公共下水道又は流域下水道からの放流水について水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号)第三条第三項の規定に基づく条例による上乗せ排水基準又は地方公共団体の独自の条例による横乗せ排水基準が適用される場合においては、公共下水道管理者は、これらの排水基準に適合しない水質の下水についても除害施設の設置等を義務づける条例を制定することができることとする等の「下水道法施行令の一部を改正する政令(昭和四九年政令第九号)」は、去る一月一六日に公布され、来る七月一日から施行されることとなつたが、この際、左記の諸点に留意し、公共下水道及び流域下水道からの放流水の水質管理について遺憾のないように措置されたい。
第一 下水道法施行令の改正の趣旨
一 第六条関係
公共下水道又は流域下水道からの放流水(以下単に「放流水」という。)について水質汚濁防止法(以下「水質法」という。)第三条第一項の規定に基づく総理府令による一律排水基準(以下「一律排水基準」という。)又は同条第三項の規定に基づく条例による上乗せ排水基準(以下「上乗せ排水基準」という。)が定められている場合においては、下水道法(以下「法」という。)においても同法施行令(以下「令」という。)第六条第二項の規定により、これらの排水基準を放流水の水質の技術上の基準として適用することとしているが、近時、水質法上は規制の対象となつていない水質項目(ニツケル、アンチモン、ほう素等)について地方公共団体の独自の条例による横乗せ排水基準(以下「横乗せ排水基準」という。)が定められてきていることにかんがみ、令第六条第二項を改正し、横乗せ排水基準をも放流水の水質の技術上の基準として適用することとした。
二 第九条関係
公共下水道管理者は、法第一二条の規定に基づき令第九条に規定する基準に従い、条例で、公共下水道に排除する下水の水質の基準(以下「下水排除基準」という。)を定め、これに適合しない水質の下水を公共下水道に排除しようとする者に対しては除害施設の設置等により当該下水排除基準に適合するよう当該下水の水質を改善すべき旨を定めることができることとされている。
しかしながら、改正前の令第九条に規定する基準では、放流水に関し上乗せ排水基準が定められた場合において、これに対応して下水排除基準をきびしくすることができず、また、放流水に関し令第九条第一項に掲げる項目及び大腸菌群数以外の項目について排水基準が定められた場合においても、一律排水基準又は上乗せ排水基準に定められた項目に限り、製造業又はガス供給業の用に供する施設から排除される下水に対してのみ、下水排除基準を定めることができるにすぎなかつたので、放流水の水質を令第六条の放流水の水質の技術上の基準及び横乗せ排水基準に適合させることを困難にする場合が想定されていた。このため、令第九条を次のように改正した。
(1) 令第九条第一項各号列記の部分に第二二号を加え、同項第一号から第二一号までに掲げる項目以外の項目で、放流水に関し、一律排水基準若しくは上乗せ排水基準又は横乗せ排水基準が定められたものについても、法第一二条に基づく条例により下水排除基準を定めることができることとした。
ただし、横乗せ排水基準として定められた項目であつても、BODに類似する項目即ちCOD、TOC、TOD等主として下水中の有機物を測定する指標及び大腸菌群数については、現在の下水道の機能からみて、これらの項目は除外することとした。
(2) 令第九条第二項の一部を改正し、流域関連公共下水道についても同項を適用できることを明確にした。
(3) 令第九条第一項の改正に伴い、同条第三項の一部を改正し、同条第一項第一号から第二一号まで及び第二項各号に掲げる数値は、従来どおり、厚生、建設省令で定める方法により検定した場合における数値によることとし、同条第一項第二二号又は第四項の規定により定められる下水排除基準の数値は、それぞれ、放流水について定められた横乗せ排水基準又は上乗せ排水基準に係る検定方法により検定した場合における数値によることとした。
(4) 放流水に関し一律排水基準又は上乗せ排水基準により、令第九条第一項第五号から第八号まで、第一〇号から第一四号まで又は第一六号から第二一号までの基準によりきびしい排水基準が定められた場合においては、放流水の水質を当該上乗せ排水基準に適合させるため、下水排除基準を当該上乗せ排水基準と同様の数値まできびしくすることができることとし、この旨の規定を(1)の改正により不要となつた令第九条第四項にかえて同項として規定した。
なお、同条第一項第一号から第四号までに掲げる項目については、現在の下水道の機能からみて、従来どおり同条第二項の規定により一定の場合に下水排除基準をきびしくすることで足り、また、同条第一項第九号及び第一五号に掲げるアルキル水銀及び総水銀については、「検出されるもの」(定量限界を上回るもの)について下水排除基準を定めることができ、これをさらに上乗せ排水基準できびしくすることは現行の検定方法(排水基準を定める総理府令第三条に基づくもの)上ありえない。したがつて、これらの項目については、改正後の同条第四項の規定を適用しないこととしたものである。
三 第八条の二、第九条の二及び第二四条の三関係
令第九条、第一項第五号から第二一号まで又は同条第二項各号に該当する水質の下水を公共下水道に排除する者に対しては、法第一一条の二(使用の開始等の届出)、第一二条の二(水質の測定義務等)及び第三九条の二(報告の徴収)の規定が適用されているが、二の改正に伴い、令第八条の二、第九条の二及び第二四条の三の規定を改正し、放流水に関し上乗せ排水基準又は横乗せ排水基準が定められている場合においては、これらの基準に適合しない水質の下水を排除する者に対してこれらの規定を適用することとした。
なお、令第八条の二、第九条の二及び第二四条の三に規定する水質は、令第九条第一項第五号から第二二号まで又は同条第二項各号に掲げる項目のうち一又は二以上の項目について、令第九条第五号から第二二号まで又は同条第二項各号に規定する範囲(同条第四項の規定が適用される場合にあつては、同項により定められる範囲)の一又は二以上に該当する水質であることで足り、すべての項目についてこれらの範囲に該当する水質でなければこれらの規定の対象とならないということではない。このことは、改正前の令第八条の二、第九条の二及び第二四条の三の規定についても同様に解されていたが、今回の改正においては、この旨を明確に規定した。
四 第二〇条関係
法第二十九条は、都市下水路に物件を設ける場合は都市下水路管理者の認可を受けなければならず、都市下水路管理者は、許可の申請に係る事項が令第二〇条の基準に適合するときはこれを許可しなければならないこととしている。
現行の令第二〇条は、一律排水基準又は上乗せ排水基準に適合しない水質の下水を都市下水路に排除するために設ける施設については、都市下水路管理者はこれを許可することを要しないこととしているが、令第六条の改正とあわせて、令第二〇条第三号を改正し、横乗せ排水基準に適合しない水質の下水を都市下水路に排除するための施設についても、これを許可することを要しないこととした。
五 施行期日
この令改正により、公共下水道管理者である市町村は条例を改正することが必要となり、また、公共下水道に下水を排除する工場等は除害施設の設置等が必要となるので、そのため水質法の施行の例にならい、おおむね半年の準備期間を置き、この政令は昭和四九年七月一日から施行することとした。
第二 公共下水道及び流域下水道からの放流水の水質管理の適正化
放流水については、法第八条に基づき令第六条の放流水の水質の技術上の基準が適用されるとともに、一律排水基準又は上乗せ排水基準及び横乗せ排水基準が適用されるものであるが、水質法においては、終末処理施設が同法第二条第二項の特定施設とされているため、公共下水道及び流域下水道は、その施設全体(分流式の雨水管渠を除く。)か同法同条第三項の特定事業場に該当するので、すべての放流水(分流式の雨水管渠からのものを除く。以下同じ。)について、同法が適用されるものである。すなわち、雨水吐室、ポンプ場、終末処理場等から一律排水基準、上乗せ排水基準又は横乗せ排水基準に適合しない放流水を公共用水域へ排出した場合においては、公共下水道管理者又は流域下水道管理者に対して、水質法第一二条、第一三条等及び地方公共団体の独自の条例に基づく排出水の規制、改善命令等の措置が適用されることとなる。このことについては、すでに、建設省都市局長通達(昭和四六年一一月一〇日付け建設省都下企発第三五号「下水道法の一部を改正する法律の施行について」の六、七、九)及び環境庁水質保全局長通達(昭和四六年一二月一六日付け環水規第四七号「公共下水道から排出される水の水質保全について」)が出されているところである。
以上のところから、放流水の水質管理等については、次の諸点にとくに留意するものとする。
一 終末処理場の維持管理の適正化
公共下水道及び流域下水道の水質保全機能は、その終末処理場からの放流水の水質を改正後の令第六条の基準に適合させることにより全うされるものであるので、終末処理場の維持管理については、維持管理体制の充実、必要な維持管理費の充当、放流水の水質測定の励行等により万全を期するものとする。
二 条例の制定又は改正
法第一二条の規定に基づく条例を既に制定している公共下水道管理者は、第一の令改正の趣旨にのつとり、条例を改正し、条例未制定の公共下水道管理者は、この期に条例を制定することにより、公共下水道に排除される下水の水質の適正化を図るものとする。
今回の令改正は、昭和四九年七月一日から施行されるので、公共下水道管理者は、令改正の施行とあわせて条例を施行することができるよう早急に条例の制定又は改正に着手するとともに、新たに除害施設の設置等が必要となる工場等に対し、あらかじめ、この旨の周知徹底を図り、かつ、必要な指導を行うものとし、これらの措置を講じたうえでやむを得ない場合においては、必要な限度で猶予期間を置くものとする。
条例で定める下水排除基準は、BOD及びSSについては水質使用料制度を採用して令第九条第一項又は第二項の基準の数値を緩和することはさしつかえないが、温度及びPHについては同条第一項又は第二項の基準の数値を許容限度として定め、その他の項目については、同条第一項第五号から第二一号までの基準の数値又は上乗せ排水基準の数値のうちよりきびしい数値及び横乗せ排水基準の数値を許容限度として定めることを原則とするものとする。
また、条例で定める下水排除基準は、水洗便所からの汚水等通常の生活排水については、適用しないものとする。
三 除害施設の設置とその適正な維持管理の指導の強化
公共下水道及び流域下水道の施設及び機能を適正に維持し、その放流水の水質を改正後の令第六条の基準に適合させるためには、改正後の令第九条第一項、第二項及び第四項の基準に従い条例で定める下水排除基準に適合しない水質の下水を公共下水道に排除する工場等に対し、除害施設の設置とその適正な維持管理を徹底させることが必要であるので、第一の令改正の趣旨にのつとり、別紙「除害施設指導要領」により、的確な措置及び指導を行うものとする。
四 既設の公共下水道の改善
既設の終末処理場等の容量不足等によりその放流水の水質を改正後の令第六条の基準に適合させることが困難となるおそれがある場合には、終末処理場の拡張整備に重点を置いて事業を推進するとともに、終末処理場の完成までの間既設処理の維持管理に万全を期すものとし、また、既設の合流式の管渠の容量不足等によりその雨水吐室等から晴天時に汚水が放流されるおそれがある場合には、このような事態を防止するため早急に既設管渠等の改築についても対策を講ずるものとする。以上の場合において、当該拡張、改築等に係る国庫補助については、法第三四条、令第二四条の二等に基づき措置する方針であるので申し添える。
五 下水汚泥の処理処分の適正化
終末処理場の沈澱池から除去した汚泥の処理区分にあたつては、有害物質の拡散を防止するため、定期的に下水汚泥中の有害物質等の測定を励行する等の必要な措置を講じて下水汚泥の実態を把握するとともに、令及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号)等の関係法令を遵守して適正な処理区分を行うものとする。