都公緑発第八一号
昭和四八年一一月一二日

各都道府県知事・指定都市の長あて

建設省都市局長通達


屋外広告物法の一部を改正する法律について

標記については、昭和四八年一一月一二日付け建設省都公緑発第八〇号をもつて事務次官からその基本的事項について通達されたところであるが、その運用については、さらに左記事項に留意されるとともに、すみやかに屋外広告物条例を改正し、その施行に遺憾のないよう措置されたい。
なお、別添のとおり屋外広告物標準条例案の一部を改正する標準条例案を作成したので、参考とされたい。

第一 違反はり札、立看板の除却措置の簡素化について

一 この法律による改正後の屋外広告物法(以下「法」という。)第七条第四項の対象となる「はり札」とは、その材質がベニヤ板、プラスチック板、ブリキ板のように比較的軽易なものからなる札に紙をはつたものを、工作物等にひも、針金等でつるし、又はくくりつける等容易に取りはずすことができる状態で取り付けたものであること。

また「立看板」とは、その材質が木枠に紙張りし、若しくは布張りしたもの又は上記の材質からなる札に紙をはつたものを容易に取りはずすことができる状態で立て又は立て掛けられたものであり、その材質が金属枠であるもの又はいわゆる野立看板のように土地に固定された状態で立てられているものは除かれるものであること。

二 本項ただし書にいう「相当の期間」は、都道府県におけるはり札、立看板の許可期限を参考に判断すべく、通常一ケ月程度と考えられるが、当該広告物の表示内容等からみて、すでにその意図するところが達成されたと明らかに認められる場合には、「相当の期間を経過」したものとして取り扱つて差し支えないこと。

また「管理されずに放置されている」とは、補修その他必要な管理をなさず、良好な状態に保持されていない場合又は行政庁が違反を発見し、除却すべき旨を通告したにもかかわらず、除却に必要と認められる期間(通常五日間程度)を経過した後もそのまま放置されている場合をいうものであること。

三 本項の規定によるはり札、立看板の除却については、行政不服審査法(昭和三七年法律第一六〇号)による不服の申立てはできないと解されるので、本項に規定する要件を充たさないものを除却することのないよう注意すること。
四 本項の規定によるはり札又は立看板の除却は、知事の命じた職員の監督の下に、除却作業等の事実行為を第三者に委託することができるが、さらに、本項による措置そのものを道路管理者その他の第三者に委任することも可能であること。この場合において、受任者の資格、受任事務の範囲等についての所要の基準を設けることにより、その適正を期すること。
五 本項の規定により除却したはり札又は立看板は、いつたんこれを保管し、保管の開始後遅滞なく管理者等に引き渡すか、あるいは管理者等に受け取る意思がない場合には適宜処分するものとすること。

第二 屋外広告業の届出制度について

一 屋外広告業の届出制度を設けたのは、都道府県の区域内において屋外広告業を営む者の実態を的確に把握し、その指導育成に資する趣旨であるので、屋外広告業者が営業活動を都道府県の区域内において行なおうとする場合であれば、当該区域内に営業所を有しているか否かにかかわらず、又、他の都道府県に所在する営業所であつても届け出るべきものであること。なお、屋外広告業者の営業活動が他の都道府県に及ぶ場合には関係都道府県知事間で十分な通報、連絡を行うことにより、その営業活動の全体を把握するよう努めること。
二 法第二条第二項の「屋外広告業」とは、広告主から広告物の表示又は広告物を掲出する物件の設置に関する工事を請け負い、屋外で公衆に表示することを業として行うことをいい、元請け、下請けを問わないが、広告物の表示等の工事を請け負わない広告代理業は、これに該当しないものであること。
三 「届出」については、手続の簡便を考慮し、必要に応じて、便宜、届出人が所属する屋外広告業者の組織する地域的団体において取りまとめのうえ、届出をさせることとしてさしつかえないこと。

なお、屋外広告業の届出を受理した場合は、届出番号を付して屋外広告業者届出簿に記載整理のうえ、その旨を証する届出済証を交付するものとし、屋外広告業者が届出済証又はその写しを、その営業所に備えつけ、公衆に表示するよう指導すること。

四 法第八条及び第九条中「営業所」とは、広告物の表示又は広告物を掲出する物件の設置に関し常時請負契約を締結する等営業の場所的中心となる事務所をいい、その主従を問わないが、単なる作業所、連絡事務所等はこれに該当しないこと。

第三 講習会修了者等の設置義務について

一 講習会修了者等の設置義務に関する制度を設けたのは広告物の表示及び広告物を掲出する物件の設置に関し、営業所の責任者にふさわしい知識を修得させる趣旨のものであるので、講習会の開催は次により行うこと。

なお、講習会の運営の全部又は一部について、事務の合理化を図る趣旨から、必要に応じ、他の者に委託することはさしつかえないこと。
(一) 講習会の講習要目及び内容は、上述の趣旨にかんがみ、おおむね次のとおりとすること。

なお、条例施行後の最初の講習会については、受講者の受講の便を図るため、必要と認められるときは、下記時間数を下まわつてもさしつかえない。
(イ) 屋外広告物に関する法令

屋外広告物法の趣旨を周知徹底させるとともに屋外広告物条例及び同規則、都市計画法、建築基準法、道路法等について一般的知識を修得させることを目標として、一六時間程度とすること。

(ロ) 屋外広告物の表示の方法に関する事項

都市の美観風致と広告物の意匠、色彩及び形状との調和のあり方について一般的知識を修得させることを目標として、四時間程度とすること。

(ハ) 屋外広告物の施工に関する事項

屋外広告物の種類ごとに材料、構造、設置方法等について一般的な知識を修得させることを目標として、八時間程度とすること。

(二) 上述の趣旨にかんがみ、すでに講習会の課程の一部について必要な知識を有すると認められる者については、その申請により、講習会の課程の一部を免除してさしつかえないこと。

特に次に掲げる者については、講習要目の(ハ)「屋外広告物の施工に関する事項」の課程を免除すること。
(イ) 建築士法(昭和二五年法律第二〇二号)第二条第一項に規定する建築士の資格を有する者
(ロ) 電気工事士法(昭和三五年法律第一三九号)第三条に規定する電気工事士の資格を有する者
(ハ) 電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)第五四条第一項に規定する第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者
(ニ) 職業訓練法(昭和四四年法律第六四号)に基づく職業訓練指導員免許所持者、技能検定合格者又は職業訓練修了者であつて帆布製品製造取付けに係るもの

(三) 講習会は、少なくとも毎年一回開催するものとし、開催にあたつては、あらかじめその開催の日時及び場所その他講習会の開催に関し必要な事項について周知徹底を図るとともに、その講習会の能率的な運営を図り、あわせて受講者の便宜に供するため、講習会の課程をわかりやすく解説した講習用テキストを作成し、受講者に配布すること。

二 法第九条第一項の「講習会の課程を修了した者」とは、講習会の開始時から終了的まで継続して在席し聴講した者をいい、遅刻、退席等があつた者については、その程度を十分勘案して、決するものとし、考査等によりその修了を判定しないこと。

なお、講習会を修了した者については、修了証明書を交付し、講習会修了者等台帳に記載整理すること。

三 法第九条第一項の「講習会修了者と同等以上の知識を有する者として条例で定める者」とは、次に掲げる者とすること。

(一) 他の都道府県(指定都市を含む。)の講習会修了者
(二) 職業訓練法に基づく職業訓練指導員免許所持者、技能検定合格者又は職業訓練修了者であつて広告美術仕上げに係るもの
(三) 知事が講習会修了者と同等以上の知識を有するものと認定した者

なお、前述(三)の認定にあたつては、営業所における屋外広告物の表示又は屋外広告物を掲出する物件の設置の責任者として五年以上の経験を有すること及び過去五年間にわたり、屋外広告物に関する法令に違反することがなかつたことを基準とされるとともに、認定した場合は、認定書を交付し、講習会修了者等台帳に記載整理することとされたい。

四 法第九条第一項の「営業所ごとに……置かれていなければならない」とあるのは、当該講習会修了者等が必らずしもその営業所に専任の者であることを要しないが、雇用契約等により事業主体と継続的な関係を有し、通常勤務時間中はその営業所の業務に随時従事し得るものを置くべきことをいうものであること。
五 法第九条第二項の「期間」は、次期講習会修了時までの期間に所定の手続に必要な期間を加えたものを限度として定めること。

第四 屋外広告業者に対する指導等について

屋外広告業者の指導にあたつては、屋外広告業者が組織する地域的団体の育成を図るとともに、当該団体が屋外広告物の表示方法、施工技術等の改善、広告倫理の高揚等を図り、もつて屋外広告業者の質的向上を図るための努力を積極的に行うよう指導すること。
なお、広告物の表示等に関する許可の申請にあたつては、工事施行者たる屋外広告業者の氏名、住所等必要な事項を添付させ、工事施行者を事前に把握することによつて、広告物規制と屋外広告業者の指導とを一体的に行うよう努めること。

第五 経過措置

この法律の施行のための条例改正に際しては、屋外広告業の届出及び講習会修了者等の設置については、公布後九〇日程度を経た後施行するものとし、かつ、施行の際、現に屋外広告業を営んでいる者に対しては、経過措置として、屋外広告業の届出について改正条例の施行後三〇日程度の猶予期間を置くものとすること。

第六 その他

屋外広告物規制の強化とあいまつて公共掲示板等を整備することにより、違反広告物の減少が期待されること、特に、広範な地域にわたり屋外広告物の掲出を禁止する場合には、公共掲示板等の公的な表現の場を確保することが重要であることにかんがみ、その設置について積極的に努められたい。


〔別添〕

屋外広告物標準条例案の一部を改正する標準条例案

屋外広告物標準条例案(昭和三九年建設都総発第七号)の一部を次のように改める。
第三条第一号及び同条第二号を次のように改める。

一 都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第二章の規定により定められた第一種住居専用地域、第二種住居専用地域、美観地区、風致地区又は緑地保全地区(知事が指定する区域を除く。)
二 削除

第三条第五号の次に次の一号を加える。

五ノ二 自然環境保全法(昭和四七年法律第八五号)第三章及び第四章の規定により指定された原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域(知事が指定する区域を除く。)

第三条第一一号中「広場」を「駅前広場」に改める。
第四条第二項を削り、同条第三項を同条第二項とする。
第五条第一項第一号中「、第二号かつこ書又は第五号かつこ書」を「、第五号かつこ書又は第五号の二かつこ書」に、同条同項第五号中「広場」を「駅前広場」に改める。
第六条第二項に次の一号を加える。

八 地方公共団体が設置する公共掲示板に規則で定めるところにより表示する広告物

第二一条を削り、第二二条を第二一条とし、第二三条を第二二条とし、同条に次のただし書を加える。

ただし、政治資金規正法(昭和二三年法律第一九四号)第六条の届出を経た政党、協会その他の団体がはり紙、はり札又は立看板を表示するための許可を受けようとするときは、この限りでない。

第二二条の次に次の五条を加える。

(屋外広告業の届出)

第二二条の二 屋外広告業を営もうとする者は、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。

一 氏名又は名称
二 営業所の名称及び所在地
三 法人にあつては役員の氏名
四 営業所ごとに置く講習会修了者等の氏名及び所属営業所名
五 ○○○○○

2 屋外広告業を営む者は、屋外広告業を廃止したとき又は前項の規定により届け出るべき事項に変更があつたときは、規則で定めるところにより、その旨を届け出なければならない。

(講習会)

第二二条の三 知事は、規則で定めるところにより、広告物の表示及び広告物を掲出する物件の設置に関し必要な知識を修得させることを目的とする講習会を開催しなければならない。
2 知事は、規則で定めるところにより、講習会の運営に関する事務を他の者に委託することができる。
3 第一項の講習会を受けようとする者は、別に条例で定めるところにより、講習手数料を納付しなければならない。
4 前三項に定めるほか、講習会に関し必要な事項は、規則で定める。

(講習会修了者等の設置)

第二二条の四 屋外広告業を営む者は、その営業所ごとに講習会修了者又は次の各号の一に該当する者(以下「講習会修了者等」という。)を置かなければならない。

一 他の都道府県又は地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五二条の一九第一項の指定都市の講習会修了者
二 職業訓練法(昭和四四年法律第六四号)に基づく職業訓練指導員免許所持者、技能検定合格者又は職業訓練修了者であつて広告美術仕上げに係るもの
三 知事が、規則で定めるところにより、講習会修了者と同等以上の知識を有するものと認定した者

2 知事は、講習会修了者等の置かれていない営業所について、当該営業所の属する屋外広告業を営む者に対し、期間を定めて、講習会修了者等を置くべきことを命ずることができる。

(屋外広告業を営む者に対する指導、助言及び勧告)

第二二条の五 知事は、屋外広告業を営む者に対し、美観風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。

(審議会)

第二三条 広告物に関する重要事項を調査審議するため、県に屋外広告物審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 知事は、次の各号に掲げる場合においては、審議会の意見をきかなければならない。

一 知事が第三条から第五条までの規定による指定をし、又はこれらを変更しようとするとき。
二 第六条第二項第一号、第二号及び第五号、同条第三項第一号並びに第一一条第一項に規定する基準を定め、又はこれらを変更しようとするとき。

3 審議会は、広告物に関する事項について、知事に建議することができる。
4 審議会の組織、委員の任期、運営その他必要な事項は、規則で定める。
第二六条に次の三号を加える。

五 第二二条の二第一項の規定による届出をしないで屋外広告業を営んだ者
六 第二二条の二第二項の規定による届出をせず、又は同条第一項若しくは第二項の規定による届出について虚偽の届出をした者
七 第二二条の四第二項の規定による知事の命令に違反した者

第二八条の次に次の一条を加える。

(適用上の注意)

第二九条 この条例の適用にあたつては、国民の政治活動の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意しなければならない。

附 則

1 この条例は、○○○の日から施行する。ただし、この条例による改正後の屋外広告物条例(以下「新条例」という。)第二二条の二及び第二二条の四の規定は、この条例の施行の日から起算して九〇日を経過した日から施行する。
2 新条例第二二条の二の規定の施行の際、現に屋外広告業を営んでいる者については、同条の施行の日から三〇日間は同条第一項の届出をしないで引き続き屋外広告業を営むことができる。
3 知事は、○○○の日から起算して九〇日以内に新条例第二二条の三に規定する講習会を開催しなければならない。

標準条例案の改正趣旨

一(一) 同案中第三条第一号及び第二号を改め、並びに同条に第五号の二を加えたのは、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)の制定に伴い所要の改正をするとともに都市計画法第八条第一項第一一号の規定により定められた緑地保全地区及び自然環境保全法(昭和四七年法律第八五号)第三章及び第四章の規定により指定された原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域で、美観風致を維持するために必要があると認められる区域等については、これらを禁止地域等として定めるものとする趣旨であること。

(二) 同案中第三条第一一号及び第五条第一項第三号に規定する「広場」を「駅前広場」に改めたのは、これらの条文は、元来、港湾、空港等の交通関連施設を念頭において規定したものであるので、この際、その趣旨に則して駅前広場に限定することとしたものであること。

二 同案中第四条第二項を削除したのは、電柱等への広告物の表示に関する禁止の取扱いは、各都道府県及び指定都市における、それぞれの地域の特性等に留意のうえ自主的に定めることが望ましく、はり紙、はり札又は立看板に限り他の広告物と区別する取扱いを標準条例案として定めることは、必らずしも妥当ではないからであること。
三 同案中第六条第二項に第八号を加えたのは、公共掲示板に表示される広告物は当然標準条例案第三条及び第五条について適用除外とされることを明確にしたものであり、第六条第二項第八号の規則では、公共掲示板の利用の申請手続、掲出期限、掲出方法等について定めることとする趣旨であること。
四 同案中第二二条にただし書を加えたのは、政治資金規正法(昭和二三年法律第一九四号)第六条の届出を経た政党、協会その他の団体がはり紙、はり札又は立看板の表示のために許可を申請した場合の手数料について、これを徴収しないこととする趣旨であること。
五 同案中第二二条の三第二項に講習会の委託に関する規定を設けたのは、都道府県及び指定都市の事務の合理化に資する趣旨であるので、その運用にあたつてはおおむね次によること。

(一) 委託の相手方は、屋外広告業者の組織する団体その他の者で、民法第三四条の規定により設立されたものであり、かつ、講習を的確に実施する能力を有するものとすること。
(二) 委託の範囲は、講習会の開催の公告及び講習会修了の判定を除く講習会の運営の全部又は一部とすること。

六 同案中第二三条(審議会)の規定は、条文の位置を整理したものであること。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport