生産緑地法の一部を改正する法律(平成三年法律第三九号)は平成三年四月二六日に、生産緑地法施行令の一部を改正する政令(平成三年政令第二八二号)及び生産緑地法施行規則の一部を改正する省令(平成三年建設省令第一六号)は同年九月六日に公布され、いずれも平成三年九月一〇日から施行されたが、その運用に当たっては、特に左記の事項に留意して、積極的に本法の目的達成に努められるとともに、この旨を貴管下関係市町村長に周知徹底方取り計らわれたい。
なお、昭和四九年九月四日付け建設省都公緑発第五三号建設省都市局長通達「生産緑地法の施行について」、昭和五一年六月一〇日付け建設省都公緑発第六五号建設省都市局長通達「生産緑地法の運用について」及び昭和四九年九月二六日付け建設省都公緑発第六四号建設省都市局公園緑地課長通達「生産緑地法の運用について」は、廃止する。
第一 生産緑地地区制度の基本的考え方について
一 生産緑地保全の意義及び今回の制度改正の趣旨について
(一) 生産緑地地区制度は、都市化の進展に伴い市街化区域内において緑地機能等の優れた農地等が無秩序に市街化され、生活環境の悪化をもたらすとともに、計画的な市街化を図る上で支障を生じていることにかんがみ、そのような農地等を計画的に保全し、もって良好な都市環境の形成に資することを目的とするものである。
一方、近年、市街化区域農地については、大都市地域を中心として住宅・宅地供給がひっ迫している現状等にかんがみ、その積極的活用による住宅・宅地供給の促進を図ることが求められており、宅地化するものと保全するものとの区分を明確化し、それぞれの区分に応じた適切な都市計画上の措置を講じることが必要とされている。
このため、保全する農地等については、その緑地機能を積極的に評価し、より計画的・永続的な保全を図ることにより農林漁業と調和した良好な都市環境を保全するため、生産緑地法について所要の見直しを行ったものであること。
(二) また、改正後の生産緑地法(以下「法」という。)第二条の二の「都市における農地等の適正な保全」とは、周辺の公園、緑地等の整備状況等にかんがみ、農地等の持つ緑地機能を都市計画上積極的に評価し、優れた緑地機能を有する市街化区域農地等を計画的に保全しようとする旨の都市計画の基本的な考え方に従って、生産緑地地区の指定、農地等としての管理のための援助、生産緑地の買取り、買い取った後の公園、緑地等としての整備等の同法の運用を行うべきことを意味するものであること。
また、生産緑地は、営農行為等により初めて緑地としての機能を発揮する農地等の性格から農地所有者等の営農等の継続を前提としているので、農林漁業に従事している者の意向を十分に尊重すること。
第二 生産緑地地区に関する都市計画の決定について
都市計画において、保全するものとして区分する市街化区域農地等については、生産緑地地区の指定を行うほか、市街化調整区域への編入を行うこと。なお、生産緑地地区の都市計画の決定については以下によること。
一 生産緑地地区の指定は、当該都市計画区域における土地利用の方針、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び将来の見通し等各都市の実情を勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより農林漁業と調和した良好な都市環境の形成に資するよう行われるべきものであること。
二 生産緑地地区の具体的な指定基準の適用については、次によること。
(一) 生産緑地地区の対象となる法第二条第一号の「農地等」とは、現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地、現に林業の用に供されている森林又は現に漁業の用に供されている池沼をいい、これらに隣接し、かつ、これらと一体となって農林漁業の用に供されている農業用道路、農業用水路及び法第八条において許容される施設の立地する土地を含むものであること。また、何らかの理由により一時的に耕作されていない状態のいわゆる休耕地であっても、容易に耕作の用に供することができるようなものであれば、「農地等」に含まれるものであること。
ただし、現況農地等であっても、農地法(昭和二七年法律第二二九号)第四条第一項第五号又は同法第五条第一項第三号の規定による届出が行われているものは、法第八条において許容される施設に転用される場合を除き、生産緑地地区の指定を行わないこと。
なお、「五畝」以上あると認められる農地等については、他の要件を満たせば、農業経営、農地所有の実態等を勘案して、生産緑地地区に指定されるよう配慮すること。
(二) 法第三条第一項の「一団のものの区域」とは、物理的に一体的な地形的まとまりを有している農地等の区域をいうこと。
ただし、道路、水路等(農業用道路、農業用水路等を除く。以下同じ。)等が介在している場合であっても、それらが小規模のもので、かつ、これらの道路、水路等及び農地等が物理的に一体性を有していると認められるものであれば、一団の農地等として取り扱うことが可能であること。この場合、介在する道路、水路等は生産緑地地区の面積には含まれないものであること。なお、小規模として取り扱う道路、水路等の幅員規模としては、六メートル程度が上限と考えられるが、各都市計画区域の実情に応じ、適宜判断されたいこと。
(三) 法第三条第一項第一号の「農林漁業と調和した都市環境の保全」とは、市街化区域農地等の持つ緑地機能の高まりにこたえ、農地等を農地等として計画的に保全し活用していくことが合理的な土地利用の確立にも資することから、同号の「良好な生活環境の確保」の例示として追加したものであり、その積極的・計画的な保全を図るよう生産緑地地区の指定に努めること。
(四) 法第三条第一項第一号の「公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているもの」とは、公共施設等の敷地とすることができる土地を広く意味するものであり、公共施設等の予定地としてあらかじめ保全する必要がある土地のみに限定する趣旨ではないこと。
(五) 法第三条第三項の「主要な都市施設」には、鉄道、港湾等の交通施設が含まれるものであること。
(六) 農地等の認定については、今回の生産緑地法施行規則(昭和四九年建設省令第一一号)(以下「施行規則」という。)の改正により農業委員会の意見を聴くことができることとしたところであり、生産緑地地区に関する都市計画の決定、変更又は廃止(一団性の認定を含む。)に際して農業委員会の意見を聴くこと。
三 他の都市計画との関係
(一) 土地区画整理事業との重複について
1) 土地区画整理事業の施行区域又は施行地区においては、都市計画決定権者の判断により、生産緑地地区の指定が可能であること。また、生産緑地地区の指定は、土地区画整理事業の施行を妨げるものではなく、生産緑地地区を含めた土地の区域について土地区画整理事業に関する都市計画決定を行うこと又は土地区画整理事業を施行することは可能であること。
2) 土地区画整理事業の仮換地指定又は換地処分により生産緑地地区内の土地について位置、区域又は面積に変更を生じる場合には、これに併せて生産緑地地区の指定変更を行うこと。
3) 土地区画整理事業の施行された土地の区域等においても、生産緑地地区の指定が可能であること。
4) 土地区画整理事業において道路、公園等の公共施設等を整備する場合には、当該公共施設等の整備に係る行為は、法第八条第四項に規定する「公共施設等の設置又は管理に係る行為」に該当するものであり、あらかじめ市町村長に通知すれば足りるものであること。
5) 相続税等の納税猶予を受けている農地等を含む区域について、土地区画整理事業による換地処分が行われた場合には、換地処分があった日から一月以内に租税特別措置法施行令(昭和三二年政令第四三号)第四〇条の六又は第四〇条の七の規定により納税地の税務署長の承認を受ければ、引続き納税猶予が継続されるものであること。
また、土地区画整理事業により換地処分が行われた土地等については、譲渡所得については租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第三三条の三又は第六五条により、譲渡がなかったものとみなされるものであること。
6) 農住組合の行う土地区画整理事業による一団の営農地等の全部又は一部の区域について、農地所有者等から生産緑地地区の指定の要望があり、当該区域が生産緑地地区の要件を満たす場合には、市町村は都市計画において速やかに生産緑地地区の指定を行うよう配慮すること。
(二) 都市計画施設との重複指定について
道路、公園等の都市計画施設の区域内においては、当該施設の整備に支障を及ぼさない範囲内で、都市計画決定権者の判断により、生産緑地地区の指定が可能であること。なお、原則として、当該区域内において生産緑地地区に指定されていた農地等は、当該都市計画施設についての都市計画法第五九条の認可又は承認が行われた後に生産緑地地区から除外するよう都市計画の変更を行うこと。
(三) その他留意すべき事項
高度利用地区、特定街区、遊休土地転換利用促進地区等を活用して、土地の有効・高度利用を図る方策を講じようとしている地区においては、原則として生産緑地地区の指定を行わないこと。ただし、当該地区指定の目的の達成のための土地利用転換を図る上で、都市計画上必要と認められる場合には、この限りではないこと。
(四) 生産緑地地区に関する都市計画の決定は、直ちに既存の市街化区域を拡大する理由とはならないものであること。
四 また、他の土地利用との調整を図るため、次に掲げる土地の区域については原則として生産緑地地区に指定しないこと。
(一) 森林法(昭和二六年法律第二四九号)第二五条第一項の規定により指定された保安林、同法第四一条の規定により指定された保安施設地区、同法第二九条に規定する保安林予定森林及び保安林整備臨時措置法(昭和二九年法律第八四号)第二条第一項に規定する保安林整備計画において保安林の指定が計画されている森林
(二) 鉱業法(昭和二五年法律第二八九号)第六三条(同法第八七条において準用する場合を含む。)に基づいて施業案の届出をし、又は認可を受ける等鉱業開発計画が具体化し、それに基づき地表における土地の形質の変更等が行われることが確実な区域
(三) 砂利採取法(昭和四三年法律第七四号)第一六条又は採石法(昭和二五年法律第二九一号)第三三条に基づいて認可を受けた採取計画に係る区域
(四) 臨時石炭鉱害復旧法(昭和二七年法律第二九五号)による復旧工事の施行が予定されている区域
五 生産緑地地区の都市計画決定に当たっては、地域の実情を勘案し指定及び承認が適正に行われるようにするため、都市計画地方審議会に委員または臨時委員として都道府県農業会議及び都道府県農業協同組合中央会の代表を加えるとともに、市町村都市計画審議会の生産緑地部会に農業委員会及び農業協同組合の代表を加えるよう指導すること。
六 生産緑地地区に関する都市計画の案について農地等の所有者等の関係権利者の同意を要するのは、生産緑地地区においては相当期間にわたって農業経営等の継続が期待されており、その主観的条件を担保する必要があることによるものであるので、書面により同意を得るものとすること。
なお、生産緑地地区に関する都市計画の案に関する同意を得るに際し、農林水産担当部局、農業委員会及び農業協同組合の協力を求めること。
七 生産緑地地区と市民農園との関係について
(一) 市街化区域農地に係る市民農園は、農地の有する緑地機能等をいかしつつ都市住民のレクリエーション需要に対応するものであるため、生産緑地地区制度とその目的等の一部を異にするものであるが、良好な都市環境の形成を図るという点で目的が一致していること、生産緑地を農地として管理していく上で市民農園は有用な手法であること等から、生産緑地地区の指定を積極的に行うことが望ましいこと。
(二) 市民農園について生産緑地地区の指定を行う場合には、当該市民農園の運営の方式(市民農園整備促進法(平成二年法律第四四号)第二条第二項第一号イ及びロのいわゆる「特定農地貸付け方式」及び「農園利用方式」をいう。)に従い、法第三条第二項の規定により農地についての所有権、対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した永小作権等を有する者等の同意を得るものとすること。
八 生産緑地地区に関する都市計画の変更について
(一) 生産緑地地区に関する都市計画の変更は、都市計画上の要請に基づき必要が生じた場合に限定されるものであること。また、営農等を停止した場合であっても、直ちに生産緑地地区に関する都市計画の変更を行うものではないこと。
(二) ただし、生産緑地地区内の農地等の全部又は一部が公共施設等の敷地の用に供された場合には、当該部分を生産緑地地区から除外するための都市計画の変更を行うこと。この場合、残存する部分について都市計画の変更を行うのは、残存する農地等のみではなく生産緑地地区としての要件を欠くに至るときに限定されるものであること。
九 その他
(一) 生産緑地地区に関する都市計画を定めようとするときは、市町村の都市計画担当部局は、あらかじめ、農林水産担当部局、環境保全担当部局、商工担当部局、農業委員会及び教育委員会と緊密な連絡調整を行うとともに、港湾隣接地域及び臨港地区並びにこれらの周辺地域において生産緑地地区を定めようとするときは、市町村長は、あらかじめ、港湾管理者に協議するよう指導すること。
(二) 生産緑地地区に関する都市計画の承認をするに当たっては、都道府県の都市計画担当部局は、あらかじめ、農林水産担当部局、環境保全担当部局及び商工担当部局と緊密な連絡調整を行うとともに、都道府県知事は、あらかじめ、地方運輸局長に通知すること。
(三) 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律(平成三年法律第七号)第二条による改正後の地方税法附則第二九条の五第一項に規定する宅地化のための計画策定等がなされたことにつき市町村長の確認を受けた土地については、同条の趣旨にかんがみ、生産緑地地区の指定を行わないこと。
(四) 空港周辺地区においては、農地等が航空機騒音による障害の防止と周囲の環境の保全に寄与することにかんがみ、生産緑地地区制度の活用を図るよう市町村長を指導すること。
(五) 市町村は、農住組合が行う土地区画整理事業の円滑な実施に十分配慮して、その運用に当たるよう指導すること。
一〇 経過措置
(一) 現行の生産緑地地区の取り扱い
改正前の生産緑地法(以下「旧生産緑地法」という。)に基づく第一種生産緑地地区及び第二種生産緑地地区(以下「旧生産緑地地区」という。)は、原則として廃止し、生産緑地法に基づく生産緑地地区の指定を行うよう努めること。この場合、土地所有者等の同意を改めて確認すれば足り、指定要件の確認は必要ないこと。
なお、同意が得られない場合、旧生産緑地地区については都市計画法上は生産緑地法の一部を改正する法律附則第四条に基づき、改正された生産緑地法に基づく生産緑地地区とみなされることとなること。ただし、以下のような取扱いとなるので留意すること。
1) 生産緑地地区内の行為の制限については、改正された生産緑地法の規定によるものであること。すなわち、「農林漁業に従事する者の休憩施設」及び「その他政令で定める施設」の設置等に係る行為についても許可対象行為となること。
2) 買取りの申出ができない期間については、旧生産緑地法と同じ取扱いとなること。すなわち、旧生産緑地法に基づく第一種生産緑地地区については一〇年、第二種生産緑地地区については五年となること。
3) 旧生産緑地法に基づく第二生産緑地地区について、買取りの申出後行為の制限が解除されるまでの期間については、旧生産緑地法と同じ取扱いとなること。すなわち、その期間は「一月」となること。
4) 旧生産緑地法に基づく第二種生産緑地地区については、当該第二種生産緑地地区に関する都市計画に定められた当該都市計画が失効すべき日は、引き続き有効であること。
第三 農地等の管理に関する援助について
生産緑地地区内においては、生産緑地について所有権等を有する者は当該生産緑地を農地等として管理しなければならないという能動的な責務が生じるが、農林漁業が継続され、農地等が適正に管理されるために行政側が当該所有者等を支援する必要があることから、今回の改正において、生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は、市町村長に対し、当該生産緑地を農地等として管理するため必要な助言、土地の交換のあっせん、市民農園の開園に関する情報の提供等の援助を求めることができるものとされたものであり、その積極的対応を図られたいこと。
第四 生産緑地地区内における行為の制限について
一 生産緑地地区は、環境機能と多目的保留地機能とを併せ有する市街化区域農地等について指定されるものであり、生産緑地は、公共施設等の敷地に供される場合を除き、農地等として保全することが義務づけられる地域であるので、当該地域内における行為については、農林漁業を営むために必要な一定の行為で生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認められるものに限り、許可をすることができるものであり、その認定については、次によること。
(一) 法第八条第二項の「生活環境の悪化をもたらすおそれがない」とは、悪臭等の発生源となるおそれがないことをいうものであり、その発生するおそれがある施設であっても防止のための必要な措置が採られているものであれば生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認められるものであること。
(二) 法第八条第二項第一号の「生産又は集荷の用に供する施設」とは、ビニールハウス、温室、畜舎、育種苗施設、搾乳施設等農林漁業の生産の用に供される施設又は集乳施設、集果施設等農林漁業による生産物を集荷する施設をいうものであること。
(三) 法第八条第二項第二号の「生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設」とは、サイロ、種苗貯蔵施設、農機具等の収納施設等の農林漁業の生産のための資材の貯蔵又は保管の用に供する施設をいうものであること。
(四) 法第八条第二項第三号の「処理又は貯蔵に必要な共同利用施設」とは、選果場、ライスセンター(米麦乾燥場)等農林漁業による生産物の処理又は貯蔵のため共同で利用される施設をいうものであること。
(五) 法第八条第二項第四号の「農林漁業に従事する者の休憩施設」とは、休憩所、あづまや等農作業の準備を行い、作業の合間に休憩を取るために必要な施設をいうものであり、専ら市民農園利用者が利用する休憩施設を含むものであること。
(六) 法第八条第二項第五号の「政令で定める施設」に係る生産緑地法施行令(昭和四九年政令第二八五号。以下「政令」という。)第四条の「主として都市の住民の利用に供される農地で、相当数の者を対象として定型的な条件で、レクリエーションその他の営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供されるもの」とは、いわゆる市民農園を指すものであること。また、政令第四条第一号の「農作業の講習の用に供する施設」とは、講習室、植物展示室、資料閲覧室、教材園等市民農園の利用者に対し適正な農地の利用を確保するため必要な講習を施すために必要な施設をいうものであり、政令第四条第二号の「管理事務所その他の管理施設」とは、具体的には市民農園の管理事務所、管理人詰所、管理用具置場、ごみ処理場等をいうものであること。
(七) 市民農園を開設する者が法第八条第二項第四号又は第五号に掲げる施設について同条第一項の許可を受ける場合に、当該施設に附帯する施設として専ら市民農園利用者が利用する駐車場の整備を行うことができるものであること。
(八) なお、前記(五)、(六)及び(七)にいう市民農園とは、市民農園整備促進法第七条による開設の認定を受けたものに限定されるものではないこと。
二 市町村長に対して法第八条第一項の許可の申請があった場合には、市町村の都市計画担当部局は農業委員会に通知すること。なお、農業委員会は生産緑地地区内において農地法第四条に基づく届出があった場合には、市町村の都市計画担当部局に通知するものとされていること。
三 市町村長が法第八条第七項の規定により助言又は勧告をしようとするときは、あらかじめ、市町村の都市計画担当部局は、環境保全担当部局に協議すること。
なお、助言又は勧告の相手方が鉄道事業者等運輸関係事業者の場合は、あらかじめ、その内容を地方運輸局長に通知すること。
第五 生産緑地の買取りについて
一 生産緑地法第一〇条の生産緑地の買取りの申出について
生産緑地地区に関する都市計画は、生産緑地の所有者等の同意を得て定められるものであるが、同意の段階において一般的に予測可能な期間を経過した場合又は明らかな事情変更があった場合には、その後の農林漁業の継続が困難になることが一般的に予想され、しかも生産緑地地区における行為制限のため、市場における譲渡性に欠けることにかんがみ、生産緑地の所有者が市町村長に対し、時価で当該生産緑地を買い取るべき旨を申し出ることができるものとして権利救済を図ったものである。この趣旨にかんがみ、法第一〇条の買取りの申出があった場合には、次によること。
(一) 「農林漁業の主たる従事者」とは、その者が従事できなくなったため、当該生産緑地における農林漁業経営が客観的に不可能となるような場合における当該者をいうものであること。なお、今回改正された施行規則第二条により、主たる従事者が六五歳未満の場合はその従事日数の八割以上、六五歳以上の場合はその従事日数の七割以上従事している者も含まれること。
また、「主たる従事者」の認定に当たっては、施行規則別記様式で定めたように当該生産緑地の所在地を管轄する農業委員会の証明書を添附させるとともに、その者が従事できなくなったため、当該生産緑地における農林漁業経営が客観的に不可能となるかどうかを適正に判断すること。
(二) 「農林漁業に従事することを不可能にさせる故障」については、今回の施行規則の改正により、第四条に「両手の手指若しくは両足の足指の全部若しくは一部の喪失又はその機能の著しい障害」及び「一年以上の期間を要する入院その他の事由により農林漁業に従事することができなくなる故障として市町村長が認定したもの」を追加したところであるが、「その他の事由」としては、主たる従事者が養護老人ホーム(老人福祉法(昭和三八年法律第一三三号)第二〇条の四)や特別養護老人ホーム(同法第二〇条の五)に入所する場合や著しい高齢となり運動能力が著しく低下した場合等も含まれること。
なお、その認定に当たっては、医師の診断書、院長の証明書等により農林漁業の継続が事実上不可能であるかどうかを適正に判断すること。
二 生産緑地地区に指定された農地等の一部の所有者から買取りの申出がなされ、公共施設等の敷地の用に供された場合には、当該部分を生産緑地地区から除外するための都市計画の変更を行うとともに、残存する農地等のみでは生産緑地地区の指定要件を欠くに至る場合には、当該農地等を生産緑地地区から除外するよう都市計画の変更を行うこと。なお、当該生産緑地地区の存続が良好な都市環境の形成に必要であると判断される場合には、当該生産緑地地区の継続が図られるよう、買取りの申出のあった生産緑地において農林漁業に従事することを希望する他の者がこれを取得できるようあっせんに努めること。
三 法第一一条第二項の「土地利用の状況」とは、公共公益施設の利用を含む広義の土地利用についての現在及び将来の状況をいうものであること。
四 法第一五条の生産緑地の買取り希望の申出について
法第一五条の生産緑地の買取り希望の申出は、法第一〇条の買取り申出ができない場合であっても、疾病等により農林漁業に従事することが困難である等の特別の事情があるときは、買取り希望を申し出ることができることとし、権利者の一層の保護を図るとともに、公有地の拡大の推進にも資することとしたものである。この趣旨に即し、市町村長は、当該買取り希望の申出がやむを得ないものであると認めるときには、当該生産緑地を自ら買い取り、又は地方公共団体等若しくは当該生産緑地において農林漁業に従事することを希望する者がこれを取得できるようあっせんに努めること。
五 生産緑地の買取りについて
(一) 公共施設等を設置しようとする者が生産緑地地区内の土地を公共施設等の用に供するため、当該生産緑地の取得を地方公共団体等に申し出た場合には、当該地方公共団体等は、支障がない限りその申出を受け入れるよう指導すること。
また、市民農園を開設する等農地として利用する目的で生産緑地の買取りを行う場合にあっては、農業委員会に事前に通知し、十分な調整を図るとともに、当該農地の管理については農業委員会と十分調整すること。この場合、農業協同組合にも協力を求めること。
(二) 法第一一条第一項の「時価」とは、不動産鑑定士、官公署等の公正な鑑定評価を経た近傍類地の正常な取引価額や公示価格を考慮して算定した相当な価額によるものとすること。
第六 農業委員会及び農業協同組合の協力について
市町村長は、生産緑地(農地又は採草放牧地に限る。)について使用又は収益をする権利を有する者からの求めに応じて当該生産緑地を農地等として管理するため必要な助言、土地の交換のあっせんその他の援助を行う場合及び農業に従事することを希望する者が生産緑地を取得できるようにあっせんを行う場合には、農業委員会に協力を求めることができるものとされたので、当該趣旨に照らし、積極的にその協力を求めること。なお、農業協同組合についても同様の観点から積極的に協力を求めること。
第七 関連税制について
平成三年度の税制改正によって、市街化区域農地等について、以下のとおり課税の適正化等が図られることとなったものであり、生産緑地地区制度の運用に当たっては、このことに十分留意すること。
一 相続税及び贈与税
租税特別措置法の一部を改正する法律(平成三年法律第一六号)により、平成四年一月一日から、租税特別措置法第七〇条の四第二項第三号に規定する特定市街化区域農地等については、相続税及び贈与税の納税猶予の特例の適用対象から除くこととされているが、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地については、同項第四号に規定する都市営農農地等として、相続税及び贈与税の納税猶予の特例の適用対象とされること。
なお、都市営農農地等を有する農業相続人については、同法第七〇条の六第五項により、相続税の納税猶予期限は、その死亡の日までとされていること。
また、経過措置として、同法附則第一九条第四項により、平成四年一月一日から平成四年一二月三一日までの間に特定市街化区域農地等を相続したものについては、当該農地等が平成四年一二月三一日(同日前にその相続税の申告書の提出期限が到来する場合には、当該提出期限)までに都市計画の決定又は変更により生産緑地地区に指定され、又は市街化調整区域に編入された場合は、農業相続人の申出により相続の時から都市営農農地等又は市街化調整区域内の農地等とみなして相続税の納税猶予の適用が可能となるものであること。
二 所得税
法第一一条第一項、第一二条第二項又は第一五条第二項の規定に基づき、生産緑地地区内の土地が地方公共団体等に買い取られる場合には、譲渡所得の課税についてその譲渡益から一、五〇〇万円の特別控除が認められているものであること。
三 不動産取得税
三大都市圏の特定市の区域内における生産緑地地区(生産緑地法の一部を改正する法律附則第四条第一項の規定により生産緑地地区とみなされた第一種生産緑地地区及び第二種生産緑地地区を除く。)内の土地を法第七条第二項の規定による所有者の求めに応じて市町村長の行う土地の交換(農地等の交換に限る。)のあっせんにより取得した場合、当該土地の取得に対して課せられる不動産取得税の課税標準の算定については、交換によって失った土地の固定資産課税台帳に登録された価格に相当する額が価格から控除されることとなったものであること(当該取得が平成六年三月三一日までに行われたものに限る。)
四 固定資産税及び都市計画税
地方税法及び国有資産等所在市町村交付金法の一部を改正する法律(平成三年法律第七号)により、固定資産税及び都市計画税についての長期営農継続農地制度は、平成三年度限りで廃止され、平成四年度より三大都市圏の特定市の区域内に存する市街化区域農地については、生産緑地地区内の農地等(田又は畑という。)を除き、原則として宅地並み課税となること。
五 地価税
地価税については、地価税法(平成三年法律第六九号)第六条第五項により、特定市街化区域農地等は課税対象とされ、生産緑地地区内にある農地又は採草放牧地は非課税とされているが、経過措置として、同法附則第三条第二項により、特定市街化区域農地等についても、平成四年から平成八年までの間は非課税とされていること。
第八 三大都市圏の特定市における生産緑地地区の指定作業等について
今回の生産緑地法の改正と併せて三大都市圏の特定市に係る農地関連税制が改正されたことに伴い、遅くとも平成四年末までに、宅地化する農地と保全する農地との区分を完了させる必要があるが、特定市に係る都市計画区域においては生産緑地地区の指定の作業を急ぐ必要があるので、早急に作業を進められたいこと。
早急に作業を行うべき内容については、基本的には以下によること。
一 市街化区域農地の現況の把握
市街化区域農地の規模、分布状況、各種都市計画の決定状況等、都市計画決定の基礎となるデータの収集に努めること。その際、都市計画担当部局だけでなく、必要に応じ農林水産担当部局、農業委員会及び農業協同組合にも積極的に協力を求めること。
二 農地所有者等の関係権利者の把握
市街化区域農地の現況の把握に併せて、農地所有者等の関係権利者(農地について所有権、対抗要件を備えた地上権等、法第三条第二項に規定する関係権利者をいう。以下「農地所有者等」という。)の把握に努めること。
その際、各地方公共団体における農林水産担当部局、農業委員会及び農業協同組合にも積極的に協力を求めること。
三 改正された制度の周知措置
改正された生産緑地地区制度だけでなく、関連税制の改正の内容を含め諸制度の改正内容を正確に農地所有者等に伝達することが急務であるので、できるだけ速やかに周知措置を行うこと。
さらに、実際の周知活動については、都市計画担当部局だけでなく、農林水産担当部局及び農業委員会、相続税の農地課税の特例については国税当局、固定資産税等の市街化区域農地に対する課税については税務担当部局とも協力の上、説明会の開催、公報の活用等を行うよう留意されたいこと。
また、その際、農業協同組合にも積極的に協力を求め、従来の農業関係の情報伝達組織の活用を図ること。
四 農地所有者等の意向把握
(一) 生産緑地地区の指定に当たっては、農地所有者等の同意が必要であるため、都市計画の素案の作成の前にあらかじめ農地所有者等の意向の把握に努めることが必要であること。ただし、当該作業は生産緑地地区指定の正式な手続きではなく、その後の計画調整作業を行った後、都市計画の案を作成する段階で改めて同意を得る必要があるので留意すること。
意向把握の方法は、各地方公共団体において個別に検討することとされたいが、例えば次のような方法を採っても差し支えないこと。
1) 制度の周知措置を行った上で、一定の期間内で、各農地所有者等から指定を希望するかどうかの申出を受け付ける方法
2) 農地所有者等を、従来の農業関係組織の単位ごと等の一定のグループに分け、個別に意向把握のヒアリングを行う方法
(二) また、周知措置の場合と同様に、農林水産担当部局、農業委員会及び農業協同組合に協力を求めて、意向把握を行うよう努めること。
(三) 旧生産緑地法に基づいて第一種又は第二種生産緑地地区に指定されている農地等についても、意向の把握を行うこと。
(四) 意向把握後、生産緑地地区に関する都市計画の案の作成に入ることとなるが、他の都市計画との整合性の確認、図書の作成、都市計画決定手続き等に最低一年程度要するものと予想されることから、意向の把握は遅くとも平成三年内を目途に行うこと。
五 都市計画手続きとの調整
三大都市圏の特定市にあっては、税制との関係上、その指定を遅くとも平成四年末までに完了させる必要があるため、生産緑地地区の都市計画の案について関係権利者の同意をできるだけ速やかに得るとともに、臨時の都市計画地方審議会の開催等、所要の都市計画の手続きを早めることができるよう、検討・準備を行うこと。また、相続税との関連で指定手続きを早める必要がある場合には、適宜柔軟に対応すること。
なお、保全する農地等の市街化調整区域への編入及び生産緑地地区の指定に伴い、整備、開発又は保全の方針及び緑のマスタープランを変更する必要が生じるが、整備、開発又は保全の方針及び緑のマスタープランの変更については、指定作業の緊急性にかんがみ、生産緑地地区に係る都市計画の変更の手続きを先行して進めて差し支えないこと。
六 執行体制の確立
良好な都市環境の形成に資することを目的とする法の所期の目的を達成するためには、農林水産担当部局、農業委員会、農業協同組合等の協力が不可欠であるので、指定作業に当たっては、これらと十分に連絡調整を図ること。また、関連事務を円滑に進めるため、関係部局、農業委員会及び農業協同組合の参画を得て、連絡会議の設置等執行体制の確立を図ること。
第九 その他
農林水産部局、農業委員会及び農業協同組合に対しては、別途農林水産省から関連の通達がなされる予定であること。