

建設省経民発第三二号、建設省住街発第八七号
平成五年六月二五日
建設省建設経済局長、建設省住宅局長通知
宅地開発等指導要綱の適切な見直しの徹底について
地方公共団体の宅地開発等指導要綱及びこれに基づく行政指導については、良好な環境を形成する上で一定の役割を果たしてきた反面、良質かつ低廉な住宅・宅地の円滑な供給の促進の観点から、その一部に行き過ぎがあることが指摘されており、従来より、「宅地開発等指導要綱に関する措置方針」(昭和五八年八月二日建設省計民発第五四号。以下「措置方針」という。)等に基づき、その行き過ぎの是正に努めていただいてきたところである。
しかし、近年、宅地開発は新市街地における計画開発を中心に停滞傾向にあり、「生活大国」の実現に向けて良質かつ低廉な住宅・宅地供給に対する国民の欲求に適確に応えていくためには、宅地開発等指導要綱についても、経済・社会情勢の変化に対応した適切な見直しを行うことが要請されているところであり、「生活大国五か年計画」(平成四年六月三〇日閣議決定。別添1)においても、宅地開発等指導要綱の行き過ぎ是正の必要性が指摘されているところである。
さらに、本年六月一八日には、住宅宅地審議会により建設大臣に対し「国民が豊かさとゆとりを実感できる良好なまちづくりと宅地供給を緊急に促進する方策について」(別添2)建議がなされ、この中でも宅地開発等指導要綱の行き過ぎ是正の必要性が指摘されたところである。
一方、教育施設負担金返還請求事件に関する最高裁判所判決(平成五年二月一八日)においては、給水拒否という制裁措置を背景として指導要綱所定の教育施設負担金の納付を求めた地方公共団体の行為が違法な公権力の行使に当たるとされ、宅地開発等指導要綱に基づく行政指導の一層の適正化が求められている状況にある。
政府としては、住宅宅地開発事業の実施に伴う地方公共団体の財政負担増の軽減、事業者の関連公共公益施設整備に係る負担の適正化等を図るため、平成五年度予算において、住宅宅地関連公共公益施設整備事業助成制度を創設したほか、自治省との調整により、平成五年度より、地方単独事業で実施する住宅宅地関連整備事業等に対する財政支援措置が講じられたところであり、建設省としては、今後とも良質かつ適正な価格の住宅宅地の供給の促進のため財政措置の充実に努めていくこととしている。
ついては、貴職におかれても、以上の趣旨を了知され、特に左記の点に留意しつつ、経済社会情勢の変化に対応した宅地開発等指導要綱の適切な見直しが行われるよう、特段の配慮をお願いするとともに、貴管下市町村に対しても、この旨周知徹底を図られたい。
なお、今般、自治省からも、「平成五年度地方財政の運営について」(平成五年六月二二日付け自治事務次官通達。別添3)において、宅地開発等指導要綱に基づく寄付金等の内容及びその取扱いについての適正化等について通達されていること、念のため、申し添える。
一 基本的方向
宅地開発等指導要綱の見直しは、基本的には措置方針に示された方向によることとされたいが、宅地開発等指導要綱に基づく行政指導は、あくまで宅地開発事業者等の理解と協力のもとにその実現を図るべきものであること。
二 寄附金等の適正化
(一) いわゆる寄附金等(これに相当する関連公共公益施設等の提供を含む。以下同じ。)の開発事業者等の負担の在り方については、入居者等の負担につながるものであることにも配慮しつつその必要性、合理性等につき総合的に検討し、社会経済情勢の変化等に対応した適切な見直しが行われるべきこと。
(二) 開発事業者等に寄附金等の負担を求める場合には、当該寄附金等を充当しようとする公共公益施設の整備計画等について当該開発事業者等に十分説明し、その理解と協力を得るよう努めるとともに、受け入れた寄附金等の使途及び収支の明確化等を図る措置を講ぜられたいこと。
三 周辺住民等との調整の適正化
かねてより、宅地開発又は中高層建築物の建築に際して、周辺住民等の同意書の提出まで求めることは行き過ぎであり、必要がある場合には、開発事業者等と周辺住民等との間で十分に協議・調整を行う等事業者に対して適切な対応を求めるよう要請してきたところであり、このような観点から、「開発指導行政の円滑な執行のための周辺住民等との調整に関する事務処理マニュアル」(平成元年一二月一九日建設省経民発第四五号、住街発第一五三号)の一層の活用に努められたいこと。
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(別添1)
「生活大国五か年計画」(抄)
平成四年六月三〇日
閣議決定
第六章 特色ある質の高い生活空間の実現
第一節 住生活の充実
国民生活の最も重要な基盤をなす住生活の充実を図ることは、「生活大国」を築く上で最も重要な課題の一つである。このため、居住関連の投資の持続的拡大を図り、良質な住宅ストックの蓄積と安全で良好な居住環境を整備することにより、居住水準の向上を図る。
特に、大都市圏では地価が依然として高水準で中堅勤労者の住宅取得が困難となっていることから、東京を始め大都市圏においても、勤労者世帯の平均年収の五倍程度(諸条件の下における住宅の取得のために調達可能な資金額)を目安に良質な住宅の取得が可能となることを目指して、できる限りこれに近づけるよう、適正な地価水準の実現を図るための総合的な土地対策を着実に推進するとともに、住宅対策等の諸施策の充実を図る。
一 土地対策の推進
(住宅・宅地供給の促進)
(三)4) 宅地開発等指導要綱の行き過ぎ是正や住宅系開発の抑制方針の見直しを行い、地方公共団体の積極的な取組を推進する。
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(別添2)
国民が豊かさとゆとりを実感できる良好なまちづくりと宅地供給を緊急に促進する方策について(抄)
平成五年六月一八日
住宅宅地審議会建議
三 緊急に講ずべき施策
(一) 広域的な宅地需要及び地域整備の方向に対応する公民協調による良好なまちづくりの推進
4) 宅地開発指導要綱の行過ぎの是正等
宅地開発指導要綱は、良好な都市環境を形成する上で一定の役割を果たしてきているが、一方、必要性の不明確な負担を求めるなど行過ぎの事例が依然として見受けられ、そのような負担によるコストが宅地開発事業のコストに影響を与えることが懸念される。
このため、関連公共公益施設の整備を公民の適切な分担のもとに推進することとし、関連公共公益施設整備制度の拡充と併せて、宅地開発指導要綱の行き過ぎの是正を引き続き指導する必要がある。
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(別添3) 平成五年度地方財政の運営について(抄)
平成五年六月一八日
自治省事務次官通達
五 地域社会の振興
(五) (前略)
また、計画的な住宅宅地の供給を促進するため、補助事業で実施するものに加えて、新たに単独事業で実施する住宅宅地関連の公共施設整備事業を創設し、これらの事業に対して地方債及び地方交付税措置を講じることとしているので、その活用を図ること。
(中略)
六 財政秩序の確立
(六) 税外負担の解消については、引き続きその改善に努めること。特に、学校の施設・設備の整備や運営に係る寄附金等の取扱いについては、地方財政法の趣旨に従い、適正な運用を図ること。
(七) 宅地開発又は住宅建設に伴い、宅地開発指導要綱等に基づき関連公共公益施設の整備等に関して開発事業者から受けている寄附金等の内容及び取扱いについては、「土地基本法」及びこれに基づく施策の方針に沿って、なお一層その適正化に努めること。
この場合、当該寄附金等の目的及び使途の明確化に配意するとともに、当該市町村における公共公益施設の整備計画との整合性を考慮し、併せて関連公共公益施設整備に係る各種の財政措置の活用等をしんしゃくした長期的な財政収支の状況等を勘案しつつ、当該開発事業による受益と負担の程度等について総合的に検討することにより、適宜寄附金等の内容の見直しを行うこと。
また、当該寄附金等については、基金の設置その他適切な方法により、その収支の内容の明確化を図ること。
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