計民発第五四号
昭和五八年八月二日

各都道府県知事あて

建設事務次官通達


「宅地開発等指導要綱に関する措置方針」について


地方公共団体の宅地開発等指導要綱及びこれに基づく行政指導については、良好な都市環境を形成する上で一定の役割りを果たしてきたところであるが、反面、住宅・宅地の円滑な供給の観点からみてその一部に行き過ぎがあることがかねてより指摘されてきたところである。
他方、宅地開発及び住宅建設の円滑な推進を図ることは重要な行政課題であるが、特に近年における所得水準向上の鈍化、宅地造成コストの上昇等の経済情勢の変化の下で、良質かつ低廉な住宅・宅地の供給に対する国民の欲求に的確に応えていくためには、宅地開発等指導要綱及びこれに基づく行政指導のあり方について、この際行き過ぎの是正を図るための基本的な見直しの努力が強く要請されているところである。
このため、今般当省においては、関連事項についての見解をとりまとめ、別添「宅地開発等指導要綱に関する措置方針」として決定したところである。
この措置方針は、すべての項目にわたつての判断を網羅するものではないが、当面明らかに行き過ぎと認められる事項その他の事項について、基本的な考え方を示したものであり、当省としては、今後この措置方針に従い、行き過ぎの是正の徹底が図られるよう期するものである。
ついては、貴職におかれても、この趣旨を了知され、管下市町村に対してその旨周知徹底を図られるとともに、この措置方針を基準として、合理的判断に基づき行き過ぎと認められるものについては、速やかに是正が図られるよう特段の配慮をお願いする。



別添

宅地開発等指導要綱に関する措置方針

(昭和五八年七月)
(建設省)

目次
第一 宅地開発に関する技術的指導について

I 共通事項
II 道路
III 公園・緑地等
IV 治水・排水施設
V 画地・公益施設
VI その他の関連事項

第二 中高層建築物に関する指導について
第三 寄附金等の負担について

宅地開発等指導要綱については、その内容及び運用にわたり各種の問題点が指摘されているが、当面、これらの諸点について、次のような方針の下にその是正を求めるものとする。
第一 宅地開発に関する技術的指導について

I 共通事項

「必要と認めるときは、必要と認める施設を整備すること」等、基準が不明確なものがあり、個別の事案ごとに指導内容が異なつているものについて

(一) 指導が必要なものについては、極力その基準を明確化する必要がある。
(二) 個別の事案ごとに判断せざるをえない場合には、地方公共団体と開発事業者と協議してその要否、程度等を決定する等、その内容についての判断の合理性を明示するよう留意する必要がある。

II 道路

一 主要道路(主要な区画道路を含む。)

宅地開発(区画道路のみで対応できる場合を除く。)に伴つて整備を行う団地内道路の幅員について、開発の規模等からみて、不相応な広幅員の道路整備を求めているものについて

(一) 主として地区内交通需要に対応する道路

宅地開発で整備する開発区域内の主要道路の標準的な配置及び幅員については、開発規模、用途を勘案し、開発によつて発生する交通量を前提とした整備とする。

(二) 周辺の交通需要を含めて対応する道路

開発区域の周辺の交通需要を含めて対応する整備が必要な場合には、当該道路整備の性格を考慮して安易に過大な幅員とすることをさけるものとし、当該地域の道路網上の位置付けを明確にするとともに、道路整備事業との調整に努めるものとする。

二 区画道路

[一] 区画道路として六mを超える広幅員の道路を求めているものについて

住宅地における区画道路については、合理的な理由によるもの(多雪地に於ける除雪を考慮した幅員等)を除き、六mを超える幅員の区画道路を求めないものとする。

[二] 利用形態に見合つた小規模道路が認められないことにより設計上の創意工夫が生かされないことについて

小区間の区画道路については、その利用形態及び設計上の創意工夫により六m未満の道路で支障のない場合がありこの場合には交通条件等に応じた適切な幅員の道路を弾力的に認めるよう取り計らうものとする。
なお、この点について運用の円滑化及び統一化を図るため、六m未満の道路について関連する基準等を参考にし、運用基準を検討する。

(一) 利用者がその道路に接する敷地の居住者及び居住者に用事のある者に限られ、その区画の数が少ない場合
(二) ループ方式等閉鎖型の道路で車の出入が極めて少ないと想定される場合
(三) 計画的に各敷地にカーポートを設けない等車の出入を制限している場合
(四) 歩行者用通路として使用する場合 等

前記の場合においても車両等の走行がなされる場合には有効幅員四mを確保するとともに、幅員構成、交差点部の隅切り等については、道路構造令に基づき設定するものとする。(L型側溝・コンクリート蓋等で車両通行上支障のない場合は側溝等を含む。又、電柱等路上工作物を設置する場合はこれを除き、有効四m以上必要とする。)

 
 

三 取付道路

地区外の道路に至る取付道路について、その路線数、整備

内容等に過大な要求をしているものについて

(一) 地区外との取付道路は、地区内に配置される道路のうちもつとも基幹となる道路によつて取付ける事が基本であり、交通処理上特別の必要性がある場合を除き複数路線を求めないよう配慮する。
(二) 取付道路の区間については、宅地開発に伴い発生する交通量を通常の状態において処理するに足ると認められる区間を超えないものとする。

四 幅員・勾配等

[一] 自治体により幅員の考え方に差異があることにより、開発者の設計方針に混乱が生ずるとともに、結果として広幅員の道路整備をさせられることがあることについて

道路の幅員のとらえ方を明確にし、次のような取り扱いとする。

 
 

[二] 勾配について、最大七%等道路構造令等の比し厳しい基準を定めることにより、結果として地形条件を生かした造成工事を困難としているものについて

最大勾配等の幾何構造は道路構造令に基づいて設定するものとする。

[三] 沿道の土地利用形態を考慮せず、一律に停車帯を含む幅員構成で整備を求めているものについて

停車帯は商業施設が連たんする等停車需要が高く、停車による交通の障害が大きいと思われる場合に設置するものとする。

五 暫定整備

発生交通量、地域の実情からみて、相当将来にならなければ必要がない高水準の道路の整備を要求されることがあることについて

片側二車以上の道路整備が将来必要な道路で、当面当該地区の開発に対応しては片側一車線の整備で、足りるような場合には、暫定的な整備を行う等、開発者に過度の負担を強いることのないよう取り扱うものとする。なお、この場合将来の全線整備に支障のないような措置を講じる必要がある。

六 管理引継

工事完了した道路について相当程度入居が進まないと引継ぎがない等引継がすみやかに行われない場合があることについて

(一) 工事完了した道路については、速やかに引継ぐものとする。
(二) 引継に必要な手続等で著しく遅滞しているような例については、実情を調査し、必要な措置を講ずる。

III 公園・緑地等

一 公園等の確保

都市計画法に基づく開発許可基準を大幅に超えて公園、緑地又は広場の確保を求めているものについて

(一) 開発許可に伴い確保することが必要となる公園、緑地及び広場(以下「公園等」という。)は、都市公園法に基づき地方公共団体が管理する公共施設として位置づけられるものであるので、これら公園等と造成上やむを得ず生じ又は残ることとなる法面等とは区分して取り扱われるべきものである。
(二) 公園等の確保に当つては、開発区域外の受益に応じた負担の調整を行う場合を除き、公園について開発区域面積の三%かつ開発区域内人口一人当り三m2を確保することを基本とし、良好な樹林地等を存置する場合等であつても、これらを含めた公園等の面積の合計について開発区域面積の六%以上又は開発区域内人口一人当り六m2以上の確保を求めることは適当でない。
(三) なおこの場合、中高層住宅の建設を目的とする開発については過大とならないよう実態に即して運用を図る必要がある。

* 五ha未満の開発行為においては、代替機能をもつ緑地及び広場を含む。
二 公園等の確保を求める開発規模

開発規模〇・三ha未満の小規模開発についても一律の基準により公園等の確保を求めているものについて

小規模開発においては、確保される公園等が過小となり公園整備の効率上、公園利用上又は維持管理上も問題がある。このため都市計画法に基づく開発許可基準においても小規模開発については、必要的に公園等の確保を求めないこととしており、開発規模〇・三ha未満の開発について、一律の基準により公園等の確保を求めることは適当でない。

三 洪水調節(整)池と公園等の兼用

洪水調節(整)池を公園等に使用することを認めていないものについて

開発区域における洪水調節(整)池については、都市公園として利用、管理することに支障のない範囲で弾力的に活用することとし、公園等として取り扱つてさしつかえない。
なお、この場合、公園等としての安全な利用を確保する上で支障の生じない設計を行うこと、洪水調節(整)池と公園等の管理上の調整を図ること等に留意する必要があり、これらの点について別途検討を行う。

四 公園等の位置、形状等

公園等の位置、形状、規模、勾配、施設、接道条件、高圧線下りの取り扱いにバラツキがみられ混乱を生じているものについて

(一) 公園の形状、規模、勾配、施設、接道条件等については、都市計画法に基づく開発許可基準において規定があるが、当該規定の運用及び規定のない部分の運用に当たつては、当面社会的妥当性に考慮し行き過ぎないよう十分留意する必要がある。
(二) 公園等の位置、形状、規模、接道条件等の取り扱い上の混乱を防ぐためこれらについての技術的な基準について検討を行う。

五 緑地面積率等

開発指導要綱以外の条例等において一定の緑地面積率等を定めて開発区域内の既存樹林の保存、緑化面積の確保を求めているものについて

自然的環境の保全等の観点により既存樹林の保存、緑化面積の確保をはかることは行政上の課題ではあるが、開発区域内においてこれを開発者の負担により一方的に行わせることには問題があり、開発区域外の受益の程度を勘案し行政と開発者の間で負担の調整を行う等により開発者の過大な負担となることのないように配慮すべきである。
IV 治水・排水施設関係

一 治水対策の選択

宅地開発に関連する治水対策について河川改修、洪水調節(整)池のいずれか一つの方式に限る指導を行つているものについて

治水対策については、開連する地域の洪水による被害を防止又は軽減するための所定の治水安全度の確保が可能な範囲で技術的、経済的条件及び当該地域の実情を勘案して合理的な方式の選択が可能となるよう措置すべきである。

二 河川改修

[一] 計画降雨確率等

宅地開発に伴う河川改修について計画降雨確率等を当該地域の河川改修計画とかけ離れた計画としているものについて

河川改修計画の降雨確率等については、当該水系の下流で現に実施している河川改修計画と斉合のとれたものとなるよう計画すべきである。
なお砂防指定地内における宅地開発については、計算された流量に一〇%程度の土砂混入率を見込むものとする。

[二] 改修区間

宅地開発に伴い必要となる河川改修区間が明確でないものについて

宅地開発に伴い必要となる河川改修区間は、当該開発による影響を考慮しても所定の治水安全度が確保されている区間に到達するまでとする。
なお当該河川について河川改修が行われている場合にはその進捗状況、宅地開発の時期等を勘案し、開発者が行うべき区間について、河川改修事業と調整を図るものとする。

[三] 流出係数

開発に伴う流出量の算出に当たつての流出係数が通常の水準を大幅に上回つているものについて

流出係数については河川砂防技術基準(案)による数値を標準とする。

三 洪水調節(整)池

[一] 対象となる開発

開発に伴い必要となる流出抑制対策の方法として小規模な宅地開発にも一律に専用の洪水調節(整)池の設置を義務づけているものについて

開発に伴い必要となる流出抑制対策の方法として、小規模な宅地開発についても一律に専用の洪水調節(整)池の設置を義務づけることは、必ずしも適当でない。
宅地開発に伴い必要となる流出抑制対策の方法については、専用の調節(整)池以外の雨水貯留、浸透システムにより同等の効果を期待できる場合もあるので、必要に応じ、これらの代替方策を採用し得るよう措置すべきである。

[二] 計画対象降雨量

洪水調節(整)池の洪水調節(整)容量を決定する超過確率が著しく大きいものについて

恒久調節池について超過率五〇分の一、暫定調整池について三〇分の一を超えるものとするよう義務づけることは、宅地開発の影響の及ぶ下流河川の改修計画の規模がこれらの数値を上回つている場合等特別の事情がある場合を除き、適当ではない。

[三] 恒久調節池と暫定調整池の区分

洪水調節(整)池を設置する場合について当該施設が恒久調節池であるか、暫定調整池であるか明らかにされないものについて

恒久調節池、暫定調整池の別を明らかにし、暫定調整池として設置及び維持管理を指導する場合にあつては、その設置期間を「宅地開発に関連する区間の河川の一定の改修が完了するまでの期間とすること」のように具体的に開発者に明示する必要がある。恒久調節池については原則として公的な管理を行うことが望ましい。

[四] 設置位置

開発区域外に洪水調節(整)池の設置を認めないものについて

洪水調節(整)池を設置する場合に開発区域内に設置するものと同等の効果が得られるものについては、開発区域外の適地に設置することを認めるものとする。

[五] 堤高

洪水調節(整)池の堤高について五m以下にする等高さを制限しているものについて

一五m未満のダムの高さについては、当面、防災調節池技術基準(案)及び大規模宅地開発に伴う調整池技術基準(案)に準拠して設計・施工がなされるものであれば特に制限する必要はない。
ただし、砂防指定地内の宅地開発については、その地域の特殊性にかんがみ築堤方式とする場合には高さは三m以下とする。

[六] 多目的利用

洪水調節(整)池を公園等に使用する多目的利用を認めないものについて

洪水調節(整)池については、治水上の機能に支障が生じない限り公園等の他の用途に積極的に利用し、土地の有効利用を図るものとする。
この場合の治水対策上必要な技術基準等について別途検討する。

四 下水道及びコミュニティ・プラント

[一] 計画規模

雨水排除計画に当たつて一〇年を大幅に上回る確率年を対象とする指導を行つているもの及び汚水について開発区域より発生することが想定される量を大幅に上回る汚水量を基本として施設を設置させているものについて

(一) 雨水排除については、降雨による土砂の流出を見込む必要がある等の理由のある場合を除き、下水道施設設計指針で定める確率年五年〜一〇年を計画規模とすることが妥当である。
(二) 発生汚水量については、下水道施設設計指針に準拠し、開発区域の上水道等の最大給水量を勘案して妥当な汚水量を定めるものとするが、大量の汚水の発生が見込まれる特別の事情がない限り、近傍の公共下水道計画等で採用している家庭汚水量を大幅に上回る量とすることは適当でない。

[二] 構造・処理水質

(一) 管渠について下水道施設設計指針を上回る管径の設置を指導し、管内流速ついても同指針により厳しく指導しているものについて
(二) 汚水について三次処理を義務づける等処理後の水質について高水準を求めているものについて

(一) 一般に下水道施設設計指針に定める諸元に従つて施設が設置されていれば支障はないと考えられるので特段の理由なく厳しい水準を求める必要はない。

なお、開発区域内からの汚水に加えて、開発区域外からの汚水も流下させるため管渠を開発区域内に設置する場合には下水道事業との調整を図るものとする。

(二) 排出水の水質について法令上の制限がある場合を除き安易に高度処理を義務づけることは問題がある。

[三] コミュニティ・プラントの維持管理を開発者に行わせているものについて

コミュニティ・プラントは社会機能的にみれば公共団体が管理する公共下水道に類似するものであり、発生史的にみれば居住者が管理する各戸浄化槽に類似するものである。したがつてその維持管理については、開発者にこれを行わせることには問題がある。当面入居者で組織する組合において管理することが妥当と考えられるので、この組合管理の方法によるよう努めるものとする。
ただし、現状においてはこの方法によるものとしても、維持管理上の問題が予想されるので、別途長期的課題として円滑な管理を促進するための方策について検討を行うものとする。

五 排水に関する放流同意

洪水調節(整)池、沈砂池、終末処理施設等からの排水について
放流先河川の水利権者等の同意を義務づけ、宅地開発事業期間の長期化、宅地開発のコストの上昇を招いていることについて

放流先河川等の管理者以外の水利権者等についても同意を義務づけているのは、排水に係る係争を未然に防止する趣旨と考えられるが、開発行為の事業内容の周知を図らせること等は格別、すべての関係者の同意書の提出まで求めることは適当でない。事業の実施に伴う係争の恐れのある場合には、開発許可手続とは別途の手続において調整を図るよう指導することが適切である。
V 画地・公益施設

一 画地等

[一] 画地規模

画地規模の規制について、最低敷地規模として二〇〇m2を超える規模を求める等指導要綱による行政指導の性格からみて過大な水準を要求しているものについて

画地規模については、国民の適正な負担能力及び地域の特性に十分配慮する必要があり、過大な水準を要求するのは適当でない。

[二] 画地規模の規制方法

画地規模を多様な住宅形式等が見込まれるにもかかわらず、画一的に一定規模以上とすることについて

(一) [一]の配慮を行つた場合においても、住宅形式上又は土地利用上の創意工夫等により、良好な居住環境の確保ができる事例については、その画地規模について弾力的な取り扱いをする必要がある。
(二) 例えば、次のような場合には、一般的な画地規模とは別に全体の居住環境上の観点から個別に判断する必要がある。

イ タウンハウス(コモンスペースを持つものに限る。)
ロ コモンスペースを適切に配置した戸建て住宅地(いわゆる「計画戸建て」)
ハ 地区計画、建築協定等により良好な居住環境の確保が図られる見込みがある場合

[三] 有効宅地率規制

いわゆる有効宅地率規制(開発区域のうち住宅用地とすることができる部分の上限割合を規定すること)を行つているものについて

有効宅地率は、開発区域の規模、地形条件、住宅形式等により、結果として定まるものであるので、あらかじめ有効宅地率を画一的に規定する必要はない。

二 学校施設

[一] 用地の規模

学校施設用地について、その対象となる児童生徒数に対して必要以上の用地の確保を求めているものについて

(一) 学校施設用地の面積については、原則として文部省の基準を超えないものとする。また、児童生徒数は、原則として文部省の基準によつて算定する。
(二) 用地の譲渡に当たつて無償又は相当程度の減額譲渡を求めているものについては、国庫補助制度、立替施行制度等を有効に活用する等の方策を講ずるものとする。

[二] 開発区域外設置

開発区域外での学校施設用地の確保を認めていないものについて

開発区域の内外を問わず、適地に設置を認める必要がある。

三 用途を特定しない公共公益施設用地

開発区域内に用途を特定しない公共公益施設用地を確保させているものについて

(一) 開発区域内にいわゆる公共公益施設用地を確保させる場合には、すべてその用途を明確にするとともに、主として開発区域内の住民が利用するための公共公益施設の用地とするべきである。
(二) 確保させた用地についてその用途を変更する場合には、当該開発区域内の住民の意見を聴く等あらかじめ十分その理解を得ておく必要がある。

四 その他の公益施設

上水道施設、ごみ処理施設、公民館・集会所、交通施設(バス回転広場)等の整備を要求しているものについて

(一) これらの施設については、原則として、当該施設の主たる利用者が開発区域外の住民となる場合には、確保させるべきではない。
(二) (一)の場合で広域的な観点からの配置のバランス等によりやむをえずこれらの施設を開発区域内に確保させる場合には、区域内と区域外との間で受益の程度等を勘案し負担の調整を図る必要がある。

VI その他の関連事項

一 協議期間

指導要綱に基づく開発協議に当たり長期を要する場合があることについて

(一) 協議期間の短縮化等を要請した昭和五七年一〇月の建設省・自治省の共同通達に基づく改善措置について、全国的な状況の把握を行うとともに、さらに改善の余地のあるものについては、個別に改善方の指導を行う。
(二) 大規模な宅地開発については、各種の公共公益施設の整備のあり方をめぐる協議・調整が質・量ともに多岐にわたり、このため調整が紛糾し、協議期間が長期化することが少くない。この点にかんがみ「施設整備水準等調整委員会(仮称)」を設け、必要に応じ、個別の問題について関係者の意見の調整を行うことについて研究を進める。

二 周辺住民の同意

宅地開発に際して、周辺住民の同意を義務づけることにより、開発者が根拠の不明確な負担等を強いられているものについて

宅地開発に際して周辺住民の同意を求めるのは、開発に伴う環境問題、工事中の騒音問題等を未然に防止させる趣旨と考えられるが、この場合にあつても、宅地開発の内容等の周知を図ること、問題が生ずる恐れがある場合には十分話し合いを行うこと等の指導を行うことは格別、すべての関係者の同意書の提出まで求めることは適当でない。

三 制裁措置

指導要綱による指導に従わない開発者に対する制裁措置を定めているものについて

指導要綱による指導内容について、意見の不一致が生じた場合であつても、都道府県への進達拒否、水道、電気、ガス等の供給についての協力拒否その他の制裁措置をとることには問題がある。

四 埋蔵文化財

宅地開発事業に伴う埋蔵文化財の発掘調査に関し、宅地開発事業と埋蔵文化財との調整のための期間、それに伴う調査コストの上昇、調査費用の負担について問題を生ずる場合があることについて

(一) 埋蔵文化財問題については、発掘調査の円滑化等を図るため、昭和五六年七月二四日付けの文化庁次長通達による指導が行われたところであるが、さらに前記の諸問題を中心として実態の把握を行う。
(二) 埋蔵文化財の保護に留意しつつ、(一)の結果を踏まえ、文化庁等の関係機関の協力を得て埋蔵文化財調査と宅地開発事業との円滑な調整について検討する。
第二 中高層建築物に関する指導について

一 周辺住民の同意

中高層建築物の建築に際して、日照等に関して周辺住民の同意を求めていることによつて、周辺住民との調整に時間を要するとともに、根拠の不明確な負担を強いているものについて

(一) 中高層建築物の建築に際して、周辺住民との調整を求めているのは、日照等に関して周辺住民との紛争を未然に防止させる趣旨と考えられるが、この場合にあつても、建築計画の内容の事前公開、問題の生ずるおそれのある場合における話合い等を求めることは格別、周辺住民の同意書の提出まで求めることは、建築行為を遅延させるなど建築主の権利の行使を制限することとなるおそれもあり、適切でないと考える。
(二) 日照紛争の解決等のための周辺住民との調整については、必要に応じ、地方公共団体が相談、あつせん等に努める等公正な手続きによつて調整を図る方策を講ずることによつて建築行為が円滑に進むようにすることが適切であると考える。

二 建築制限

良好な市街地環境の形成等を目的として、用途制限、住宅容積制限等の建築制限に関する指導を行つているものについて

(一) 用途制限、住宅容積制限等の建築制限については、基本的に、建築基準法等に基づく地区計画制度、建築協定制度、特別用途地区制度等確立された諸制度によることが適切であると考える。
(二) 一部にみられる住戸規模制限等については、世帯人員によつて確保することが望ましい居住水準が異つてくること等から適切でないと考える。

三 建築確認の申請書の受理等

中高層建築物指導要綱は、都市計画法の開発許可に係らないような建築行為を対象とするものも多く、このため、一部地方公共団体において、その担保措置を建築確認の申請書の受理に係らしめているもの等について

(一) 建築基準法施行規則で定められた様式にあつた建築確認の申請書が確認手数料を納付の上提出された場合においては、建築基準法上その建築計画が建築士法第三条又は第三条の二の規定に違反するときを除いては、これを受理しなければならないものである。

また、建築確認は、建築基準法上、申請に係る建築計画が建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するかどうかを審査して行われるものである。

(二) 建築確認の申請書の受理の機会あるいは建築確認に係る審査の機会を捉えて、中高層建築物指導要綱に基づく行政指導が行われているが、その場合、建築主の十分な理解を前提として社会的に妥当な範囲内で行うべきことは勿論、特に、建築確認の申請書の受理の機会を捉えて行う行政指導にあつては、建築主に大きな負担を与えるおそれもあるので、建築計画の内容の事前公開等最小限にとどめるものとし、行き過ぎにわたらないよう留意すべきであると考える。
第三 寄附金等の負担について

寄附金等の金銭負担について、負担の当否のほか次のような問題点が指摘されていることについて
(一) 寄附金等の必要性又は使途が不明確なものがあること。
(二) 寄附金等の額が多額に及ぶものがあること。
(三) 開発者負担による施設整備等とあわせて寄附金等の納入を求めるものがあること。

(一) 前記のような取り扱いがみられるに至つた背景には地方財政問題があるので、別途自治省における検討とあわせて、基本問題の検討を行う。
(二) 当面の措置として、都道府県を通じ個別市町村ごとに適正化が図られるよう、自治省と協力して、個別の指導を行う。



(参考)

規制の緩和等による都市開発の促進方策

(昭和五八年七月)
(建設省)
安全、快適な都市環境の形成や居住水準の向上を求める国民の声に応えるためにも、我が国経済の、内需を中心とした安定的な成長に寄与するためにも、都市、住宅分野への民間投資の活力ある展開を図つて、都市整備、住宅建設を一層推進することが極めて重要である。
特に、大都市の都心地域等における都市再開発と市街地住宅の供給及び新市街地等における宅地の開発には、民間事業者が大きな役割を担つており、これらの分野で、民間活動の前提となる条件整備を進めることが、当面の緊要な政策課題となつている。
本年四月五日決定された経済対策においても、このような見地から、いくつかの施策が掲げられた。このため、同月八日、省内に、事務次官を長とする「都市対策推進委員会」を設置し、民間有識者からの意見聴取、関係地方公共団体との協議等を行い、また、部会等を組織してこれらの課題の検討を進めてきた。
委員会における検討結果の概要は、次のとおりである。
I 都市計画・建築規制の緩和等による都市再開発の促進

一 基本的考え方

都市の再開発を促進する方策としては、
1) 土地の高度利用を促進すべき地域について、地域地区指定等を高度利用に適する方向へ変更する一般的規制緩和を行うとともに、都市再開発方針を策定し、幅広い再開発の推進を促すこと
2) 環境改善、住宅供給に寄与する任意の民間建設活動を含む広義の再開発が計画される区域について、事業内容に即した個別的な規制緩和を積極的に行い、事業意欲の高揚と事業の円滑な推進を図ること
3) 大都市の既成市街地においては、狭小宅地が密集し、また道路整備が遅れている地域が多く、これが高度利用を困難にしている基本的な要因であることに鑑み、道路の整備を推進し、あわせて広義の再開発と道路整備が一体的に行われる方策を講ずるとともに、再開発事業制度についても、民間活用の見地から改善・拡充を行い、また広義の再開発の推進に必要な税制上の特例措置等を講ずること
4) 中高層建築物指導要綱の行き過ぎの是正を図ること

等が必要であると考えられる。
二 都市計画・建築規制の緩和等の実施方策

(一) 高度利用を促進すべき地域についての一般的規制緩和

1) 第一種住居専用地域の見直し

東京都の環状七号線以内の地域等土地の高度利用を図るべき地域における第一種住居専用地域について、良好な居住環境の維持のため必要な場合を除き、第二種住居専用地域に指定替えを行う。
この場合、防災上の観点から不燃化を促進すべき地区、道路等都市施設の整備を行うべき地区及び居住環境の改善を図るべき地区については必要に応じ地区計画制度の活用等を図りつつ指定の変更を行うほか、各種の制度を活用して良好な居住環境を有する中高層住宅の建設が行われる場合には、一定規模以上のまとまりのある区域についてその変更を行う。

2) 最高限高度地区の見直し等

東京都の環状七号線以内の地域等土地の高度利用を図るべき地域における最高限高度地区について、用途地域指定の変更にあわせて指定を見直すとともに、高容積率の指定されている地区、土地の高度利用を図るための事業が予定されている地区及びそれらの周辺地区について指定の変更を行う等、これに伴う日影規制の変更を含め、適切な見直しを進める。

3) 第一種住居専用地域における高さ制限の緩和

良好な市街地環境の形成を図りつつ、良質な三階建住宅等の普及による居住水準の向上等を進めるため、第一種住居専用地域の高さ制限の緩和について検討を行う。

(二) 広義の再開発についての個別的規制緩和

1) 市街地住宅総合設計制度の活用

敷地内に公開された緑地等を確保した良好な建築計画に対して容積率の大幅な割増しを認める市街地住宅総合設計制度について、積極的に普及・活用を推進する。

2) 特定街区制度の活用・改善

都市計画により個別の開発計画に即して容積率、高さ等を定めることのできる特定街区制度に関し、適用要件の見直し等を行うとともに、土地利用目的に応じた容積率の割増率の改善を検討して、同制度の広範な活用を推進する。

3) 一団地の建築物に対する特例制度の活用

街区内の複数敷地(表宅地と裏宅地等)を一体的に計画・利用することにより、法定容積を有効に利用するため、一団地の建築物に対する特例制度を活用する。

4) 計画道路の沿道における土地利用の高度化のための措置等

都市計画に定められた計画道路に接する敷地について、民間再開発により前面道路の用地が確保される場合、一定の基準に従い計画道路の幅員を前面道路幅員とみなすこと等により容積率を緩和するための所要の許可準則の整備等を行う。
また、一定の基準による道路の整備に関し、地権者等の合意がある等の場合における当該道路の建築規制上の位置付けについて検討を行うこととする。

(三) 再開発事業等への重点的公共投資及び再開発事業制度の改善・拡充

1) 再開発事業への重点的公共投資

民間投資を誘発しその活性化を図るため、都市再開発法に基づく市街地再開発事業その他各種の制度に基づく再開発事業への重点的公共投資を行い、再開発プロジェクトを推進する。

2) 民間再開発に資する道路整備の推進

大都市の既成市街地における道路整備の遅れが土地の高度利用を困難にしている一因であることに鑑み、街路事業の機動的執行により再開発に資することとなる道路整備を積極的に推進する。

3) 市街地再開発事業制度の改善

都市再開発法に基づく市街地再開発事業について、その一層の推進を図るため、施行要件の緩和その他所要の措置を講ずる。

4) 優良な民間再開発事業の推進

都市再開発法によらず、細分化された敷地の共同化等を行う一定の優良な民間再開発事業について、税制上の特例、補助、融資等を行う制度を創設する。

II 国公有地等の活用による都市開発の推進

国公有地等の活用のモデルプロジェクトとして、四箇所の国鉄用地の活用について、内閣官房を中心とする検討により、今後の方向が示されたが、関係機関と協議しつつ、その他の国公有地等の有効活用の推進を図る。

III 規制の緩和等による宅地開発の促進

一 線引きの見直し及び開発許可の規模要件の引下げ

(一) 線引きの見直し

建設省から都道府県に対し、線引きの見直しの一層の推進を要請したところであり、現在、各都道府県において見直しの作業を鋭意進めている。
その結果、五七年度中に二県においておおむね法定手続を終了したが、五八年度中には二三道府県において法定手続が開始される予定である。
さらに、見直しが終了したばかりの四都県を除く一八府県についても五九年度中には法定手続を開始する予定である。

(二) 開発許可の規模要件の引下げ

市街化調整区域における開発許可の規模要件は、従来二〇ヘクタール以上とされていたが、都道府県の規則で定めるところにより、五ヘクタール以上二〇ヘクタール未満のものについても開発許可を行うことができるよう、去る五月に政令改正を行つた(七月一日施行)。

二 宅地開発等指導要綱の行き過ぎ是正

かねてより、その一部に行き過ぎがあることが指摘されてきた宅地開発等指導要綱による行政指導について、概要次のとおりの措置方針に基づき、今後早急に、地方公共団体を指導する。
(一) 宅地開発に伴い整備すべき公共公益施設について

1) 道路関係

○ 主要道路の幅員は、交通量等に相応するものとし、安易に広幅員としないものとすること。
○ 住宅地の区画道路については、六メートルを超える広幅員を原則として求めないものとすること。

2) 公園・緑地関係

○ 公園の面積は、負担の調整を行う場合を除き、開発区域の三%かつ一人あたり三平方メートルを確保することを基本とし、優良樹林を残す場合等も、これらを含め、開発区域の六%又は一人あたり六平方メートルまでとすること。
○ 洪水調節(整)池は、公園として活用する途を開くものとすること。

3) 治水・排水施設関係

○ 河川改修を行う場合の計画降雨確率等は、下流の改修計画の内容を超えないものとすること。
○ 洪水調節(整)池の地区外設置、堤高の制限緩和についても弾力的に認めるものとすること。

4) 公益施設等関係

○ 公共公益施設用地と称して用途を特定しない土地の提供を求めないものとすること。
○ 主として地区外の利用者のための公益施設の設置を義務づけないものとすること。

(二) 中高層建築物の建設に伴う指導について

1) 建築確認の申請書の受理の機会を捉えて行う行政指導は最小限にとどめ、行き過ぎのないよう留意すること。特に、日照等に関して周辺住民の同意書の提出までは義務づけないものとすること。
2) 用途制限、容積制限等については、法律等で確立された諸制度によつて行うものとすること。

(三) 寄附金等の負担について

1) 宅地開発等に伴う地方財政上の問題について検討するため、自治省が行う検討とあわせて、基本的な検討を行う。
2) 当面の措置として都道府県を通じ、市町村ごとに適正化が図られるよう、自治省と協力して、個別に指導を行う。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport