2構改B第九八一号・建設省経民発第四〇号・建設省都公緑発第一〇七号
平成二年九月二〇日

都道府県知事あて

農林水産事務次官・建設事務次官通知


市民農園整備促進法の施行について


市民農園整備促進法(平成二年法律第四四号。以下「法」という。)は平成二年六月二二日に公布され、市民農園整備促進法施行令(平成二年政令第二七二号)及び市民農園整備促進法施行規則(平成二年農林水産省令、建設省令第一号)は平成二年九月一四日に公布され、それぞれ平成二年九月二〇日から施行された。
法は、最近におけるレクリエーションその他の余暇活動等として行う農作物の栽培に対する関心の高まりに対応して市民農園の適正かつ円滑な整備の促進を図るため、市民農園の整備に関する基本方針の策定、市民農園区域の指定とその実効を担保するための交換分合の制度の整備、市民農園の開設の認定、認定を受けた市民農園の整備に係る農地法及び都市計画法の特例等の措置を講ずるものである。
法の施行に当たっては、左記事項に御留意の上、これらの法令に基づく制度の適切かつ円滑な運用に特段の御配慮をお願いする。
なお、貴管下関係機関に対してもこの旨周知徹底方お願いする。
以上、命により通達する。

第一 本法制定の趣旨

近年、市民農園は、都市の住民等農業者以外の人々が農地を利用して農作業を行うことを通して、レクリエーション、自家消費用の野菜の生産、高齢者の生きがいづくり、児童の教育等の多様な目的に資するために利用され、その数も増加している。
市民農園は、農業政策の観点からは、農地のままで都市の住民等のニーズにこたえた利用を行うことができ、農地の有効利用に資すること、農業者以外の人々の農業に対する理解が深まること、都市と農村との交流による地域の活性化に資すること等の意義を有している。また、都市政策の観点からは、都市の住民のレクリエーション需要の充足に資するものであるとともに、公害や災害の防止、景観の向上等の機能を有し、良好な都市環境の形成に資するものである。
このように、市民農園は、農業政策上及び都市政策上重要な意義を有しているので、農地のほか、農機具収納施設、休憩施設等も含めた市民農園全体を対象として、農業及び都市計画との調整を図りつつ、優良な市民農園の整備の促進を図る必要がある。このため、市民農園の適正かつ円滑な整備を促進するための措置を講ずることにより、健康的でゆとりのある国民生活の確保を図るとともに、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資することを目的として法が制定されたものである。

第二 市民農園の整備に関する基本方針

一 市民農園の整備に関する基本方針(以下「基本方針」という。)は、市民農園の整備に関する基本方向を示すものであることから、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資するよう定めるとともに、都市における土地利用を総合的に定めた都市計画との調和を確保し、また、土地の農業上の利用と他の利用との調整に留意しつつ総合的に農業の振興を図ることを目的とする農業振興地域整備計画との調和が保たれたものでなければならないこと。
二 基本方針は、市民農園の主たる利用者である都市の住民の意向及び市民農園の用に供される農地の存在の状況等地域の自然的経済的社会的諸条件を十分勘案し、整備の基本的な方向、整備すべき区域の設定に関する事項、市民農園施設の設置その他の整備に関する事項、利用条件その他の運営に関する事項等を適切に定めるものであり、貴管下区域内において相当数の市民農園の整備が見込まれる場合において、その適正かつ円滑な整備を図ることが必要であると認めるときは、基本方針を定めるものとすること。

第三 市民農園区域の指定

一 市民農園区域は、市民農園の開設を誘導しようとする区域を指定することにより、農業上の土地利用との調整を図るとともに市民農園の効率的な整備を図ろうとするものであるが、その指定に当たっては、市町村の振興計画等との調整を図りつつ、農地所有者の土地利用に関する意向、農業構造改善事業の実施状況等からみて、区域内における市民農園の開設及びその円滑な運営の見込みが十分にあること等地域の実情を踏まえる必要があること。

また、市民農園の整備を積極的に促進するため、市町村内において法第四条第一項各号に掲げる要件に該当する区域が複数ある場合には、それぞれを市民農園区域として指定して差し支えないものであること。

二 市民農園区域の指定は、農業上の土地利用との調整を図ること等を目的とするものであるので、市街化を図るべき区域である市街化区域は、農業との関係での土地利用上の調整を図る必要がないため、市民農園区域を指定しないこととされていること。
三 市町村は、市民農園区域の指定に当たっては地元関係者の意向等を十分に反映するとともに、周辺の地域における農用地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を及ぼすことのないよう地域における農業施策等との整合性を確保すること。

第四 交換分合

一 市民農園区域は、市民農園の利用者の便宜等から、都市からのアクセスの良い地域や集落に比較的近い地域に設定されることが予想される。このような地域においては、一般に、土地の利用形態が多様化しており、営農を継続しようとする者の土地と市民農園の用に供しようとする者の土地の混在等の問題が生じる可能性がある。

このため、多数の農地等に係る権利を集団的に調整する手法として交換分合制度を設けたものであること。

二 交換分合によって実現される土地利用は、当該市民農園区域内においては市民農園の整備が行われ、当該市民農園区域外においては農用地の集団化、農作業の効率化等が図られるものでなければならないこと。
三 交換分合計画の決定手続は、法で準用する農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号)及び土地改良法(昭和二四年法律第一九五号)の定めるところにより行うこととなるが、法の交換分合は、市民農園区域の指定又は変更に関連して行われるものであるから、交換分合計画の決定手続は、市民農園区域の指定又は変更手続と同時並行的に進めるものとすること。

第五 市民農園の開設の認定

一 市民農園は、農業政策上、都市政策上重要な意義を有しており、その整備水準の向上を図る必要がある。このため、都道府県知事が定めた基本方針に適合すること等一定の基準を満たす市民農園を市町村が認定し、認定を受けた市民農園について農地の権利移動・転用についての農地法等の特例措置、一定の市民農園施設の開発行為等についての都市計画法の特例措置を講ずることとしたものであること。
二 市町村は、市民農園の開設の認定に当たっては、市民農園施設の内容、規模等が周辺の地域における営農条件の確保に支障を生ずることのないよう十分配慮すること。
三 認定を受けた市民農園は、市民農園施設の整備のための農地転用に係る農地法の特例措置及び開発行為等に係る都市計画法の特例措置が講じられることとなるが、この運用については、土地利用のスプロール化等につながることのないよう行うこと。

第六 指導推進体制

一 法により優良な市民農園の整備促進を図っていくためには、農業行政、都市計画行政等が一層密接な連携を保つ必要があることから、法の円滑な施行及び運用に当たっては、都道府県及び市町村において農政担当部局と都市行政担当部局は十分協議してその事務にあたること。
二 法による市民農園の整備促進を図るため、地方公共団体においては市民農園の整備に係る補助事業及び融資制度の積極的な活用が図られるよう特段の配慮を行うとともに、市民農園の適正かつ有効な利用が図られるよう農作物の栽培、農園の管理等に係る指導員の配置等市民農園の運営面での指導及び助成を行い、都市の住民等が市民農園の利用を安定的に行うことができるようその継続性の確保に努めるものとすること。
三 市町村は、利用者の利便性が確保されるよう、認定開設者に対し、市民農園を適切に管理するための利用者の遵守事項を定めるとともに、巡回、指導等体制の整備を図ることを指導すること。

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