都道府県知事・指定都市の長あて
この指針(案)は、宅地開発に伴い設置される洪水調節(整)池の多目的利用の的確かつ円滑な推進を図るために、洪水調節(整)池の敷地内に他の施設を導入するに当たつて設計上留意すべき基本的事項及び管理上の調整の具体的実施方法についてとりまとめたものである。この指針(案)の適用範囲は、宅地開発に伴つて設置され、敷地の多目的利用が行われる洪水調節(整)池とし、河川管理施設となる洪水調節池、堤高が一五メートル以上の洪水調節(整)池及び地下式構造の洪水調節(整)池等には適用しないものとする。
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(一) 洪水調節(整)池
宅地開発に伴い設置される洪水調節(整)池は、恒久的な調節池と暫定的な調整池とがあり、その敷地の多目的利用の観点から次のように分類される。
1) 構造形式による分類:ダム式(築堤式)、堀込式
2) 断面構成による分類:単段式、多段式
(二) 導入施設
洪水調節(整)池の多目的利用を図るため、その敷地内に導入する施設(以下「導入施設」という。)としては、既往の事例から、次のようなものがある。
1) 公園、緑地、広場
2) グラウンド
3) テニスコート
4) ゴルフ練習場
5) 駐車場等
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この指針(案)の設計にかかわる事項は、洪水調節(整)池の敷地内に他の施設を導入するに当たつての設計上留意すべき基本的事項のみを規定しているものであり、洪水調節(整)池及び導入施設の設計全般については、他の基準等によるものとする。
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洪水調節(整)池の多目的利用における条件としては、洪水調節(整)池と導入施設の両機能を兼ね備えるとともに、これらの機能を相互に損なわない構造とし、的確かつ円滑な管理を行うことが必要である。
このため、多目的利用における施設の設計では、主として、この指針(案)に示す。
(A) 洪水調節(整)池の維持管理上の施設導入指針
(B) 導入施設の維持管理上の施設設計指針
(C) 多目的利用のための安全管理施設設計指針
に基づき、洪水調節(整)池と導入施設との施設設計上の調整を行う。
次に、このようにして設計された諸施設について、その管理方法を明確にしておくとともに、洪水調節(整)池の管理者と導入施設の管理者とで管理上の調整を行うこととする。
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都市計画法に基づく開発許可に伴い確保することが必要となる公園、緑地又は広場(以下「公園等」という。)は、都市公園法に基づき地方公共団体が管理する公共施設として位置付けられるものであるが、一方、洪水調節(整)池敷地の施設導入部は、洪水時には湛水するものであり、土地の形状も周辺地域と段差があつたり、面積が狭小であつたりする。このため、導入施設が公園等である場合には、I・三「関連指針」の項により都市公園技術標準(案)に準拠して設計するほか、次の事項に配慮することが必要である。
一)洪水調節(整)池内に導入する公園等は、近隣公園、地区公園、緑地、広場等として利用すること。なお、児童公園は、原則として、導入しないものとすること。
二)洪水調節(整)池内の公園等を導入する敷地及び近接する敷地の構造は、公園等の利用上支障のないものとし、修景上の配慮を十分行うこと。
三)導入施設が公園の場合は、原則として、湛水しない敷地部分を設け、その位置、面積割合は、当該公園の諸機能を損なわないものとすること。
四)洪水調節(整)池内に設置する公園施設は、衛生上及び維持管理上、支障のないものとすること。
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導入施設の敷地は、ダム式(築堤式)の洪水調節(整)池の築堤部にあつては、堤防のり尻から五メートル以上離すことが必要である。
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植樹に当たつては、樹木によつて治水上の支障が生じないよう配慮し、その位置については、ダム式(築堤式)の洪水調節(整)池の築堤部の場合には、堤防のり尻から高木は一五メートル以上、低木は五メートル以上離すことが必要である。
また、植樹する高木は耐風性、耐潤性樹木を選定することが必要である。
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柵その他の工作物は、原則として、流出しない構造とする。
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導入施設の設計においては、配置、維持管理等を勘案して、個々の施設ごとに湛水頻度を考慮することとし、おおむね次のように分類される。
(一) 湛水頻度が比較的小さい所に設けた方がよいもの
遊具、花壇、日陰だな、駐車場(賃貸用)等
(二) 湛水頻度が比較的大きい所に設けても支障がないもの
広場、グラウンド、バレーボールコート、テニスコート、ゴルフ練習場、駐車場(利用者用)等
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導入施設の設計においては、II・二・一「個々の施設ごとの湛水頻度」の項によるほか、個々の施設ごとに以下に示す事項について配慮することが必要である。
一)園路は、洪水調節(整)池の管理用道路との兼用を前提に、施設の利用上及び管理上望ましい配置とするとともに、出水時の避難路としても十分機能すること。
二)広場、グラウンド、バレーボールコート、ゴルフ練習場等は、暗渠、U字溝等の設置や、排水のための勾配をつけること等により、水はけのよい構造とすること。
三)植栽地は、退水後の土砂、ヘドロ等の排除、清掃を考慮した配置及び排水構造とするとともに、植栽する樹木は冠水耐性のある樹種を選定すること。
四)テニスコート等は、原則として、湛水後の堆砂の洗浄が容易なアスファルト等の構造とすること。
五)遊具等の工作物は、原則として、基礎固めのコンクリートと緊結した流出しない構造とすること。
六)導入施設利用者の接近が予想される修景池等の水際部分は、安全性を配慮した水深、断面構造、材料等とすること。
七)退水後、施設又は工作物の洗浄に用いる給水栓(施設)を適所に設けること。
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洪水調節(整)池の多目的利用においては、洪水調節(整)池と導入施設とが個別に設置される場合に比べて、導入施設利用者の安全管理上、より一層慎重な配慮を要することから、導入施設の設計において十分検討するとともに、必要に応じて、以下に示す安全管理施設を設置するものとする。
1) 柵
2) 注意看板
3) 門扉等
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安全管理施設を設置する場合においては、個々の施設ごとに以下に示す事項について配慮することが必要である。
一)柵は、必要に応じて、洪水調節(整)池への侵入防止のための外周柵、修景池等への転落防止のための安全柵等を適所に設置すること。
二)門扉は、導入施設の利用、出水時の安全管理を勘案し、適所に設置すること。
三)柵、門扉は、安全管理上必要な高さを有するものとし、門扉については施錠できるものとすること。
四)注意看板は、導入施設の区域、利用上の注意点等を、利用者にわかりやすい規格で適所に設置すること。
五)柵、門扉、注意看板は、耐久性のある材料とし、危険な場所には特に堅固なものを設置すること。
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多目的利用される洪水調節(整)池の管理については、原則として、洪水調節(整)池としてのみ効用を果たす部分の管理は洪水調節(整)池の管理者が、また、洪水調節(整)池と導入施設とが相互に効用を兼ねる部分の管理は導入施設としての機能を発揮する平常時においては導入施設の管理者が、洪水調節(整)池としての機能を発揮する出水時においては洪水調節(整)池の管理者が管理することを基本理念とし、実際の管理に当たつては、効率的かつ円滑にその管理を実施するため洪水調節(整)池の管理者と導入施設の管理者とが管理協定を締結して、一元的な管理を行うことが望ましい。
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洪水調節(整)池の多目的利用においては、施設の構造等に応じて以下の管理行為が付加されることとなるので、洪水調節(整)池の管理者と導入施設の管理者において調整を行い、管理協定の中で分担を明確にする必要がある。
1) 出水時における施設利用者の安全についての措置
2) 導入施設専用工作物の撤去移動、緊結等
3) 出水により堆積したヘドロの除去等
4) 出水により枯損した植栽等の復旧
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洪水調節(整)池の多目的利用において、管理を的確かつ円滑に実施するためには、以下に掲げる事項その他必要な事項について管理協定を締結し管理を行うことが必要である。
1) 目的
2) 適用範囲
3) 管理方法
4) 協議等
5) 費用分担
6) 雑則
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