54国地山第四四号
昭和五四年四月一二日

各都道府県知事あて

国土事務次官通達


山村第三期対策運営要綱


昭和五四年度から山村第三期対策を実施することに伴い、別紙のとおり山村第三期対策運営要綱を定め関係都道府県知事あて通知したので、これの実施に当たつてはよろしく御協力願いたい。
なお、現行の山村振興対策については、山村第二期対策運営要綱(昭和四七年五月二四日付け経企山村第三三号経済企画事務次官通達)によることとする。

山村第三期対策運営要綱

第一 趣旨

昭和四〇年に山村振興法(昭和四〇年法律第六四号。以下「法」という。)が制定されて以来、法に基づき、指定された振興山村を対象として、第一期及び第二期の山村振興対策が実施され、交通・通信、産業生産基盤、文教、生活環境、国土保全、観光等の各般にわたる施設の整備が推進されてきた。その結果、農業漁業等の産業振興、日常生活における便益性の向上、住民意欲の醸成及び地域振興体制の強化がなされる等山村における経済力の培養と住民福祉の向上が図られてきた。
しかし、このような対策の成果にもかかわらず、山村をめぐる情勢は依然として厳しく、山村の人口は若年層を中心に減少しており、また、産業基盤と生活環境の整備の面における山村と他の地域との格差が解消されていない等山村には多くの問題がある。
一方、国土の約半分を占める山村は、農林産物の供給、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の面で重要な役割を担つており、都市化の進展するわが国において、国民が潤いのある豊かで安全な生活を営む上でかけがえのない地域となつている。
山村が、当面する諸問題に適切に対処しつつ、山村に課せられた重要な役割を十分果たすためには、山村振興の担い手の確保のための活力ある人づくりに努めつつ、地域特性に即し住民の自主性を尊重した個性ある村づくり、若者にとつても住みよい魅力ある環境づくりを進める等により山村における定住条件の整備を推進し、若者が進んで住みつく魅力ある地域社会を建設する必要がある。
このような観点から、山村第三期対策はこれまでの対策の成果を基礎として、山村における新たな開発整備を推進しようとするものであり、本要綱はこの対策の円滑な運営を図るための対策運営の大綱を定めたものである。

第二 方針

一 山村第三期対策の運営目標

国土庁長官は、法に基づいて指定された振興山村のうち開発整備の緊要度の高いものから順次第三期山村振興計画樹立地域(以下「計画地域」という。)を選定する。
内閣総理大臣は、計画地域に係る山村振興計画及び昭和五五年度以降に指定された振興山村について作成した山村振興計画(以下これらの計画を「第三期山村振興計画」という。)の承認を行うものとし、関係事業主体において第三期山村振興計画に基づく事業を地域の特性を生かし総合的かつ有効適切に実施することを運営目標とする。

二 山村第三期対策の実施期間

山村第三期対策については、昭和五四年度以降おおむね一〇年間に実施することを目途として行うものとする。

三 他の地域開発計画等との調整

計画地域の選定並びに第三期山村振興計画の作成及び実施に当たつては、国土総合開発法(昭和二五年法律第二〇五号)の規定による国土総合開発計画その他法令の規定による地域振興に関する計画との調和を図るとともに各省庁の実施する関連施策に対して十分配慮するものとする。
また、都道府県が昭和五四年度に作成する都道府県山村振興基本方針についても十分考慮する。

第三 措置

一 計画地域の選定

(一) 都道府県知事による計画地域の選定申請

都道府県知事は、国土庁長官が毎年度都道府県知事に対して指示する地域数により、開発整備を図ることが必要かつ適当であると判断する振興山村を計画地域として申請する。なお、申請に当たつては、同一市町村内にある振興山村を同時に行うことを原則とする。

(二) 都道府県知事による選定申請書の提出

都道府県知事は、申請する振興山村について当該地域を申請した事由その他地方振興局長が定める事項を記載した申請書を国土庁長官に提出するものとする。

(三) 計画地域の選定

国土庁長官は、都道府県知事からこの申請があつた場合には、関係行政機関の長と協議し開発整備を図ることが必要かつ適当な振興山村を計画地域として選定し、都道府県知事に通知するものとする。

二 第三期山村振興計画の作成及び承認

(一) 計画の作成

都道府県知事は、一の(三)により計画地域の選定があつた場合には、当該振興山村について、山村振興法施行令(昭和四〇年一〇月一日政令第三三一号、以下「令」という。)第三条各号に掲げる事項を内容とする第三期山村振興計画を作成する。この場合、都道府県知事はあらかじめ当該振興山村の区域を管轄する市町村長(当該振興山村の区域をこえた施設の整備を計画の内容とする場合にあつては、その施設の所在する区域を管轄する市町村長を含む。)と協議するものとする。
なお、都道府県知事は、第三期山村振興計画に基づいて実施される農林水産省の振興山村を対象とした特別な事業に関し、あらかじめ地方農政局長(北海道については農林水産省構造改善局長。)と協議するほか計画の作成に当たつて関係する事項につき当該事項を所掌する地方農政局長、営林局長(営林支局長を含む。)、通商産業局長、陸運局長、地方港湾建設局長、地方電波監理局長、地方建設局長等と必要に応じて協議する計画作成を行うものとする。

(二) 計画の内容

計画の内容は、当該振興山村につき、令第三条各号に掲げる事項とする。なお、振興山村の振興上特に必要と認められる施設については、当該振興山村の区域をこえてこれを計画の内容の一部とすることができる。

(三) 計画の作成上留意すべき事項

計画の作成に当たつては、法第一条の目的及び法第三条に掲げる山村振興の目標を達成することを目的とし、特に次に掲げる事項に留意して作成するものとする。
ア 計画は、立地条件及び賦存する資源の開発可能性等の地域の実情に即したものとするとともに、市町村民、特に若者を中心とした地域住民の創意が生かされたものとすること。
イ 日常生活の拠点である集落を中心とする生活環境の総合的な整備及び都市における教育・医療等の機能が享受できるような交通条件の整備等について考慮すること。
ウ それぞれの立地条件に適した開発の方向を見出し、住民意識の高揚を図る等により施策を推進する山村振興の担い手の育成について考慮すること。
エ 農林水産物等の生産計画については、特に需給の動向、流通状況及び流通施設を考慮すること。
オ 林業の振興及び国有林野の活用については、林業基本法(昭和三九年法律第一六一号)及び国有林野の活用に関する法律(昭和四六年法律第一〇八号。)の主旨にのつとり有効かつ適切に行われるよう考慮すること。
カ 計画の内容である事業が相互に有機的に関連し、その成果を総合的に発揮しうるとともに、技術的、資金的その他の見地から見て、実施可能であること。
キ 当該振興山村について、第三の四の後段の規定による民間団体の調査の結果がある場合には、これを十分活用すること。
ク 他の地域振興に関する法令に基づく施策、広域的な経済社会生活圏の整備に関する施策その他政府により講じられる施策との調整を図ること。

(四) 承認の申請

都道府県知事は、計画を作成した場合には、法第八条第三項において準用する同条第一項の規定に基づき当該振興山村の区域を管轄する市町村長(当該振興山村の区域をこえた施設の整備を計画の内容とする場合にあつては、その施設の所在する区域を管轄する市町村長を含む。)と協議した旨を記載した書面を添付した計画書を、別に地方振興局長が定める要領により、内閣総理大臣に提出するものとする。

(五) 計画の承認

(四)の申請書の提出があつた場合、内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して承認を行うものとする。

(六) 計画の変更

第三期山村振興計画を変更しようとするときは、(四)及び(五)に準じて行うものとする。

三 山村振興方針の勧告

内閣総理大臣は、第三期山村振興計画の作成に関し必要があると認めるときは、関係行政機関の長に協議して山村振興に関する具体的方針につき関係都道府県知事に勧告することができる。

四 政府による調査

政府は、一の計画地域の選定、二の(五)の計画の承認、二の(六)の計画の変更及び三の勧告その他山村振興法の目的達成上必要な調査を行うものとする。この場合政府は必要に応じ国土庁長官が適当と認める民間団体に所要の調査を実施させることができる。

五 担い手の育成等

都道府県知事は、山村振興対策の円滑な推進を図るため、別に定めるところにより山村振興の担い手を育成するとともに、山村と都市との提携・交流の促進、山村地域における救急医療体制の整備の促進等のために必要な事業を実施するものとする。

六 計画の実施

計画の実施に当たつては、それぞれ関係する事業の分野につき国、都道府県、市町村及び農業協同組合、森林組合等関係各団体は協力して計画の達成を図るものとする。
なお、法第一〇条第二項に規定する振興山村に係る計画の実施に当たつては、国は、当該振興山村の振興のために特に重要と認められる事業の円滑な実施が促進されるよう配慮するものとする。


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