九月一日

都道府県知事、指定都市の長あて

建設事務次官通達


都市計画法及び建築基準法の一部改正について


都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成九年法律第七九号)は、平成九年六月一三日に公布され、その一部(共同住宅の共用の廊下又は階段に係る容積率制限の合理化に関する部分)はすでに公布の日から施行されているが、平成九年九月一日、「高層住居誘導地区」に関する部分が施行された。また、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成九年政令第二七四号)並びに建築基準法施行規則の一部を改正する省令(平成九年建設省令第一三号)も、同九月一日に施行された。
今回の改正の内容(九月一日施行に係る部分)は、職住近接の都市構造を実現することを目的として、都市計画に「高層住居誘導地区」を定めるとともに、同地区内の建築物について、住宅の用途に着目して建築物の容積率、形態制限等について所要の合理化を行うものである。
貴職におかれては、本改正の趣旨を踏まえ、下記の事項に十分留意して、その運用に遺憾のないようにされたく、命により通達する。また、貴管下関係機関に対しても、この旨周知徹底方お願いする。

1 高層住居誘導地区制度の意義について

高層住居誘導地区制度は、大都市地域の都心地域等において、居住機能の低下、人口の空洞化が進展し、職住の遠隔化による通勤時間の増大、公共公益施設の遊休化などの問題が発生していることにかんがみ、住宅と非住宅の混在を前提とした用途地域内の土地の区域に高層住宅の建設を誘導することにより、住宅と非住宅の適正な用途配分を回復し、職住近接の都市構造を実現するとともに、良好な都市環境の形成を図ることを目的として創設されたものであること。
本制度においては、このような目的を達成するため、高層住宅の建設を誘導すべき地区を都市計画に位置付け、住宅用途に着目した容積率の引き上げ、斜線制限の緩和、日影規制の適用除外等の措置を講じることとしたものであること。

2 高層住居誘導地区制度の活用について

本制度は、都市における住宅と非住宅の適正な用途配分を実現するため、高層住居誘導地区を都市構造的な観点から適切な場所に指定するものであり、次の基本的事項に配慮しつつ、その積極的な活用に努めること。
(1) 都心地域等における人口の確保

職住の遠隔化による通勤時間の増大などの問題に対応し、都市構造の再構築を図っていくために、大都市地域の都心地域等における定住人口及び住宅の確保を推進することが不可欠となっていることにかんがみ、用途地域の持つ用途の適正な配分を図るという機能を補完するものとして、本制度の積極的な活用を図ること。
なお、本制度は大都市地域の都心地域のみならず、地方都市における中心市街地空洞化対策にも有効であると考えられるので、必要に応じ活用の検討を行うこと。

(2) 土地の有効高度利用

本年二月一〇日に閣議決定された「新総合土地政策推進要綱」においては、土地政策の目標は、「所有から利用へ」との理念に基づき、土地の有効利用による適正な土地利用の推進であると位置付けた上、総合的な施策の展開を図ることとされており、また、本年三月二八日に閣議決定された「規制緩和推進計画」においても、良質な中高層都市住宅の供給の促進に向けた土地の有効高度利用の促進策が盛り込まれており、本制度はこれらに沿うものであるので、運用に当たっては、その趣旨を十分踏まえること。

(3) 良好な都市環境の形成

高層住居誘導地区においては、住宅用途に着目した容積率の引き上げ、斜線制限の緩和、日影規制の適用除外等の措置が講じられることとなるので、地区の決定に当たっては、土地利用の現況、公共施設の整備状況等を踏まえて、地区内及び周辺の市街地環境に対する影響を総合的に検討するとともに、必要に応じて、建ぺい率の最高限度及び敷地面積の最低限度を定めるなど、良好な都市環境の形成を誘導するような適切な運用を図ること。

3 執行体制の整備について

本制度においては、高層住居誘導地区に関する都市計画において、住宅割合三分の二以上の建築物の容積率の最高限度、建ぺい率の最高限度、敷地面積の最低限度が定め得ることとなり、併せて当該地区内の建築物についての建築規制の特例も定められ、これが建築確認の際の基準となるので、本制度の運用に当たっては、都市計画担当部局と建築担当部局が一層の連携を図りつつそれぞれの役割を適切に遂行するよう努めること。

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