都下企発第一三二号
昭和五二年三月一一日

各都道府県知事・指定市市長あて

建設省都市局長通達


下水道法の一部改正の施行について


下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律(昭和五一年法律第二九号)は、昨年五月二五日、下水道法施行令の一部を改正する政令(昭和五一年政令第三二〇号)は、昨年一二月二一日それぞれ公布され五月一日から施行されることになっているところであり、また、下水道法施行規則の一部を改正する省令も近く公布される予定であるが、これについては左記の諸点に留意し、その趣旨の徹底及び運用に関し、遺憾のないよう配慮されたい。
なお、貴管下の市町村に対しても、この趣旨の周知徹底方をよろしくお願いする。

第1 改正の主意

下水道は、単に生活環境の改善のための施設としてだけでなく、公共用水域の水質保全のために必要不可欠の施設として、その整備が急がれている。
特に、公共用水域の水質汚濁防止の見地からは、公共下水道又は流域下水道(以下「下水道」という。)からの放流水の水質管理が適正に行われなければならない。そのためには、終末処理場等施設の運転管理を的確に行うとともに、工場等から下水道に排除される悪質下水に対する規制監督が必要である。
この点に関しては、従来より、改正前の下水道法(以下「法」という。)第一二条の規定に基づき、工場等に対する除害施設の設置及びその適正な維持管理の指導を強力に行うよう指導してきたところであるが(昭和四九年二月九日付建設省都下企発第一二号建設省都市局長通達等参照)、改正前の法では、悪質下水を排除した者を直ちに処罰することとするいわゆる直罰制度、特定施設を設置する場合に事前に届け出させ、計画を審査し、必要に応じて計画の変更を命ずるいわゆる事前チェック制度及び悪質下水を排除するおそれのある者に対して行う改善命令制度がないこと等により、除害施設の設置の指導が必ずしも十分に行い得ない面があった。
このため、これらの点を是正して、工場等から下水道に排除される悪質下水に対する規制を強化し、もって公共用水域の水質保全に資するため、今回法改正を行ったものである。

第2 地方公共団体の執行体制の確立の必要性

今回の法改正により、悪質下水については従来の除害施設の設置等を義務づける制度のほか、新たに直罰制度、事前チェック制度及び改善命令制度が導入されることになった。このため、公共下水道管理者又は流域下水道管理者(以下「下水道管理者」という。)は、工場排水等に対する監視を不断に行うとともに、適切な計画変更命令、改善命令等を行うことが必要となる。下水道管理者は、その責務を確実に果たすため、所要の条例改正を行うとともに、所要の人員及び機器等の確保、研修等による担当職員の養成等下水道行政に対する執行体制の整備、強化を図るよう努力されたい。

第3 中小企業者に対する措置

今回の法改正に伴い、一定の基準に適合しない悪質下水を排除する工場等にあっては、除害施設等の汚水の処理施設(以下「除害施設等」という。)の設置を早急に行わなければならないこととなり、一時的に費用負担の増大を招く結果となる場合がある。このため、地方公共団体にあっては、除害施設等の設置を促進させるため、除害施設等の設置に要する資金の調達が困難な工場等に対しては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、公害防止事業団等の公害防止のための機械設備等の設置に対する融資制度及び各地方公共団体の各種の融資制度について紹介するとともに、具体の融資のあっせん等にも努められたい。
また、特に、小規模事業者については、法の適用に当ってはよろしく配慮されたい。

第4 工場等の管理体制の強化の指導

除害施設等の設置及び維持管理には、専門的な知識及び技術を必要とするため、除害施設等の設置を要する工場等に対しては、その設置及び維持管理について専門的に担当する者を置くよう指導されたい。

第5 公害関係諸法との一体的運用等

(1) 公共用水域の水質の保全にとっては、下水道法の果たす役割は、水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号、以下「水質法」という。)とともに、極めて大きなものであるが、今回の法改正により水質法と同様、直罰制度、事前チェック制度及び改善命令制度が新たに採用された。下水道管理者は、これらの新制度の運用に当たっては、水質法の運用との関連に特に配慮し、都道府県環境部局(水質法第二八条に基づき都道府県知事の権限に属する事務を委任された市にあっては、当該市の環境部局)と連絡を密接に行い、総合的な水質保全行政が円滑に推進されるよう配慮されたい。
(2) 今回の法改正による直罰制度の導入に関連して、工場等から排除される悪質下水に対する罰則の適用に当たっては、必要に応じて資料を提供する等取締機関との連絡を密接に行い、その効果的運用を図るよう努められたい。

第6 改正点の要旨及び運用上注意すべき事項

1 下水道の機能及び施設を保全するための水質規制(第一二条関係)

(1) 従来、悪質下水に対する規制については、下水道の放流水の水質を法第八条の技術上の基準に適合させるための規制も、下水道の施設を保全するための規制も、いずれも改正前の法第一二条に基づき、下水道管理者が、条例で、除害施設の設置等を義務づけてきたが、今回の法改正により、前者、すなわち、下水道からの放流水の水質を法第八条の技術上の基準に適合させるために必要な規制は、改正後の法第一二条の二以下に定めるところにより行われることとなり、後者、すなわち、下水道の施設を保全するための規制(施設の機能を妨げ、又は施設を損傷するおそれのある下水に対する規制)は、法第一二条の規定に基づき行われることとなる。なお、本通達の前にも各種の通達により、法第一二条に関する必要事項を通知してきたところであるが、これらは前記の二種類の規制を定めた現行法第一二条に関するものであって、改正後のものに関するものではないことに注意されたい。
(2) 下水道管理者は、下水道の施設を保全するための規制を条例で行う場合、条例では、温度、水素イオン濃度、ノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量及び動植物油脂類含有量)及び沃素消費量の四項目に関し、一定の基準値以上の下水を対象として除害施設の設置等を義務づけることができる。当該基準値については、従来どおりの数値で定められている(改正後の下水道法施行令(以下「令」という。)第九条)。

2 特定事業場からの下水の排除の制限(第一二条の二関係)

(1) 法第一二条の二第一項及び第五項は、特定事業場から一定の基準に適合しない下水を排除することを禁止したものであり、この規定に違反すると改正後の法第四六条の二の規定により、罰則の適用を受けることとなる。この場合、故意に当該下水を排除した場合はもちろん、過失によって当該下水を排除した場合にも処罰の対象となることに注意する必要がある。特定事業場とは、原則として水質法第二条第二項に規定する特定施設を設置する工場又は事業場である。
(2) 法第一二条の二の規定は、特定事業場から下水を排除して下水道を使用する者に対して適用される。ただし、特定事業場のうちで旅館業の用に供するちゅう房施設、洗たく施設及び入浴施設(温泉を利用するものを除く。)に係るものについては、規制対象から除外している(令第九条の二)。したがって、これらの施設については、いわゆる水質規制のみならず、特定施設の設置等の届出、計画変更命令、改善命令等法改正に伴い特定施設について新たに導入された規制措置の対象とはならないこととなる。
(3) 法第一二条の二の規定は、終末処理場を有する公共下水道又は終末処理場を有する流域下水道に接続する公共下水道に下水を排除する場合に限り適用されるものである。
(4) 排除について規制を受ける下水の水質基準については、(5)以下に記すが、当該下水の水質は公共下水道への排出口において測定されることとなる。この場合、特定事業場から下水道に排除されている下水に係る全ての排出口が対象となる。この際測定は原則として公共ますへの排出口で行なわれることとなるため、特定事業場に係る公共ますにはできる限り特別の表示を行い、測定の便宜を図られたい。
(5) 終末処理場で処理することが困難な物質についての水質基準(第一項及び第二項関係)

1) 水質基準

カドミウム、シアンなどの人の健康に係る被害を生ずるおそれのある物質及び銅、亜鉛などの生活環境に係る被害を生ずるおそれのある物質で終末処理場で処理することが困難な物質に係る水質基準については、政令で一律に水質基準を定めている(令第九条の四)。当該水質基準は次のとおりである。
イ 現段階において終末処理場で処理することが困難な物質としては、カドミウム、銅等一六物質が定められた。
ロ 各物質ごとの規制値は原則として令第九条の四第一項に規定されているが、これは、水質法第三条第一項の規定による総理府令で定める排水基準(以下「総理府令の一律基準」という。)と同一である。
ハ 終末処理場からの放流水について、上乗せ条例により、ロの基準よりも厳しい排水基準が定められている場合にあっては、その厳しい排水基準を各物質ごとの規制値とする。
ニ 水質法では、排水基準を定める総理府令の一部を改正する総理府令(昭和五一年総理府令第三七号)によって、特定の業種に属する工場又は事業場に係る排出水について一律基準より緩やかな排水基準が定められており(以下「総理府令による暫定基準」という。)、また、上乗せ条例により終末処理場からの放流水に適用される基準より緩やかな基準(以下「条例による緩やかな基準」という。)が定められている場合がある。特定事業場から排除されている下水が、終末処理場から水が放流されている公共の水域又は海域に直接排除されたと仮定すれば総理府令による暫定基準又は条例による緩やかな基準が適用される場合には、それらの緩やかな基準を規制値とする。「直接排除された」とは、下水が量及び質に変化を与えられることなく、そのままの状態で排除されることをいう。
ホ このように、下水の水質基準としての規制値は、終末処理場からの放流水に適用されている規制値と密接に関係しているため、終末処理場からの放流水について適用される基準が終末処理場ごとに異なっている場合には、下水道管理者は下水道使用者に対し、当該下水道使用者の下水が処理されている終末処理場等、下水に適用される規制値を知るために必要となる事項を適切な手段で周知徹底させることが必要である。

2) 適用除外

1)の水質基準に適合しない下水については、その排除が禁止されるが、次の二つの場合には適用除外となる(令第九条の三)。

イ 第一に、公共下水道を使用する特定事業場が、終末処理場から水が放流されている公共の水域又は海域に下水を直接排除したと仮定した場合に、総理府令の一律基準又は上乗せ条例により基準が適用されない場合は、それを公共下水道に排除しても禁止規定は適用されないこととしている。例えば、水質法に基づく排水基準を定める総理府令(昭和四六年総理府令第三五号)別表第二の「備考」によれば、銅、亜鉛等生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質については一日当たりの平均的な排出水の量が五〇立方メートル未満の工場又は事業場に関しては、当該排水基準が適用されない等いくつかの適用除外が規定されているが、このような下水については公共下水道を使用する者に対しても同様の適用除外を行い、それらの者に対しては規制を行わないこととするものである。ただし、上乗せ条例により、適用除外についてもその範囲を縮少する等厳しい規定を置いている場合には、当該条例による縮少された範囲を適用除外するものである。例えば、上乗せ条例で五〇立方メートルのいわゆる裾切りを三〇立方メートルに縮少している場合には、適用除外となるのは、三〇立方メートル未満の下水を公共下水道に排除する場合である。
ロ 第二に、下水道の施設として特定の物質を処理するための処理施設が設けられている場合には、当該処理施設において下水を処理すべき区域として下水道管理者が公示した区域内にある特定事業場については当該物質に係る下水を排除しても禁止規定は適用されない。この場合、下水道管理者は、当該処理施設により特定の物質の処理を開始しようとするときに、当該物質の処理を開始すべき年月日、処理すべき区域、処理すべき物質、処理施設の位置及び名称を公示しなければならないこととなる。

当該処理施設に関して適用除外に係る公示を行う場合には、当該処理施設による処理後の下水の水質が法第一二条の二第一項の規定による令第九条の四に定める基準に十分適合することを確認して行うことが必要である。また、公示を行うことによって当該物質については下水排除の制限を受けず、罰則も適用されないこととなるので、公示に係る事項の範囲等を明確にして行うことが必要である。このため、当該公示を行うに当たっては、あらかじめ建設省と相談されたい、当該公示についての変更を行う場合も同様とされたい。

(6) 生物化学的酸素要求量、浮遊物質量等の項目についての水質基準(第三項、第四項及び第五項関係)

1) 水質基準

(5)1)で記したように、カドミウム、シアン、銅、亜鉛等終末処理場で処理することが困難な物質に係る水質基準については、政令で一律に定めたが、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量等の項目に係る水質基準については、本来下水道で処理することが可能な項目及びそれに準ずるものに係るものであることにかんがみ、下水道管理者は、それぞれの終末処理場の処理能力等を勘案して、政令(第九条の五)で定める基準に従い、条例で、特定事業場から下水道に排除される下水の水質基準(規制値)を定めることができることとした。法第一二条の二第三項は「条例」と明記しているので、水質基準は、直接条例で定めることが必要であり、条例で地方公共団体の規則により水質基準を定めることができる旨委任規定を置くことはできない。

イ 条例で規制値を定めることができるのは、水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量及びノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量及び動植物油脂類含有量)の四項目に関してのみである。条例では、政令で定める基準より厳しくない範囲内において規制値を定めることができる。なお、生物化学的酸素要求量の規制値は五日間値であり、これは水質法と同様である。
ロ 製造業又はガス供給業の用に供する施設から下水道に排除される下水については、それらの施設から排除される汚水の合計量が終末処理場で処理される汚水の量の四分の一以上であると認められる場合等の要件を充足する場合には、水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量及び浮遊物質量の三項目に関して、イの規制値より厳しい規制値を採用しうる。
ハ(a) 特定事業場から排除されている下水が下水道に排除されることなく湖沼及び海域を除く河川その他の公共の水域に直接排除されたと仮定したとき、イ又はロの基準より緩やかな総理府令による暫定基準が適用されるような業種に属する特定事業場からの下水については、当該総理府令による暫定基準を条例で定めることができる規制値の限度とする。

(b) この場合(5)1)の場合と異なり、総理府令による暫定基準により規制値を考えることとし、上乗せ条例を考慮しないこととしている。
(c) 総理府令による暫定基準に係る規制値について、湖沼及び海域を除く河川その他の公共の水域に直接排除された場合の基準を考慮することとし湖沼及び海域を除いたのは、総理府令の一律基準では、湖沼及び海域においては、生物化学的酸素要求量の項目に関して、規制しないこととしているためである。つまり、湖沼及び海域に汚水を排出したと仮定した場合には、生物化学的酸素要求量については総理府令による暫定基準自体の適用を受けることができなくなるが、これを避けるためである。

2) 適用除外

条例による規制が行われる場合においても、令第九条の三第一号に定める適用除外と同趣旨の適用除外を定め、水質法による規制との均衡を図っている。すなわち、水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量及びノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量及び動植物油脂類含有量)の項目に係る排水基準については、水質法に基づく排水基準を定める総理府令では別表二の「備考」において、一日当たりの平均的な排出水の量が五〇立方メートル未満の工場又は事業場に関しては排水基準を適用しない等の適用除外を定めるものであるが、公共下水道に下水を排除する場合にも全く同じ適用除外を定めている。この場合にも1)ハと同様の理由により、総理府令による適用除外の範囲と同じくし、たとえ、上乗せ条例によって適用除外の範囲が縮少されていても、その点は考慮しないこととする(令第九条の六)。

(7) 経過措置(第六項関係)

本項は、法の一部改正の施行後新たに水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号)で特定施設が追加指定され、かつ、法第一二条の二第一項の規定による政令(令第九条の二)で除かれることなく、法第一二条の二第一項に規定する特定施設として取り扱われる場合には、汚水の処理施設等を設置するのに必要と考えられる準備期間(原則として六月間、政令で定める施設については一年間)中は、悪質下水排除に係る禁止規定等の適用を猶予することとしている。ただし、当該施設が特定施設となった際既に当該工場又は事業場が特定事業場であるとき、及びその者に適用されている条例の規定で、河川その他の公共の水域又は海域に排除される下水につき、法第一二条の二第一項及び第五項に相当する直罰規制が行われている場合には、猶予期間は置かないこととしている。具体的に猶予期間を置かない場合としては、

イ 特定施設となったときに、既に特定事業場である場合
ロ 特定施設となった後公共下水道を使用することとなった者が、それまで河川その他の公共の水域又は海域に下水を排除しており、特定施設となる前に既に条例で水質法の規制に相当する直罰規制を受けていた場合

が考えられる。

なお、一年間の猶予期間の対象となる政令で定める施設については、水質汚濁防止法施行令に準じて定める考えである。

3 特定施設の設置の届出(第一二条の三関係)

(1) 法第一二条の三第一項は、公共下水道を使用する者が、特定施設を設置しようとするときに、特定施設の種類、特定施設の構造、汚水の処理の方法等を公共下水道管理者に届け出させ、計画の内容を事前に審査し、必要に応じて法第一二条の五に規定する計画変更命令を活用して、悪質下水の排除を未然に防止しようとするものである。
(2) 特定施設の使用の届出(第二項第三項関係)

1) 法第一二条の三第二項は、法の施行後新たに特定施設が指定された場合に現にその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)は、三〇日以内に届出をしなければならないこととしたものである。届出事項は、法第一二条の三第一項と同じである。
2) 法第一二条の三第三項は、下水道を使用することとなったときは、三〇日以内に届出をしなければならないこととしたものである。

具体的に、同項の規定によって届出が必要な場合としては、次のものが考えられる。
イ 従来、特定事業場から公共用水域に汚水を排出していた者が、終末処理場が設置されている公共下水道を使用することとなったとき。
ロ 終末処理場が設置されていない下水道に終末処理場が設置され、当該下水道を使用する特定事業場が下水排除の制限を受けることとなったとき。

なお、特定施設の設置の届出(法第一二条の三第一項)又は、新たな特定施設が指定された際の届出(同条第二項)をしている場合にも、同条第三項の届出をさせることは、同じ内容の届出が重複することになるため、「前二項の規定により届出をしている場合を除き」として、この場合の届出は不要とした。

3) 法第一二条の三第二項及び第三項の届出は既に完成し又は設置の工事中の特定施設に関するものであり、法第一二条の五に規定する計画変更命令の対象とはなり得ない。

(3) 法第一二条の三に規定する届出は、特定施設を設置しようとする者等に対して課された義務であって、特定事業場からの悪質下水の排除の禁止に係る特定施設を設置しようとする者等に対して課された義務ではない。したがって、令第九条の三及び第九条の六の規定による適用除外に該当する工場又は事業場についても届け出なければならないことに注意する必要がある。

4 特定施設の構造等の変更の届出(第一二条の四関係)

(1) 法第一二条の四の届出制度は、特定施設の構造の変更、汚水の処理方法の変更等下水の水質の変更を生ずるような行為を行う場合には、あらかじめ届け出させ、計画の内容を事前に審査し、必要に応じて計画変更命令を活用して、悪質下水の排除を未然に防止しようとするものである。
(2) 法第一二条の三第一項第三号の特定施設の種類の変更は、新たな特定施設の設置となるので、法第一二条の四の規定による届出の対象ではなく、法第一二条の三第一項の届出の対象として取り扱う。
(3) 法第一二条の四の規定による届出は、3(3)で述べたと同様に、当該特定施設から排除される下水について令第九条の三又は第九条の六の規定により適用除外される場合にも行わなければならないものである。

5 計画変更命令等(第一二条の五及び第一二条の六関係)

(1) 法第一二条の五の規定は、特定施設の設置の届出(法第一二条の三第一項)又は特定施設の構造等の変更の届出(法第一二条の四)があった場合において、その計画に対する審査を行い、内容が不適当であると認めるときは、公共下水道管理者は、計画の変更又は廃止を命ずることができることとしたものである。公共下水道管理者は、計画の審査に当たっては十分な技術的知識を要求されることとなるが、この点については職員の研修等を通じて必要な知識の習得に努められたい。
(2) 計画変更命令を出すためには、特定事業場から公共下水道に排除される下水の水質が法第一二条の二第一項の政令で定める基準又は同条第三項の規定による条例で定める基準に適合しないと認められるという要件を充足することが必要である。したがって、令第九条の三及び第九条の六に規定する適用除外に該当する場合には計画変更命令を出すことができない。
(3) 計画変更命令を出しうる期間は、届出を受理した日から六〇日以内であり、届出をした者は、原則としてその期間中は届出に係る特定施設の設置又は構造の変更等の工事をしてはならない(法第一二条の六)。
(4) 計画変更命令の内容としては、届出に係る特定施設の設置、構造等の変更に関する計画の変更又は廃止である。

6 流域下水道管理者への通知(第一二条の九関係)

流域下水道に関しては、直接流域下水道に流入が認められている場合を除き、特定事業場からの下水の排除について規制を行うのは、流域関連公共下水道管理者であるが、流域下水道管理者は終末処理場の維持管理の責任を有し、当該終末処理場からの放流水の水質について重大な関心を有するものである。このため、流域関連公共下水道管理者は1)法第一二条の三等の規定による届出を受理したときは当該届出に係る事項を、2)法第一二条の五の規定による命令を出したときは当該命令の内容を流域下水道管理者に通知しなければならないこととした。
流域関連公共下水道管理者は、9の改善命令を出したときは、特定施設の設置者に法第一二条の四の規定による届出を行わせ、当該届出に係る事項について流域下水道管理者に通知しなければならないこととなる。

7 除害施設の設置等(第一二条の一〇関係)

(1) 本条は、直罰によって担保される法第一二条の二の禁止規定の適用を受けない下水についても、公共下水道からの放流水の水質を法第八条の技術上の基準に適合させることが必要な場合には、従来どおり、条例で除害施設の設置を義務づける等の措置をとることができることとしたものである。
(2) 条例でこれらの義務を定めた場合には、令第九条の四第一項に掲げるカドミウム、シアン、銅等の終末処理で処理することが困難な物質については同項各号に定める基準(終末処理場からの放流水について、いわゆる上乗せ条例によりこれらの基準により厳しい基準が定められている場合にあっては、その厳しい基準)を一律に除害施設の設置等の基準としている(令第九条の七)。この結果、これらの基準より緩やかな基準を定めることができないことに注意されたい。
(3) 温度、令第九条の五第一項各号に掲げる項目及びいわゆる「横乗せ項目」(水質法上は規制の対象となっていないが、地方公共団体の条例により下水道からの放流水について基準が定められた項目)については、条例で定めることができる基準は、令第九条の八に定める基準より厳しいものであってはならない。この政令で定めた枠は実質的には従来と全く同様の範囲となっている(令第九条の八及び改正前の令第九条)。
(4) 条例で除害施設の設置等を義務づけできる下水としては、次に掲げる下水であって、令又は条例で定める基準に適合しないものである。

イ 特定事業場以外の工場等から排除される下水
ロ 特定事業場から排除される下水で直罰規制を受けないもの。

8 流域下水道への準用(第二五条の一〇関係)

流域下水道は、原則として直接に一般家庭、工場等の下水を受け入れることはないが、例外的に飛行場等から継続して排除される大量の下水を直接受け入れる場合がある(法第二五条の九及び令第一七条の五)。このため、これら流域下水道に直接下水を排除する工場又は事業場についても、直罰方式による規制、特定施設の設置等の届出、計画変更命令等の規定を適用するものである。このため、流域下水道管理者は、流域下水道の管理上必要な範囲内で条例を制定し、適正なる管理を行う必要がある。

9 改善命令等(第三七条の三関係)

(1) 下水道管理者は、特定事業場から排除される下水の水質が、法第一二条の二第一項の政令で定める基準又は同条第三項の条例で定める基準に適合しないおそれがあると認めるときは、特定施設の構造等の改善等を命ずることができることとした。
(2) 法第三八条の規定に基づく監督処分は、現実に法律等に違反した場合に必要な措置であるが、本条の規定による命令は下水道管理者が基準に適合しない下水を排除するおそれがあると認めるときに出し得る点に意味がある。
(3) 本条に基づく命令を出すにあたっては、下水道管理者は各特定施設の種類、稼動の状況、下水の水質の変化等設置の状態を不断に把握する必要がある。このため、体制の強化を図り、充分な監視を行い、適切に運用されたい。
(4) 今後新たに特定施設が指定された場合において既に当該施設を設置している者については、本条の適用についても法第一二条の二第六項と同様、法の適用について猶予期間をおくこととしている(法第三七条の三ただし書)。

10 経過措置(第四四条関係)

一般に法律に基づき政令、省令等の命令を制定する際には、所要の経過措置を定めることができるが、今回直罰制を導入したことにより罰則に関する経過措置をも定めうることを、罪刑法定主義との関係で明らかにしたものである。具体的に命令で定める経過措置としては、次のようなものが考えられる。

1) 政令又は条例改正により、下水の水質の基準を緩和したときに、改正前の基準を根拠として罰則を適用する旨の経過措置
2) 建設省令の改正により、特定施設設置者の届出事項が変更されたときに、既に届出をした者についての経過措置

11 下水道法の一部改正に伴う経過措置

(1) 直罰制度及び改善命令制度関係

1) 下水道整備緊急措置法及び下水道法の一部を改正する法律(以下「一部改正法」という。)のうち下水道法の改正部分(以下「改正下水道法」という。)の施行の際現に特定施設を設置して終末処理場を有する公共下水道を使用する者について改正下水道法の施行の日から直ちに直罰規定及び改善命令規定を適用することは望ましくなく、新しい規制に対する準備期間として、一定の適用猶予期間を置いている。すなわち、改正下水道法の施行後六月間(政令で定めるものを設置する者にあっては一年間)は、法第一二条の二第一項及び第五項並びに第三七条の三の規定は適用せず、その間は、改正前の法第一二条の規定を適用することとしている(一部改正法附則第二条第一項)。
2) 一年間の適用猶予期間を与えるものとして政令で定める特定施設は、改正下水道法の施行の際現に水質汚濁防止法施行令別表第二に掲げられている施設(令第九条の二に規定する施設を除く。)である(下水道法施行令の一部を改正する政令附則第二項)。
3) ただし、改正下水道法の施行後公共下水道を使用することとなった者が、それまで河川その他の公共の水域又は海域に下水を排出しており水質法で直罰規制を受けていた場合には、前記の猶予期間は適用されない。なお、特定事業場に二種類以上の特定施設が設置されており、それらに六月間又は一年間の異なった適用猶予期間が適用される場合には、当該特定事業場については、一年間の適用猶予期間が与えられることとなる。
4) 改正下水道法の施行前の行為及び一部改正法附則第二条第一項によりなお従前の例によることとされる行為((1)1)の場合)に対しては、罰則も従前の例により適用する(一部改正法附則第二条第八項)。

(2) 届出制度及び計画変更命令関係

1) 改正下水道法の施行の際現に特定施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)は、改正下水道法の施行の日から三〇日以内に、法第一二条の三第一項各号に掲げる事項を公共下水道管理者に届け出なければならない(一部改正法附則第二条第二項)。届出が必要とされる期間が三〇日以内と限られているので、下水道管理者は、法の施行前から下水道使用者に対してこの旨を周知徹底させ、届出が完全に行われるよう措置されたい。

なお、届出の状態については、別途報告を求める旨通知する予定である。

2) この届出をした者については、法第一二条の三第一項の規定による届出をした者とみなして、法第一二条の四、法第一二条の五及び法第一二条の六から法第一二条の九までの規定を適用する(一部改正法附則第二条第四項)。

なお、「(新法第一二条の四の規定による届出に係る部分に限る。)」というのは、1)の届出は既に設置済の特定施設であるため、特定施設の設置の届出(法第一二条の三第一項)に係る計画変更命令、実施の制限の規定は適用されないことを明らかにしたものである。

3) (1)及び(2)の経過措置は、法第二五条の九及び令第一七条の五の規定により流域下水道を直接使用する者について準用する(一部改正法附則第二条第五項)。

12 その他

(1) 法第一三条の改正は、特定施設についても立入検査ができることを条文形式上も明らかにしたものである。
(2) 法第三七条の二の改正は、下水道から生じた汚でい等の処理が法第二一条第三項の政令で定める基準に違反している場合にも、厚生大臣又は建設大臣は、下水道管理者に対し必要な勧告をすることができる旨を明らかにしたものである。
(3) 罰金の金額は、経済情勢の変化にかんがみ、五万円を一〇万円に、一〇万円を二〇万円に、二〇万円を五〇万円にそれぞれ引き上げている。

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