国都下企第三二号
平成一三年六月二六日

各都道府県下水道担当部長・各指定都市下水道担当局長あて

国土交通省都市・地域整備局下水道部長通知


下水道法施行令の一部を改正する政令等の施行について


標記について、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成一三年政令第二〇一号)が平成一三年六月一三日に公布され、同年七月一日に施行されることに伴い、下水道法施行令の一部を改正する政令(平成一三年政令第二一三号)が平成一三年六月二二日に公布、下水道法施行規則の一部を改正する省令(平成一三年国土交通省令第一〇〇号)、下水の水質の検定方法等に関する省令の一部を改正する省令(平成一三年国土交通省・環境省令第一号)及び下水の処理開始の公示事項等に関する省令の一部を改正する省令(平成一三年国土交通省・環境省令第二号)が平成一三年六月二五日に公布され、同年七月一日より施行されることとなるが、これらの法令の適正な運用に当たっての留意点を左記に示すので、事務執行上の参考とされたい。
なお、都道府県におかれては、貴管内の市町村(指定都市を除く。)に対しても、この旨の周知についてよろしくお願いする。

第一 改正の趣旨

一 環境基準の設定について

平成一一年二月、「ほう素」、「ふつ素」及び「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」の三物質について、人体へ及ぼす悪影響に関する科学的知見が集積されてきたことを受け、環境基本法第一六条第一項に基づく水質の汚濁に係る環境基準のうち人の健康の保護に関する項目としてこれらの物質が追加された(ただし、「ほう素」及び「ふつ素」については、海域を除くこととされた。)。

二 水質汚濁防止法施行令等の一部改正について

上記三物質について環境基準が設定されたことを踏まえ、公共用水域に関してこれらの物質に係る排水規制を行うべく、今般、水質汚濁防止法施行令の一部が改正され、特定事業場からの公共用水域への排出水に係る水質規制の対象に「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」が追加された。
これにあわせて、排水基準を定める省令の一部改正も行われ、「ほう素」及び「ふつ素」については、海域に環境基準は設定されなかったものの「自然状態の濃度を大幅に越えないようにするための対応が必要」との中央環境審議会の答申を踏まえ、海域においても「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」の排水規制が行われることとなった。また、水質汚濁防止法(以下「水濁法」という。)上の「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」については、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素がその規制対象にされたほか、アンモニア性窒素は水中において容易に亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に変化し得るため、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の前駆物質として規制対象に追加された。そして、公共用水域における水中にあってはアンモニア性窒素の一部が亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に変化することを踏まえ、その量に〇・四を乗じたものと亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素との合計量で計算する(すなわち、アンモニア性窒素に係る換算係数を〇・四として総和を計算する。)こととされた。

三 下水道法施行令等の改正について

今般の下水道法施行令等における改正は、これらを踏まえ、特定事業場から公共下水道又は流域下水道に排除される下水についても「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素含有量」を水質規制の対象に追加したものである。

第二 改正の概要

一 下水道法施行令第八条の二関係

(1) 特定事業場からの下水の排除の制限に係る水質の基準(第九条の四)の対象に「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」を追加し、また、水質の基準を定める条例の基準(第九条の五)の対象に「アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素含有量」(以下「アンモニア性窒素等含有量」という。)を追加したことに伴い、使用開始等の届出を要する下水の水質の基準(以下「届出基準」という。)についても、これらの物質又は項目に係る規定を追加することとした。
(2) 「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」については、カドミウム、シアン等と同様に、終末処理場で処理することが困難な物質(以下「処理困難物質」という。)であるため、第九条の八に規定する基準を届出基準とした。
(3) 「アンモニア性窒素等含有量」については、生物化学的酸素要求量等と同様に終末処理場で処理することがある程度可能な項目(以下「処理可能項目」という。)であるため、条例で定めることのできる最も厳しい基準(第九条の九第二項第二号)を届出基準とした。ただし「アンモニア性窒素等含有量」については、水濁法に基づくいわゆる上乗せ条例(以下単に「上乗せ条例」という。)が終末処理場からの放流水に対して適用された場合に当該上乗せ条例で定められる基準に届出基準を連動させることとしてしまうと、終末処理場において高度処理で対応する等の場合には当該下水道管理者が除害施設の設置等に関して定める条例の基準の方が当該上乗せ条例で定められる基準より緩やかとなる可能性があるため、届出基準と除害施設の設置等に関して条例で定める基準が乖離し不整合を生じるおそれがある。したがって、上乗せ条例が適用された場合における「アンモニア性窒素等含有量」については、第九条の九第二項第二号に規定する基準より厳しい基準を当該下水道管理者が下水道法第一二条の一〇に基づき条例において除害施設の設置等に関して定めた場合のみ、その基準を届出基準とすることとした。

二 下水道法施行令第九条の三第三号関係

特定事業場からの下水の排除制限の適用除外を定めている本号について、「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」をその対象に追加した。

三 下水道法施行令第九条の四第一項関係

(1) 「ほう素及びその化合物」は、従前は下水道法における規制対象物質とはされていなかったが、今回、水濁法において新たに健康項目物質として追加され規制対象物質となることから下水道法においても規制対象物質に追加することとし、終末処理場において処理することが困難なことから本条に追加することとした。

特定事業場から下水道への排除基準値は、水濁法に基づく排水基準を定める省令において、河川、湖沼等と海域とで基準値が異なることから、下水道法施行令においてもこれに合わせて、河川、湖沼等を放流先とする下水道へ下水を排除する場合には一〇mg/l以下、海域を放流先とする下水道へ下水を排除する場合には二三〇mg/l以下とし、水濁法上の排水基準値と同値とした。

(2) 「ふつ素及びその化合物」については、「弗素化合物」が従前より水濁法上の生活環境項目に係る物質として本項の規制対象となっていたが、今般、水質汚濁防止法施行令において「ふつ素及びその化合物」が健康項目物質として規制対象となることに伴い、下水道法施行令においてもこの整理に従うこととした。したがって、改正前第三一号の「弗素含有量」を削り、「ふつ素及びその化合物」を新たに追加することとした。排除基準値についても「ほう素及びその化合物」と同様に河川、湖沼等と海域とで基準値が異なり、河川、湖沼等を放流先とする下水道へ下水を排除する場合には八mg/l以下、海域を放流先とする下水道へ下水を排除する場合には一五mg/l以下とし、水濁法上の排水基準値と同値とした。
(3) なお、「ポリクロリネイテッドビフェニル(別名PCB)」は、最近の用例に倣い、「ポリ塩化ビフェニル」と変更することとした。

四 下水道法施行令第九条の五関係

(1) アンモニア性窒素に係る換算係数について

すでに述べたとおり、水濁法では、アンモニア性窒素の量に〇・四を乗じたものと亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素との合計量で排水基準値が計算される(すなわち、アンモニア性窒素に係る換算係数を〇・四として総和が計算される。)。
これに対して、下水道に排除されたアンモニア性窒素は下水処理の過程でほぼ全てが亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に変化することとなるため、下水道法上の排除基準値については、アンモニア性窒素に〇・四を乗じることなく、そのままの値で亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素との合計量を計算することとなる(すなわち、アンモニア性窒素に係る換算係数を一として総和を計算する。)。

(2) 第一項及び第二項について

「アンモニア性窒素等含有量」については、終末処理場では通常の処理を行った場合には若干程度、高度処理を行った場合にはかなり高い水準で処理することが可能であることから本条に追加することとした。
条例で定めることのできる最も厳しい基準値は、終末処理場における処理能力や家庭排水による希釈等を勘案し、工場排水が一/四未満である下水道へ下水を排除する場合には三八〇mg/l、工場排水が一/四以上である下水道へ下水を排除する場合には一二五mg/lとし、終末処理場からの放流水に上乗せ条例が適用された場合にあっては、当該条例で定められる基準値にそれぞれ三・八、一・二五を乗じて得た数値を条例で定めることのできる最も厳しい基準値とした。

(3) 第三項について

「アンモニア性窒素等含有量」については、通常の処理を行った場合の除去率は若干程度であることから終末処理場が過度の負担を強いられることを防ぐため上乗せ条例を考慮する必要がある。したがって、改正前の第二号に追加することとし、これに伴い、改正前の第二号と第一号を入れ替えることとした。
なお、アンモニア性窒素の換算係数が、水濁法上では〇・四、下水道法上では一となっており異なっていることから、水濁法上の排水基準に係る数値の方が下水道法上の排除基準に係る数値より小さい場合であっても、下水中に含まれるアンモニア性窒素の割合が多ければ、具体の基準は水濁法上の排水基準の方が緩やかになる場合が想定される。本項の運用に当たっては、このような場合についても対象となることに留意されたい。

五 下水道法施行令第九条の六関係

「アンモニア性窒素等含有量」については、窒素含有量及び燐含有量と同様、通常の処理を行った場合における除去率は若干程度であることから上乗せ条例を考慮する必要がある。したがって、改正前の第二号に追加することとし、これに伴い、改正前の第二号と第一号を入れ替えることとした。

六 下水道法施行令第九条の八関係

第九条の四第一項において「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」を追加することに伴い、これらの物質を除害施設の設置等に関して条例で定めることのできる水質の基準へ追加した。その基準値は、原則として、特定事業場から公共下水道又は流域下水道に排除される下水に係る水質規制の基準値と同値とした。

七 下水道法施行令第九条の九関係

第九条の五第一項において「アンモニア性窒素等含有量」を追加することに伴い、この項目を除害施設の設置等に関して条例で定めることのできる水質の基準へ追加した。その基準値は、原則として、特定事業場から公共下水道又は流域下水道に排除される下水に係る水質規制の基準値と同値とした。

八 下水道法施行令第一二条関係

(1) 第二項は、処理困難物質については、下水道管理者は一定の場合において水質検査の回数及び時期を別に定めることができることを規定しているものであるが、この対象に、「ほう素及びその化合物」並びに「ふつ素及びその化合物」を追加した。
(2) また、放流水の水質検査について、ある項目について水質検査を行うことにより他の項目が水質の基準を満たすことが明らかな場合には、下水道管理者は、当該他の項目について水質検査を行わないことができることとする規定を第四項に新設した。具体的には、ある下水道からの放流水について「窒素含有量」と「アンモニア性窒素等含有量」の両方の放流水質基準が適用される場合において、「窒素含有量」に係る水質検査を行った結果の数値が「アンモニア性窒素等含有量」の放流水質基準値を下回っているならば、その下水道からの放流水は「アンモニア性窒素等含有量」についての放流水質基準を遵守していることは明らかであるため、この場合においては、「アンモニア性窒素等含有量」に係る水質検査を行わないことができることとしたものである。また、水濁法第二九条に基づくいわゆる横出し条例が定められた場合において、当該条例で規定された物質又は項目についても、上の事例と同様に包含関係にある場合には本項の対象となり得る。

九 下水道法施行令第二一条及び第二二条関係

下水道法第三〇条第一項に基づき政令で定められる技術上の基準によらなければならない特定排水施設となる要件である水質の基準及び同法施行令第二二条第三号の規定により暗渠としなければならない排水渠となる要件である水質の基準に、「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア性窒素等含有量」に係る基準を追加した。
なお、都市下水路は水濁法上は公共用水域として扱われるため、下水道からの放流水に対する上乗せ条例は公共下水道からの放流水又は流域下水道からの放流水にのみ適用されることとなる。したがって、「アンモニア性窒素等含有量」については第九条の五第一項第一号ただし書における上乗せ規定は除くこととした。

十 下水道法施行令第二四条の五関係

「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア性窒素等含有量」を追加した趣旨及びこれらの物質又は項目に係る留意事項については前述一を参照されたい。

十一 下水道法施行規則別記様式第四関係

別記様式第四は、下水道法第一一条の二に基づく使用開始等の届出に係る届出書の様式を定めているものであり、この様式に「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア性窒素等含有量」の欄を追加するとともに、「弗素化合物」についての欄を削り、「PCB」を「ポリ塩化ビフェニル」に改めることとした。

十二 下水の水質の検定方法等に関する省令第八条関係

「ほう素及びその化合物」、「ふつ素及びその化合物」並びに「アンモニア性窒素等含有量」に係る検定方法を追加することとし、検定の具体的な方法については、排水基準を定める省令に基づく昭和四九年環境庁告示第六四号に規定する環境大臣が定める検定方法を引用することとした。
また、「弗素含有量」についての検定方法を削り、「PCB」を「ポリ塩化ビフェニル」に改めることとした。

十三 下水の処理開始の公示事項等に関する省令第二条関係

下水道法施行令の一部改正により、第一二条第四項が同条第五項に項ずれしたことに伴い、改正前の同令第一二条第四項に規定される国土交通省令・環境省令で定める事項を規定する本条において「第一二条第四項」を「第一二条第五項」とする改正を行うこととした。

十四 附則関係

下水道法施行令の一部を改正する政令、下水道法施行規則の一部を改正する省令、下水の水質の検定方法等に関する省令の一部を改正する省令及び下水の処理開始の公示事項等に関する省令の一部を改正する省令は、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令の施行の日(平成一三年七月一日)から施行することとした。

第三 水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行について

一 特定施設の追加について

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令の施行に伴い、石炭を燃料とする火力発電施設のうち、廃ガス洗浄施設(水質汚濁防止法施行令別表第一第六三号の三)が水濁法上の特定施設とされ、これに伴い、下水道法上の特定施設ともされたので、下水道法第一二条の三第二項に規定する届出の提出、当該施設を設置する特定事業場から下水道へ排除する下水の水質基準の遵守等についての周知徹底方よろしくお願いする。

二 経過措置について

(1) 排水基準を定める省令の一部を改正する省令の施行に伴い、同省令附則において、「ほう素及びその化合物」並びに「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」に係る排水規制については、地方公共団体の条例の規定により既に罰則規定を伴う排水規制が実施されている場合を除き、既に特定施設を設置している工場又は事業場(工事中のものを含む。)は施行の日から六ケ月間(一定の特定事業場については一年間)は適用されないこととされ、また、「ふつ素及びその化合物」に係る排水基準については、施行の日から六ケ月間(一定の特定事業場については一年間)はなお従前の例によることとされている。
(2) 下水道法においては、改正後の下水道法施行令第九条の三第一号及び第九条の六第一号の規定により、(1)における水質汚濁防止法上の経過措置と同様に、既に特定施設を設置している工場又は事業場(工事中のものを含む。)が下水道に下水を排除する場合には下水道への排除制限が適用されないこととなる。したがって、各下水道管理者にあっては、今般追加される物質又は項目に係る規制については、この経過措置に留意した上で適切に運用されるようお願いする。

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