6構改B第一四〇号・建設省都計発第八八号
平成六年二月二一日

各都道府県知事あて

農林水産省構造改善局長建設省都市局長通達


特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律に基づく農林地所有権移転等促進事業の実施について


特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七二号。以下「法」という。)は、関係政省令とともに平成五年九月二八日付けで施行され、さらに、所有権移転等促進計画の承認手続等に関する省令(平成六年農林水産省、建設省令第一号。以下「共同省令」という。)が本日付けで施行された。同法の施行については、「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律の施行について」(平成六年一月三一日付け6国地総(過)第三号、6構改B第四四号、六立第一八九号、建設省都計発第六号、自治画第二〇号国土事務次官、農林水産事務次官、通商産業事務次官、建設事務次官及び自治事務次官依命通達)により、その運用に関する大綱が定められたところであるが、同法に基づく農林地所有権移転等促進事業の実施に当たっては、なお下記事項に御留意されたい。

第1 農林地所有権移転等促進事業の実施

1 事業の趣旨

農林地所有権移転等促進事業は、特定農山村地域において、農業の担い手の減少・高齢化等により耕作放棄等が進んでいる実態にかんがみ、重要な地域資源である農林地について、地域の農業者等の理解と合意を醸成しつつ、市町村が農業委員会、農業協同組合、森林組合等と協力して、その農林業上の効率的かつ総合的な利用を確保するとともに、法第二条第三項第二号に定める農林業等活性化基盤施設の円滑な整備を促進することを狙いとする事業である。

2 事業実施の原則

農林地所有権移転等促進事業は、法第二条第三項に定める農林業等活性化基盤整備促進事業の一つであり、その実施に当たっては、法第三条に定める農林業等活性化基盤整備促進事業の原則に従い、地域住民の生活の向上、農林業の振興並びに農用地及び森林の保全を通じて国土及び環境の保全等の機能が十分発揮されることを旨とすることが必要である。

3 所有権の移転等に関する意向の円滑な調整

農林地所有権移転等促進事業が適正かつ円滑に実施されるためには、農林地等の関係権利者の意向を尊重し、その意向に即しつつ権利関係の調整が進められることが重要である。
このため、市町村は、事業の目的、内容、仕組みなどの普及に努めるとともに、集落代表者等を通じて所有権の移転等を行おうとする者又は所有権の移転等を受けようとする者の意向を把握し、その意向に即しつつ権利関係等の調整を図り、その結果を十分に尊重して、農林地所有権移転等促進事業を進めるように配慮するものとする。

4 農林地所有権移転等促進事業の対象となる土地

(1) 法第二条第二項第一号の「農用地」は、農地法(昭和二七年法律第二二九号)第二条第一項に規定する「農地」及び「採草放牧地」に該当する土地である。
(2) 法第二条第二項第二号の「木竹の生育の用に供され、併せて耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地」は、いわゆる「混牧林地」のうち木竹の集団的な生育に供される土地を除いたものであり、(1)の「農用地」及び(3)の「林地」には属さない土地である。
(3) 法第二条第二項第三号の「林地」は、森林法(昭和二六年法律第二四九号)第二条第一項の「森林」に該当する土地のうち農地法第二条第一項に規定する「採草放牧地」を除いたものである。
(4) 法第二条第二項第四号の「農林業等活性化基盤施設の用に供される土地及び開発して農林業等活性化基盤施設の用に供されることが適当な土地」は、現に農林業等活性化基盤施設の用に供されている土地及び農林業等活性化基盤施設用地とすることが適当な土地である。
(5) 法第二条第二項第五号の「これらの土地との一体的な利用に供されることが適当な土地」は、土留等農林地や農林業等活性化基盤施設用地の保全上必要な土地であって、かつ、(1)から(4)の土地に隣接して利用上一体となっている土地である。

第2 農林業等活性化基盤整備計画

1 農林地所有権移転等促進事業に係る計画事項

法第四条第一項の規定に基づく農林業等活性化基盤整備計画(以下「基盤整備計画」という。)に定める農林業等活性化基盤整備促進事業の実施に関する事項のうち農林地所有権移転等促進事業に係るものにおいては、次に掲げる事項を定めるものとされている(法第四条第三項)。
(1) 農林地所有権移転等促進事業の実施に関する基本方針(法第四条第三項第一号)

農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用の確保及び農林業等活性化基盤施設の円滑な整備を図るとともに、地域の農林業その他の事業に従事する者又はその組織する団体が地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図るためにする自主的な努力を助長することを旨とすること等農林地所有権移転等促進事業の実施に当たっての基本的な考え方を明らかにするものとする。

(2) 移転される所有権の移転の対価の算定基準及び支払の方法(法第四条第三項第二号)

ア 移転される所有権の移転の対価の算定基準については、土地の種類及び利用目的ごとにそれぞれ近傍類似の土地の取引(特殊な事情の下で行われる取引を除く。)の価額に比準して算定される額を基礎とし、農用地、林地、混牧林地等にあってはその土地の生産力等を勘案して、農林業等活性化基盤施設の用に供される土地及び開発して農林業等活性化基盤施設の用に供されることが適当な土地にあっては近傍類似の地代等から算定される推定の価格、同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額等を勘案して算定する(ただし、対象となる土地が地価公示法(昭和四四年法律第四九号)第二条第一項に規定する都市計画区域に所在し、かつ同法第六条の規定による公示価格を取引の指標とすべきものである場合においては、公示価格を基準とした価額を基礎として算定する)旨定めることが適当である。
イ 移転される所有権の移転の対価の支払の方法については、所有権移転等促進計画に定める支払期限までに所有権の移転を受ける者が所有権の移転を行う者の指定する金融機関の口座に振り込むことにより支払い、又は所有権の移転を行う者の住所に持参して支払う旨定めることが適当である。

(3) 設定され、又は移転される地上権、賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準並びに当該設定され、又は移転を受ける権利が地上権又は賃借権である場合における地代又は借賃の算定基準及び支払の方法(法第四条第三項第三号)

ア 設定され、又は移転される地上権、賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準のうち存続期間に関する基準については、次のように定めることが適当である。

(ア) 土地を農用地として利用する場合にあっては、農地等の利用関係の調整を円滑に行うことができるよう、地域の実情に応じ関係農業者の多くが希望する期間
(イ) 土地を林地として利用する場合にあっては、森林の生育に係る期間が通常数十年と長いことに配慮した期間
(ウ) 土地を農林業等活性化基盤施設用地として利用する場合にあっては、施設の耐用年数、事業計画の年数等を考慮した期間
また、残存期間に関する基準については、移転される地上権、賃借権又は使用貸借による権利の残存期間を基準とする旨定めることが適当である。

イ 地代又は借賃の算定基準及び支払の方法のうち算定基準については、次のように定めることが適当である。

(ア) 農地については、農地法第二四条の二第一項の規定により農業委員会が定めている小作料の標準額を十分考慮し、当該農地の生産条件等を勘案して算定する。

また、採草放牧地については、その採草放牧地の近傍の採草放牧地の地代又は借賃の額に比準して算定する。なお、近傍の地代又は借賃がないときは、その採草放牧地の近傍の農地について算定される地代又は借賃の額を基礎とし、当該採草放牧地の生産力等を勘案して算定することも考えられる。

(イ) 混牧林地については、その混牧林地の近傍の混牧林地の地代又は借賃の額、放牧利用の形態、当事者双方の受益又は負担の程度等を総合的に勘案して算定する。
(ウ) 林地については、その林地の近傍の林地の地代又は借賃の額に比準して算定する。なお、近傍の地代又は借賃がないときは、森林の樹種、林齢等を総合的に勘案して算定する。
(エ) 農林業等活性化基盤施設用地については、その農林業等活性化基盤施設用地の近傍の同種の農林業等活性化基盤施設用地の地代又は借賃の額に比準して算定する。なお、近傍の地代又は借賃がないときは、その農林業等活性化基盤施設用地の近傍の用途が類似する土地の地代又は借賃の額等を勘案して算定することも考えられる
(オ) 開発して農用地とすることが適当な土地、林地とすることが適当な土地及び開発して農林業等活性化基盤施設用地とすることが適当な土地については、開発等の後の土地の地代又は借賃の水準、開発費用の負担区分の割合、通常の生産力、利益を発揮するまでの期間等を総合的に判断して算定する。
また、支払の方法については、関係権利者に不利益の生じない範囲内で極力統一的かつ簡便な方法を定めることが適当である。したがって、一般的な方法としては、地代又は借賃は毎年所有権移転等促進計画に定める日までに当該年に係る地代又は借賃の全額を一時に支払う旨定めることが適当である。この支払は、賃貸人の指定する金融機関の口座に振り込むことにより、その他の場合は賃貸人の住所に持参して支払い、賃貸人及び賃借人の双方が同一の金融機関に口座を有するときは、原則として当該口座間の振替により借賃を支払うよう措置する旨定めることが適当である。

(4) その他農林地所有権移転等促進事業に関し基盤整備計画に定めるべき事項(法第四条第三項第四号)

ア 農林地所有権移転等促進事業及び農業経営改善安定計画に関する省令(平成五年農林水産省令第五二号。以下「農林水産省令」という。)第一条の「農林地所有権移転等促進事業の実施により設定され、又は移転される農用地に係る賃借権若しくは使用貸借による権利の条件」については、所有権移転等促進計画において定める有益費の償還等権利の条件に関する事項を定めるものとする。
イ 農林水産省令第一条の「その他農用地の所有権の移転等に係る法律関係に関する事項」については、農林地所有権移転等促進事業の実施によって成立する当事者間の法律関係が明確になるよう賃貸借、使用貸借、売買等当事者間の法律関係に関する事項を定めるものとする。

2 基盤整備計画の作成及び承認に当たっての留意事項

基盤整備計画の市町村による作成及び都道府県知事による承認については、計画作成における道路その他の公共施設の整備の観点並びに計画作成及び承認における農林業等活性化基盤施設の整備に係る農業振興地域整備計画、都市計画との調和、公共施設の整備状況、周辺の土地利用の状況等を勘案した判断の観点など様々な観点があるため、それらにふさわしい部局が緊密に連携を図りつつ処理するものとする。

第3 所有権移転等促進計画の作成

1 所有権の移転等に係る申出

法第五条の認定を受けた団体若しくはその參加構成員又は法第七条の認定を受けた者が、法第五条の認定に係る計画又は法第七条の認定に係る事業計画に従って農林地等について所有権の移転等を受けたい旨の申出をする場合には、別記様式第一号により、市町村に所有権移転等促進計画を定めるべき旨を申し出るものとする。

2 所有権移転等促進計画の記載事項

所有権移転等促進計画に定めるべき事項については、法第八条第二項及びこれに基づく農林水産省令第六条において定められているところであるが、このうち農林水産省令第六条第二号イに掲げる「同項第一号に規定する者の農業経営の状況」については、次に掲げる事項を記載するものとする。
(1) 法第八条第二項第一号に規定する者又はその世帯員が現に使用し、又は所有権以外の使用及び収益を目的とする権利を有している農用地の面積並びにこれらの者が権原に基づき現にその耕作又は養畜の事業に供している農用地の面積
(2) 法第八条第二項第一号に規定する者が個人である場合にあっては法第八条第二項第一号に規定する者又はその世帯員がその耕作又は養畜の事業に従事している状況及びこれらの者が当該事業につきその労働力以外の労働力に依存している状況、法人である場合にあってはその法人のその耕作又は養畜の事業に係る労働力の状況
(3) 法第八条第二項第一号に規定する者又はその世帯員がその耕作又は養畜の事業に供している農機具及び役畜の状況

3 所有権移転等促進計画の要件

(1) 基盤整備計画への適合

所有権移転等促進計画の内容は、法第四条第三項の規定により基盤整備計画に定められた農林地所有権移転等促進事業に係る事項その他基盤整備計画の内容に適合するものでなければならないこととされている(法第八条第三項第一号)。

(2) 所有権の移転等の種類

ア 法第八条第三項第二号イの「農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用を確保するため行う農林地についての地目変換(農用地間又は林地間における地目変換を除く。)を伴う所有権の移転等」は、地域の農林業上の効率的かつ総合的な土地利用の実現を円滑に進めるため、例えば、次に掲げる場合に行う所有権の移転等が一括して行われるものをいう。

(ア) 耕作放棄又は荒し作りがなされている農用地について、周辺の農用地の利用状況等を勘案し、農業用施設の用に供される土地に転用し、農業上の効率的な土地利用を図る場合
(イ) 山際等に所在する耕作に適さない農用地について、林地に転用し、林業上の効率的な土地利用を図る場合
(ウ) 地域の農林業の活性化を図るため、林地から農用地又は農業用施設の用に供される土地への地目変換を行う場合

イ 法第八条第三項第二号ロの「農林業等活性化基盤施設(特定施設を除く。)の整備を図るため行う農林地等についての所有権の移転等及びこれと併せて行う当該所有権の移転等を円滑に推進するために必要な農林地についての所有権の移転等」は、農林業等活性化基盤施設設置者による当該施設の用に供される土地の所有権等の取得と、農林業経営の継続のために代替農林地の取得を希望する土地提供者への代替農林地の所有権の移転等を一括して処理することをいう。

この場合、周辺農地所有者の中に当該農林業等活性化基盤施設の用に供されることとなる農地を農業上利用しようとする者がいないことを確認する必要がある。
なお、当該農林業等活性化基盤施設の用に供されることとなる農林地において現に農林業を営んでいる者の中には、当該農林地の転用を契機に農林業経営の規模縮小、廃止を行おうとする者もいると考えられ、このような場合は、必ずしも代替農林地の取得は要件とはされない。

ウ 所有権移転等促進計画には、農用地についての所有権の移転等が含まれていなければならない。

(3) 関係権利者の同意

所有権移転等促進計画は、所有権の移転等が行われる土地ごとに、所有権の移転等を受ける者並びに所有権の移転等が行われる土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべての同意が得られていなければならないこととされている(法第八条第三項第三号)。

(4) 農業振興地域整備計画、都市計画等への適合

所有権の移転等が行われる土地の利用目的は、当該土地に係る農業振興地域整備計画、都市計画等の土地利用に関する計画に適合すると認められ、かつ、当該土地の位置及び規模並びに周辺の土地利用の状況からみて、当該土地を当該利用目的に供することが適当と認められなければならないとされている(法第八条第三項第四号)。

(5) 所有権の移転等を受ける者の備えるべき要件

ア 所有権の移転等の対象となる土地の全部又は一部が農用地であり、かつ、当該農用地に係る所有権等の移転後の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合には、農地法第三条第二項の規定により同条第一号の許可をすることができない者に該当しないこととされている(法第八条第三項第五号イ)。

したがって、当該要件の判断に当たっては、法人である場合には農地法第二条第七項に規定する農業生産法人であること等、農地法第三条第二項各号に該当しないものであることを確認するよう留意する必要がある。

イ 土地の利用目的が農林業等活性化基盤施設の用に供するためのものである場合には、所有権の移転等を受ける者は、法第五条の認定を受けた団体若しくはその参加構成員、法第七条の認定を受けた者又は地方公共団体その他の基盤整備計画に即して農林業等活性化基盤施設を適正かつ確実に整備することができると認められる者として主務省令で定める者であることとされている(法第八条第三項第五号ロ)。

この「主務省令で定める者」としては、地方公共団体、国、特殊法人及び市町村から農林業等活性化基盤施設を整備すべき旨の要請を受けた者であって自ら当該施設を整備するものが定められている(特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律施行規則(平成五年総理府、農林水産省、通商産業省、建設省、自治省令第一号)第六条)。
市町村が農林業等活性化基盤施設の整備の要請を行う際には、別記様式第二号により行うこととするとともに、法第七条の認定制度の趣旨にかんがみ、事業の実績、資金力等からみて農林業等活性化基盤施設を適正かつ確実に整備することができると認められる者に対して要請を行うものとし、かつ、当該施設の整備後において当該施設の適正な管理運営が行われることが確実であると認められることを所有権移転等促進計画の作成の際に確認することが必要である。

ウ 上記ア及びイ以外の場合には、所有権の移転等が行われた後において、対象となる土地を利用目的に即して適正かつ確実に利用できると認められる者であることとされている(法第八条第三項第五号ハ)。

4 所有権移転等促進計画の作成に当たっての留意事項

市町村は、所有権移転等促進計画の作成に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
(1) 法第八条第三項第三号の同意が円滑に得られるよう、あらかじめ、農業委員会等の関係者の協力を得るなどして、農林地所有権移転等促進計画の案を作成すること。
(2) 所有権移転に係る所有権移転等促進計画を定めようとする場合には、当該所有権移転等促進計画に定める事項と当該所有権移転に係る土地の土地登記簿の内容又は実測結果と照合すること。
(3) 所有権の移転等の対象となる土地の全部又は一部が農用地であり、かつ当該農用地に係る所有権の移転等の後の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合には、当該所有権の移転等を受けようとする者につき、農業委員会と事前調整を行い、農地法第三条第二項各号に該当するものでないことを確認すること。
(4) 所有権移転等促進計画に農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当する農用地の所有権の移転等を定めようとする場合には、当該所有権の移転等につき農業委員会と事前調整を行うこと。
(5) 開発して農用地若しくは農林業等活性化基盤施設用地とすることが適当な土地又は林地とすることが適当な土地についての所有権移転等促進計画を作成する場合には、その所有権の移転等を受けようとする者から開発事業計画の提出を求める等により、当該事業計画を明確にし、1)開発事業の実施が確実と認められること、2)農地転用を伴う場合には、農地法に基づく農地転用の許可基準上許可し得るものであると認められること、3)都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)上の開発行為等を伴う場合には、同法に基づく開発許可基準上許可し得るものであると認められるか、又は許可不要であると認められること、4)農用地区域内の開発行為を伴う場合には、土地の利用目的が農業振興地域整備計画に適合していること及び農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号)に基づく開発行為の許可基準上許可し得るものと認められることを当該許可担当部局から事前に意見を聴取し、確認すること。この場合の開発事業計画の提出は、別記様式第三号により提出させるものとする。
(6) 所有権の移転を行い、かつ、その利用目的を変更する土地には、原則として森林法による保安林、保安林予定森林、保安施設地区及び保安施設地区予定地並びに保安林整備臨時措置法(昭和二九年法律第八四号)による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地(以下「保安林等」という。)を含めないものとする。なお、保安林等を含む場合は、事前にあらかじめ十分な時間的余裕をもって都道府県保安林担当部局に連絡し、調整を図った上で行うこと。
(7) 土地区画整理促進区域、拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域、土地区画整理事業に関する都市計画が定められている区域又は土地区画整理法(昭和二九年法律第一一九号)第四条第一項若しくは第一四条第一項の認可に係る施行地区が定められている土地の区域において、所有権移転等促進計画を作成しようとする場合には、あらかじめ区画整理担当部局と十分に調整すること。
(8) 鉄道、港湾、空港等の施設に関する国又は都道府県の計画(鉄道整備等に関し運輸省関係審議会が定める計画、日本鉄道建設公団の計画、鉄道事業法(昭和六一年法律第九二号)、軌道法(大正一〇年法律第七六号)等法律に基づく許認可等の行政処分に係る事業者の計画、港湾法(昭和二五年法律第二一八号)第三条の三に基づいて港湾管理者が策定する港湾計画等)に十分配慮すること。
(9) 所有権の移転等が行われた後の土地の利用目的に関し、農業振興地域整備計画、都市計画への適合性の判断及び公共施設の整備状況、周辺の土地利用の状況等を勘案した判断など様々な観点があるため、それらにふさわしい部局が緊密に連携を図りつつ処理すること。

5 農業委員会の決定

(1) 市町村は、所有権移転等促進計画を定めようとするときは、その定めようとする所有権移転等促進計画の所有権の移転等に係る土地ごとに、所有権の移転等を受ける者及び当該土地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者のすべての同意を得た上で、農業委員会に諮り、その決定を経なければならない。
(2) 所有権移転等促進計画を農業委員会の決定に係らしめているのは、農業委員会はその重要な任務の一つとして農地等(農地、採草放牧地、薪炭林)の利用関係の調整に関する事務を担っていることによるものである。この場合、計画全体について農業委員会が決定することとしているが、林地に係る権利関係の調整について判断するものではない。
(3) 農業委員会は、所有権移転等促進計画につき決定をするに当たっては、所有権の移転等の対象となる土地の全部又は一部が農用地であり、かつ当該農用地に係る所有権の移転等の後の利用目的が農用地の用に供するためのものである場合には農地法第三条第一項の許可の観点から判断して決定を行うとともに、農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当する農用地の所有権の移転等が含まれる場合には別記様式第四号の意見書を作成するものとする。
(4) 農業委員会は、所有権移転等促進計画について決定を行うときは、農用地の適切な権利移動が図られることを旨として、当該決定に要する期間その他基盤整備計画の円滑な達成を図るために必要な事項につき適切な配慮をするものとされている(農林水産省令第五条)。したがって、農業委員会は、市町村特定農山村法部局から所有権移転等促進計画の作成に係る事前相談があった場合には、これに積極的に応じるとともに、所有権移転等促進計画の決定に係る事務処理を遅滞なく完了させるよう努めるものとする。

第4 所有権移転等促進計画の承認

1 市町村は、所有権移転等促進計画を定めようとする場合において、当該所有権移転等促進計画が次の(1)又は(2)に該当するときは、当該所有権移転等促進計画について、あらかじめ、都道府県知事の承認を受けなければならない(法第八条第四項)。この都道府県知事による承認は、農地法に基づく農地転用許可制度及び都市計画法に基づく開発許可制度の特例の観点から設けられたものである。

(1) 所有権の移転等の対象となる土地の全部又は一部が農用地(当該農用地に係る所有権の移転等の内容が農地法第五条第一項本文に規定する場合に該当するものに限る。)であること。
(2) 所有権の移転等の対象となる土地の全部又は一部が、市街化調整区域内にあり、かつ、所有権の移転等が行われた後において、農林業等活性化基盤施設の用に供されることとなること(都市計画法第二九条又は第四三条第一項の規定による許可を要する場合に限る。)

2 市町村は、所有権移転等促進計画の承認申請に当たっては、申請書に、所有権移転等促進計画書及び次の添付図書を添えて都道府県知事に提出しなければならない(共同省令第一条第一項及び第二項)。

(1) 所有権移転等促進計画が法第八条第四項第一号に規定する要件に該当する場合には、次に掲げる事項を記載した書面

イ 土地の利用状況及び普通収穫高
ロ 所有権の移転等の当事者がその土地の転用に伴い支払うべき給付の種類、内容及び相手方
ハ 土地の転用の時期及び転用の目的に係る事業又は施設の概要
ニ 土地を転用することによって生ずる付近の土地、作物、家畜等の被害の防除施設の概要

(2) 所有権移転等促進計画が法第八条第四項第二号に規定する要件に該当する場合には、次に掲げる事項を記載した書面

イ 開発区域又は建築敷地の位置、区域及び規模
ロ 農林業等活性化基盤施設の種別
ハ 農林業等活性化基盤施設の整備を行おうとする者に関する事項
ニ 都市計画法第二九条の許可を要する場合には、開発区域内の土地利用計画の概要及び開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設の整備に関する事項

(3) 方位、地形、開発区域又は建築敷地の境界及び開発区域又は建築敷地の周辺の公共施設並びに(2)に該当する場合であって都市計画法第二九条の許可を要する場合には開発区域内の公共施設を表示した現況図
(4) 開発区域又は建築敷地の境界並びに農林業等活性化基盤施設である建築物の位置、形状及び種別並びに(2)に該当する場合であって都市計画法第二九条の許可を要する場合には公共施設の位置及びおおむねの形状並びに農林業等活性化基盤施設である建築物の敷地のおおむねの形状を表示した土地利用計画概要図
(5) 承認申請に係る農用地が土地改良区の地区内にあるときは、当該土地改良区の意見書(ただし、意見を求めた日から三〇日を経過してもその意見を得られない場合には、その事由を記載した書面)
(6) その他参考となるべき事項を記載した図書

3 都道府県知事は、市町村から申請書の提出があったときは、次により処理するものとする。

(1) 農地転用を含む所有権移転等促進計画について承認しようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聴かなければならないこととされている(法第八条第五項)。なお、この都道府県農業会議の意見聴取は、農用地の適切な転用を行うという趣旨からされるものである。
(2) 申請内容が農地転用許可基準等に適合しているものであるかを審査し、必要がある場合には実地調査を行い、承認又は不承認を決定し、その旨を市町村に通知する。
(3) 市町村から申請書の提出があったときは、迅速に事務処理を行うよう努める。

4 都道府県知事は、前記一の(1)に該当する所有権移転等促進計画の承認に当たっては、農地法の許可制度と同様の取扱いを行うこととし、具体的には、農地転用許可基準等に適合しない不適当な農用地の転用が行われることのないようにするものとする。この場合、転用によって生じる被害の防除措置については、特に慎重に審査するものとする。
5 都道府県知事は、前記一の(2)に該当する所有権移転等促進計画の承認に当たっては、当該所有権移転等促進計画に定められた農林業等活性化基盤施設の市街化調整区域における立地につき、都市計画法第三四条又は都市計画法施行令(昭和四四年政令第一五八号)第三六条第三号により判断するものとする。
6 都道府県知事による承認を受けた所有権移転等促進計画については、法第九条第二項による通知が行われないため、当該承認が当該所有権移転等促進計画の効力発生前に最終的に都道府県知事によって確認する機会となるものである。したがって、都道府県知事は、所有権移転等促進計画の承認に当たっては、当該所有権移転等促進計画の全体の内容が適切なものであることを確認する必要がある。
7 所有権移転等促進計画の都道府県知事による承認に当たっては、所有権の移転等が行われた後の土地の利用目的に関し、農業振興地域整備計画、都市計画への適合性の判断及び公共施設の整備状況、周辺の土地利用の状況等を勘案した判断など様々な観点があるため、それらにふさわしい部局が緊密に連携を図りつつ処理するものとする。

第5 所有権移転等促進計画の公告等

1 所有権移転等促進計画の公告

(1) 市町村が農業委員会の決定を経て、所有権移転等促進計画を定め、その旨を公告したときは、その公告があった所有権移転等促進計画の定めるところによって所有権が移転し、又は地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、若しくは移転することとされている(法第九条第一項)。
(2) 所有権移転等促進計画の作成は、これを公告することにより特定人の権利義務を具体的に決定することとなることから、行政処分に当たると解される。したがって、法令に定める要件又は手続に違反した作成又は公告が行われた場合には、その行政処分は、いわゆる瑕疵ある行政処分であり、市町村はこれを取り消すこととなる。

また、所有権の移転等に係る土地が正当な事由なく公告があった所有権移転等促進計画に定める利用目的に供されていない場合等で詐欺その他不正な手段により当該所有権移転等促進計画を作成させたと認めるときは、市町村は、当該土地に係る所有権移転等促進計画を取り消すことができる。この場合において、所有権移転等促進計画の取消しは、市町村が、その取消しの公告をすれば足りる。

(3) なお、上記の場合以外であっても、所有権移転等促進計画の公告後の事情変更により農林地所有権移転等促進事業の目的を達成することが困難となったために当該所有権移転等促進計画を取り消さざるを得ないことも考えられるので、市町村は、所有権移転等促進計画において取消権を留保しておくことが必要である。

2 所有権移転等促進計画の事前通知

市町村は、所有権移転等促進計画の公告をしようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に通知しなければならないこととされている(法第九条第二項)。この規定は、所有権移転等促進計画について、その効力発生前に最終的に都道府県知事によって確認する機会を与えることが適当であるとの趣旨で設けられたものである。
その際、市町村は、都道府県知事に対し、公告をしようとする所有権移転等促進計画及び当該公告の予定年月日を記載した書面を添えて、原則として、公告をしようとする日の二〇日前までに通知を行うものとする。
また、市町村の事前通知に係る都道府県知事による確認に当たっては、所有権の移転等が行われた後の土地の利用目的に関し、農業振興地域整備計画、都市計画への適合性の判断及び公共施設の整備状況、周辺の土地利用の状況等を勘案した判断など様々な観点があるため、それらにふさわしい部局が緊密に連携を図りつつ処理するものとする。
なお、法第八条第四項の都道府県知事の承認を受けた所有権移転等促進計画について公告を行う場合には、都道府県知事への通知は不要としているが、これは、法第八条第四項各号に該当する所有権移転等促進計画については、あらかじめ都道府県知事の承認を受け公告することとなっていることによるものである。

3 所有権移転等促進計画の公告後の処理

(1) 所有権移転等促進計画の公告を行った市町村(以下「公告市町村」という。)は、当該計画に記載された所有権の移転等のうち農地転用に該当するものについては、必要に応じ現地調査を行うほか、台帳を作成するなどして公告後の転用事業の進捗状況を常に把握しておくものとする。
(2) 公告市町村は、転用事業の進捗状況が転用事業計画に記載された工事の着手又は完了の時期から著しく遅延しているときその他転用事業者が転用事業計画どおりに工事を行っていないときは、当該転用事業者に対し、速やかに工事に着手し、又は工事を完了すべき旨その他転用事業計画どおり工事を行うべき旨を文書によって催告するものとする。
(3) 公告市町村は、(2)の催告を行った後も転用事業者が転用事業計画に従った工事に着手せず、又は工事を完了しないまま放置している場合、その他転用事業計画どおり工事を行っていない場合において、所有権移転等促進計画に係る土地の利用目的を変更することにより当該転用事業を完了させる見込みがあるときは、当該利用目的を変更するものとする。この場合、公告市町村は、所有権移転等促進計画の当該変更を行おうとする部分につき法第八条に定める手続に準じて変更を行い、さらに、法第九条第一項に定める手続に準じて公告するものとする。

なお、このような手続を経ずに、所有権移転等促進計画に記載された土地の利用目的以外の目的に供する転用が行われた場合には、農地法第四条違反として所要の措置が講じられることとなる。

第6 農地法の特例等

1 農地法の特例

(1) 農林地所有権移転等促進事業の実施によって農用地について所有権の移転等が行われる場合(転用のため所有権の移転等が行われる場合を除く。)には、農地法第三条第一項の許可を受けることを要しない(同法第三条第一項第四号の四)。
(2) 農林地所有権移転等促進事業の実施によって農用地について転用のための所有権の移転等が行われる場合には、農地法第五条第一項の許可を受けることを要しない(同法第五条第一項第一号の三)とともに、農林地所有権移転等促進事業の実施によって転用のため設定され、又は移転された権利に係る農地を所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するときは、農地法第四条第一項の許可を要しない(同法第四条第一項第三号の三)。
(3) なお、上記以外には農地法の特例が設けられておらず、農林地所有権移転等促進事業の実施によって農用地について所有権の移転等が行われる場合には農地法第六条第一項(所有できない小作地)の規定が適用されるものであり、また、農林地所有権移転等促進事業の実施によって農用地について設定された賃借権の期間が満了する場合には農地法第一九条(農地又は採草放牧地の賃貸借の更新)が適用され、賃貸借の解除をし、解約申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしようとする場合には農地法第二〇条第一項(農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)の規定が適用されるものであることに留意する必要がある。

2 都市計画法の特例

(1) 所有権移転等促進計画が承認された場合には、当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に従って行われる開発行為又は建築行為については、都市計画法第三四条又は都市計画法施行令第三六条第三号に規定する基準に適合するものとされる(都市計画法第三四条第四号の二)。この特例は、所有権移転等促進計画の定めるところによって土地についての所有権の移転等が行われる場合に、当該所有権の移転等がなされた土地において整備される農林業等活性化基盤施設の市街化調整区域内における立地の適否に関する判断を所有権移転等促進計画の承認に係る審査により行うことにより、農林業等活性化基盤施設の円滑な整備を促進し、よって特定農山村地域の振興を図るため設けられたものである。したがって、都道府県の開発許可担当部局においては、法第八条第四項の承認に当たっては、このような開発許可等の特例の趣旨を踏まえる必要がある。
(2) なお、法第八条第四項に基づき承認された所有権移転等促進計画に定める利用目的に従って行う開発行為等に係る都市計画法第二九条又は第四三条第一項の規定による許可については、同法第三四条又は同法施行令第三六条第一項第三号の要件を満たすものであるが、同法第三三条又は同法施行令第三六条第一項第一号及び第二号に規定する技術的基準に係る審査まで省略するものではないことに留意する必要がある。

3 農業振興地域の整備に関する法律の特例

農林地所有権移転等促進事業の実施によって農用地区域内の土地について開発行為をするため所有権の移転等が行われた場合において、当該土地を所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するときは、農業振興地域の整備に関する法律第一五条の一五第一項の許可を要しない(同法第一五条の一五第一項第三号の三)。

4 その他

(1) 農林地所有権移転等促進事業の実施によって土地について所有権の移転等が行われる場合は、国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号)第一四条第一項の土地売買等の契約の締結には該当しないので、同項の許可及び同法第二三条第一項(同法第二七条の三第一項において準用する場合を含む。)の届出は不要であるが、当該所有権の移転等が周辺の地価に悪影響を及ぼさないよう配慮して、所有権移転等促進計画の作成を行うことに留意する必要がある。したがって、当該所有権の移転等が仮に土地売買等の契約の締結によるならば、当該許可又は届出を要する場合にあっては、その対価については、同法第一六条第一項第一号又は同法第二四条第一項第一号若しくは第二七条の四第一項第一号の基準を十分に勘案するとともに、同法第一六条第一項第二号から第四号までの要件又は同法第二四条第一項第二号及び第三号の要件に該当するものは、法第八条第三項第四号に規定する「当該土地を当該利用目的に供することが適当である」とは認められないものとする。

また、この場合の所有権移転等促進計画について、都道府県知事が法第八条第四項の規定による承認を行う際、又は都道府県知事が法第九条第二項の規定による通知を受けた際には、都道府県の国土利用計画法担当部局と十分調整を図るものとする。

(2) 農林地所有権移転等促進事業が実施されようとする土地であっても、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四七年法律第六六号)第四条第一項の規定による土地の有償譲渡の届出義務が課せられる土地にあっては、当該土地の所有者は都道府県又は指定都市の同法担当部局に対して同法に基づく届出を行う必要がある。

第7 登記の特例

法第一一条において、所有権の移転等につき登記の特例を設けることができるとされている。
特例の内容としては、市町村による所有権移転の登記の嘱託等を検討しているが、これらについては、特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律による不動産登記に関する政令(仮称)が定められたときに、別途通達する。


別記様式〔略〕


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