都下企発第六一号
昭和四九年八月二〇日

都道府県知事・指定市市長あて

建設省都市局長通達


公害健康被害補償法附則による下水道法の一部改正等について


公害健康被害補償法(昭和四八年一〇月五日法律第一一一号。別紙―一)附則による下水道法(昭和三三年法律第七九号)の一部改正及び公害健康被害補償法施行令(昭和四九年八月二〇日政令第二九五号。別紙―二)附則による下水道法施行令(昭和三四年政令第一四七号)の一部改正が来る昭和四九年九月一日から施行され、これと併せて下水道法施行規則の一部を改正する省令(昭和四九年八月二〇日建設省令第一二号。別紙―三)が同日から施行されるので、左記の諸点に留意し、その趣旨の徹底及び運用に関し遺憾のないよう措置されたい。
なお、貴管下の市町村に対しても、この趣旨の周知徹底方をよろしくお願いする。

第一 下水道法の一部改正等の趣旨

一 汚濁原因者負担金の規定の新設

(一) 公害健康被害補償法(以下「補償法」という。)第六二条の規定により、公害健康被害補償協会は、特異的疾病(その疾病と原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない水俣病、イタイイタイ病等の補償法第二条第二項に規定する第二種地域における指定疾病を言う。)による被害者に対して都道府県等が支払う補償給付の財源等に充てるため、特異的疾病に影響を与える水質の汚濁の原因である水銀、カドミウム等の物質を排出した(水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「水質法」という。)第三条の排水基準に適合する排出水を排出した場合等無過失の場合を含む。)水質法第二条第二項の特定施設の設置者(以下「特定施設設置者」という。)から特定賦課金を徴収することとなつた。公共下水道管理者又は流域下水道管理者(以下「下水道管理者」という。)は、水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第八八号)別表第一により特定施設設置者に該当し、第一次的に特定賦課金を納付する義務を負うこととなる。しかし、下水道管理者が水銀、カドミウム等の有害な物質を製造し、若しくは使用して公共用水域に排出するものではなく、また、現在採用されている下水処理方法ではこれらの物質を処理することを予定していないので、補償法附則第二一条により下水道法(以下「法」という。)の一部を改正し、下水道管理者は、当該公共下水道又は当該流域下水道若しくは当該流域下水道に係る流域関連公共下水道に原因物質を排除した特定施設設置者に対し特定賦課金の納付に要した費用の全部又は一部を汚濁原因者負担金として負担させることができることとした。(法第一八条の二の新設、流域下水道については法第二五条の一〇で準用)

なお、補償法附則第二三条により地方自治法(昭和二二年法律第六七号)の一部が改正され、地方税の滞納処分の例により汚濁原因者負担金を徴収することができることとした。(同法附則第六条の五の改正)

(二) 汚濁原因者負担金の額は、公害健康被害補償法施行令(以下「補償令」という。)附則第七項により下水道法施行令(以下「令」という。)の一部を改正し、下水道管理者が納付した特定賦課金の額を各特定施設設置者が排除した原因物質の量に応じて按分した額を超えない範囲内において、下水道管理者が終末処理場の操作を誤る等により、水質法第三条の排水基準に適合しない水質の放流水を継続して排出した場合等原因物質が排出されたことについての下水道管理者の責めに帰すべき事由があるときは、その責任の度合を参酌して定めることとした。(令第一〇条の二の新設)

二 使用開始等の届出義務等の規定の強化

(一) 下水道管理者は、有害物質を排出して特異的疾病の原因者となつてはならないことは当然であるが、仮に特定賦課金を賦課されることとなつた場合においても、有害物質を排除した特定施設設置者に対し、汚濁原因者負担金を適正に負担させる必要がある。このため、特定施設設置者の所在、その排除する下水の量及び水質等の実態を的確に把握するとともに、除害施設の設置等の適正な指導を行うことにより、適正な放流水の水質管理を行う必要がある。

しかしながら、改正前の法第一一条の二(使用開始等の届出)、第一二条の二(水質測定義務等)及び第三九条の二(報告の徴収)の規定は、政令で定める水質の下水を排除して公共下水道を使用する者に対してのみ適用されるにすぎなかつたので、工場排水等の実態の把握が必ずしも十分に担保され難いものであつた。このため、補償法附則第二一条により法の一部を改正し、特定施設設置者に対して、その排除する下水の水質の如何にかかわらず、これらの規定を適用することとした。(法第一一条の二、第一二条の二及び第三九条の二の改正)

(二) 法第二五条の九の規定により流域下水道に直接下水を排除する者についても、その実態の把握の万全を期するため、補償法附則第二一条により法の一部を改正し、流域下水道について法第一一条の二、第一二条から第一三条までの規定を準用し、第三九条の二の規定を適用することとした。(法第二五条の一〇及び第三九条の二の改正)

なお、この改正に伴い、補償法附則第七項及び下水道法施行規則の一部を改正する省令により令及び下水道法施行規則(昭和四二年建設省令第三七号。以下「規則」という。)の所要の規定の整備を行つた。

(三) 改正後の法第一一条の二の届出については、下水道法施行規則の一部を改正する省令により同条第一項の届出に係る届出書の一部を改正し、同条第二項の届出に係る届出書の様式を定めた。(規則第三条の二及び様式第四の改正並びに様式第四の二の新設)

三 経過措置

(一) 補償法附則第二一条の規定による法の一部改正は、昭和四九年九月一日から施行されるが、その際現に継続して下水を排除して公共下水道又は、流域下水道(以下「公共下水道等」という。)を使用している特定施設設置者(改正前の法第一一条の二の規定により届出をした者及び届出をしなければならない者を除く。)は、昭和四九年九月三〇日までに、下水道管理者に対し、継続して下水を排除して公共下水道等を使用している特定施設設置者である旨を届け出なければならないこととし、この届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処することとした。(補償法附則第二二条第一項及び第三項)
(二) 法の一部改正の施行の日以前から継続して下水を排除して公共下水道等を使用している特定施設設置者のうち、改正前の令第九条の二第一項に規定する水質の下水を排除していなかつたものに対しては、昭和四九年一〇月一日から下水の水質を測定し、記録することを新たに義務づけることとした。(補償法附則第二二条第二項)

第二 留意事項

一 今回の法の改正等により、特定施設設置者が公共下水道等に排除する下水について、より綿密な実態の把握が可能となつたので、下水道管理者は、工場排水等に対する監視を強化するとともに、除害施設の設置等について適正な指導を行い終末処理場等からの放流水の水質管理の万全を図ること。
二 継続して下水を排除して公共下水道等を使用する特定施設設置者については、その排除する下水の水質の如何にかかわらず、使用開始の届出義務、水質測定記録義務及び報告の義務が課されることとなつたので、下水道管理者は、特定施設設置者に対して所要の手続等に遺漏のないようこの旨の周知徹底を図ること。
三 改正後の法第一一条の二第一項の届出に係る届出書の様式の一部が改められ、また、同条第二項の届出に係る届出書の様式が定められたので、下水道管理者は改正後の様式で届け出るよう指導すること。
四 法の一部改正の施行の際現に継続して下水を排除して公共下水道等を使用している特定施設設置者(改正前の法第一一条の二の規定により届出をした者及び届出をしなければならない者を除く。)は、昭和四九年九月三〇日までにその旨を下水道管理者に届け出なければならないので、下水道管理者は、あらかじめ、この旨の周知徹底を図るとともに、この届出を円滑に受理できるよう所要の措置を講ずること。

なお、この届出に係る届出書の様式については、特段の定めはないが、規則別記様式第四の二に準じて届け出るよう指導すること。

五 下水道管理者は、今回の法の改正により新たに下水の水質を測定し、記録することが義務づけられる者に対し、水質測定等に必要な設備、人員等を早急に整備するよう指導すること。
六 流域下水道管理者は、法第二五条の八の規定を活用するほか、流域関連公共下水道の管理者との連絡を緊密に行う等により、流域関連公共下水道の管理者が工場排水等についての実態の把握、除害施設の設置等の指導及び監督等を適正に行うよう措置すること。

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