各都道府県担当部長・政令指定都市担当局長あて
記
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別添 開発と文化財の取扱いについての調整、調査等に関する事務処理等の標準
(1) 組合等施行土地区画整理事業
![]() (2) 都市計画法第29条の許可に係る宅地開発事業
![]() 宅地開発事業に伴う埋蔵文化財の取扱いに関する手引(案)
(要旨)
目次
一 手引の利用に当たって
二 宅地開発事業と埋蔵文化財保護に関する基本的姿勢
三 宅地開発事業の流れと埋蔵文化財への対応
四 事前協議の具体的進め方及び協定書・実施計画書の作成
五 埋蔵文化財取扱いに係る各種手続き(略)
六 資料編(略)
1 手引の利用に当たって
(1) 「手引」の目的
本「手引」は、宅地開発事業の実施に際し必要とされる埋蔵文化財に関する事業者と教育委員会との調整、法令上の手続、実施すべき措置等について、事業を進める側の立場からわかりやすく説明し、宅地開発事業と文化財保護の円滑な実施を図るための調整に資することを目的として作成されたものである。
(2) 「手引」が対象としている宅地開発事業の種類
![]() 2 宅地開発事業と埋蔵文化財保護に関する基本的姿勢
宅地開発事業者においては、宅地供給という重大な社会的使命を今後とも全うするとともに、併せて埋蔵文化財への対応をも真剣に考慮し、広く国民の理解を得るよう努力していく必要があろう。また、教育委員会等においては、埋蔵文化財の発掘調査体制の整備充実を図るとともに、宅地開発事業の意義を理解し、事業者の理解のもとに保存、調査等の措置を進めるように努力しているところである。
以上のような基本的理解にたって、文化財を保護する側と国土を開発する側は常に緊密に連絡をとりながら、埋蔵文化財の保存と調整に当たる努力がなされることが必要である。
3 宅地開発事業の流れと埋蔵文化財への対応
「手引」においては、1)土地区画整理事業、2)新住宅市街地開発事業、3)その他の宅地開発事業について、それらの事業の進められる順序に従い、四段階に分けて各段階ごとに必要な措置等を示すこととした。
このうち、組合等施行土地区画整理事業についての概要は、次のとおりである。
(1) 企画段階
1) 事業予定地の埋蔵文化財の所在状況の把握(教育委員会への埋蔵文化財分布状況の照会)、施行予定者は、埋蔵文化財包蔵地の分布状況をチェックする。
基本的には、既存資料(遺跡地図、遺跡台帳、遺跡カード等)により以下の事項を調査し、基本構造の策定資料とする。
・ 埋蔵文化財包蔵地の所在状況(位置と範囲の概要)
・ 遺跡の種類
・ 指定文化財(国、都道府県、市町村)の有無
2) 埋蔵文化財取扱い方針の把握
施行予定者は、教育委員会との連絡を密にし、埋蔵文化財包蔵地の状況や取扱いの基本方針、調査体制、史跡の指定等の予定などをよく確認しておくとともに、自らも埋蔵文化財の保護への配慮を行うことが望ましい。
3) 埋蔵文化財包蔵地の取扱いを考慮した基本構想の策定
基本構想の策定において、施行予定者は以下の点に配慮するものとする。
・史跡等の指定地域やこれに準ずる重要な遺跡の密集した地区については、周辺の土地利用との関連や、公園緑地等として現状のまま利用できるかどうかなどを判断した上で、事業区域を設定する。
・遺跡を事業区域に含めた場合には、遺構を損傷する等の影響を及ぼす恐れのある計画を避ける配慮をしておく方が、発掘調査を実施する必要がなくなる等の理由で事業全体としては得策となる場合もある。
(2) 計画策定段階
4) 事業予定地内における埋蔵文化財所在状況の現地確認(教育委員会への現地踏査実施の要請)
施行予定者は、教育委員会に対して現地踏査の実施を要請する。
詳細な埋蔵文化財の所在状況の把握は、本来教育委員会を始めとする文化財保護行政側で行われなければならないものであり、現地踏査はそのための手段であるから、施行予定者としては教育委員会に事業の計画趣旨をよく説明し、必要な措置を執ってもらう(現地踏査の費用は教育委員会が負担するのが適当である)。
5) 埋蔵文化財の所在状況の関係権利者への説明
施行予定者は、基本構想の説明とともに、埋蔵文化財の所在状況を土地所有者その他の関係権利者に事前に説明し、事業の目途を明らかにしておく必要がある。
6) 埋蔵文化財包蔵地の範囲、性格の確認(教育委員会への範囲確認調査実施の要請)
施行予定者は、事前協議、基本計画策定の段階に教育委員会に状況を確認し、必要に応じて埋蔵文化財の範囲確認等の調査実施を教育委員会に要請する。
この調査は、事前協議の重要な資料であるとともに、不時発見遺跡による事業費の増大と工事中断を防止するうえで重要なものであるので、的確な調査を教育委員会に要請する。
なお、範囲確認調査は、実情にあわせて調整する必要があるが、遺跡地図や情報の整備の一環として教育委員会側の負担で行うのが原則である。
7) 事業の推進と埋蔵文化財取扱いの調整のための事前協議
事業を進めるに当たって必要とされる埋蔵文化財関係の諸措置については、施行予定者と教育委員会が相互に連携して進めなければ実効を期しがたいものが多いので、あらかじめ事業の実施と埋蔵文化財の取扱いについて協議し、合意しておく必要がある。
(i) 事前協議の時期
事前協議は、基本計画策定以前の可能な限り早い時点に始めるのが適切である。
(ii) 事前協議の当事者
事前協議の当事者は、事業者及び教育委員会が原則であるが、発掘調査を実施することとなる機関が教育委員会以外である場合には、当該機関を加える必要がある。
(iii) 事前協議の内容
協議の内容は、事業区域内の埋蔵文化財全般に関して行うことが望ましい。
8) 協定書の作成
埋蔵文化財の取扱いに関する事前協議の内容について、両者の合意を明らかにする上で協定書を作成することとする。
協定書には、協議による合意事項及び留保事項を明確にしておくこととする。
なお、事前協議段階では可能な限り不確定事項を残さないようにし、特に重要な遺跡の発見、事業の著しい遅延・土地買収の遅延等真に止むを得ない事情のある場合のほかは、協定書を変更しないようにする。
9) 埋蔵文化財の取扱い方針を踏まえた基本計画の策定
施行予定者は、事前協議の結果に基づく埋蔵文化財の取扱い、発掘調査等の措置と工事スケジュールとの関係等の方針を踏まえて基本計画を策定する。
(3) 計画の意思決定段階
10) 文化財保護法上の手続き
施行者は、文化財保護法第五七条の二の届出を教育委員会を経由して文化庁長官へ提出することが必要であり、これを都市計画決定後の発掘調査開始直前に行うこととする。
11) 発掘調査その他の措置の実施
協定成立後、施行者、教育委員会等で協議の上、調査の実施に関する契約等を行う。
契約が成立した後、教育委員会等は速やかに発掘調査を実施する。
12) 埋蔵文化財の取扱い方針を踏まえた事業計画の策定
基本計画の策定の場合と同様、施行者は埋蔵文化財の取扱い等の方針を踏まえて事業計画を策定する。
13) 発掘調査その他の措置に対する協力
発掘調査その他の措置の実施に際し、教育委員会から施行者に対し協力の依頼があった場合、
・発掘調査におけるその効率的な実施のための機械・器具類の提供
・現状保存に係る埋蔵文化財包蔵地の施行地区内での取扱い(例えば公園・緑地の整備方法)
・その他可能なもの
については、施行者は協力することが望ましい。
14) 発掘調査その他の措置の進行状況の把握
発掘調査その他の措置の進行状況は事業者でも把握し、予定との違い等疑問の点については、関係者から説明を受け、事業の進行との調整を怠らないようにする。
(4) 事業の認可以降
15) 発掘調査その他の措置と並行して可能な事業の実施
施行者は、発掘調査等の措置の実施中であっても、安全で迅速な発掘調査に支障を及ぼさない範囲で、教育委員会と協議の上、並行して着手できる工事等があれば実施する。
16) 不時発見遺跡の取扱い
協定書作成後新たに発見された遺跡については、その取扱いについて、施行者と教育委員会との協議による調整が必要である。
17) 発掘調査等現場の引渡し
施行者は、発掘調査等現場を使っての措置が終了した段階において、確実に現場の引渡しを受けておく。
なお、報告書の作成については、例えば、極端に美麗な体裁の報告書は避けること、印刷部数は必要最小限とすること等の調整を教育委員会との間で行う。
〔組合等施行土地区画整理事業〕
![]() 4 事前協議の具体的進め方及び協定書・実施計画書の作成
(1) 事前協議の内容
事前協議で調整を必要とする事項は、最終的には宅地開発事業と関係する埋蔵文化財の状況によって差異が生じ得るが、基本的には、関係する事項全般にわたって行っておく方が後日のためには望ましい。
1) 事業予定地内の埋蔵文化財の取扱い区分
![]() 2) 現状保存
現状保存することとした遺跡については、土地利用計画との整合を図りながら、
a 現状のままの土地の状態で公園・緑地、学校敷地内の空間地等の公共・公益施設用地として保存する。
b 盛土した後、地下遺構に支障のない利用方法で保存する。
等の取扱いを定める。
3) 記録保存のための発掘調査
記録保存のための発掘調査については、次の事項を協議する。
(i) 発掘調査の対象及び範囲
(ii) 発掘調査を実施する機関及び発掘調査組織
(iii) 発掘調査の開始時期
事業者としては、工事スケジュールの遅延を防止する上で発掘調査を早期に着手してもらうよう教育委員会と調整する必要がある。
(iv) 発掘調査の実施と工事とのスケジュール調整
(v) 発掘調査の期間
発掘調査の期間は、できるだけ長期(例えば、一つの遺跡について6ケ月を超える場合)に渡らないようにする必要があり、調査区画の設定や工事区画との関係を調整することによりできるかぎり調査期間の短縮を図るように調整する。
(vi) 発掘調査費用と協議に基づき事業者が支出する費用の範囲
事業者が支出する費用の範囲は、開発事業地区内に係わるものを対象に、発掘調査に直接必要な最小限の費用として、「発掘作業費」、「整理保存費」、「報告書作成費」及び「調査雑費」の範囲にとどめるものとする。実際に支出する費用の範囲は、協議の中で取り決めていくが、その際、宅地開発事業では最終的には住民が負担することになることに配慮し、過大なものとならないよう調整を図る。
(vii) 出土品の取扱い
(viii) 不時発見遺跡の取扱い
事前協議成立後や協定書作成後に新たな遺跡が発見された場合の取扱いについては、事業者は速やかに教育委員会と協議のうえ決定する。
4) 教育委員会の立会い又は指導による工事の施行
1)に掲げる取扱い区分以外に、遺構に影響を及ぼさない場合には、教育委員会の立会い又は指導による工事施行が認められる場合がある。
(2) 協定書の作成
事前協議の結果合意された事項については、事業者と教育委員会との間で(発掘調査等の措置がこの二者以外の機関によって行われる場合はその機関を加えて)協定書を作成し、当該事業に関する埋蔵文化財の取扱いに係る基本方針を確認することとする。
なお、発掘調査の期間が短期間の場合にあっては、委託契約書によってこれに代えてもさしつかえない。
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