本年五月二九日に公布された都市計画法の一部を改正する法律(平成一〇年法律第七九号)については、都市計画法施行令の一部を改正する政令(平成一〇年政令第三三一号。以下「改正令」という。)及び都市計画法施行規則の一部を改正する省令(平成一〇年建設省令第三七号)とともに、本年一一月二〇日から施行されたところである。
これらの改正は、地域の実情に的確に対応した市街地の整備の推進を図るため、都市計画の決定権限の見直し及び特別用途地区の多様化等を行うとともに、市街化調整区域における良好な居住環境の維持及び形成を図るため、地区計画の策定対象地域及び開発許可の対象範囲の拡大を図る等の措置を講じるものである。
1 都市計画決定権限の見直し等について
都市計画の決定については、地域に密着したまちづくりの推進と広域的・国家的視点からの調整がともに適切に図られるよう、国、都道府県及び市町村が適切に役割分担すべきものである。こうした観点から、本改正においては、都市計画に関して地方分権推進計画(平成一〇年五月二九日閣議決定)に記載された事項も踏まえつつ、次のとおり、都市計画決定権限の都道府県知事から市町村への委譲、都道府県知事が決定する都市計画のうち建設大臣の認可を要しない範囲の拡大等、地方分権を推進するための措置を広範にわたって講じたところである。なお、これらの改正事項に加え、今後、地方分権推進計画に基づき、改正が予定されている地方自治法による機関委任事務の廃止等と並行して、都市計画決定手続の改善、国及び都道府県知事による関与のあり方の見直し等多岐にわたる法令改正を行うこととしている。
(1) 都市計画決定権限の都道府県知事から市町村への委譲について
重要港湾以外の港湾に係る臨港地区に関する都市計画について、その決定権限を都道府県知事から市町村へ委譲することとしたほか、用途地域又は高層住居誘導地区に関する都市計画、国道及び都道府県道以外の道路(以下「市町村道等」という。)に関する都市計画、公園、緑地又は広場に関する都市計画、一団地の住宅施設に関する都市計画並びに土地区画整理事業、市街地再開発事業又は住宅街区整備事業に関する都市計画について、それぞれ都道府県知事が決定する範囲を縮減し、市町村の都市計画決定権限を拡大することとした。なお、市町村道等に関する都市計画については、従来の「幅員」に代えて、「車線の数」を都市計画の決定区分の基準とすることとした。
(2) 都道府県知事が決定する都市計画のうち建設大臣の認可を要しない範囲の拡大について
1) 都道府県知事が決定する都市計画(都市計画法施行令第一三条に規定する軽易なものを除く。)につき建設大臣の認可を要する都市計画区域(以下「特定都市計画区域」という。)のうち、人口要件で定められているものについて、「人口一〇万以上」の市の区域を含む都市計画区域から「人口三〇万以上」の市の区域を含むものに引き上げ、特定都市計画区域の範囲を縮減することとした。なお、本改正により都市計画につき建設大臣の認可を要しないこととなる具体の都市計画区域については、平成一〇年一一月一九日建設省告示第一九八一号をもって示したところである。
2) 都道府県道又は市町村道等に関する都市計画について建設大臣の認可を要する範囲を車線の数が四以上のもの又は自動車専用道路であるものに限定することとする等、特定都市計画区域内であっても建設大臣の認可を要しない都市計画の範囲を拡大するほか、流通業務地区に関する都市計画について、特定都市計画区域に係るものを除き、建設大臣の認可を要しないこととした。
3) その他、都道府県知事が行う都市計画の変更のうち、軽易なものとして建設大臣の認可を要しない範囲を拡大することとした。
(3) 市町村が決定する都市計画のうち都道府県知事の承認を要しない範囲の拡大について
市町村が地区計画等に定める事項のうち、都道府県知事の承認を要しないものの範囲を拡大するほか、市町村が行う都市計画の変更のうち、軽易なものとして都道府県知事の承認を要しない範囲を拡大することとした。
(4) その他
1) 道路に関する都市計画については、上記のとおり、従来の「幅員」に代えて「車線の数」を都市計画の決定区分及び大臣認可の要否の基準とすることとしたことに伴い、車線のない道路(歩行車専用道路等)の場合を除き、車線の数を都市計画に定めなければならないこととした。ただし、既に決定している都市計画及び改正令の施行の際手続中である都市計画(施行の際既に都市計画法第一七条第一項の公告を了しているものを基準とする。)については、車線の数を定めていなくとも有効である。
2) 本改正により都道府県知事から市町村へ決定区分が変更されることとなる都市計画のうち、改正令の施行の際手続中であるものについては、引き続き施行前の区分に従い都道府県知事が手続を続行するものとするが、本改正により建設大臣の認可又は都道府県知事の承認を要しないこととなる都市計画については、施行の際手続中であっても、施行後は改正後の規定に従い認可又は承認が不要となる。
ただし、道路に関する都市計画で改正令の施行の際手続中のものの大臣認可の要否については、従来どおり幅員を基準として判断するものとする。また、改正令の施行後に、道路に関する都市計画を変更して新たに車線の数を定める場合の決定区分又は大臣認可の要否については、変更前の都市計画に従来の幅員基準を適用し、変更後の都市計画に車線数基準を適用して判断するものとする。
2 特別用途地区の多様化について
地域の特性や実情に応じたまちづくりを推進するためには、広い意味での地方分権の一環として、市町村がその創意工夫の下に、住民の意向も踏まえつつ、多様なニーズに応じた柔軟な対応ができることが望ましい。こうした観点から、本改正においては、特別用途地区について、その類型を予め法令により限定せず、市町村が具体の都市計画において定めることができることとしたので、次に掲げる事項に留意の上、本制度を積極的に活用していただきたい。なお、特別用途地区内における建築物の用途の制限については、建築基準法(昭和二五年法第二〇一号)に基づく条例において定められるものであるので、留意すること。
(1) 特別用途地区は、用途地域の指定の目的を基本とし、これを補完して定められるものであることを踏まえ、ベースとなる用途地域との関係を十分に考慮した上で、当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等、実現を図るべき特別の目的を明確に設定して、適切な位置及び規模で定めるべきものであること。この場合、特定の建築物の建築を禁止することのみを目的とする等、まちづくりについて積極的な目的を有しない特別用途地区の指定は妥当ではなく、目的の設定は、目指すべき市街地像を実現する上で適切なものとなるよう、総合的なまちづくりの観点から行われるべきものであること。
なお、用途地域と特別用途地区を適切に組み合わせることが重要であることから、特別用途地区の指定に当たっては、必要に応じ、用途地域の指定・変更について併せて検討が行われることが望ましいこと。
(2) 特別用途地区の種類を設定するに当たっては、従来法令において定められていた一一の類型(中高層階住居専用地区、商業専用地区、特別工業地区、文教地区、小売店舗地区、事務所地区、厚生地区、娯楽・レクリエーション地区、観光地区、特別業務地区、研究開発地区)についても典型的なものとして引き続き活用を図るほか、次に掲げる例も参考として、創意工夫を活かした柔軟な運用をすることが望ましいこと。
1) ○○織振興特別用途地区 地場産業として形成された小規模繊維工場と住宅とが既に混在している地区において、住宅と繊維工場との環境調和のとれた職住近接地区の形成を図る。
2) 中小小売店舗特別用途地区 地元の商店街を形成している地域において、賑わいのある良好な街並みの形成を図りつつ、中小専門店街の育成を図る。
3) 宿場町環境保全特別用途地区 旧街道の宿場町であり、店舗と住宅が混在している地区において、歴史・文化が漂う古くからの商業と住宅が混在する環境の保全又は増進を図る。
3 市街化調整区域における地区計画制度の拡充について
市街化調整区域における良好な居住環境の維持及び形成を図っていく上では、郊外での居住ニーズの高まりや地域の活性化の必要性に適切に対応するとともに、市街化調整区域内のいわゆるスプロール問題に対応した土地利用の整序を図ることが重要である。このため、本改正においては、市街化調整区域における地区計画の策定対象地域について、個別の小規模な開発行為等を計画的に誘導し、適正な土地利用の整序を図っていくべき区域を追加するとともに、市街化調整区域における地区計画に適合する開発行為を開発許可の対象に追加することとしたので、既往の通達によるほか、次に掲げる事項に留意の上、本制度を適切に運用していただきたい。
(1) 本改正により、市街化調整区域における開発許可の対象が拡大することとなるが、これにより市街化を抑制すべき区域という市街化調整区域の性格が変わるものではないので、地区計画の策定に当たっては、当該地区計画の区域の周辺における市街化を促進することがない等、当該都市計画区域の計画的な市街化に支障がないように努める必要があること。
また、本改正による地区計画制度活用の例としては、次のような場合が想定されること。
1) 周辺にある程度の公共施設等が整備されており、良好な居住環境を確保することが可能な地区で、ゆとりある緑豊かな郊外型住宅地として整備を行う場合
2) 既存集落とその周辺や沿道地域で既に住宅が点在しているような地区において、良好な環境の確保を図るため、住宅や居住者のための利便施設等の建設を認めていく場合
(2) 地区計画の区域の面積については、特段の制約はないものであること。ただし、地区計画は、一体として区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区の整備等を行うための計画であることから、その区域については、例えば一ないし二の建築敷地のみを対象として設定することは適切でなく、街区形成に足る一定の広がりをもった土地の区域とするべきであること。
(3) 優良田園住宅の建設の促進に関する法律(平成一〇年法律第四一号)第三条に規定する優良田園住宅の建設の促進に関する基本方針において、市街化調整区域内の土地について同条第二項第一号の優良田園住宅の建設が基本的に適当と認められるおおよその土地の区域に関する事項が定められる場合には、必要に応じ、周辺環境と調和した良好な居住環境を確保するため、地区計画制度の活用が図られるよう配慮されることが望ましいこと。この場合、同法第四条第一項に規定する優良田園住宅建設計画の認定については、同条第三項に認定の要件として、同計画の内容が同法第三条の基本方針に照らして適切なものであること、優良田園住宅であること等が定められているので、地区整備計画の策定に当たってはこれらに配慮する必要があること。なお、優良田園住宅の要件については、同法第二条において住宅の敷地面積の最低限度等が定められているので留意する必要があること。
(4) 市街化調整区域における地区計画については、当該都市計画に定める事項のすべてについて都道府県知事の承認を要することから、広域的な運用の統一性を確保し、市街化調整区域における秩序ある土地利用の形成を図る観点から、都道府県において承認に当たっての指針等を作成して差し支えないこと。なお、指針等の作成に当たっては、市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針を活用する方法も考えられること。
4 その他 略