下水道法施行令の一部を改正する政令(平成五年政令第四〇五号)が平成五年一二月二七日に公布され、これに伴う関係省令の一部改正(下水道法施行規則の一部を改正する省令(平成六年建設省令第三号)、下水の水質の検定方法に関する省令の一部を改正する省令(平成六年厚生省・建設省令第一号)及び下水の処理開始の公示事項等に関する省令の一部を改正する省令(平成六年厚生省・建設省令第二号)。以上平成六年一月二七日公布。)と併せて平成六年二月一日に施行されることとなっている。
今回の改正は、水質汚濁防止法施行令の一部改正等により、公共用水域への排出水に対するジクロロメタン等の一三物質に係る排出規制等が平成六年二月一日から実施されることに伴い、特定施設を設置する工場又は事業場(特定事業場)から公共下水道又は流域下水道(以下「下水道」という。)に排除される下水の水質規制の基準にこれらの物質を追加するとともに、下水道からの放流水の水質検査(以下「水質検査」という。)の回数及び時期の合理化等を行うものであるので、その運用に関しては、左記の諸点に留意のうえ、遺憾のないよう配慮されたい。
第一 水質汚濁防止法の規制物質の追加等に伴う改正
1 下水道法施行令(以下「令」という。)第九条の四関係
(1) 改正の内容
水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成五年政令第四〇一号)が平成五年一二月二七日に公布され、ジクロロメタン等の一三物質が水質汚濁防止法第二条第二項第一号の「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質」として定められるとともに、排水基準を定める総理府令の一部改正(平成五年一二月二七日総理府令第五四号。以下「改正府令」という。)により、これらの物質に係る排水基準の設定並びに鉛及び砒素に係る排水基準の見直しが行われ、それぞれ平成六年二月一日から施行されることとなっている。
今回の追加等に係る物質は下水道の終末処理場において処理することが困難な物質(以下「処理困難物質」という。)であるため、特定事業場から下水道に排除される下水に対する処理困難物質に係る水質規制の基準を定めた令第九条の四第一項に一三物質を追加するとともに、改正府令により設定又は見直しが行われた排水基準と同一の基準を定めるものである。
(2) 運用上注意すべき事項
改正府令附則第四項及び第五項により、既に特定施設を設置している工場又は事業場(工事中のものを含む。)については、今回の水質汚濁防止法に基づく排出規制の適用が六カ月又は一年間猶予されている。
したがって、これらの特定事業場については、令第九条の三第一号又は第九条の四第四項により、当該六カ月又は一年の間は今回の改正後の令第九条の四第一項に規定する水質規制が適用されないことから、今回の政令改正に伴い新たに一三物質又は鉛若しくは砒素の処理施設の設置等が必要となる特定事業場に対しては、この間に適切な措置を行うよう、あらかじめ、この旨の周知徹底を図ること。
2 下水道法施行規則(以下「規則」という。)別記様式第四関係
令の一部改正に伴い、継続して下水を排除して下水道を使用する者があらかじめ下水道管理者に対して下水の量又は水質及び供用開始の時期を届け出る様式を定めた規則別記様式第四に、ジクロロメタン等の一三物質を追加するものである。
3 下水の水質の検定方法に関する省令第八条関係
「環境庁長官が定める排水基準に係る検定方法を定める等の件の一部を改正する件」(平成六年一月一〇日環境庁告示第二号)により、ジクロロメタン等の一三物質の検定方法が定められるとともに、カドミウム及びその化合物等の六物質並びに五項目の検定方法が改められたところである。
下水の水質の検定においてもこれらの方法を採用することとし、下水の水質の検定方法に関する省令第八条を改正して、ジクロロメタン等の一三物質の検定方法を追加するとともに、カドミウム及びその化合物等の一一物質の検定方法を改めるものである。
第二 水質検査の回数及び時期の合理化(令第一二条関係)
1 改正の内容
改正前の令第一二条第一項は、下水道管理者に対し、令第六条に掲げる全ての物質又は項目について、下水道の処理施設で処理された放流水については少なくとも毎月二回、その他の放流水については少なくとも毎年二月、五月、八月及び一一月中に各一回、水質検査を行うこととしていたが、このうち、令第九条の四第一項に掲げる処理困難物質については、それぞれの処理区域内における特定施設の設置の状況、過去の水質検査の結果その他の事情を勘案して、令第一二条第一項に規定する水質検査の回数及び時期による必要がないことが明らかであると認められるものについては、毎年二回を下らない範囲内において同項に規定する水質検査の回数及び時期と別の回数及び時期を定めることができることとするものである。
2 改正の趣旨
今回、以上の水質検査の回数及び時期に関する合理化を行う趣旨は、
1) 一般に、処理困難物質に係る下水道からの放流水の水質は、基本的に特定施設等から下水道へ排除される下水の水質によって決まるものであることから、過去の水質検査において問題がなく、かつ、処理区域内に存する特定施設等の処理困難物質の排出者の状況に変化がない場合等下水道からの放流水の処理困難物質に係る水質が変動する要因がないと認められる場合においては、一律に少なくとも毎月二回等の水質検査を行わなくとも水質上の問題が生じないと考えられること、
2) 特に、近年下水道の普及拡大が著しい中小市町村においては、下水道の規模も大きくないことから、下水道管理者が処理区域内における特定施設の設置状況、処理困難物質の排出状況等を詳しく把握することが容易である反面、同物質についての毎月二回の水質検査に係る費用が維持管理上大きな負担となっている事例が見られること、
から、今回、処理困難物質を一三物質追加するに際して、併せて処理困難物質に係る水質検査の回数及び時期について、下水道管理者の主体的な判断と責任の下に、合理化を図り得ることとしたものである。
3 運用上注意すべき事項
(1) 水質検査の回数及び時期を別に定めることができることとなるのは処理困難物質のみであり、それ以外の物質又は項目については、従前どおり水質検査を令第一二条第一項に規定する回数及び時期に実施する必要があること。
(2) 水質検査の回数及び時期を別に定めるか否かを判断するに際しては、処理困難物質全体について一括して判断するのではなく、各物質ごとに、過去の水質検査の結果、処理区域内における当該物質を含む下水を排出する特定施設等の設置状況等を勘案の上判断すること。
したがって、例えば、ある物質については年に二回とするが、別の物質については毎月二回を続けるという定め方も差支えないものであること。
(3) 水質検査の回数及び時期を別に定めるに当たって勘案すべき事情は、「処理区域内における特定施設の設置の状況、過去の水質検査の結果その他の事情」とされているが、それぞれ次の点に留意すること。
1) 処理区域内における特定施設の設置の状況
下水道法(以下「法」という。)第一二条の三の規定に基づく届出等により把握している特定施設の種類、特定施設からの下水の量及び水質、特定施設の新設、改廃等の状況に基づき、処理困難物質の排出状況の変化の有無等を判断するものとする。
2) 過去の水質検査の結果
法第二一条の規定に基づき行われた水質検査の結果に基づき判断するものとする。
3) その他の事情
特定施設以外の施設からの処理困難物質の排出状況、下水道からの放流水の水質の年間変動等に基づき判断するものとする。
(4) なお、処理区域内における特定施設等の設置状況等が変化した場合には、令第一二条第一項に規定する水質検査の回数及び時期と別に定めた回数及び時期にかかわらず、その段階において当該特定施設等からの下水の排出状況が安定するまでの間適宜水質検査を行った上で状況判断を行い、再度水質検査の回数及び時期について検討を行うこと。
(5) 今回追加されたジクロロメタン等の一三物質については、過去に当該物質の水質検査を行っていない限り、令第一二条第一項に規定する水質検査の回数及び時期による必要がないことが明らかであると認められるに足りる事情が存在するとは言えないことから、当分の間、少なくとも毎月二回の水質検査を行うこと。
第三 その他
1 特定施設の設置者に対する水質測定義務について
継続して下水を排除して下水道を使用する特定施設の設置者等に対する水質測定義務が法第一二条の一一に定められており、測定の頻度については規則第一五条第二号に規定されているところであるが、同号ただし書に規定されているように、終末処理場の能力、排水の量又は水質等を総合的に勘案して、下水道管理者は、測定の頻度について実情に応じ別の定めをすることも可能であるため、今回追加物質を含めその趣旨に留意し、運用に関し遺憾のないよう配慮されたい。
2 水質検査を含む維持管理体制の充実について
今回の水質検査の回数及び時期の合理化後も、下水道が公共用水域の水質保全に積極的に貢献すべき施設であることに変わりはないことから、終末処理場からの放流水の水質を令第六条の基準に適合させ、水質保全に寄与する役割を全うするため、維持管理体制の充実、放流水の水質検査の励行等により万全を期されたい。
3 砒素に係る排水基準の見直しと温泉排水の受入れについて
温泉を利用する旅館業に属する特定事業場に係る排出水(以下「温泉排水」という。)については、排水基準を定める総理府令別表第一の備考二により、当分の間、砒素及びその化合物の排水基準が適用されない(水質汚濁防止法の規制が適用されない)こととされているため、温泉排水が下水道へ排除される場合においても、令第九条の三第一号により、法第一二条の二の制限が適用されないこととなっている。
このため、温泉排水を受け入れている既設の下水道については、放流水の水質を今般の改正後の砒素及びその化合物に係る基準に適合させることが困難な場合があるため、改正府令附則第六項において、一定の要件(温泉排水に含まれる砒素の総量を当該下水道からの排出水の総量で除して得られる値が〇・一ppm超。)に該当する下水道については、当分の間、今般の改正前の排水基準を適用することとされている。
同項により、温泉排水の受入れが原因となって、放流水の水質を改正後の砒素及びその化合物に係る排水基準に適合させることが困難な既設の下水道についての経過措置は十分であると考えているが、既設の下水道(工事中のものを含む。)であって、同項の要件に該当しないために経過措置が適用されない結果、改正後の排水基準に対処できないものがあるときには、当職まで相談されたい。