各都道府県知事あて
別添一 新山村振興対策基本方針策定要領
I 策定の趣旨
山村においては、昭和四〇年の山村振興法制定以来、同法に基づき第一期、第二期、第三期と各種の施策を実施し、産業基盤、生活基盤とも基礎的なものについては、かなりの成果をあげてきているところである。
しかしながら、最近、都市住民のふるさと志向が急激に高まってきている反面、山村では、森林等の管理水準の低下に伴う国土管理の必要性の増大、若年層を中心とする人口流出、高齢化など新たな問題が生じてきている。
このような山村の現状を踏まえ、現在の対策を見直し、新たな観点に立った山村振興対策を検討するため、国土審議会山村振興対策特別委員会において意見書「新しい山村振興対策について」がまとめられたところである。
今後の山村振興対策としては、同報告を踏まえ、地域資源を高度に活用して経済の活性化及び森林や農用地等の保全の推進を図ることにより安全なゆとりのあるくらしのできる美しい山村をめざすこととし、このため新たな山村振興対策を平成三年度から実施することとする。
また、新対策の計画的かつ円滑な推進を図るため、都道府県知事は当該都道府県における山村の現状を的確にとらえ、長期的、広域的観点から山村振興計画の指針となる新山村振興対策基本方針(以下「基本方針」という。)を策定するものとする。
II 基本方針の内容
基本方針は、次の事項について定めるものとする。
基本方針策定の趣旨及びその性格等について、当該都道府県のおかれている実情に応じ記述する。
一 山村の現状と問題点について、IVの附属参考資料等を参考におおむね次の項目について記述する。
(一) 山村の現状と問題点
1) 自然的条件……地形、地質、気象等
2) 経済的条件……土地利用、労働力、所得、産業構成、森林、農用地等の保全、生産活動、財政事情等
3) 社会的条件……人口、生活環境(道路、医療、教育、上下水道等)等
4) 山村の特色……前記1)〜3)により類型的に山村の特色を説明する。
5) 問題点……当面する問題点を重点的に要約して記述する。
(二) 山村の役割
山村が地域社会において担うべき役割について森林、農用地等の保全の現状も踏まえて記述する。
二 これまでの山村振興対策の実績と評価
(一) 対策の概要
計画樹立の選定状況、部門別施策の概要、各種事業の実施状況等
(二) 対策の評価と問題点
三 新山村振興対策の方向
山村の現状と当面する問題に適切に対処するとともに、山村がその役割を果たすため長期的視点から新山村振興対策の方向について記述する。
(一) 基本的方向
1) 目標
新山村振興対策の基本的な目標
2) 目標達成のための基本的な方策
次の事項に関する基本的な方策について記述する。
ア 国土管理の総合的推進
イ 産業振興及び一次から三次産業までを組み合わせた総合産業の推進
ウ 第三セクターの育成、活用
エ 交通、通信、文教、社会、生活環境等の生活、産業基盤の整備
オ 山村と都市との交流の推進
カ その他必要な施策
(二) 部門別振興施策
必要に応じ次の各部門について施策の方向につき、担い手、活動手法、施設の整備等の観点から記述する。
ア 森林、農用地等の保全、国土保全施設整備等国土管理施策
イ 農林漁業等産業の経営基盤の改善強化及び総合産業の育成施策
ウ 第三セクターの設立、運営指導、支援施策
エ 交通、通信、文教、社会、生活環境施策
オ 山村と都市との交流の推進施策
カ その他必要な施策
III 基本方針の承認
一 都道府県知事は基本方針を策定のうえ、七月一〇日までに国土庁長官へ提出し、その承認を受けるものとする。
二 国土庁長官は都道府県知事から基本方針の提出があった場合には、関係行政機関の長と協議して承認するものとする。
IV 附属参考資料
都道府県知事は、次の項目について山村基礎調査を実施し、別紙様式によりとりまとめ、基本方針に添付する。
人口動向
土地利用状況
所得
森林、農用地等の保全の状況
国土保全
産業
第三セクターの状況
交通・通信
教育
社会・福祉
医療・厚生
消防
交流
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別紙様式 <別添資料> |
基本方針附属参考資料記載要領
1 山村の概要
(1) 年齢階別人口
40、60年は山村カード及び都道府県統計による。
平成2年については、同年国勢調査による。
下段は各年の総数を100とした場合の年齢階層ごとの比。
(2) 世帯数
40、60年は山村カード及び都道府県統計による。
平成2年については、同年国勢調査による。
(3) 土地利用状況
同上
(4) 所得
同上
2 国土管理
(1) 森林・農用等の保全
ア 民有人工林保育等実施状況
平成元年11月13日付け元国地山第135号「山村振興次期対策に係る調査について」(以下「次期対策調査」という。)の結果を記入すること。
イ 耕作放棄地
農林水産省統計情報事務所、都道府県統計資料により、平成2年度の数値を記入すること。
(2) 国土保全
山村カードの記載要領に準じ、平成2年4月1日現在で記入する。
3 産業
(1) 産業別就業人口
40、60年は山村カード及び都道府県統計による。
平成2年については、同年国勢調査による。
(2)〜(6)
40、60年は山村カード及び都道府県統計による。
平成2年については、同年国勢調査による。
作業班、水揚げ高等については、それぞれ各農協、漁協、森林組合、観光協会等からの聞き取りによる。
年齢階別就業人口については、1990年農林業センサス等の結果から推計してもよい。
(5)、(6)は振興山村分のみ。
4 第3セクター
山村についてのみ。
職員数は臨時雇用を除く。
「次期対策調査」の結果を記入する。
5 生活環境
(1) 交通
山村カードの記載要領に準じ、平成2年4月1日現在で記入する。
(2) 通信
同上
(3) 教育
同上
(4) 社会・福祉
同上
要改築のうち老朽化欄は耐用年数を超えているものを記入すること。
(5) 医療・厚生
山村カード及び「次期対策調査」の記載要領に準じ、平成2年4月1日現在で記入する。
(6) 消防
同上
6 交流
振興山村についてのみ。
形態別の振興山村数を記載する。主催形態は問わない。
同一振興山村が複数欄にまたがる場合はそれぞれにカウントすること。
計画中欄は、主催形態を問わず、現に計画中のもの。
「次期対策調査」の結果を記入する。
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別添二 新山村振興対策運営要綱
第一 趣旨
昭和四〇年に山村振興法(昭和四〇年法律第六四号。以下「法」という。)が都市との格差の是正を目的として制定されて以来、同法に基づき第一期から第三期の山村振興対策が実施され、交通・通信、産業生産基盤、文教、生活環境、国土保全、観光等の各般にわたる施策が進展し、山村における産業基盤、生活基盤とも充実されてきた。
しかし、最近では、法制定当時とは大きく情報が変わり山村では森林等の管理水準の低下に伴う国土管理の必要性の増大、若年者を中心とする人口流出、高齢化等が大きな問題となってきている。
このような問題に適切に対処するため、従来の施策に加え新たな観点に立った山村振興対策の推進が求められていることから、平成三年度から山村における適正な国土管理を推進するとともに地域資源を高度に活用し、経済の活性化を図り、豊かで安全かつ快適な環境のもとで、ゆとりのある暮らしのできる美しい山村をつくることを目標とした新しい山村振興対策を推進する必要がある。
このような観点から、新山村振興対策を推進しようとするものであり、本要綱はこの対策の円滑な運営を図るための対策運営の大綱を定めたものである。
第二 方針
一 新山村振興対策の運営目標
法に基づいて指定された振興山村のうち開発整備並びに森林、農用地等の保全の緊要度の高いものから順次国土庁長官により選定された新山村振興計画樹立地域(以下「計画地域」という。)に係る内閣総理大臣の承認を受けた山村振興計画(以下「新山村振興計画」という。)に基づく事業を関係事業主体が地域の特性を生かし総合的かつ有効適切に実施することを運営目標とする。
二 新山村振興対策の実施期間
新山村振興対策については、平成三年度以降おおむね一〇年間に実施することを目途として行うものとする。
三 他の地域開発計画等との調整
計画地域の選定並びに新山村振興計画の作成及び実施に当たっては、山村の担っている国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の重要な役割を発揮させるため森林等の保全を図るとともに、国土総合開発法(昭和二五年法律第二〇五号)の規定による国土総合開発計画その他法令の規定による地域振興に関する計画との調和を図るとともに各省庁の実施する関連施策に対して十分配慮するものとする。
また、別に定める都道府県知事が策定する新山村振興対策基本方針(平成三年四月一一日付け3国地山第五四号国土事務次官通達)について十分考慮するものとする。
第三 措置
一 計画地域の選定
(一) 都道府県知事による計画地域の選定申請
都道府県知事は、国土庁長官が毎年度都道府県知事に対して指示する地域数により、開発整備並びに森林、農用地等の保全を図ることが必要かつ適当であると判断する振興山村を計画地域として申請する。なお、申請に当たっては、同一市町村内にある振興山村を同時に行うことを原則とする。
(二) 都道府県知事による選定申請書の提出
都道府県知事は、申請する振興山村について、当該地域を申請した事由その他地方振興局長が定める事項を記載した申請書を国土庁長官に提出するものとする。
(三) 計画地域の選定
国土庁長官は、都道府県知事からこの申請があった場合には、関係行政機関の長と協議し開発整備並びに森林、農用地等の保全を図ることが必要かつ適当な振興山村を計画地域として選定し、都道府県知事に通知するものとする。
二 新山村振興計画の作成及び承認
(一) 新山村振興計画の作成
都道府県知事は、一の(三)により計画地域の選定があった場合には、当該振興山村について、山村振興法施行令(昭和四〇年一〇月一日政令第三三一号。以下「令」という。)第三条各号に掲げる事項を内容とする新山村振興計画を作成するものとする。この場合、都道府県知事はあらかじめ当該振興山村の区域を管轄する市町村長(当該振興山村の区域をこえた施設の整備を新山村振興計画の内容とする場合にあっては、その施設の所在する区域を管轄する市町村長を含む。)と協議するものとする。
なお、新山村振興計画に基づいて実施される農林水産省の振興山村を対象とした特別な事業に関し、あらかじめ地方農政局長(北海道については農林水産省構造改善局長)と協議するほか、新山村振興計画の作成に当たって関係する事項につき当該事項を所掌する地方農政局長、営林局長(営林支局長を含む。)、通商産業局長、地方運輸局長、港湾建設局長、地方郵政局長、地方電気通信監理局長、地方建設局長、北海道開発局長等と必要に応じて協議して計画作成を行うものとする。
(二) 新山村振興計画の内容
新山村振興計画の内容は、当該振興山村につき、令第三条各号に掲げる事項とする。なお、法第一条に規定する山村の担っている重要な役割を発揮させるため同法第三条に規定する森林等の保全を図ることを十分に考慮の上、当該保全に関する事項を記載することとする。
また、振興山村の振興上特に必要と認められる施設については、当該振興山村の区域をこえてこれを計画の内容の一部とすることができる。
(三) 新山村振興計画の作成上留意すべき事項
新山村振興計画の作成に当たっては、法第一条の目的及び法第三条に掲げる山村振興の目標を達成することを目的とし、特に次に掲げる事項に留意して作成するものとする。
ア 新山村振興計画は、立地条件及び賦存する資源の開発可能性等の地域の実情に即したものとするとともに、市町村民、特に若者を中心とした地域住民の創意が生かされたものとすること。
イ 地域における生活、医療の改善、産業振興等を図るため、幹線道路、幹線へのアクセス道路、城内道路の整備等の交通条件の整備について考慮すること。
ウ それぞれの立地条件に適した開発の方向を見い出し、住民意識の高揚を図りつつ、労働環境、福利厚生等の面で望ましい就労の場を作るなど山村振興の担い手の育成、確保について考慮すること。
エ 農林水産物等の生産計画については、特に需給の動向、流通状況及び流通施設を考慮すること。
オ 林業の振興及び国有林野の活用については、林業基本法(昭和三九年法律第一六一号)及び国有林野の活用に関する法律(昭和四六年法律第一〇八号)の主旨にのっとり、有効かつ適切に行われるよう考慮すること。
カ 新山村振興計画の内容である事業が相互に有機的に関連し、その成果を総合的に発揮しうるとともに、技術的、資金的その他の見地から見て、実施可能であること。
キ 当該振興山村について、第三の四の後段の規定による民間団体の調査結果がある場合には、これを十分活用すること。
ク 他の地域振興に関する法令に基づく施策、広域的な経済社会生活圏の整備に関する施策その他政府により講じられる施策との調整を図ること。
(四) 承認の申請
都道府県知事は、新山村振興計画を作成した場合には、法第八条第三項において準用する同条第一項の規定に基づき当該振興山村の区域を管轄する市町村長(当該振興山村の区域をこえた施設の整備を新山村振興計画の内容とする場合にあっては、その施設の所在する区域を管轄する市町村長を含む。)と協議した旨を記載した書面を添付した計画書を、別に地方振興局長が定める要領により、内閣総理大臣に提出するものとする。
(五) 新山村振興計画の承認
(四)の申請書の提出があった場合、内閣総理大臣は関係行政機関の長と協議して承認を行うものとする。
(六) 新山村振興計画の変更
新山村振興計画を変更しようとするときは、(四)及び(五)に準じて行うものとする。
三 山村振興方針の勧告
内閣総理大臣は、新山村振興計画の作成に関し必要があると認めるときは、関係行政機関の長に協議して山村振興に関する具体的方針につき関係都道府県知事に勧告することができる。
四 政府による調査
政府は、一の計画地域の選定、二の(五)の新山村振興計画の承認、二の(六)の新山村振興計画の変更及び三の勧告その他山村振興法の目的達成のための措置に必要な調査を行うものとする。この場合政府は必要に応じ国土庁長官が適当と認める民間団体に所要の調査を実施させることができる。
五 第三セクターの設立・運営支援等
新山村振興対策の推進のためには、森林等の保全に関する事業及び多様な地域資源を活用した総合産業の担い手として、地方公共団体の出資に係る法人(以下「第三セクター」という。)を育成・活用し、勤務形態や年金、退職金等福利厚生面で若者等に魅力ある就業の場を確保することが有効な施策と考えられる。
今般、山村振興法の一部を改正する法律(平成三年法律第一二号)が公布、施行され、振興山村の区域において森林、農用地等の保全に関する事業を行う第三セクターに対して税制、財政上等の支援措置が講じられることとなったことから、同法並びに平成三年四月一日付け国土事務次官通達「山村振興法の一部を改正する法律等の施行について」及び平成三年四月一日付け国土庁地方振興局長通達「山村振興法の一部を改正する法律等の運用について」の趣旨等を踏まえ、第三セクターに対して指導、助言その他の援助を行うこと等により山村振興対策の一層の充実を図るものとする。
この場合、第三セクターの育成・活用に当たっては、地域住民に加え、農業協同組合、森林組合、地域の関連企業の意向や地域の資源、産業等の状況等を慎重に考慮する必要があることに留意されたい。
また、山村振興の担い手を育成するとともに、山村と都市との提携・交流の促進、山村地域における救急医療体制の整備の促進に努めるものとする。
六 新山村振興計画の実施
新山村振興計画の実施に当たっては、国、都道府県、市町村並びに農業協同組合、森林組合及び法第一二条に規定する法人(第三セクター)等関係各団体は、それぞれ関係する事業の分野につき協力して新山村振興計画の達成を図るものとする。
なお、法第一〇条第二項に規定する振興山村に係る新山村振興計画の実施に当たっては、国は、当該振興山村の振興のために特に重要と認められる事業の円滑な実施が促進されるよう配慮するものとする。
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