平成一三年八月

国土交通省都市・地域整備局



都市緑地保全法運用指針

目次
はじめに
一 緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(緑の基本計画)
(1) 緑の基本計画の意義
(2) 都市計画法との関係
(3) 基本計画の対象等
(4) 基本計画の内容
(5) 住民意見の反映
(6) 基本計画の協議手続
(7) 基本計画の公表、通知
(8) 基本計画の見直し
(9) 緑のマスタープラン・都市緑化推進計画との関係
(10) 基本計画策定の際の留意事項
二 緑地保全地区
(1) 趣旨
(2) 緑地保全地区の決定

1) 緑地保全地区の計画の考え方
2) 緑地保全地区の計画にあたっての留意点
3) 他の都市計画制度との関係

(3) 緑地保全地区における行為の規制

1) 許可の基準
2) その他

(4) 緑地保全地区における損失の補償
(5) 緑地保全地区における土地の買入れ等

1) 買入れが認められる場合
2) 価額の評価
3) 損失の補償と土地の買入れ
4) 管理台帳の作成等
5) 農地等を買い入れる場合
6) 税務手続
7) 市町村が買い入れる場合
8) 管理等
9) 緑地管理機構が買い入れる場合

三 管理協定制度
(1) 管理協定制度の意義
(2) 管理協定の内容

1) 管理協定の対象となる土地の区域等
2) 管理協定の締結事項
3) 管理協定制度と基本計画との関係等
4) 管理協定の公告等
5) 管理協定制度に係る法令上の特例

(3) その他

1) 管理協定が締結されている土地の評価
2) 協議・調整

四 緑地協定制度
(1) 緑地協定制度の意義
(2) 緑地協定の内容

1) 緑地協定の対象となる土地の区域等
2) 緑地協定の締結事項
3) 緑地協定の認可・公告
4) 緑地協定区域隣接地制度

(3) その他

1) 緑地協定の変更及び廃止
2) 緑地協定制度の普及啓発
3) 協議・調整

五 市民緑地制度
(1) 市民緑地制度の意義
(2) 市民緑地制度の内容

1) 市民緑地の対象となる土地の区域等
2) 市民緑地契約の締結
3) 市民緑地契約の締結事項
4) 市民緑地における施設整備
5) 市民緑地の管理
6) 市民緑地制度と基本計画との関係
7) 市民緑地の公告等
8) 市民緑地制度に係る法令上の特例

(3) その他

1) 市民緑地の設置・管理を行う地方公共団体等に対する国の援助
2) 市民緑地の用地として貸し付けられている土地の評価
3) 協議・調整
4) 管理協定との関係
5) 市民緑地制度と契約緑地制度との関係

六 緑化施設整備計画認定制度
(1) 緑化施設整備計画認定制度の意義
(2) 緑化施設整備計画認定制度の内容

1) 緑化施設
2) 緑化施設整備計画の記載事項
3) 緑化施設整備計画の認定基準
4) 緑化施設の整備状況の報告
5) 改善命令

(3) 認定緑化施設に係る法令上の特例
(4) 本制度の運用を踏まえた緑化重点地区の設定
(5) 認定緑化施設に係る固定資産税
(6) その他
七 緑地管理機構制度
(1) 緑地管理機構制度の意義
(2) 緑地管理機構制度の内容

1) 機構の指定
2) 機構の業務
3) 地方公共団体との連携
4) 機構に対する監督措置等

(3) 機構による緑地保全地区内の土地の買入れ

1) 機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合
2) 機構が土地を買い入れた場合
3) 買い入れた土地の管理
4) 税務手続(所得税及び法人税)
5) 不動産取得税等の取扱い
6) 買入れに際しての注意事項

(4) その他

1) 情報の提供
2) 特定公益増進法人制度の活用

【本運用指針で用いられている略称等について】
「緑の基本計画」……都市緑地保全法第二条の二第一項の規定に基づき定められた「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画」
「保全配慮地区」……都市緑地保全法第二条の二第二項第三号ハの規定に基づき定められた「緑地保全地区以外の区域であって重点的に緑地の保全に配慮を加えるべき地区」
「緑化重点地区」……都市緑地保全法第二条の二第二項第三号ニの規定に基づき定められた「緑化の推進を重点的に図るべき地区」
「市町村マスタープラン」……都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一八条の二第一項の規定に基づき定められた「市町村の都市計画に関する基本的な方針」
「農地」「採草放牧地」……農地法(昭和二七年法律第二二九号)第二条第一項に規定する農地、採草放牧地
はじめに

都市緑地保全法(以下「法」という。)は、良好な都市環境の形成を図り、もって健康で文化的な都市生活の確保に寄与することを目的として、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関し必要な事項を定めた法律である。
都市における緑地の保全及び緑化の推進にあたっては、都市計画制度、都市公園制度その他都市における自然的環境の整備又は保全を目的とする制度に加えて、法に基づく制度を総合的かつ計画的に活用していくことが重要である。
本指針は、国として、法に基づく制度についてどのように運用していくことが望ましいと考えているか、また、その具体の運用が、各制度の趣旨からして、どのような考え方の下でなされることを想定しているのか等についての原則的な考え方を示し、これを地方公共団体が都市における緑地の適正な保全と緑化の推進に関する措置を講じる際に活用してもらいたいとの考えによるものである。
また、本指針はこうした考え方の下に策定するものであることから、地域の実情等によっては、本指針に示した原則的な考え方によらない運用が必要となる場合もあり得るが、当該地域の実情等に則して合理的なものであれば、その運用が尊重されるべきである。
本指針の構成は、法に基づく制度の的確な運用を支援していく趣旨から、法の目次に従い、以下に掲げる制度ごとに、これまで法の制定・改正に際して発出してきた通達について整理統合を行うことにより、制度の意義、運用にあたって留意することが望ましい事項等を整理している。

一 緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(法第一章の二)
二 緑地保全地区(法第二章)
三 管理協定制度(法第二章第二節)
四 緑地協定制度(法第三章)
五 市民緑地制度(法第三章の二)
六 緑化施設整備計画認定制度(法第三章の三)
七 緑地管理機構制度(法第三章の四)

なお、本指針は、社会経済状況の動向や法の改正等を踏まえ、適宜改定を行うものである。
一 緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(緑の基本計画)

(1) 緑の基本計画の意義

近年の環境問題に関する関心の高まりや自然とのふれあいに対する国民のニーズに応え、都市における良好な生活環境を形成するためには、一定の目標の下に、都市公園の整備、緑地保全地区の決定等都市計画制度に基づく施策と、民間建築物や公共公益施設の緑化、緑地協定、ボランティア活動、各種イベント等都市計画制度によらない施策や取組を体系的に位置づけ、計画的かつ系統的に緑地の保全・創出を図ることが必要である。
緑の基本計画(以下「基本計画」という。)制度は、地域の実情を十分に勘案するとともに、施設の管理者や住民等の協力を得つつ、官民一体となって緑地の保全及び緑化の推進に関する施策や取組を総合的に展開することを目的として、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が総合的な都市における緑に関するマスタープランとなる基本計画を策定できることとしたものである。

(2) 都市計画法との関係

基本計画は、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一八条の二第一項の市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)に適合することとされているが、市町村マスタープランが未策定の市町村については、将来策定される市町村マスタープランに留意しつつ、市町村マスタープランが即すこととされている都市計画法第六条の二の都市計画区域の整備、開発及び保全の方針と整合の取れた内容とすべきである。

(3) 基本計画の対象等

1) 基本計画は、都市計画区域を有する市町村において、都市における緑地の適正な保全及び緑化の推進に関する措置で主として都市計画区域内において講じられるものを総合的かつ計画的に実施するため定めることとされている。
2) 基本計画は、公園、道路、河川、港湾などの公共施設の緑化に限らず広く学校や工場の緑化等についても対象とすることが望ましい。

なお、基本計画は都市における緑地の保全及び緑化の推進を総合的かつ計画的に実施することを目的としていることから、都市計画区域を前提として講じられる措置を定めるものであり、都市計画区域外で講じる措置としては、都市計画施設のほか、道路、河川、下水道、公営住宅等の公的管理主体による住宅、学校、社会教育施設、ごみ焼却場、官公庁等いわゆる公共公益施設で都市計画区域における緑地と一体となって良好な都市環境の形成を図るものを対象とし、農林水産関連の公共公益施設、都市計画区域外における民有地並びに国有林野及び公有林野等官行造林地は対象としないことが望ましい。
また、都市計画区域外で講じる公共公益施設を対象とする緑地の保全及び緑化の推進に関する措置は、緑化の推進を重点的に図るべき地区(緑化重点地区)及び緑地保全地区以外の区域であって緑地の保全に重点的に配慮を加えるべき地区(保全配慮地区)以外では即地的に定めないことが望ましい。

3) 基本計画が対象としている緑地は、都市において「樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が単独で、若しくは一体となって、又はこれらが隣接している土地がこれらと一体となって良好な自然環境を形成しているもの」であることから、基本計画においては、法に規定されている各種制度のみならず都市公園、風致地区、生産緑地地区、保存樹・保存樹林等都市における緑地の保全に資する施策を広く展開することが望ましい。

なお、基本計画の対象となる緑地には、緑地保全地区に含まれる介在農地や生産緑地地区に指定されている農地等、良好な都市環境の形成を図る施策(都市環境形成施策)に係る農地が例外的に含まれる場合があるが、原則として農地は含まれない。また、法第二条の二に規定する基本計画の対象となる緑地の保全及び緑化の推進に関する措置は、都市環境形成施策を除いて、農地法(昭和二七年法律第二二九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地を対象としていない。

(4) 基本計画の内容

1) 基本計画は、各市町村が緑豊かな快適で個性的な都市づくりを進めるにあたり、地域の自然的、社会的条件等を十分に勘案しつつ創意工夫のもとに策定されるものであり、その内容は各市町村の自主性に委ねられるものである。法第二条の二第二項に規定する事項のうち、基本計画の機能を十分に発揮するために、制度上、計画の目標とその具体的実施方法である「緑地の保全及び緑化の目標」、「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」については必要的記載事項とされているが、地域の実情に応じて定める「緑地の配置の方針に関する事項」等の任意の記載事項についても積極的に定め、計画の充実を図ることが望ましい。
2) 「緑地の保全及び緑化の目標」は、緑地の保全や緑化について一定の目標を定めることにより基本計画に定められた施策の計画的かつ効率的実施を図るものであり、目標の内容としては、例えば、都市の緑の三倍増、市街化区域内の緑地の面積の割合、施設として整備する緑地の住民一人あたりの面積、植樹本数等、当該市町村が住民等と相互に協力しながら達成する緑の確保目標水準等が考えられる。緑地の確保目標水準等の数値を定める場合には、例えば、歩いて五分以内に自然とふれあう場に到達できるように緑地を整備・保全する等、住民に対して分かりやすい指標となるように工夫することが望ましい。
3) 「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」は、目標を実現するための都市公園の整備や緑地保全地区の決定等の施策、公共公益施設や民有地の緑化の方針、市民農園等の整備に関する施策の展開方策について定める趣旨である。この場合、必要に応じ、特に重点的に保全又は整備すべき主要な緑地保全地区の決定又は都市公園の整備について定めることが望ましい。特に三大都市圏の特定市については、生産緑地地区に係る買取り方針や市民農園としての整備等の生産緑地の保全・活用方針を定めることが望ましい。
4) 「緑地の配置の方針に関する事項」は、緑地を系統的に配置していくことが都市の緑地の有する環境保全、レクリエーション、防災、都市景観形成等諸機能を効果的に発揮させる上で重要であるという趣旨で定められているものであり、これらの諸機能の評価を十分踏まえつつ、都市の構造、土地利用の動向等を考慮し、例えば、動植物の生息地又は生育地としての緑地のネットワーク、都市公園を核としたレクリエーションネットワーク、災害時の避難地・避難路となるネットワーク等が形成されるよう緑地を配置するとともに、その配置の方針については、例えば、郷土の景観をつくる河川沿いの緑地空間を保全する等のように住民に対して分かりやすく定めることが望ましい。

なお、本事項は、例えば、河川と一体的な緑地の保全等、都市レベルでの環境保全等に資するような系統的な緑地の配置を定めるべきであり、例えば、個々の工業用地又は工業団地全体の敷地内における緑地の配置等、地区レベルのものについて定めることは望ましくない。

5) 「緑地保全地区内の緑地の保全に関する事項」は、緑地保全地区についてその保全に関する事項等を基本計画において特に定めるものである。

ア 「緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項」は、緑地保全地区の決定が行われている、又は決定が行われることが予定されている市町村が必要に応じ、都道府県知事との協議を経た上で定めるものであり、緑地保全地区の緑地の特性に応じ、当該緑地を保全するため必要となる施設、具体的には、土砂崩壊防止施設、散策路、休憩所等の施設を定めることが考えられる。また、本事項は緑地保全地区における行為の規制の適用除外となることから、施設の種類、規模、位置、整備主体等個別の施設整備について、都道府県知事がその適合性を判断するのに必要な内容を定めることが望ましい。

なお、その整備については緑地保全事業(近郊緑地保全事業を含む)の補助の対象であるが、その整備を河川事業、砂防事業、地すべり対策事業、急傾斜地崩壊対策事業、雪崩対策事業及び海岸事業として行うことが適当である場合には、これらの事業の活用を図ることが望ましい。

イ 法第八条の規定による「土地の買入れ及び買い入れた土地の管理に関する事項」は、緑地保全地区ごとに土地の買入れについて、緑地の特性に応じて都道府県と市町村等の役割分担を定めるとともに、買い入れた土地の管理の方針を定めることが望ましい。

具体的には、例えば、屋敷林等の住民に身近な小規模な緑地については市町村が、大規模な河川沿いの連続した崖線の斜面緑地等複数の市町村にまたがる大規模な緑地について都道府県が、というように、緑地の特性に応じて土地の買入れを行う者を定めることが考えられる。買い入れた土地については、例えば、a.樹木の整枝、枯損木処理に重点を置くこと、b.住民の自然とのふれあいの場として公開すること等買い入れた土地の管理の方針をあわせて定めることが望ましい。

ウ 第九条の二第一項の規定による「管理協定に基づく緑地の管理に関する事項」は、緑地保全地区ごとに管理協定の対象となる緑地の要件や、維持すべき植生や景観、樹木等の手入れの管理水準などの管理の方針をあらかじめ明らかにしておくことにより、管理協定の円滑な締結を図ることを目的としている。

具体的には、例えば、管理協定に基づき管理を行うべき緑地についておおむねの位置又は要件を示すこととあわせて、当該緑地の管理の目標、緑地の保全上必要となる施設整備の内容等管理の方針を定めることが考えられる。
なお、管理協定に基づく緑地の管理に関する事項は、あくまで都市における緑地の適正な保全を目的とした緑地の管理の方法に関する事項を想定していることから、当該事項には森林法(昭和二六年法律第二四九号)第四条に規定する森林整備事業、治山治水緊急措置法(昭和三五年法律第二一号)第二条に規定する治山事業、森林病害虫等防除法(昭和二五年法律第五三号)に基づく森林病害虫防除対策等、森林の維持・造成等に関する施策としての森林の整備に関する事項を含むことは望ましくない。

エ 「その他緑地保全地区内の緑地の保全に関し必要な事項」は、緑地保全地区内の土地の買入れで法第八条に基づかない任意のものの実施方針等について必要に応じて定めることが望ましい。

具体的には、法第八条の規定に基づき買い入れるべき旨の申出がない場合においても、a.都市緑化基金の活用等により土地の買入れを行うこと、b.地権者等と土地の利用について契約を結び住民の利用に供すること等について必要に応じて記載することが考えられる。

6) 「緑地保全地区以外の区域であって重点的に緑地の保全に配慮を加えるべき地区及び当該地区における緑地の保全に関する事項」は、当該市町村の都市における緑地の状況等を勘案し、必要に応じて保全配慮地区を定め、当該地区において講ずる市民緑地契約の締結等、当該地区における緑地保全方策をおおむねの位置を特定し即地的に定めることが望ましい。その際、市町村における緑地の現状、住民の緑地に対するニーズ等を踏まえ、市町村が市民緑地や条例による保全措置等により緑地の保全を図るべき必要があると認められるものについて定めることが望ましい。

具体的には、風致景観の保全、自然生態系の保全、都市住民の自然とのふれあいの場の提供等の観点から重要となる自然的環境に富んだ地区等において、地形、地物、字界等で区域を設定して保全配慮地区を定め、市民緑地契約の締結、風致地区の指定、保存樹・保存樹林の指定、都市公園の整備、市町村の条例に基づく緑地保全施策等、当該地区において講じる緑地保全施策について定めることが考えられる。
保全配慮地区は、例えば、市民緑地契約を締結することにより保全を図ろうとする緑地のみを対象として指定するだけでなく、自然的環境に富んだ地区全体を緑地以外の土地の区域も含めて指定し、多様な手法の組み合わせにより地区の自然的環境の保全を図ることが望ましい。
また、保全配慮地区は緑地保全地区以外の区域に定めるものであるが、将来の緑地保全地区の指定を妨げるものではない。
なお、保全配慮地区は、都市における緑地の保全に重点的に配慮を加えるため緑地保全施策を定める地区であることから、原則として農地は含まれないが、例外的に、良好な都市環境の形成を図る施策(都市環境形成施策)を記載する場合には農地が含まれる場合がある。((3)3)参照)

7) 「緑化の推進を重点的に図るべき地区及び当該地区における緑化の推進に関する事項」は、当該市町村の都市における緑地の状況等を勘案し、必要に応じて緑化重点地区を定め、当該地区において講ずることとなる公共公益施設の緑化等の緑化施策についておおむねの位置を特定し即地的に定めるべきである。

具体的には、例えば、駅前等都市のシンボルとなる地区、特に緑が少ない住宅地、風致地区など都市の風致の維持が特に重要な地区、防災上緑地の確保及び市街地における緑化の必要性が高い地区、緑化の推進に関し住民意識が高い地区等において、地形、地物、字界等で区域を設定して緑化重点地区を定め、緑地協定及び市民緑地契約の締結、公共公益施設の緑化、緑化施設整備計画の認定、民有地緑化に対する助成、都市公園の整備等、当該地区において講じる緑化施策について定めることが考えられる。
緑化重点地区においては、市町村による重点的な緑化施策に加え、住民及び事業者等において、都市緑化基金の活用、住民や自治会によるボランティア活動の展開等それぞれの立場での自主的な緑化の推進が積極的に行われることが期待できるので、積極的な地区の設定を行うことが望ましい。
なお、緑化重点地区は、特に重点的に緑化を図るため緑化推進施策を定める地区であることから、原則として都市計画区域内に定めるものであり、例えば、農用地区域及び保安林等については緑化重点地区を定めるものではない。

(5) 住民意見の反映

都市における緑豊かな生活環境の形成は、都市住民の広範な参加、協力を得て、市街地の大半を占める民有地における緑地の保全や緑化の推進を図ることにより実現されるものであることから、都市における緑地の保全及び緑化の推進の方針を定める基本計画の策定にあたっては、住民の意見を積極的に反映させるべきである。このため、市町村が基本計画を定め、あるいは変更を行おうとするときは、あらかじめ公聴会等住民の意見を反映させるために必要な措置が義務付けられており、これにより、基本計画並びにこれに基づく緑地保全及び緑化推進に対する住民の理解、協力が得られることが期待されるものである。
なお、住民の意見を反映させるために必要な手続については、公聴会の開催の他に説明会の開催、インターネットによる意見募集、アンケートの実施等様々なものが考えられるが、いずれによるかは、当該基本計画の内容や地域の特性を踏まえて適宜判断することが望ましい。

(6) 基本計画の協議手続

1) 法第二条の二第五項に基づく法第二条の二第二項第三号ロ「緑地保全地区内の緑地の保全に関する事項」についての都道府県知事に対する協議のうち、「緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項」についての協議は、当該施設の種類、規模、位置、整備主体等その内容が明確となるように行うことが望ましい。また、第八条の規定による土地の買入れ及び買い入れた土地の管理に関する事項についての協議については、都道府県又は市町村が買い入れる土地の管理の方針を明らかにしつつ行うことが望ましい。
2) 基本計画の策定に必要な都市計画区域の整備、開発及び保全の方針等との数値の調整等については、都道府県関係部局との連絡調整を適宜行うことが望ましい。
3) 市町村は、基本計画に国有林野及び公有林野等官行造林地が含まれる場合には、当該国有林野及び公有林野等官公造林地を管轄する森林管理局長と、海岸保全区域、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域等に係るものである場合には当該地域の管理者と、港湾区域、臨港地区、港湾隣接地域、港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地に係るものである場合には港湾管理者と、港湾法(昭和二五年法律第二一八号)第五六条の規定に基づき都道府県知事が定めて公告した水域に係るものである場合には都道府県知事と、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和四二年法律第一一〇号)第九条の二の規定に基づき特定飛行場周辺において指定される第三種区域に係るものである場合には特定飛行場の設置者と、同法第九条の三の規定に基づく周辺整備空港の周辺において指定される第一種区域に係るものである場合には都道府県知事と、それぞれあらかじめ協議調整を行い、計画内容の充実とその実効性の確保に努めることが望ましい。
4) 基本計画を策定しようとする場合は、国土総合開発計画、農業振興地域整備計画、河川環境管理基本計画等関連する計画と適合することが望ましい。また、基本計画において森林に関する記述を行う場合には、国有林の地域別の森林計画と適合するとともに、地域森林計画、市町村森林整備計画等の森林の整備に関する計画と適合することが望ましい。当該森林の整備に関する計画との適合を図るため、都道府県林務担当部局又は市町村林務担当部局とあらかじめ十分協議することが望ましい。

(7) 基本計画の公表、通知

基本計画は、緑地保全地区、管理協定、緑地協定、市民緑地という本法に基づく施策をはじめ、他の法律等に基づく施策及びソフトな取組等により実現されるものであり、その実効性を高めていくには、行政内部にとどまらず、公共公益施設の管理者、事業者、住民等に対しても積極的な協力を求めていく必要がある。
このため、公共公益施設の管理者、事業者、住民等に対して、基本計画を公表してその周知を図ることとしているものであり、公報等に掲載し公表することと併せてインターネットによる公開、パンフレットの作成等各市町村の判断により積極的な周知措置を講じることが望ましい。
また、都道府県知事に対する通知については、a.基本計画の内容が広域的・骨格的な緑地保全地区等の決定にあたっても反映されるべきであること、b.基本計画の実現は市町村独自の取組のみならず都道府県の緑に関する取組も併せて行われることが必要であること等から行われるものである。

(8) 基本計画の見直し

基本計画は、社会情勢の変化や事業の進捗等により変更を行う必要が生じたときには、遅滞なく変更すべきであり、計画内容の充実に努めることが望ましい。また、変更の際には、住民意見の聴取、公表等の所要の手続を行う必要がある。なお、緑化重点地区等の区域の変更等、基本計画の一部について変更を行う場合にあっては、住民意見の聴取及び基本計画の公表の方法を適宜工夫し、現状に応じた速やかな手続を行うことが望ましい。

(9) 緑のマスタープラン・都市緑化推進計画との関係

都市における緑地の保全及び緑化の推進に関するマスタープランとして、従来、「緑のマスタープラン」及び「都市緑化推進計画」の策定を推進し、都市における緑地の保全及び緑化の推進に係る指針として一定の役割を果たしてきたところであるが、基本計画は、「緑のマスタープラン」が主として対象としている都市計画に関する事項及び「都市緑化推進計画」が主として対象としている公共公益施設の緑化、民有地の緑化推進等都市計画の手法によらない緑化に関する事項を市町村が定め、法律に基づき、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する施策を総合的かつ計画的に講じることを目的とするものである。
しかしながら、都市住民の活動、行動が広域化している今日、都市における緑のあり方を定める場合、一の市町村の範囲を超えた広域の見地から検討を行うことも必要である。この場合、都道府県は地域の実情に応じて必要な緑地の保全及び緑化の推進に関する計画を都道府県の広域緑地計画として定めることも考えられる。

(10) 基本計画策定の際の留意事項

1) 基本計画の策定及び変更のためには、公共公益施設所管部局、事業者や地域住民の協力を得ることが不可欠であり、各市町村において、連絡協議会の設置等により計画の策定と実現に向けての体制の強化を図るとともに、道路、河川、海岸、学校、又は社会教育施設その他の教育文化施設、防衛施設、砂防設備、砂防指定地等公共公益施設等の管理者と協議し、協議の整った施設の緑化については基本計画に積極的に位置づけることが望ましい。
2) 基本計画が即すこととされている市町村の建設に関する基本構想とは、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二条第五項に基づく市町村の基本構想及び国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号)第四条に基づく市町村計画である。
3) 基本計画は、森林法等に基づく森林の整備等の農林水産関連の施策を定めるものではない。
4) 基本計画はマスタープランとしての性格を有し、個別の施策に対する指針となるものであり、これにより直接的な土地利用制限等法的規制が及ぶものではない。したがって、その実現にあたっては、当該市町村において事業を行う者等の協力を得つつ行うことが望ましい。また、基本計画の策定に当たっては、開発事業者(鉄道事業者、軌道経営者等運輸事業者(予定者を含む。)を含む。)、公共公益施設の管理者等に対し過度の負担とならないよう配慮すべきである。

二 緑地保全地区について

(1) 趣旨

緑地保全地区は、都市の無秩序な拡大の防止に資する緑地、都市の歴史的・文化的価値を有する緑地、生態系に配慮したまちづくりのための動植物の生息、生育地となる緑地等の保全を図ることを目的とする都市計画法第八条に規定される地域地区である。
また、首都圏近郊緑地保全法(昭和四一年法律第一〇一号)第五条に規定する近郊緑地特別保全地区は、近郊緑地保全区域のうち、首都及びその周辺の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が著しく、かつ、特に良好な自然の環境を有する土地について指定する緑地保全地区である。近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和四二年法律第一〇三号)第六条に規定する近郊緑地特別保全地区は、近郊緑地保全区域のうち、地形、交通施設の整備の状況、周辺の土地の開発の状況に照らして無秩序な市街地化のおそれが特に大である、かつ、既成都市区域及びその近郊の地域の住民の健全な心身の保持及び増進又はこれらの地域における公害若しくは災害の防止の効果が特に著しい土地について指定する緑地保全地区である。
緑地保全地区では、建築物の建築等の行為は現状凍結的に制限され、行為の許可を受けることができないために通常生ずべき損失を受けた者に対する損失補償、及び許可を受けることができないため、その土地の利用に著しい支障を来す場合に対する土地の買入れが行われる。

(2) 緑地保全地区の決定

1) 緑地保全地区の計画の考え方

ア 緑地保全地区の対象となる緑地

緑地保全地区は、都市計画区域内において、樹林地、草地、水辺地、岩石地若しくはその状況がこれらに類する土地が、単独で若しくは一体となって、又はこれらと隣接している土地が、これらと一体となって、良好な自然的環境を形成しているもので市街地及びその周辺地域に存するものについて指定するものとし、その認定については次による。
i 「樹林地」とは、当該土地の大部分について樹木が生育している一団の土地であり、樹林には竹林も含まれるものである。
ii 「草地」とは、当該土地の大部分が草で被われている土地であり、ゴルフ場のような人工草地も含まれる。なお、農地は含まれない。
iii 「水辺地」とは、池沼、河川、海、湖等の水面を含むそれらの周辺地域である。
iv 「岩石地」とは、当該土地の大部分が岩石で被われている土地又は岩石が風化してい角礫を多く含んだ状態の土地をいい、具体的には、海浜の岩礁地、溶岩台地等をいう。
v 「その状況がこれらに類する土地」とは、樹林地、草地、水辺地、岩石地には該当しないが、その景観、立地状況等がこれらに類似しているものであり、具体的には、樹林地に類するものとして屋敷林、庭園、街道の並木等、水辺地に類するものとして湿地帯等、岩石地に類するものとして砂丘地等をいう。
vi 「これらに隣接している土地」は、樹林地、草地、水辺地、岩石地等の土地と一体となって良好な自然的環境を形成している土地の範囲をいい、それぞれの地域の土地の状況等を勘案してその範囲が決定される。なお、この隣接地には、緑地に介在する農地も含まれ得る。

イ 緑地保全地区の対象となる土地の区域の要件

i 法第三条第一項第一号の要件は、

a 遮断地帯としては、既成市街地若しくは市街化区域の周辺又は連担のおそれが強い二つの市街地の中間部に存在するようなもので、原則として徒歩による日常生活圏を分離するに足りる程度の規模及び形態を有するものである。
b 緩衝地帯としては、一定の間隔をもって配置することが望ましい異種の土地利用又は施設の中間的な位置に存在するようなもので、騒音、振動、大気汚染等の公害等の種類及び程度に応じて緩衝地帯としての機能を果たす適切な規模及び形態を有するものである。
c 避難地帯としては、住民が火急の場合に容易に到達し得る位置に存在するものであり、避難対象区域の人口等に応じて、避難者の収容、救助等の活動が安全かつ円滑に行われるような規模及び形態を有するものである。

ii 法第三条第一項第二号の要件は、

a 建造物、遺跡等と一体となった緑地としては、社寺境内地、古墳、史跡等と一体となって良好な自然的環境を形成している土地で都市のシンボルゾーンを保存しようとするものである。
b 伝承若しくは風俗慣習と結びついた緑地としては、伝説、おとぎ話、詩歌等に名高い山、森、海辺等又は住民の年中行事と結びついた良好な自然的環境を形成している土地で都市のシンボルゾーンを保存しようとするものである。

iii 法第三条第一項第三号イの要件は、住民が接触する頻度が高い緑地又は住民が日常望見するような位置にある緑地であって、その植生、地形等から感受される風致又は景観が優れており、住民の健全な心身の保持及び増進のために確保すべき良好な自然的環境を有するものである。
iv 法第三条第一項第三号ロの要件は、動植物の生息地又は生育地としての特性を持つ緑地を適正に保全することを目的とするものであり、日常、住民が自然観察等を通じて親しんでいること等から住民の健全な心身の保持及び増進のために確保すべき良好な自然的環境を有する緑地である。このため、藪、湿地、ため池等必ずしも風致又は景観が優れていない緑地についても、必要に応じて当該緑地保全地区を決定することが望ましい。

ウ 市町村が決定する緑地保全地区について

住民に身近な緑地の保全について市町村が積極的に推進することを支援するため、近郊緑地特別保全地区を除き、緑地保全地区に関する都市計画のうち、面積一〇ヘクタール未満のものについては、すべて市町村が決定することとされている。このような緑地保全地区は、基本計画に基づいて決定することが望ましい。

2) 緑地保全地区の計画にあたっての留意点

ア 緑地保全地区の決定にあたっては、あらかじめ、緑地保全地区担当部局と自然保護担当部局は十分協議の上、自然環境保全基本方針(昭和四八年一〇月二六日閣議決定)に基づいて適切な調整を行うものとし、自然公園と重複して指定することは望ましくない。例外的に自然公園と重複して緑地保全地区を設定しようとするときは、あらかじめ、自然風景地の保護の観点から緑地保全地区担当部局と自然保護部局で協議することが望ましい。
イ 緑地保全地区の決定にあたっては、あらかじめ緑地保全地区担当部局と農林水産部局は十分連絡調整を行うことが望ましい。緑地保全地区を保安林内に指定しようとするときは、あらかじめ、保安林指定権者に協議することとし、森林法第二五条第一項第一〇号及び第一一号に規定する公衆の保健のために指定される保安林及び名所又は旧跡の風致の保存のために指定される保安林については、重複して決定することは望ましくない。国有林野又は公有林野等官行造林地内に緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、都道府県の都市計画担当部局はあらかじめ所管森林管理局長の同意を受けることが望ましい。
ウ 緑地保全地区は原則として港湾区域、臨港地区、港湾隣接地域及び港湾法第五六条の港湾内に定めることはないが、定める場合は、都市における緑地の適正な保全と、港湾の秩序ある整備と適正な運営との整合を図る観点から、あらかじめ、港湾管理者と協議することが望ましい。
エ 動植物の生息地又は生育地として保全する必要がある緑地保全地区

i 法第三条第一項第三号ロの緑地保全地区(以下エにおいて「生息生育地型緑地保全地区」という。)を決定するにあたっては、動植物の生息地又は生育地として十分に保全されるに足る範囲の緑地を確保することが望ましい。
ii 生息生育地型緑地保全地区は、動植物の生息地又は生育地として保全する必要がある緑地の保全を目的とするものであり、動植物の保護を直接目的とするものではない。従って、生息生育地型緑地保全地区において、動植物の保護を直接の目的としてその生息地又は生育地を保全する必要がある場合に、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三二号)に基づく鳥獣保護区及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七五号)に基づく生息地等保護区を重複して設定又は指定することを妨げるものではない。鳥獣保護区又は生息地等保護区に生息生育地型緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、都道府県の都市計画担当部局は都道府県の自然保護担当部局(鳥獣保護区又は生息地等保護区が環境大臣の設定するものである場合においては、都道府県の自然保護担当部局を通じて環境省自然環境局自然保護事務所)と動植物の生息地又は生育地保全の観点から協議調整することが望ましい。なお、生息生育地型緑地保全地区を、魚つき保安林において、当該魚の生息地として保全する必要があるものとして重複して決定することは望ましくない。
iii 生息生育地型緑地保全地区を決定する際には、適正な事業活動を制限し、又は適正な産業立地を阻害しないよう配慮することが望ましい。

オ その他

i 日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構及び宇宙開発事業団の敷地は緑地保全地区として定めることは望ましくない。
ii 緑地保全地区の決定にあたり、警察署、交通管制センター、機動隊、警ら交通隊、その他これらに準ずるものの庁舎又は学校教養施設の敷地が含まれることは望ましくない。
iii 緑地保全地区内に防衛施設が含まれることは望ましくない。
iv 河川区域に生息生育地型緑地保全地区を決定し、又は同意しようとする場合には、河川環境管理基本計画との整合を図る観点から、都道府県の都市計画担当部局は河川管理者と連絡調整することが望ましい。

3) 他の都市計画制度との関係

ア 市街化調整区域等において自然的環境を保全するべき相当規模の区域については、当該区域の自然的環境を保全する上で特に枢要な区域を絞り込み緑地保全地区を決定して現状凍結的な保全を図ることが望ましい。その場合、周囲の土地利用との関係において枢要な区域が蚕食されるおそれのある場合には周囲に風致地区を組合せて決定することが望ましい。

動植物の生息地又は生育地として保全するものについて、緑地保全地区を指定し適正な保全を図りつつ、併せて自然生態の観察等の利用に供することが必要な場合は、その区域を公園、緑地等の公共空地として一体的に決定し整備することが望ましい。

イ 緑地保全地区内における行為の規制に関する法第五条の規定は、行為の規制に関する都市計画法、屋外広告物(昭和二四年法律第一八九号)、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)、文化財保護法(昭和二五年法律第二五四号)、森林法、自然公園法(昭和三二年法律第一六一号)、宅地造成等規制法(昭和三六年法律第一九一号)その他の法律の規定の適用を妨げるものではないので、緑地保全地区内における緑地の保全、損失の補償等との関連上、それらの総合的な運用を図ることが望ましい。
ウ 緑地保全地区と風致地区が重複する土地の区域における法第五条第一項の許可の申請手続については、当該申請の風致地区の規制による行為の許可の申請とを受付け窓口、申請書の様式等についてできる限り一本化等をして手続の簡素化を図ることが望ましい。

(3) 緑地保全地区における行為の規制

1) 許可の基準

緑地保全地区は、良好な都市環境を確保するために必要な緑地について指定されるものであり、強度の行為の規制がなされる反面、損失の補償、土地の買入れ等が行われ得る地域であるので、当該地域内における行為の規制は、緑地を良好な状態で保全するよう、以下の許可基準により行うことが望ましい。

第一 許可基準

一 建築物の新築

イ 仮設の建築物については、次に掲げる要件を充たすものであること。

(一) 当該建築物の構造が、容易に移転し、又は除却することができるものであること。
(二) 当該建築物の規模及び形態が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

ロ 地下に設ける建築物については、当該建築物の位置及び規模が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ハ 公衆便所については、規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ニ その他の建築物(以下ニにおいて「普通建築物」という。)については、次に掲げる要件を充たすものであること。

(一) 当該新築が、次のいずれかの土地において行われること。

(i) 緑地保全地区の指定の日前において普通建築物の敷地であった土地
(ii) 緑地保全地区の指定の際現に新築の工事中の普通建築物の敷地であった土地

(二) 当該新築が、次のいずれかに該当すること。

(i) 現に存する普通建築物の建替えのために行われること。
(ii) 緑地保全地区の指定の日の前日から起算して前六月以内に除却した普通建築物の建替えのために行われること。

(三) 当該新築後における普通建築物の高さ及び床面積の合計が、それぞれ(二)の普通建築物の高さ及び第二に定める制限床面積をこえないこと。
(四) 当該新築後の普通建築物の形態及び意匠が、新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

二 建築物の改築については、次に掲げる要件を充たすものであること。

イ 当該改築後の建築物の高さが、改築前の建築物の高さをこえないこと。
ロ 当該改築後の建築物の形態及び意匠が、改築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

三 建築物の増築

イ 仮設の建築物については、次に掲げる要件を充たすものであること。

(一) 当該増築部分の構造が、容易に移転し、又は除却することができるものであること。
(二) 当該増築後の建築物の規模及び形態が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

ロ 地下に設ける建築物については、当該増築後の建築物の位置及び規模が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ハ 公衆便所については、当該増築後の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ニ 宗教法人法(昭和二六年法律第一二六号)に規定する境内建物である建築物又は旧宗教法人令(昭和二〇年勅令第七一九号)の規定による宗教法人のこれに相当する建築物(法第三条第一項の緑地で、同項第二号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の建築物に限る。)については、当該増築後の建築物の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ホ その他の建築物(以下ホにおいて「普通建築物」という。)については、次に掲げる要件を充たすものであること。

(一) 当該増築が、次のいずれかの土地において行われること。

(i) 緑地保全地区の指定の日以前において普通建築物の敷地であった土地
(ii) 緑地保全地区の指定の際現に新築の工事中の普通建築物の敷地であった土地

(二) 当該増築部分の高さ及び当該増築後における普通建築物床面積の合計が、それぞれ増築前の普通建築物の高さ及び第二に定める制限床面積をこえないこと。
(三) 当該増築後の建築物の形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

四 工作物(建築物以外の工作物をいう。以下同じ。)の新築

イ 地下に設ける工作物については、当該工作物の位置及び規模が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ 宗教法人法に規定する境内建物である工作物又は旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する工作物(法第三条第一項の緑地で、同項第二号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の工作物に限る。)については、当該工作物の規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ハ その他の工作物については、当該工作物の高さが、五メートル以下であり、かつ、その規模、形態及び意匠が、当該新築の行われる土地及び意匠が、当該新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

五 工作物の改築については、次に掲げる要件を充たすものであること。

イ 当該改築後の工作物の高さが、改築前の工作物の高さをこえないこと。
ロ 当該改築後の工作物に形態及び意匠が、改築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

六 工作物の増築

イ 地下に設ける工作物については、当該増築後の工作物の位置及び規模が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ 宗教法人法に規定する境内建物である工作物又は旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する工作物(法第三条第一項の緑地で同項第二号に該当する土地の区域について定められた緑地保全地区内の工作物に限る。)については、当該増築後の工作物の規模、形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。
ハ その他の工作物については、当該増築部分の高さが五メートル以下であり、かつ、増築後の工作物の形態及び意匠が、増築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和でないこと。

七 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更

イ 土石の採取又は鉱物の掘採については、当該採取又は掘採の方法が、露天掘りでなく、かつ、当該採取又は掘採を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の保全に支障を及ぼすおそれが少ないこと。
ロ その他の土地の形質の変更については、当該土地の形質の変更が、次のいずれかに該当し、かつ、当該変更後の地貌が当該変更を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないこと。

(一) 前各号に掲げる建築物その他の工作物の新築、改築又は増築を行うために必要な最小限度の規模の土地の形質の変更
(二) 農地又は採草放牧地に接する土地の開墾
(三) 建築物の存する敷地内で行う土地の形質の変更

八 木竹の伐採については、当該木竹の伐採が、次のいずれかに該当し、かつ、伐採の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況を損なうおそれが少ないこと。

イ 森林の択伐
ロ 伐採後の成林が確実であると認められる森林の皆伐で、伐採区域の面積が一ヘクタール以下のもの
ハ 前号に掲げる土地の形質の変更のために必要な最小限度の木竹の伐採で、森林である土地の区域において行うもの
ニ 森林である土地の区域外における木竹の伐採

九 水面の埋立て又は干拓については、当該水面の埋立て又は干拓後の地貌が埋立て又は干拓を行う土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないこと。
一〇 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積については、当該堆積後の土石、廃棄物又は再生資源が、堆積の行われる土地及び周辺の土地の区域における緑地の状況と著しく不調和とならないこと。
一一 その他

イ 次に掲げる行為については、一から一〇の規定にかかわらず、当該行為の行われる土地及びその周辺の土地の区域における緑地の状況を著しくそこなわないこと。

(一) 災害の防止のために必要やむを得ない行為
(二) 法令に基づく行政庁の勧告に応じて行う行為

ロ 港湾施設及び漁港施設については、都市緑地保全法施行令(昭和五〇年政令第三号。以下「施行令」という。)第二条第一七号及び第一八号に掲げる施設以外の施設に関する工事の施行又は施設の管理に係る事項に伴って必要となる行為についても、その公益性を尊重し、原則として、許可することが望ましい。
ハ 鉄道の駅及び軌道の停車場、操車場、車庫その他これらに類するものの建設については、その公益性にかんがみ、緑地保全上の配慮をしたうえで、法第五条第一項の規定を運用することが望ましい。
ニ 許可申請が、鉱業権者、租鉱権者、熱供給事業者からあった場合には、できる限り操業に支障を及ぼさないように考慮することが望ましい。
ホ 鉱害復旧に係る行為は許可することが望ましい。

第二 制限床面積の意義等

一 第一―一ニ(三)及び同―三ホ(二)において「制限床面積」とは、当該普通建築物の敷地における次に掲げる床面積の合計をいう。この場合において、「普通建築物」とは、第一―一ニ(三)の場合においては第一―一ニの普通建築物を、同三ホ(二)の場合においては同三ホの普通建築物をいう。

イ 緑地保全地区の指定の際現に存した普通建築物の床面積
ロ 緑地保全地区の指定の際現に新築、改築又は増築の工事中の普通建築物の床面積
ハ 緑地保全地区の指定の日の前日から起算して前六月以内に建替えのために除却した普通建築物の全部又は一部で、その指定の際まだ建替えのための新築又は改築の工事に着手していないものの床面積
ニ 緑地保全地区の指定前に災害により滅失した普通建築物の全部又は一部で、その指定の際まだ復旧のための新築又は増築の工事に着手していないものの床面積
ホ 次に掲げる普通建築物が、いずれも住宅(住宅と事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるものを含む。)又は住宅部分を有するものであるときは、九〇平方メートル

(一) 緑地保全地区の指定の際に存した普通建築物、その指定前に最後に存した普通建築物又はその指定の際現に新築、改築若しくは増築の工事中の普通建築物
(二) 当該新築に係る第一―一ニ(二)の普通建築物又は当該増築前の普通建築物
(三) 当該新築又は増築後の普通建築物

二 この基準における「床面積」には、建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第一条第二号に規定する地階の床面積は、算入しないものとする。

2) その他

ア 法第五条第一項ただし書の「すでに着手していた行為」には、次のものが含まれる。

i 鉱業法(昭和二五年法律第二八九号)第六三条(同法第八七条において準用する場合を含む。)の規定により、経済産業局長に届出をし、又はその認可を受けている施業案に基づいて現に鉱物の掘採に着手している鉱業権者又は租鉱権者が当該施業案に基づいて行う行為
ii 砂利採取法(昭和四三年法律第七四号)第一六条の規定により認可されている採取計画に基づきすでに採取を行っている者が当該計画に基づき行う採取行為

イ 法による行為の制限は、緑地の現状維持をねらいとしたものであるので、法第五条第三項により条件を附する場合においても、現状以上の緑地の確保を求めることは望ましくない。
ウ 鉄道事業者又は軌道経営者が法第五条第四項の規定により都道府県知事に通知すべき範囲は、鉄道事業者にあっては、工事施行の認可、工事計画の変更の認可又は鉄道施設の変更の認可に際し、鉄道事業法施行規則(昭和六二年運輸省令第六号)の規定により地方運輸局長に提出される申請書に記載される事項、軌道経営者にあっては、工事施行の認可又は工事方法書の記載事項の変更の認可に際し、軌道法施行令(昭和二八年政令第二五八号)及び軌道法施行規則(大正一二年内務・鉄道省令)の規定により都道府県知事に提出される申請書に記載される事項とすることが望ましい。
エ 施行令第二条第一号、第二号、第三号及び第四号に係る施設の新設並びに同条各号のその他の施設のうち大規模なものの新設について、法第五条第四項による通知があった場合には、遅滞なく、緑地保全地区担当部局は自然保護部局に協議するとともに、自然環境保全の見地からの意見を十分尊重して同条第七項の措置をとることが望ましい。
オ 屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積に関しては、法第五条の許可を行う前に、当該許可申請の事実について、当該許可に係る緑地保全地区を管轄する都道府県警察に対し通知することが望ましい。
カ 施行令第二条第二七号に規定する「有線テレビジョン放送施設」には、電気通信基盤充実臨時措置法(平成三年法律第二七号)第二条第五項に規定する「高度有線テレビジョン放送施設」である「建物」は含まれない。
キ 「屋外における土石、廃棄物又は再生資源の堆積」には、建設副産物を加工し、新たな製品(建築資材等)として市場に流通しているものの堆積は含まれない。

(4) 緑地保全地区における損失の補償

緑地保全地区は、緑地の保全を図る目的から法第三条第一項各号に掲げる要件に該当する良好な自然的環境を形成している地域が指定されるものであり、かつ、その規制の内容も緑地を良好な状態で保全しようとする趣旨から現状変更行為を実質的に相当程度制限するものであるので、行為の許可を受けることができないために損失を受けた者に対しては、その損失を補償する必要がある場合のあることを考慮し、損失補償の制度が設けられた。よって都道府県は、同法第七条の規定に従い、当該損失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない。ただし、次の場合には同法第七条の規定による損失補償は行われない。
1) 法第五条第一項の許可の申請に係る行為について、風致地区との重複等地の法律(当該許可等を受けることができないため損失を受けた者に対して、その損失を補償すべきことを定めているものを除く。)の規定により許可を必要とされている場合において、許可その他の処分の申請が却下されたとき、又は却下されるべき場合に該当するとき。
2) 法第五条第一項の許可の申請に係る行為が、補償金目あての行為である等社会通念上緑地保全地区を指定した趣旨に著しく反すると認められるとき。

1)の趣旨に鑑み、法第七条の規定による損失補償の請求があった場合において、他の法律等の許可その他の処分の申請をしていないときは、当該申請が却下されることが明らかな場合を除き、1)の却下されるべき場合に該当するか否かについて関係機関と調整することが望ましい。

(5) 緑地保全地区における土地の買入れ等

1) 買入れが認められる場合

緑地保全地区内の土地については、次の要件のすべてに該当する場合に、その買入れが認められる。
ア 緑地の保全上必要があると認められるもの

この場合において「保全上必要があると認められる」とは、行為の規制のみでは管理の万全を期し難く、地方公共団体が取得していなければ保全できないと認められる場合である。

イ 法第五条第一項の許可を受けることができない場合

これは、当該土地の所有者が、当該許可を受けることができない場合をいうものであり、たとえば、当該土地の借地権者等が当該許可を受けることができなかった場合は、これに該当しない。

ウ 当該土地の利用に著しい支障を来すこととなる場合

この場合も、当該土地の所有者が、当該土地の利用に著しい支障をこうむる場合をいうものである。また、「土地の利用に著しい支障を来すこととなる」かどうかの判断にあたっては、当該土地の社会的な利用価値(土地柄)からみて、利用が限定されており、通常は、誰でも申請行為と類似の利用をするであろうと思われるような場合を客観的に判断することが望ましい。

エ 土地の所有者が、当該土地を都道府県において買い入れるべき旨の申出を行った場合

2) 価額の評価

土地を買い入れる場合において、その価額は、地価公示価格又は不動産鑑定士等の鑑定価格等を考慮して算定された適正な価額によることが望ましい。

3) 損失の補償と土地の買入れ

法第八条の買入れの規定は、1)のアから明らかなように、土地所有者の権利救済のみを目的としたものではなく、同法第七条の補償の規定とは別個の趣旨の規定であるから両規定は同一の土地について別途に適用されるものである。

4) 管理台帳の作成等

法第八条の規定により買い入れた土地については、管理のために必要な台帳を作成するとともに、同法の目的に照らし、緑地保全の趣旨に沿うよう管理することが望ましい。
なお、管理にあたっては、緑地保全地区担当部局と林務担当部局は十分協議協力して行うことが望ましい。

5) 農地等を買い入れる場合

都道府県又は市町村が緑地保全地区内の農地又は採草放牧地を買い入れる場合には、農地法の規定に基づき買入れを行うものである。

6) 税務手続

法第八条第一項又は第三項の規定に基づく地方公共団体による土地の買入れに係る土地等で、所得税又は法人税の課税上、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の二千万円控除の特例の対象となるものを譲渡した個人又は法人がこの特例の適用を受けようとする場合には、租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第三四条第四項及び第六五条の三第四項の規定に基づき、租税特別措置法施行規則(昭和三二年大蔵省令第一五号)第一七条第一項第三号ロ又は第二二条の四第一項第三号ロに規定する書類を確定申告書等(法人税の確定申告書及び中間申告書を含む。)に添付する必要があることとされていることから、地方公共団体は、当該地方公共団体の長の「土地等を都市緑地保全法第八条第一項又は第三項の規定により買い取った旨を証する書類」(別添様式第一)を当該買入れに係る土地等を譲渡した個人又は法人に交付しなければならないので、留意することが望ましい。
地方公共団体は、土地の買入れを行った場合には、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び一〇月から一二月までの各期間に支払うべき当該買入れに係る対価についての所得税法(昭和四〇年法律第三三号)第二二五条第一項第九号の規定による調書を、当該各期間に属する最終月の翌月末日までに、当該買入れを行った営業所、事業所その他の事業場の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。

7) 市町村が買い入れる場合

緑地保全地区に関する都市計画の決定、土地の買入れ、買入れた土地の管理については、緑地保全地区制度の円滑な運用を図るため、各都道府県及び関係市町村においてその役割分担等についてあらかじめ十分検討することが望ましい。
また、緑地保全地区の行為の許可については、事務の円滑な実施に支障がない場合には、都道府県と市町村の協議により、地方自治法による権限の委任を行うことが望ましい。
市町村が土地の買入れを行う場合は、以下の事項に留意することが望ましい。
ア 市町村が基本計画に法第二条の二第二項第三号ロ(二)の事項を定める場合にあっては、地域の実情に応じた土地の買入れが行われるよう、法第八条の規定に基づく土地の買入れに係る都道府県と市町村の役割分担及び法第九条に基づく買い入れた土地の管理の方針等について、都道府県と市町村は事前に十分協議した上で定める。
イ 土地の買入れの申出があった場合は、市町村については、買入れを希望する市町村に限り相手方として定めることができるものであり、買入れを希望する市町村が存しないときは、都道府県が当該土地を買い入れる。
ウ 一の土地の買入れの申出に対して都道府県、市町村の両者が買入れを希望する場合には、当該買入れの対象となる土地の位置、規模、買入れ後の管理のあり方等を勘案して当該土地の買入れの相手方として定める。

8) 管理等

都道府県又は市町村が買い入れた土地については、都道府県又は市町村において管理のために必要な台帳を作成するとともに、法第九条の規定に基づき適正に管理することが望ましい。

9) 緑地管理機構が買い入れる場合

緑地管理機構が緑地保全地区内の土地を買い入れる場合についての運用指針は、「七 緑地管理機構制度」に記述されている。

三 管理協定制度

(1) 管理協定制度の意義

緑地保全地区内の緑地においては、建築物の新築等の行為について規制が行われるが、樹林地の手入れが不十分である等、管理が十分に行われないために緑地としての機能が十分に発揮されず、緑地の荒廃や喪失が発生し、緑地の適正な保全を十分に図ることができない場合が想定される。
管理協定制度は、地方公共団体又は法第二〇条の六第一項の規定に基づく緑地管理機構が、緑地保全地区内の緑地について土地所有者等による管理が不十分であると認められる場合に、土地所有者等との間で緑地の管理のための協定(管理協定)を締結し、当該土地所有者等に代わり緑地の保全及び管理を行う制度である。

(2) 管理協定の内容

1) 管理協定の対象となる土地の区域等

ア 管理協定は、緑地保全地区内の緑地について土地所有者等による管理では当該緑地の有する機能が十分発揮することができないと判断されるような土地について締結するものであり、具体的には、例えば、土地所有者の疾病、高齢化、不在地主化等の理由により、日常の巡視や下草刈り等の管理行為が困難となっている場合が考えられる。
イ 管理協定区域内の土地には農地及び採草放牧地は含まれない。

2) 管理協定の締結事項

管理協定においては、「管理協定の目的となる土地の区域」、「管理協定区域内の緑地の管理の方法に関する事項」、「管理協定の有効期間」及び「管理協定に違反した場合の措置」が必要記載事項とされているが、法第九条の二第一項第三号に規定する管理協定区域内の施設の整備に関する事項についても、管理協定区域内の緑地の保全を図る観点から、必要に応じて協定内容の充実を図ることが望ましい。
ア 「管理協定の目的となる土地の区域」を定める場合にあっては、その区域を明確にするよう地番、地積等の事項を記載するとともに、必要に応じて、図面等を添付することが望ましい。
イ 「管理協定区域内の緑地の管理の方法に関する事項」は、例えば樹木の剪定、枯損した木竹及び危険な木竹の処理等、緑地の保全に関連して必要とされる措置を定めることが考えられる。なお、森林法等に基づく森林の整備等、農林水産関係施策について定めるべきではない。
ウ 「管理協定区域内の緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項」は、例えば防火施設、土砂崩壊防止施設、管理用通路、さく等、緑地の適正な保全に資する施設(以下この章において「保全関連施設」という。)の整備について定めることが考えられる。なお、治山事業として行う土砂崩壊防止施設、山腹緑化工、土留工等の施設の整備は含まれない。
エ 「管理協定の有効期間]を定めるにあたっては、当該土地の所有者等の将来の土地利用計画との調整を十分に図り、かつ、周辺の緑地の既存状況、当該土地に存する緑地の存在意義等を勘案することが望ましい。また、相続税及び贈与税の課税上の優遇措置を受ける要件として、土地の貸付期間が二〇年であることとされていることに留意することが望ましい。
オ 「管理協定に違反した場合の措置」は、例えば、次に掲げるような違反行為に対し、協定に定められた義務の履行の請求を定めることなどが考えられる。

i 協定の有効期間中に土地の所有者が正当な事由なく土地の返還を申し出た場合
ii 管理協定に基づいて地方公共団体又は緑地管理機構が行う管理行為を妨害する場合
iii 協定に定められた費用の負担条項に反して費用の負担を行わなかった場合等

3) 管理協定制度と基本計画との関係等

基本計画は、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する総合的なマスタープランとなるものであることから、管理協定に関する事項についても、可能な限りその設定目標、設置・管理方針等を定めることが望ましい。
したがって、管理協定の締結にあたっては、その契約主体にかかわらず、基本計画において定められた「緑地の保全及び緑化の目標」や「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」等に適合すべきである。
「土地及び木竹の利用を不当に制限するもの」とは、例えば、管理上支障がないにもかかわらず当該土地への立入、木竹の利用を一切禁止するような場合等が考えられる。

4) 管理協定の公告等

ア 管理協定を締結しようとする場合及び締結した場合、あるいは緑地管理機構から管理協定締結の認可の申請があった場合及び認可をした場合には、地方公共団体又は都道府県知事は、管理協定の名称、区域、有効期間、保全関連施設(協定に定められている場合に限る。)、縦覧場所を公告することとされており、公報への掲載、地方公共団体の事務所における掲示、インターネットによる公開、新聞紙への掲載等、適切な方法により公告することが望ましい。また、管理協定を締結し又は認可をしたときは、地方公共団体又は都道府県知事は、当該管理協定区域内に管理協定区域である旨を明示することとされていることから、当該管理協定区域内の見やすい場所に管理協定区域である旨及び管理者を表示した標識の設置等を行うことが望ましい。なお、この際、必要に応じて当該標識に当該管理協定の名称、区域、有効期間、保全関連施設を表示することが望ましい。
イ 地方公共団体又は都道府県知事による締結又は認可の公告のあった管理協定は、その公告のあった後において当該管理協定区域内の土地所有者等となった者に対しても効力を及ぼすこととなるので、地方公共団体又は都道府県知事は、当該区域が管理協定区域である旨の周知措置を十分講ずるべきである。

5) 管理協定制度に係る法令上の特例

ア 緑地保全地区において行われる法第九条の二第一項第三号に規定する「施設の整備に関する事項」に係る行為は、当該緑地保全地区内の緑地の保全を目的とするものであり、緑地の保全上支障のない行為であることが都道府県知事、指定都市又は中核市の長との協議により担保されていることから、法第五条の許可の適用が除外されている。

このため、緑地保全地区に係る管理協定に当該施設整備に関する事項を定めるときは、あらかじめ、その内容を都道府県知事等に協議するものとされている。この際、当該施設整備については、個別の施設ごとに、その内容が明確にわかるようにすることが望ましい。また、管理協定の有効期間が経過した場合の施設の取扱いについても定めることが望ましい。
なお、緑地保全地区内の緑地の保全を図る観点から、これらの区域内における管理協定の締結の推進と併せ、当該施設整備に関する事項についても積極的に管理協定に定め、緑地保全の推進を図ることが望ましい。

イ 法第九条の八に規定されている都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(昭和三七年法律第一四二号。以下「樹木保存法」という。)の特例措置は、樹木保存法に基づく保存樹・保存樹林制度が保存樹又は保存樹林の指定により、所有者に対し当該保存樹等の保存義務を課すものであることから、管理協定区域内の保存樹・保存樹林については緑地管理機構が当該義務を負うこととする旨の読み替えを行うことにより、当該保存樹等の所有者の負担を軽減するとともに、緑地管理機構の保存義務の明確化を図ることをその趣旨としている。

なお、当該特例措置は、規定上、緑地管理機構に適用されることとされているが、地方公共団体が締結する管理協定区域内に保存樹・保存樹林が存する場合においても、当該地方公共団体は、樹木保存法の趣旨に基づき当該保存樹等を適切に管理する義務を負うこととなる。

(3) その他

1) 管理協定が締結されている土地の評価

相続税及び贈与税の課税上、土地の価額は、原則として、昭和三九年四月二五日付直資五六、直審(資)一七「財産評価基本通達」の定めに基づき路線価方式又は倍率方式により評価することとなる。
法第三条の規定による緑地保全地区内の土地については、法第五条の規定による行為制限の内容を踏まえて評価されるところであるが、加えて、管理協定区域内の土地のうち、別紙1の要件に該当するものの価額は、当該土地が管理協定区域内の土地でないものとして、財産評価基本通達の定めにより評価した価額から、その価額に一〇〇分の二〇を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価される旨国税庁と協議済であるので、本制度の積極的な活用を併せて図ることが望ましい。なお、当該土地の評価にあたっての細目については、別紙2のとおりである。

2) 協議・調整

ア 管理協定の内容は、農業振興地域整備計画及び地域森林計画、市町村森林整備計画等森林の整備に関する計画に適合することが望ましい。
イ 森林が含まれる土地の区域において管理協定を締結しようとする場合には、締結主体が地方公共団体である場合にあっては、当該地方公共団体の林務担当部局に、締結主体が緑地管理機構である場合にあっては、当該管理協定に係る土地の存する都道府県の林務担当部局に対し、十分連絡調整することが望ましい。
ウ 管理協定区域内の土地に保安林等が含まれる場合は、管理協定の締結内容は保安林等の規制の範囲内であるべきであることから、締結主体が地方公共団体である場合にあっては、地方公共団体の林務担当部局との間において、締結主体が緑地管理機構である場合にあっては、当該管理協定に係る土地の存する都道府県の林務担当部局との間において、十分連絡調整を行うことが望ましい。
エ 農用地区域内の土地において管理協定を締結しようとする場合には、締結主体が地方公共団体である場合にあっては、当該地方公共団体の農業振興地域制度担当部局に、締結主体が緑地管理機構である場合にあっては、当該管理協定に係る土地の存する市町村の農業振興地域制度担当部局に対し、十分連絡調整することが望ましい。

四 緑地協定制度

(1) 緑地協定制度の意義

緑地協定は、都市計画区域内における相当規模の一団の土地又は道路、河川等に隣接する相当の区間にわたる土地について、市街地の良好な環境を確保するため、土地所有者等の全員の合意により、当該土地の区域における緑地の保全又は緑化に関する事項を協定する制度である。

(2) 緑地協定の内容

1) 緑地協定の対象となる土地の区域等

ア 緑地協定の設定は、住宅地、商業地、工業地、若しくはこれらの混在する地域又は道路、河川、水路沿い等公衆が往来する地域等において行われるものであるが、各地域の環境整備にふさわしい緑地協定が締結されるよう配慮することが望ましい。なお、施行令第四条に規定する「森林」は森林法第二条第一項に規定する「森林」をいうものであり、「森林」に該当しない宅地内の樹林地等は、緑地協定の対象となり得る。
イ 緑地協定は、緑化の推進を行う土地の所有者等と緑地の保全を行う土地の所有者等の両方が存在する場合についても別の協定とする必要はなく、一つの協定として併せて締結できるものである。
ウ 法第一四条第一項の「相当規模の一団の土地」とは、保全又は植栽等により市街地の良好な環境を確保し得るような規模を有するまとまった土地で区域の境界が明確なものであり、通常は、街区単位の規模が考えられる。
エ 法第一四条第一項の「道路、河川等に隣接する相当の区間にわたる土地」とは、保全又は植栽等により市街地の良好な環境を確保し得る程度の区間にわたる道路、河川沿い等の土地で区間の境界が明確なものであり、通常は、一街区相当の区間程度にわたる土地が考えられる。
オ 法第一四条第一項の「臨時施設その他一時使用のため設定されたことが明らかなもの」とは、興行用の小屋掛けや仮設の事務所等の数日又は数ケ月の短期間における一時使用のために仮設されたことが明らかな地上権又は賃借権である。

2) 緑地協定の締結事項

法第一四条第二項第二号に掲げる「緑地又は緑化に関する事項」とは、具体的には、以下のとおりである。
ア 「保全又は植栽する樹木等の種類」は、当該緑地協定の意図に応じ、保全又は植栽する樹木等の種類のうち必要なものを定める。保全すべき樹木等については、保全のための措置を講じる際にその種類を明らかにしておく必要があるので、「保全する樹木等の種類」は、具体の樹種等を定めておくことが望ましい。「植栽する樹木等の種類」については、この事項が植栽する樹木等の種類をすべて定めようとする趣旨ではないため、かならずしも植栽しようとする樹木等の名称を具体的に定める必要はなく、落葉樹あるいは常緑樹といった種類を定める程度でもさしつかえない。なお、ここでいう「樹木等」には草花、芝生等も含まれる。
イ 「樹木等を保全する場所」は、例えば、既存の生け垣や道路等に接している緑地を保全するといった事項を定めることが考えられる。
ウ 「保全する垣」とは、住宅地における既存の生け垣を引き続き良好な状態で維持すること等をいうものであり、「設置する垣」とは、生け垣の設置等をいうものである。
エ 「保全又は植栽する樹木等の管理に関する事項」は、枝打ち、整枝、病虫害防除、施肥、除草等に関する事項を定める。
オ 「その他の緑地の保全に関する事項」は、保全のための施設等の整備、災害復旧等に関する事項を定めることが考えられる。

3) 緑地協定の認可・公告

ア 緑地協定においては、土地の区域を定めて、植栽しようとする樹木等の種類、樹木等を保全又は植栽する場所、保全又は設置する垣又はさくの構造、保全又は植栽する樹木等の管理に関する事項及びその他緑地の保全又は緑化に関する事項のうち必要な事項を有効期間を定めて協定できるほか、違反した場合の措置についても定めることとされているが、これらについては国土交通省令において認可基準が定められているので、緑地協定の認可申請があった場合には、市町村長は、下記事項に留意のうえ緑地協定制度の趣旨に沿って認可することが望ましい。

i 緑地協定区域に含まれることによって各種の義務を追うこととなるので区域の境界が明確に定められていなければならない。
ii 「その他緑地の保全又は緑化に関する事項」に関する国土交通省令で定める認可基準のうち、修景施設に関する事項については工場等における植栽及び芝生の規模及び配置が除かれているが、これは、これらの事項については工場立地法(昭和三四年法律第二四号)に基づく準則により指導されているので緑地協定の対象からは除外する趣旨である。なお、これらの事項以外(保全又は植栽する樹木等の種類、樹木等を保全又は植栽する場所、保全又は設置する垣又はさくの構造、保全又は植栽する樹木等の維持管理に関する事項など)については工場等も緑地協定の当事者となり得る。
iii 緑地の保全を内容とする協定の認可にあたっては、協定締結者間において著しい経済的負担の差異が生じないこと、また、土地の利用を不当に妨げるものでないことを確認すべきである。

イ 緑地協定の認可の申請があった場合及び認可をした場合には、市町村長は、緑地協定の名称、区域、緑地協定区域隣接地が定められたときはその区域、縦覧場所を公告することとされており、公報への掲載、市町村の事務所における掲示、インターネットによる公開、新聞紙への掲載等、適切な方法により公告することが望ましい。また、緑地協定を認可をしたときは、市町村長は、当該緑地協定区域内に緑地協定区域である旨を明示することとされていることから、当該緑地協定区域内の見やすい場所に緑地協定区域内である旨を表示した標識の設置等を行うことが望ましい。なお、この際、必要に応じて当該標識に当該緑地協定の名称、区域を表示することが望ましい。
ウ 市町村長の認可の公告のあった緑地協定は、その公告のあった後において当該緑地協定区域内の土地所有者等となった者に対しても効力を及ぼすこととなるので、市町村長は、当該区域が緑地協定区域である旨の周知措置を十分講ずるべきである。

4) 緑地協定区域隣接地制度

緑地協定区域隣接地(以下4)において「隣接地」という。)制度は、緑地協定区域周辺の土地の所有者等が協定の締結後においても、当該緑地協定に簡易な手続により参加できることとしているものである。
ア 「緑地協定区域に隣接した土地」とは、既存の緑地協定区域の拡大により当該緑地協定区域となり得る土地の区域をいうものであり、当該緑地協定区域と飛び離れた土地については、隣接地には定め得ない。また、隣接地は既存の緑地協定区域の拡大という形で緑地協定区域になり得る土地であるので、緑地協定区域に比して著しく広い区域の隣接地の設定は行うべきではない。
イ 都市緑地保全法施行規則(昭和四九年建設省令第一号)第八条第二号の「緑地協定区域との一体性を有する土地の区域」とは、隣接地が既存の緑地協定区域の一部となることにより、生垣の連続等の確保が図られ、市街地の良好な環境の確保に資するような土地の区域をいうものである。したがって、例えば、既存の緑地協定区域との間に大規模な公共施設等が存在し、連担性が確保できないような土地の区域については、隣接地に定め得ないものである。
ウ 隣接地は、緑地協定区域内の土地所有者等が定めるものであるが、当該緑地協定で定められた隣接地内の土地所有者等については、何ら権利制限を設けるものではない。したがって、緑地協定に隣接地を定めるに当たっては、法律上当該隣接地の区域内の土地所有者等の同意を得る等の必要はないが、本制度の円滑な運用を図るには、土地所有者等の理解を得るように努めることが望ましい。よって、当該緑地協定に参加することについて反対である旨を明らかにしている土地所有者等に係る土地の区域については、隣接地に定めるべきではない。
エ 三大都市圏特定市の市街化区域内の宅地化農地など農地転用が行われる農地又は採草放牧地(以下4)において「農地等」という。)については、隣接地の区域に含みうるものであるが、隣接地の区域内に農地等を含むことをもって当該農地等の転用を促進することを意味するものではない。
オ 隣接地の区域内の農地等について、当該土地の所有者等が当該緑地協定に参加する旨の意思表示があった場合には、緑地協定区域には農地等は含まれないこととなっていることから、当該土地については農地等の転用が行われることによりはじめて、当該緑地協定区域の一部になり得る。
カ 林地開発が確実に予定されている森林については、隣接地の区域に含み得るものであるが、隣接地の区域内に森林を含むことをもって当該森林の無秩序な転用を促進することを意味するものではない。この場合、林地開発が確実に予定されるか否かの判断をする際には、林務担当部局に協議することが望ましい。なお、緑地協定を締結しようとする土地所有者等に対して、この旨を周知するよう努めることが望ましい。
キ 法第一八条の二第一項及び第二項の「市町村長に対して書面でその意思を表示」する際の書面様式については特に定められていないが、隣接地制度の円滑な運用を図るため、あらかじめ市町村において定めておくことが望ましい。

(3) その他

1) 緑地協定の変更及び廃止

法第一七条第一項及び法第一九条第一項の「当該緑地協定の効力が及ばない者」とは、借地人等の合意により緑地協定が締結された土地の所有者である。

2) 緑地協定制度の普及啓発

ア 緑地協定制度を活用することにより、土地区画整理事業、住宅街区整備事業において初期の段階から住民による自主的な緑豊かなまちづくりの取組が期待されるので、本制度についての普及啓発を行うことが望ましい。
イ 法第二〇条において緑地協定の設定の特則が定められているが、新規の宅地分譲地等において、この制度を活用することにより、良好な都市環境を有する市街地の形成が期待されるので、開発事業者等にこの旨を周知徹底し、できる限り緑地協定を設定するよう普及啓発することが望ましい。

3) 協議・調整

ア 臨港地区に係る緑地協定を認可しようとするときは、あらかじめ、港湾管理者と協議することが望ましい。
イ 緑地協定の認可に係る指導等を行うにあたっては、緑地協定担当部局と林務担当部局で十分協議のうえ協力して行うことが望ましい。
ウ 農用地区域内の土地における緑地協定の内容は、農業上の利用に支障を及ぼさないよう配慮することが望ましい。

五 市民緑地制度

(1) 市民緑地制度の意義

都市内において、緑とオープンスペースを確保していくためには、都市公園の整備と併せて都市内に残された緑地の保全を図るとともに、これらを住民の利用に供する緑地として確保していくことが重要である。
市民緑地制度は、主として土地の所有者からの申出に基づき、地方公共団体又は緑地管理機構(以下この章において「地方公共団体等」という。)が当該土地の所有者と契約(市民緑地契約)を締結し、当該土地に住民の利用に供する緑地(市民緑地)を設置し、これを管理することにより、土地の所有者が自らの土地を住民の利用に供する緑地として提供することを支援・促進し、緑の保全を維持することを目的とした制度である。

(2) 市民緑地制度の内容

1) 市民緑地の対象となる土地の区域等

ア 市民緑地の対象となる土地の区域は、都市計画区域内の三〇〇m2以上の一団の土地の区域であるが、市民緑地内の土地については、市民緑地契約により専ら住民の利用に供することを目的とする権利が設定されるものであることから、その対象となる土地には、地上権、賃借権その他の使用収益権(ただし、電線の設置に伴う地上権の設定等市民緑地の利用に支障のない権利の設定を除く。)が設定されている土地は含まれない。

なお、現況が緑地でない土地であっても、植樹等を行い当該土地を緑地とした場合においては、当該土地に係る市民緑地の設置が可能である。

イ 市民緑地契約の締結にあたっては、当該市民緑地契約に係る土地における公共事業の計画等に十分配慮しつつ契約の締結を行うことが望ましい。また、既存の都市計画制度等と市民緑地の対象となる土地の区域の関係は下記のとおりであるので、留意すべきである。

i 緑地保全地区内の土地の区域は、市民緑地の対象となる。地域住民に対し、良好な緑の公開を促進する観点から、緑地保全地区内における市民緑地の設置・管理の積極的な推進を図ることが望ましい。
ii 生産緑地地区内の土地の区域は、市民緑地の対象とはならない。
iii 都市公園の区域は、市民緑地の対象とはならない。
iv 都市計画施設内の土地の区域は、原則として市民緑地の対象とならない。
v 市民緑地契約の申出に係る土地が、将来、公共事業の用に供される予定がある場合であっても、当該事業に支障のない範囲で、当該土地の区域は市民緑地の対象とすることが可能である。
vi 市民緑地契約の終了後、当該土地の所有者の同意を得たうえで、当該土地に都市公園を設置することは可能である。

2) 市民緑地契約の締結

市民緑地契約は、土地所有者からの申出に基づくことを基本とし、当該土地について地方公共団体等と当該土地の所有者との間で締結されるものであることから、当該申出があった場合には、積極的に当該契約締結の検討を行うことが望ましい。ただし、周辺の緑地の賦存状況、地域住民のニーズ等を勘案し、必要がないと判断した場合には、当該契約の締結を行わない場合もありえる。
なお、市民緑地契約は、土地の所有者の申出に基づき締結することを基本とするものであるが、基本計画における保全配慮地区及び緑地保全地区内の土地については、当該地区における緑地の保全の必要性が高いことから、土地所有者からの申出がない場合であっても、緑地の保全上必要があると判断される場合には地方公共団体等から申し出ることができるので、本制度を積極的に活用することが望ましい。ただし、市民緑地契約はあくまで土地所有者との合意を前提としたものである。

3) 市民緑地契約の締結事項

市民緑地契約においては「市民緑地契約の目的となる土地の区域」、「市民緑地の管理の方法に関する事項」、「市民緑地の管理期間」及び「市民緑地契約に違反した場合の措置」が必要記載事項とされているが、法第二〇条の二第一項第二号ロに規定する市民緑地内の施設の整備に関する事項についても、市民緑地の機能を十分発揮する観点から、地域の実情、住民のニーズ等に応じて定め、契約内容の充実を図ることが望ましい。
ア 「市民緑地契約の目的となる土地の区域」を定める場合にあっては、その区域を明確にするよう地番、地積等の事項を記載するとともに、必要に応じて、図面等を添付することが望ましい。
イ 「園路、広場その他の市民緑地を利用する住民の利便のため必要な施設の整備に関する事項」としては、園路及び広場並びに便所、水飲場等について定めるものであるが、市民緑地の管理期間や地域住民のニーズ等を十分勘案した上で必要最少限度のものを定めることが望ましい。
ウ 「市民緑地内の緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備に関する事項」としては、例えば、当該市民緑地内の緑地を保全するため必要となる土砂崩壊防止施設、防火、防水施設等の施設の整備について定めることが考えられる。
エ 「市民緑地の管理の方法に関する事項」は、例えば、次に掲げるような事項が考えられる。

i 枝打ち等樹木等の維持・管理
ii 市民緑地の供用に関する事項
iii 管理瑕疵の場合の取扱い
iv 市民緑地に損害が生じた場合の措置
v 地方公共団体等の土地使用上の制限
vi 土地所有者の行為の制限

オ 「市民緑地の管理期間」を定めるにあたっては、当該土地の所有者の将来の土地利用計画との調整を十分に図り、かつ、周辺の緑地の賦存状況、当該土地に存する緑地の存在意義等を勘案することが望ましい。
カ 「市民緑地契約に違反した場合の措置」は、例えば、次に掲げるような措置が考えられる。

i 契約に定められた行為の制限に違反した場合の措置
ii 土地所有者が市民緑地の管理期間中に土地の返却を申し出た場合の措置
iii 契約の適正な履行の請求
iv 違反者が請求に応じない場合の措置
v 当該措置に要した費用の違反者負担

4) 市民緑地における施設整備

緑地保全関連施設の整備にあたっては、関係部局との調整を図り、当該施設整備が河川事業、防砂事業、地すべり対策事業、急傾斜地崩壊対策事業、雪崩対策事業又は海岸事業として行うことが適当である場合には、その積極的な活用を図ることが望ましい。また、緑地保全区域内において市民緑地を設置する場合には、緑地保全事業の活用を図ることが望ましい。
市民緑地契約に定める施設整備は、農林水産省の補助事業として行うことが適当である場合には、当該補助事業による整備及び管理が可能である。

5) 市民緑地の管理

市民緑地は、地方公共団体が住民の利用に供する目的で設置する公共性の高い施設であることから、地方自治法上の「公の施設」として条例を定め、これに基づき、その管理を行うことが可能である。
また、市民緑地の管理にあたっては、地域の緑の愛護団体等にその管理の一部を委託する等、住民による自主的な取組を活用することも可能である。
なお、市民緑地の管理を、農林水産省の補助事業として行うことが適当である場合には、当該補助事業による整備及び管理が可能である。

6) 市民緑地制度と基本計画との関係

基本計画は、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する総合的なマスタープランとなるものであることから、市民緑地に関する事項についても、可能な限り、その設置目標、設置・管理方針等を定めることが望ましい。
したがって、市民緑地契約の締結にあたっては、その契約主体にかかわらず、基本計画において定められた「緑地の保全及び緑化の目標」や「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」等に適合すべきである。

7) 市民緑地の公告等

市民緑地契約を締結した場合には、地方公共団体等は、市民緑地の名称、区域、管理期間、緑地保全関連施設(契約に定めた場合に限る)を公告することとされており、公報への掲載、地方公共団体の事務所における掲示、インターネットによる公開、新聞紙への掲載等、適切な方法により公告することが望ましい。また、市民緑地契約を締結したときは、地方公共団体等は、市民緑地区域内に市民緑地の区域であることを明示することとされていることから、当該市民緑地の区域内の見やすい場所に市民緑地である旨及び管理者を表示した標識の設置等を行うことが望ましい。
なお、この際、当該市民緑地の利用者となる地域住民に対し市民緑地の管理期間についての周知を図り、当該期間内における適切な利用を誘導する観点から、当該標識に、必要に応じ、当該市民緑地の名称、区域、土地の所有者との市民緑地契約の締結により設置されたものである旨及びその管理期間を表示することが望ましい。

8) 市民緑地制度に係る法令上の特例

ア 緑地保全地区並びに首都圏及び近畿圏の近郊緑地保全区域内において行われる法第二〇条の二第一項第二号ロに規定する「市民緑地内の緑地の保全に関連して必要とされる施設の整備」に係る行為は、当該緑地保全地区又は近郊緑地保全区域内の緑地の保全を目的とするものであり、緑地の保全上支障のない行為であることが都道府県知事、指定都市又は中核市の長との協議により担保されていることから、法第五条の許可、首都圏近郊緑地保全法第八条及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律第九条の届出の適用が除外されている。

このため、緑地保全地区又は近郊緑地保全区域の決定が行われている又は決定が行われることが予定されている土地に係る市民緑地契約に当該施設整備に関する事項を定めるときは、あらかじめ、その内容を都道府県知事等に協議するものとされている。この際、当該施設整備については、個別の施設ごとに、その内容が明確に分かるようにすることが望ましい。また、市民緑地契約が失効した場合の施設の取扱いについても定めることが望ましい。
なお、緑地保全地区又は近郊緑地保全区域内の緑地の保全を図る観点から、これらの区域内における市民緑地の設置の推進と併せ、当該施設整備に関する事項についても積極的に市民緑地契約に定め、緑地保全の推進を図ることが望ましい。

イ 法第二〇条の五で準用する法第九条の八に規定されている樹木保存法の特例措置は、樹木保存法に基づく保存樹・保存樹林制度が保存樹又は保存樹林の指定により、所有者に対し当該保存樹等の保存義務を課するものであることから、市民緑地内の保存樹・保存樹林については緑地管理機構が当該義務を負うこととする旨の読み替えを行うことにより、当該保存樹等の所有者の負担を軽減するとともに、緑地管理機構の保存義務の明確化を図ることをその趣旨としている。

なお、当該特例措置は、規定上、緑地管理機構に適用されることとされているが、地方公共団体が設置・管理する市民緑地内に保存樹・保存樹林が存する場合においても、当該地方公共団体は、樹木保存法の趣旨に基づき当該保存樹等を適切に管理する義務を負うこととなる。

(3) その他

1) 市民緑地の設置・管理を行う地方公共団体等に対する国の援助

国又は地方公共団体が、市民緑地の設置・管理主体である地方公共団体等に対して行う「援助」は、例えば、緑地保全地区内の市民緑地において行われる保全利用施設の整備に係る地方公共団体に対する助成、地方公共団体等に対する情報の提供等が考えられる。

2) 市民緑地の用地として貸し付けられている土地の評価

相続税及び贈与税の課税上、市民緑地の用地として貸し付けられている土地のうち、別紙3の要件に該当するものの価額は、当該土地が市民緑地の用地として貸し付けられていないものとして財産評価基本通達の定めにより評価した価額から、その価額に一〇〇分の二〇を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価される旨国税庁と協議済であるので、本制度の積極的な活用を図ることが望ましい。なお、当該土地の評価にあたっての細目については、別紙4のとおりである。

3) 協議・調整

ア 市民緑地契約の内容は、農業振興地域整備計画に適合することが望ましい。また、農用地区内の土地において市民緑地契約を締結しようとする場合には、契約主体が地方公共団体である場合にあっては、当該地方公共団体の農業振興地域制度担当部局に、契約主体が緑地管理機構である場合にあっては、当該市民緑地契約に係る土地の存する市町村の農業振興地域制度担当部局に、あらかじめ協議調整することが望ましい。
イ 市民緑地契約の内容は、地域森林計画、市町村森林整備計画等森林の整備に関する計画に適合することが望ましい。また、森林が含まれる土地の区域において市民緑地契約を締結しようとする場合には、契約主体が地方公共団体である場合にあっては、当該地方公共団体の林務担当部局に、契約主体が緑地管理機構である場合にあっては、当該市民緑地契約に係る土地の存する都道府県の林務担当部局に、あらかじめ協議調整することが望ましい。
ウ 市民緑地の対象となる土地には、農地、採草放牧地、森林法による保安林、保安林予定森林、保安施設地区及び保安施設地区予定地並びに保安林整備臨時措置法(昭和二九年法律第八四号)による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地は含まれない。
エ 市民緑地契約の存在により、鉄道等の公共施設の建設のため必要な土地の取得を妨げるものではない。また、市民緑地契約の締結にあたっては、当該契約に係る土地の区域における将来の鉄道等の公共施設の建設に関する計画等を十分勘案しつつ当該市民緑地契約の締結を行うことが望ましい。
オ 市民緑地契約を臨港地区及び港湾区域内の埋立地、港湾施設用地内に存する民有地において締結しようとする場合には、港湾管理者とあらかじめ協議調整を行うことが望ましい。
カ 市民緑地契約を防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四九年法律第一〇一号)第二条第二項に規定する防衛施設に隣接する土地において締結しようとする場合には、当該施設の管理者等とあらかじめ連絡・調整を行うことが望ましい。

4) 管理協定との関係

市民緑地制度が都市計画区域内における民有緑地について住民の利用に供しつつ都市の緑地を確保する制度であるのに対し、管理協定は、
i 緑地保全地区内に限って締結され緑地保全地区制度を補完するものである点、
ii 住民の利用に供することを直接の目的としない点、
iii 他の使用収益を目的とする権利が設定されていてもその権利者の合意を得て締結し得るものである点、
iv 承継効を有する点
において相違がある。なお、市民緑地契約及び管理協定は土地所有者と地方公共団体又は緑地管理機構との間において締結される民法(明治二九年法律第八九号)上の使用貸借又は賃貸借に該当するものであり、同一の土地において市民緑地契約と管理協定が重複して締結されることは想定されない。

5) 市民緑地制度と契約緑地制度との関係

各地方公共団体において独自の制度として、土地所有者と契約を締結し、「市民の森」等として緑地を設置・管理するいわゆる契約緑地制度が設けられている場合があるが、当該土地について、改めて市民緑地契約を締結することにより、法に基づく市民緑地となり、その法的性格が明確になることから、積極的な制度の活用を図ることが望ましい。

六 緑化施設整備計画認定制度

(1) 緑化施設整備計画認定制度の意義

都市における緑地の減少は、都市の防災機能の低下や生活にゆとりと潤いを与える良好な自然的環境の喪失をもたらすだけでなく、ヒートアイランド現象を発生させる原因となっている。
こうした問題の解消を図るためには、緑地協定の締結、都市公園の整備等により都市の緑化を推進することが必要であるが、一方で、オフィス街等の緑地が少なく緑化を推進する必要性が特に高い既成市街地等においては、一般に緑化が可能な空地が稀少である。
緑化施設整備計画認定制度は、市町村が定める緑化重点地区内において、限られたスペースを効果的に活用した民間による自発的な緑化の取組を促進するため、建築物の屋上、空地その他の敷地内の緑化施設の整備に関する計画を市町村長が認定し、支援する制度である。

(2) 緑化施設整備計画認定制度の内容

1) 緑化施設

緑化施設とは、樹木、芝その他の地被植物及びこれらと一体となって緑化の用に供する施設(散水用配管、排水溝等)を主体とした施設であり、当該施設を地域住民等の利用のための緑とオープンスペースの確保を図る観点から、園路・広場、ベンチ等の休養施設など利用に供される施設を含んでいる。

2) 緑化施設整備計画の記載事項

ア 「緑化施設の概要、規模」については、緑化施設を構成するすべての施設を定める必要はなく、緑化施設のうち主要な施設の数量、規模等を定めれば足りる。また、「配置」については、主要な施設を平面図等の図面に明示することにより定めることとされている。
イ 緑化施設整備計画(以下この章において「整備計画」という。)の認定は、敷地内における一定規模以上の緑化について行うものであることから、すでに整備されている既存の緑化施設と整備計画に基づいて整備する緑化施設の両方を併せた緑化施設の全容を明らかにすることが重要であり、整備計画においては「既存の緑化施設の概要、規模及び位置」が明示される必要がある。なお、「既存の緑化施設」とは、整備計画を作成する時点ですでに整備がなされている緑化施設である。

3) 緑化施設整備計画の認定基準

ア 本制度は、一定規模以上の緑化を伴う整備計画について認定を行い、支援を行うものであることから、「緑化施設の面積」は、緑化施設のうち樹木の樹冠及び芝その他の地被植物で覆われる部分の水平投影面積(以下3)において「緑化面積」という。)とすることとされている。
イ 本制度が自発的な緑化の推進を図るという趣旨であることから、工場立地法に基づき整備される緑地については認定の対象から除外されており、工場立地に関する準則(地域準則が定められている場合はその準則を含む。)において最低限整備することが定められている緑化の面積を緑化面積に含めることはできない。
ウ 新たに整備しようとする緑化施設の緑化面積が認定の基準(敷地面積の二〇%)に満たない場合であっても、既存の緑化施設を含めた緑化面積が基準を満たしていれば認定の対象である。
エ 「基本計画と調和」とは、基本計画に定める当該緑化重点地区における緑化の推進に関する事項に規定されている内容等と調和していることである。

4) 緑化施設の整備状況の報告

緑化施設整備計画の認定を受けた者が当該認定を受けた整備計画(以下この章において「認定計画」という。)に従って緑化施設の整備を行っているか否かを確認する必要があることから、認定後においても適切な時期に整備状況について報告を求め、整備計画の執行状況を把握しておくことが望ましい。

5) 改善命令

改善命令は、認定計画に従って緑化施設の整備を行っていないと認める場合に、認定計画に従った緑化施設内容となるよう指導を行うものであり、整備計画の認定を受けた者が改善命令を遵守し、認定計画に従った緑化施設の整備が確実に行い得るよう、「改善に必要な措置」は十分な期間を定めて命じるとともに、措置の内容は改善に有効かつ適切なものであることが望ましい。

(3) 認定緑化制度に係る法令上の特例

法第二〇条の五の九で準用する法第九条の八に規定されている樹木保存法の特例措置は、樹木保存法に基づく保存樹・保存樹林制度が保存樹又は保存樹林の指定により、所有者に対し当該保存樹等の保存義務を課すものであることから、認定計画に従って整備された緑化施設(以下この章及び次章において「認定緑化施設」という。)内の保存樹・保存樹林については緑地管理機構が当該義務を負うこととする旨の読み替えを行うことにより、当該保存樹等の所有者の負担を軽減するとともに、緑地管理機構の保存義務の明確化を図ることをその趣旨としている。
なお、当該特例措置は、規定上、緑地管理機構に適用されることとされているが、地方公共団体が管理する認定緑化施設内に保存樹・保存樹林が存する場合においても、当該地方公共団体は、樹木保存法の趣旨に基づき当該保存樹等を適切に管理する義務を負うこととなる。

(4) 本制度の運用を踏まえた緑化重点地区の設定

本制度は、建築物の建替え等の機会を捕らえて活用することが効果的な制度である。緑化施設の整備を計画している建築物が緑化重点地区内の土地にない場合には、当該建築物を含む地区について緑化の必要性等を勘案し、適切と判断される場合には緑化重点地区の設定又は見直しによる区域変更を行い、当該地区を緑化重点地区に位置づけ、必要な緑化施策を定めるとともに整備計画の作成を促すことにより、良好な市街地環境への誘導に活用することが望ましい。この際、基本計画の変更に係る住民の意見聴取、公表の手続については、例えばインターネットを活用するなど、市町村の判断により適切な方法を選択して迅速に行うことにより、整備計画の申請に速やかに対応することが望ましい。
また、建築物を含む一団の地区において、美しい街並みや風の道等良好な市街地環境を形成する緑化計画について、民間事業者、NPO、住民等関係者の合意を踏まえて提案がなされた場合は、積極的に緑化重点地区の見直しを行うことが考えられる。

(5) 緑化施設に係る固定資産税

認定計画緑化施設については、平成一五年三月三一日までに新設されたものに対して課する固定資産税の課税標準は、当該緑化施設に対して新たに固定資産税が課されることとなった年度から五年度分の固定資産税に限り、二分の一に評価が減じられることとされている(地方税法附則第一五条一二)。

(6) その他

都市計画区域外における整備計画の認定制度の対象は、いわゆる公共公益施設で都市計画区域における緑地と一体となって良好な都市環境の形成を図るものであり、農林水産関連の公共公益施設及び都市計画区域外における民有地は対象としないことが望ましい。

七 緑地管理機構制度

(1) 緑地管理機構制度の意義

緑地管理機構制度は、民間団体や市民による自発的な緑地の保全、緑化の一層の推進を図る観点から、一定の緑地整備・管理能力を有する公益法人又は特定非営利活動促進法(平成一〇年法律第七号)第二条第二項の特定非営利活動法人(以下この章において「NPO法人」という。)について都道府県知事がこれを指定し、管理協定に基づく緑地の管理主体、住民等の利用に供する認定緑化施設の整備・管理主体、市民緑地の設置・管理主体、緑地の買入れ・管理主体等として位置付け、また、当該買入れ業務の一環として緑地保全地区内の土地の買入れ・管理主体としても位置付ける制度である。
本制度に基づき、都市における緑地の保全及び緑化の推進を図ることを目的とする公益法人等について緑地管理機構(以下この章において「機構」という。)の指定の推進を図り、民間活力を活用した都市の緑とオープンスペースの確保の推進を図ることが望ましい。

(2) 緑地管理機構制度の内容

1) 機構の指定

ア 機構は、地域住民等を含めた民間活力の活用により緑地の保全及び緑化の推進を図るものであり、この趣旨を踏まえて指定を行うことが望ましい。
イ 公益法人の指定

i 都道府県知事が指定する団体としては、基金の造成を行い、その果実等により事業を行っている地方都市緑化基金等の公益法人を想定しているが、これ以外でも、法第二〇条の六及び第二〇条の七の要件を満たす公益法人であれば、指定の対象となるものである。また、「都市における緑地の保全及び緑化の推進を図ることを目的として設立された民法第三四条の法人」とあるのは、当該公益法人の主たる設立目的が都市における緑地の保全及び緑化の推進にあることをいうものであり、当該公益法人の定款又は寄附行為においてその設立目的を都市における緑地の保全及び緑化の推進のみに限定しない民法第三四条法人であっても、実際に都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する業務を行うもので、法第二〇条の七各号の業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものであるときには、法第二〇条の六第一項の規定に基づき指定することができる。
ii 都道府県知事が、機構の指定を行うにあたっては、当該公益法人が法第二〇条の七各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができるか否かについて、組織、資金等の面から判断すべきである。その際、特に、同条第一号に係る業務に関しては、管理協定に基づく緑地の管理並びに市民緑地の設置及び管理を業務とするものにあっては、緑地に関する必要な施設整備、緑地管理の能力等について、緑地の買取り及び買い取った緑地の保全を業務とするものにあっては、資金力、緑地を適正に管理する能力等について判断すべきである。また、指定の申請にあたっては、定款又は寄附行為のほか、業務計画書、資金計画書等、当該公益法人が当該業務を適正かつ確実に遂行する能力を有するか否かを判断するために必要となる書類を提出させることが望ましい。

なお、地方における都市の緑化事業を主たる目的とする公益法人であって特定公益増進法人として都道府県知事の認定を受けているものについては、特に積極的な指定を行うことが望ましい。

ウ NPO法人の指定

i 「都市における緑地の保全及び緑化の推進を図ることを目的として設立された特定非営利活動促進法第二条第二項の特定非営利活動法人」とあるのは、当該NPO法人の主たる設立目的が都市における緑地の保全及び緑化の推進にあることをいうものであり、当該NPO法人の定款においてその設立目的を都市における緑地の保全及び緑化の推進のみに限定しないNPO法人であっても、実際に都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する業務を行うもので、法第二〇条の七各号の業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものであるときには、法第二〇条の六第一項の規定に基づき指定することができる。
ii 都道府県知事が、機構の指定を行うにあたっては、当該NPO法人が法第二〇条の七各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができるか否かについて、組織、資金等の面から判断すべきである。その際、特に、同条第一号に係る業務に関しては、管理協定に基づく緑地の管理並びに市民緑地の設置及び管理を業務とするものにあっては、管理協定に基づく緑地の管理及び市民緑地に関する必要な施設整備、緑地管理の能力等について、緑地の買取り及び買い取った緑地の保全を業務とするものにあっては、資金力、緑地を適正に管理する能力等について判断すべきである。また、指定の申請にあたっては、定款のほか、事業計画書、資金計画書等、当該NPO法人が当該業務を適正かつ確実に遂行する能力を有するか否かを判断するために必要となる書類を提出させることが望ましい。

エ 法第二〇条の六及び第二〇条の七の要件を満たす法人であれば複数の指定も可能である。
オ 機構の指定を行った都道府県知事は、当該都道府県の区域内に指定都市又は中核市が存する場合は、当該指定に係る機構の名称、住所、事務所の所在地、当該機構に対する地方公共団体の出捐状況及び当該機構の業務の種類について、当該指定都市又は中核市の長に対し通知することが望ましい。
カ 指定を行った場合の公示は、都道府県の公報及び掲示板へ掲載することにより行うことが望ましい。また、インターネットで公開が可能な場合には、併せて公開することが望ましい。
キ 都道府県の都市緑地保全法担当部局は、法第二〇条の六第一項の機構の指定の申請があった場合に、当該申請に係る法人がナショナルトラスト等その定款又は寄附行為において自然環境の保全に関する事項が定められているものである場合には、この旨自然保護担当部局に連絡するとともに、当該法人の指定にあたって、自然保護担当部局の意向を十分尊重することが望ましい。

2) 機構の業務

機構の指定にあたっては、法第二〇条の七各号の業務を適正かつ確実に行うことができると認められることを必要とするが、これは、公益法人又はNPO法人の定款又は寄附行為において本業務内容と全く同一のものが記載されていることを必要とするものではなく、同号の業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものであれば、機構として指定し得るものである。
また、機構は、同条各号の業務を行うことの他にも、公益法人又はNPO法人として、その設立の目的の範囲内で業務を行うことができるものであり、緑地の保全及び緑化の推進に関し同条各号に定める業務以外の業務を行うことを妨げるものではない。
なお、機構の行う業務には、森林の整備に関する事項を含まない。
ア 「管理協定に基づく緑地の管理」に関する業務は、管理協定に基づき緑地保全地区内の緑地を管理し、当該緑地を良好な状態で保全するため、

i 樹木の剪定、枯損した木竹及び危険な木竹の処理等の管理行為
ii 当該緑地の保全に関連して必要な施設の整備

を行うことをいうものである。

「市民緑地の設置及び管理」に関する業務は、市民緑地契約に基づき市民緑地を設置するとともに、当該市民緑地を良好な状態で保全するため、樹木の枝打ち、整枝、枯損した木竹の処理等により緑地の保全を図るとともに、住民の利用に供するための施設の整備、管理を行うことをいうものである。
「都市計画区域内の緑地の買取り及び買い取った緑地の保全」に関する業務は、地域の緑を保全するため、緑地を買い取るとともに、当該緑地を良好な状態で保全するため、樹木の枝打ち、整枝、枯損した木竹の処理等を行うことをいうものである。
なお、機構が管理する緑地においては、当該緑地の区域内に標識を設置し、例えば、「○○知事指定○○緑地管理機構」と、当該緑地の管理者が機構である旨の明示をすることが望ましい。

イ 「住民等の利用に供する緑化施設の管理」に関する業務は、緑化施設整備計画の認定を受けた者(以下この章において「認定事業者」という。)との契約に基づき、認定緑化施設のうち住民等の利用に供するものについて、樹木の剪定、清掃等を実施し、当該緑化施設を良好な状態で維持し、住民等の利用に供することをいうものである。
ウ 「認定事業者の委託に基づき、認定計画に従った緑化施設の整備又は認定緑化施設の管理」に関する業務は、認定事業者の委託に基づき、認定された緑化施設整備計画に従った緑化施設の整備を行うこと。認定事業者の委託に基づき、認定緑化施設の樹木の剪定、清掃等を実施し、当該緑化施設を良好な状態で維持することをいうものである。
エ 「認定事業者に対し、認定計画に従った緑化施設の整備に必要な資金のあっせん」に関する業務は、例えば、認定事業者に対する緑化施設の整備に関する各種融資制度の紹介等をいうものである。
オ 「緑地の保全及び緑化の推進に関する情報又は資料を収集し、及び提供する」業務は、例えば、機構の業務や活動に関する広報活動、緑地の保全及び緑化に関する情報の収集及びその提供等を行うことをいうものである。
カ 「緑地の保全及び緑化の推進に関し必要な助言及び指導を行う」業務は、例えば、樹木管理、植栽技術等に関する助言及び指導、緑化ボランティアの育成等を行うことをいうものである。
キ 「緑地の保全及び緑化の推進に関する調査及び研究を行う」業務は、例えば、緑に関する意識調査、実態調査等、緑地の保全及び緑化の推進に関する調査及び研究等をいうものである。
ク 「前各号に掲げる業務に附帯する業務」は、例えば、緑化意識の高揚を図るための各種行事等の開催等を行うことをいうものである。

3) 地方公共団体との連携

機構は、市民緑地の設置及び管理、緑地の買取り等の業務を地方公共団体との適正な役割分担の下、十分連絡調整し協力して行うことが必要であるので、この旨機構に対して十分周知を図ることが望ましい。この場合、法第二〇条の六第一項の規定に基づく指定を行った知事は、機構が管理協定に基づき管理する緑地及び設置・管理する市民緑地の状況、機構による緑地の買取り状況等について常時把握すべきである。

4) 機構に対する監督措置等

ア 法第二〇条の九の規定に基づく改善命令の対象となる行為は、例えば、緑地の管理が不適切である場合や、緑地を民間へ売却しようとする場合等をいうものである。なお、機構に対し改善命令を行うことができるのは、法第二〇条の七に掲げる業務の運営に関し、改善が必要と認められる場合であり、法第二〇条の七に掲げる業務以外の業務に関し、改善命令が発せられるものではない。
イ 都道府県知事は、法第二〇条の六第一項の規定に基づき指定した機構の業務の内容について常時把握すべきである。特に、国の機関により設立の許可を受けた公益法人又は設立の認証を受けたNPO法人を機構に指定した場合には、当該国の機関と十分に連絡を図るとともに、当該機構から、当該機構が当該国の機関に対して行う業務内容に関する報告と同様のものを毎年報告させることとし、機構の業務の内容について常時把握すべきである。

(3) 機構による緑地保全地区内の土地の買入れ

1) 機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合

ア 都道府県知事、指定都市又は中核市の長が、法第八条第二項に基づき機構を緑地保全地区内の土地の買入れ主体として定める場合には、設立当初において指定された基本財産について、地方公共団体から二分の一以上の出捐を受けたものを優先的に取り扱うことが望ましい。

また、機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合には、機構と買い入れた土地に関する協定を締結することが望ましい。なお、当該協定の例は別紙5である。
また、機構が当該土地を買い入れる際に、当該土地の他者への転売防止の観点から、当該機構と地方公共団体との間で当該土地の売買契約の予約契約又は第三者への転売禁止条項を含む協定に対する違反を停止条件とする停止条件付き売買契約のいずれかを締結し、その旨の仮登記を行うことが望ましい。

イ 機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合には、当該機構の寄附行為又は定款に、残余財産は地方公共団体又は当該法人と類似の目的を持つ他の公益法人又はNPO法人に寄付する旨の規定を有するものを優先的に取り扱うべきである。
ウ 国の機関により公益法人としての設立の許可又はNPO法人としての設立の認証を受けている機構による土地の買入れについては、当該機構に係る法第二〇条の六第一項の規定に基づく指定を行った知事の属する都道府県の区域内に存する緑地保全地区内の土地の買入れに限定されるべきである。従って、当該国の機関の許可又は認証を受けている機構が、二以上の都道府県の区域において、緑地保全地区内の土地の買入れを行う場合には、それぞれの都道府県知事による機構としての指定が必要となるものであることに留意することが望ましい。
エ 機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合には、当該土地の買入れに係る資金計画を当該機構に提出させ、当該土地を確実に買い入れることができることを確認すべきである。
オ 指定都市又は中核市の長が法第八条第二項の規定に基づき、機構を緑地保全地区内の土地の買入れの相手方として定める場合には、当該指定都市又は中核市の長は、法第二〇条の六第一項の規定に基づき当該機構を指定した知事に対し、当該機構が当該緑地保全地区内の土地の買入れ主体として、その資金力、緑地管理能力上適当である旨の照会・確認を行うべきである。

2) 機構が土地を買い入れた場合

機構は、当該土地を買い入れた場合は、遅滞なく、法第八条第二項の規定により当該機構を買入れの相手方として定めた都道府県知事、指定都市又は中核市の長にその旨報告することが望ましい。この際、当該土地の買入れに係る登記簿の写しを添付することが望ましい。また、当該報告を受けた指定都市又は中核市の長は、この旨当該機構を指定した都道府県知事に報告することが望ましい。

3) 買い入れた土地の管理

ア 機構は、買い入れた土地の管理については、その適正な管理を行う観点から、必要な台帳を作成し、当該機構を法第二〇条の六第一項の規定に基づき指定した都道府県知事及び法第八条第二項の規定に基づき買入れの相手方を定めた都道府県知事、指定都市又は中核市の長に対し報告することが望ましい。
イ 買い入れた土地については、法第九条の規定により適正に管理しなければならないこととされていることから、法第二〇条の六第一項の規定に基づき機構を指定した都道府県知事は、当該機構による緑地の管理状況を把握するものとすべきである。また、特に、指定都市又は中核市の区域内の緑地保全地区内の土地を機構が買い入れた場合には、当該指定都市又は中核市の長は、当該機構による管理状況について、必要に応じ当該機構を指定した都道府県知事に連絡することが望ましい。

4) 税務手続(所得税及び法人税)

ア 法第八条第三項の規定に基づく公益法人である機構による土地の買入れに係る土地等で、所得税又は法人税の課税上、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の二、〇〇〇万円控除の特例の対象となるものを譲渡した個人又は法人がこの特例の適用を受けようとする場合には、租税特別措置法第三四条第四項及び第六五条の三第四項の規定に基づき、租税特別措置法施行規則第一七条第一項第三号ロ又は第二二条の四第一項第三号ロに規定する書類を確定申告書等(法人税の確定申告書及び中間申告書を含む。)に添付する必要があることとされていることから、機構は、法第八条第二項に基づき、当該機構を買入れの相手方として定めた都道府県知事、指定都市又は中核市の長の「土地等を都市緑地保全法第八条第三項の規定により緑地管理機構が買い取った旨を証する書類」(別添様式第2)を当該買入れに係る土地等を譲渡した個人又は法人に交付しなければならないので、留意することが望ましい。

この場合、租税特別措置法施行令(昭和三二年政令第四三号)第二二条の七第二項又は第三九条の四第三項の規定に該当する必要があることから、事前に機構と当該機構を買入れの相手方として定めた都道府県知事、指定都市又は中核市の長が、1)アの協定を締結し、当該機構より2)の報告を受けた上で、当該書類を交付すべきである。
なお、機構による土地の買入れについて、所得税及び法人税の課税上の特例の適用があるのは別紙六の要件に該当する場合であるので、留意することが望ましい。

イ 機構は、土地の買入れを行った場合には、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び一〇月から一二月までの各期間に支払うべき当該買入れに係る対価についての所得税法第二二五条第一項第九号の規定による調書を、当該各期間に属する最終月の翌月末日までに、当該買入れを行った営業所、事業所その他の事業場の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。

5) 不動産取得税等の取扱い

機構が取得する緑地保全地区内の土地に係る不動産取得税については、緑地保全地区の拡大を図る観点から、当該都道府県の実情に応じ、適宜軽減措置を講じるよう平成八年四月一日付けで自治省税務局長から別紙七のとおり通達されているので、これを活用することが望ましい。
なお、緑地保全地区内の土地に係る固定資産税については、別紙八のとおり、評価に関して固定資産評価基準(昭和三八年自治省告示第一五八号)第一章第一一節二によることとされ、税額に関して昭和五四年四月一日付け自治固第三六号自治省税務局長通達「緑地保全地区内の土地に係る固定資産税について」により通達されているところであり、機構が保有する緑地保全地区内の土地についてもその対象となるので留意することが望ましい。

6) 買入れに際しての注意事項

機構が農地又は採草放牧地を買い取ることは想定されないため、法第八条第三項の規定により機構が買い入れる土地には農地又は採草放牧地は含まれない。

(4) その他

1) 情報の提供

法第二〇条の一一に規定する「必要な情報の提供」は、緑地の保全、緑化の推進その他機構の業務の遂行に資する一般的な情報の提供等をいうものである。

2) 特定公益増進法人制度の活用

都市における緑地の保全及び緑化の推進を主たる目的とする民法第三四条法人(特定公益増進法人)に対する寄付金については、現在、所得税及び法人税の特例措置が講じられていることから、昭和五八年六月一五日付け建設省文発第一六三号建設大臣官房長通達「地方における都市の緑化事業の推進を主たる目的とする公益法人に対する寄付金に関する税制の改正について」及び昭和六二年一月一九日付け建設省都緑対発第一号建設省都市局公園緑地課長通知「地方における都市緑化基金に係る試験研究法人等の認定基準について」に留意の上、本制度を活用することが望ましい。

(注) 本指針の語尾等の表現について

本指針に記述されている各事項間には当該事項によるべきものとする考え方に差異があることから、次のような考え方で記述している。
1) 〜べきである。〜べきでない。

法令、制度の趣旨等から記述された事項による運用が強く要請されていると国が考えているもの。

2) 〜ことが望ましい。〜ことは望ましくない。

制度の趣旨等から、記述された事項による運用が想定されていると国が考えているもの。

3) 〜ことが(も)考えられる。

記述された事項による運用を国が例示的に示したもの。



別添様式第1 地方公共団体が買い入れた場合
<別添資料>



(別紙1)

評価減を受けることのできる管理協定区域内の土地の要件

(1) 法第9条の2第1項に規定する管理協定区域内の土地であること
(2) 管理協定に以下の定めがあること

ア 貸付けの期間が20年であること
イ 正当な事由がない限り貸付けを更新すること
ウ 土地所有者は、貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないこと



(別紙2)
<別添資料>



(別紙3)

評価減を受けることができる市民緑地の要件

(1) 法第20条の2第1項に規定する市民緑地であること。
(2) 土地所有者と地方公共団体又は緑地管理機構との市民緑地契約に以下の定めがあること

ア 貸付けの期間が20年以上であること
イ 正当な事由がない限り貸付けを更新すること
ウ 土地所有者等は、貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないこと

(3) 相続税又は贈与税の申告時期までに、その土地について権原を有することとなった相続人又は受贈者全員から当該土地を引き続き市民緑地の用地として貸し付けることに同意する旨の申出書が提出されていること



(別紙4)
<別添資料>



(別紙5)
<別添資料>



別添様式第2 緑地管理機構が買い入れた場合
<別添資料>



(別紙6)

所得税及び法人税の課税上の特例の適用がある機構による土地の買入れについての要件

(1) 機構が、民法第34条の規定により設立された法人でその設立当初において搬出された金額の二分の一以上の金額が地方公共団体により拠出され、かつ、その寄附行為又は定款において、その法人が解散した場合にその残余財産が地方公共団体又は当該法人と類似の目的をもつ他の公益を目的とする事業を営む法人に帰属する旨の定めがあること。
(2) 当該機構と地方公共団体との間で、当該買い取った土地等の売買の予約又は当該買い取った土地等の第三者への転売を禁止する条項を含む協定に対する違反を停止条件とする停止条件付き売買契約のいずれかを締結し、その旨の仮登記を行うこと。
(3) 当該買い取った土地等が、当該機関に係る都市緑地保全法第20条の6第1項の指定をした都道府県知事の属する都道府県の区域内に存する同法第3条第1項に規定する緑地保全地区内の土地等であること。
(4) 当該機構が、地方公共団体の管理の下に、当該土地等の買取りを行い、かつ、当該買い取った土地等の保全を行うと認められるものであること。



(別紙7)
「緑地管理機構が取得する緑地保全地区内の土地に係る不動産取得税について」
(平成8年4月1日自治省税務局長通達)
都市緑地保全法第3条の規定による緑地保全地区内の土地については、樹木の伐採、建築物の新築等に対する規制が行われているところであるが、都市における緑地を確保する見地から緑地保全地区の拡大を図る必要があることにかんがみ、当該都道府県の実情に応じ、同法第20条の6第1項の規定により指定された緑地管理機構が取得する同地区内の土地に係る不動産取得税については、適宜軽減措置を講じることが適当と考えられるので、当該趣旨に即し措置されたく通知する。



(別紙8)
固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)(抄)
第1章

第11節 その他
一 略
二 緑地保全地区内の土地の評価

都市緑地保全法(昭和48年法律第72号)第3条第1項に規定する緑地保全地区(首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)第5条第1項、近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)第6条第1項に規定する近郊緑地特別保全地区を含む。以下「緑地保全地区」という。)内の土地のうち山林の評価は、当該土地が緑地保全地区として定められていない場合の価額の2分の1に相当する価額によつて、宅地等の評価は、当該土地が緑地保全地区として定められていないとした場合の価額に、当該土地の総地積に対する樹木の育成している部分の地積の割合に応じて、「面地計算法」(別表第3)の「がけ地補正率表」(附表7)を適用した場合に得られる補正率を乗じた価額によつてその価額を求める方法によるものとする。
三、四 略
「緑地保全地区内の土地に係る固定資産税について」
(昭和53年4月1日自治省税務局長通達)
都市緑地保全法第3条の規定による緑地保全地区内の土地については、樹木の伐採、建築物の新築等に対する規制が行われているところであるが、都市における緑地を保全する見地から緑地保全地区の拡大を図る必要があることにかんがみ、当該市町村の実情に応じ、適宜同地区内の土地(地方交付税施行令第1条各号に掲げる施設のように供する土地を除く。)に係る固定資産税の軽減措置を講ずることが適当であるので、この旨管下市町村長に連絡のうえ、よろしくご指導願いたい。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport