63構改C第七一八号・建設省都計発第一四三号
昭和六三年一二月二八日

農林水産事務次官・建設事務次官通達



集落地域整備法の施行について


集落地域整備法(昭和六二年法律第六三号)は昭和六二年六月二日に公布され、集落地域整備法施行令(昭和六三年政令第二五号)、集落地域整備法施行規則(昭和六三年農林水産省令第四号)及び集落地域整備法施行規則(昭和六三年建設省令第二号)は昭和六三年二月二三日に公布され、それぞれ昭和六三年三月一日から施行された。
本法は、土地利用の状況等からみて良好な営農条件及び居住環境の確保を図ることが必要であると認められる集落地域について、農業の生産条件と都市環境との調和のとれた地域の整備を計画的に推進するため、集落地域整備基本方針の策定、集落地区計画及び集落農業振興地域整備計画の策定等の措置を講ずるものである。
本法の施行に当たっては、左記事項に御留意の上、本法に基づく制度の適切かつ円滑な運用に遺憾なきを期せられたい。
なお、貴管下関係機関に対してもこの旨周知徹底方お願いする。
以上、命により通達する。

第1 本法制定の趣旨

近年、都市計画区域と農業振興地域とが重複した地域を中心に混住化、兼業化等の進展等から、虫食い的な農地転用による農業生産機能の低下、無秩序な建築活動による居住環境の悪化等土地利用の面を中心に営農条件及び居住環境の両面にわたる問題が生じてきており、他方、生産性の高い農業の確立と良好な都市環境の確保に対する要請は、ますます強くなっていることにかんがみ、本法は、居住と農業生産の基礎的単位である集落及びその周辺の農用地を含む一定の地域について、地域の合意形成を図りつつ、良好な営農条件及び居住環境の計画的な整備と適正な土地利用が調和のとれた形で実現されるよう、農落地域整備基本方針に基づき、計画的に整備が図られるような措置を講ずるため制定されたものであるので、その積極的な活用を図ること。

第2 集落地域整備基本方針

一 集落地域整備基本方針(以下「基本方針」という。)は、本法による制度の中心をなすものであることから、集落地域について調和のとれた農業の生産条件と都市環境の整備及び適正な土地利用についての基本方向を示すとともに、農業振興地域整備制度としての集落農業振興地域整備計画(以下「集落農振整備計画」という。)と都市計画制度としての集落地区計画が調和のとれたものとして策定されるよう両者の観点を融合した指針となるように定めたものであること。
二 基本方針は、集落地域について、当該地域の自然的経済的社会的諸条件を十分勘案し、その特性に応じて、位置及び区域に関する基本的事項、整備又は保全の目標、土地利用に関する基本的事項、農用地及び農業用施設等の整備等良好な営農条件の確保に関する基本的事項、公共施設及び良好な居住環境の整備に関する基本的事項等を適切に定めること。
三 基本方針は、農業振興地域整備基本方針並びに市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針との整合性を確保して定めること。

第3 集落地区計画

一 集落地区計画は、集落地域において、営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図り、当該集落地域の特性にふさわしい整備及び保全を図るよう定めるものであり、当該計画に従い、届出・勧告制度、開発許可制度及び建築基準法に基づく市町村の条例による制限の制度等によって開発行為、建築物の建築等を規制・誘導するとともに、当該計画に適合した開発行為について市街化調整区域内の開発許可及び建築許可基準の特例を設けるものであること。
二 市街化調整区域において定められる集落地区計画は、市街化区域及び市街化調整区域の区域区分制度(以下「区域区分制度」という。)の中で運用されるものであり、これにより市街化調整区域の性格が変わるものではなく、また、従来の区域区分制度のルール又は取扱いが変更されるものではないこと。

また、市街化調整区域において集落地区計画を定める場合には、区域区分制度の趣旨を尊重し、市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針との整合性を確保すること。

三 集落地区計画に関する都市計画の内容は、集落地域及びその周辺の建築行為、開発行為又は農地転用の動向、公共施設の整備状況等を勘案し、営農条件と調和のとれた良好な居住環境が確保されるよう当該集落地域の特性に応じて必要と認められる事項を総合的に定めること。
四 集落地区計画の案を作成するに当たっては、説明会の開催等により利害関係者の意向を十分把握し、その意向が反映されるよう努めること。
五 集落地区計画の区域のうち集落地区整備計画が定められている区域内においては、届出・勧告制度が適用され、また、集落地区計画の内容に即して開発許可が行われることとされるとともに、市街化調整区域において集落地区計画の内容に適合する建築物の建築等の目的で行う開発行為は、開発許可をすることができることとされているので、集落地区計画の目的を達成するため、当該区域の実情に応じ、これらの措置を適切に運用すること。
六 建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づき、集落地区計画の区域内において市町村が定める条例は、建築物に関する事項で集落地区計画の内容として定められたもののうち特に重要なものを建築基準法の制限として定めるものであるので、条例の制定及び運用に当たっては、建築物の利用上の必要性、土地利用の状況等を十分考慮するとともに、土地所有者その他の関係者の意向をも把握して、届出・勧告制度と併せて集落地区計画の目的が十分達成されるよう配慮すること。

第4 集落農振整備計画

一 集落農振整備計画は、集落地域において、居住環境と調和のとれた良好な営農条件を確保するため、その地域の特性にふさわしい農用地及び農業用施設等の整備を一体的に推進するよう定めるものであり、また、当該計画の達成に資するため、農用地の保全及び利用に関する協定(以下「協定」という。)、農用地区域設定の特例及び交換分合の措置を講ずることとしたものであること。
二 集落農振整備計画を定めるに当たっては、当該計画が市町村農業振興地域整備計画(以下「市町村農振計画」という。)の達成手段であることにかんがみ、当該市町村農振計画との整合性を確保すること。
三 集落農振整備計画の内容は、集落地域及びその周辺の農用地の利用動向、農地転用の動向、農用地及び農業用施設等の整備状況等を勘案して、居住環境と調和のとれた良好な営農条件が確保されるよう当該区域において総合的に農業振興を図るために必要な事項を一体的に定めること。
四 集落農振整備計画は、当該集落地域内の農業者等の意向と合意形成を踏まえて策定すること。
五 集落農振整備計画の区域内においては、土地の農業上の効率的な利用とその実効性を確保していくため、農用地所有者等の全員合意による協定、協定区域内の農用地についての農用地所有者による農用地区域設定の要請及び協定区域(協定区域とすることが適切であり、かつ、その大部分について協定区域になることが確実と認められる農用地の区域を含む。)内にある農用地を含む集落農振整備計画の区域の一定の農用地についての市町村による交換分合の措置を講ずることができるので、これらの措置の活用と適切な運用が図られるよう努めること。

第5 指導推進体制

一 本法により集落地域の調和のとれた農業生産条件及び都市環境の整備を図るとともに、適正な土地利用を図っていくためには、農業行政、都市計画行政等が一層密接な連携を保つ必要があることから、本法の円滑な施行及び運用に当たっては、都道府県及び市町村において、農林水産・農林水産関連企業担当部局と都市計画・土木担当部局とが密接な連携を保つとともにその他関連部局とも連携を保つこと。
二 基本方針の策定に当たっては、都市計画・土木担当部局と農林水産担当部局は、基本方針並びに基本方針に基づく集落地区計画及び集落農振整備計画に定める施設等の整備について相互に事前に十分調整を行うこと。

また、これに当たっては、地方公共団体の関係部局は連絡して、事前に対象集落の整備の構想について、地元の合意形成を図ること。

三 集落地区計画及び集落農振整備計画は、基本方針を受けて一体として定められるものであることから、集落地区計画及び集落農振整備計画の策定に当たっては、両計画の整合性を確保するとともに、地方公共団体の関係部局の密接な連携を保つため、十分連絡調整を行うものとすること。
四 本法による集落地域の整備を円滑に推進するためには、集落地区計画及び集落農振整備計画の策定を資する調査並びにこれらの計画とあいまった事業の実施が重要であることにかんがみ、本法制定に関連して創設された農林水産省所管制度としての農業振興地域内の農業集落の整備を推進するための調査計画及び事業制度並びに建設省所管制度としての田園居住区整備事業制度とともに、既存事業等の積極的活用を図ること。
五 本法による集落地域の整備を積極的かつ円滑に推進するため、連絡推進体制の整備、関係職員の研修等本法の推進執行体制の整備・拡充を図るとともに、本法の趣旨等について十分な普及啓もうを図ること。

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