国都市第三八一号
平成一三年一二月二六日

各都道府県知事・各政令指定都市の長・都市基盤整備公団総裁・地域振興整備公団総裁あて

国土交通省都市・地域整備局長通知


土地区画整理事業運用指針


目次
I 土地区画整理事業運用指針の策定の趣旨
II 運用指針の構成
III 土地区画整理事業の活用にあたっての基本的な考え方

III―1 土地区画整理事業の役割

1 概説
2 土地区画整理事業の特色
3 土地区画整理事業の役割

III―2 土地区画整理事業の活用にあたっての基本的考え方

1 都市計画制度との関係
2 民間活力を活かした土地区画整理事業の活用促進
3 公共団体の関わり方に応じた事業推進方策の工夫
4 事業目的・対象地区の特性に応じた事業計画の考え方の工夫
5 経営意識、コスト意識のより一層の徹底

IV 土地区画整理事業の事業化のあり方

IV―1 土地区画整理事業の事業化にあたっての留意事項
IV―2 土地区画整理事業の事業計画等の策定の考え方

1 土地区画整理事業の事業計画策定にあたっての基本的考え方
2 土地区画整理事業の事業計画の考え方

V 土地区画整理事業制度の運用のあり方

V―1 土地区画整理事業の施行に係る運用のあり方

1 事業計画の決定
2 公共施設充当用地等の取得
3 事業運営
4 建築行為等の制限
5 建築物等の移転・除却
6 仮換地指定

V―2 土地区画整理事業の完了手続に係る運用のあり方

1 換地計画
2 換地処分、保留地処分、清算金
3 公共施設の管理引継

V―3 事業完了後も見通した事業の進め方
別記様式第1
別記様式第2
別添様式第3

I 土地区画整理事業運用指針の策定の趣旨
土地区画整理事業は、既成市街地から新市街地に至るまで、都市整備のあらゆる局面に適用される面的かつ総合的な整備手法として、永年にわたりきわめて重要な役割を果たしてきている。
しかしながら、依然として、我が国においては、防災性をはじめとして市街地整備の水準が低く、さらに、地方都市の中心市街地の空洞化、経済情勢の変化に伴う都心部での低未利用地の発生など、新たな課題が顕在化してきている。市街地整備についてもその重点が新市街地の整備から既成市街地の再編・再構築に移行するという転換期にあり、その中で土地区画整理事業が果たす役割に対する期待もますます大きいものがある。
したがって、これらの課題に対して、今後とも土地区画整理事業をより一層活用し、活力ある社会の形成と安全で豊かな生活を可能とするまちづくりを進めることが必要である。
もとより土地区画整理事業については、地方公共団体や民間施行者等の創意工夫により、適切に活用・運用が行われるべきものであるが、実際に地方公共団体等が、都市整備のために土地区画整理事業を十分に活用し、制度の趣旨に則った的確な事業を実施するためには、国としても、土地区画整理事業の活用・運用に関し、制度の基本的考え方や運用にあたっての参考となる事項を広く一般に示すことが必要である。
本指針は、国として、今後都市整備を進めていく上で土地区画整理事業をどのように活用していくことが望ましいと考えているか、また、その具体の運用が制度の趣旨からしてどのような考え方の下でなされるか等についての原則的な考え方や運用にあたっての参考となる事項を、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二四五条の四の規定に基づく国の技術的助言として整理し、地方公共団体や民間施行者等が土地区画整理事業を活用しようとする際に参考としてもらうために策定したものである。
本指針では、既存の土地区画整理事業に関する通達等を総点検し、引き続き必要と考えられる事項について国の技術的助言として整理するとともに、時代の変化にも対応しつつ土地区画整理事業の一層の活用と適切な運用が図られるよう、これまでの通達には無い新しい記述を盛り込んでいる。
なお、本指針はこうした考えの下に策定するものであることから、地域の実情等によっては、本指針で示した原則的な考え方によらない運用が必要となる場合もあり得るが、当該地域の実情等に即して合理的なものであれば、その運用が尊重されるべきである。
また、本指針は、上記の趣旨を全うすることにとどまらないものであり、都市整備に関して国が行う各種の施策支援についても、今後、上記の趣旨を踏まえ、この指針の考え方に沿って行われるべきものと考えている。
II 運用指針の構成
本指針は、Iに掲げた運用指針の策定の趣旨を踏まえるとともに、事業の流れに沿った分かりやすいものとなるよう配慮し、以下の三部から構成している。
○土地区画整理事業の活用にあたっての基本的な考え方

土地区画整理事業の特長、期待されている役割等を踏まえ、今後の都市のあり方を実現する上で、土地区画整理事業をいかに活用していくことが望まれるか、制度の企画・立案に責任を有する国としての基本的な考え方を示すもの。

○土地区画整理事業の事業化のあり方

まちづくり構想の検討から土地区画整理事業の事業計画の決定に至るまでの、事業の立ち上げ段階での参考となる考え方や留意事項等について示すもの。

○土地区画整理事業制度の運用のあり方

土地区画整理事業の施行から事業完了後のまちづくりに至るまでの段階での、参考となる考え方や留意事項等について示すもの。

本運用指針については、土地区画整理事業の実施に関わる実務者が、具体的に事業を執行する際の参考となる事項として、事業実施の基本的考え方、配慮すべき事項、事業執行に際しての事務的な取り扱いについて、例示を含めて明示することとしているが、今後必要に応じて追加がなされていくものである。
また、今後、各地方整備局や地方公共団体に対するアンケート調査等により、土地区画整理事業制度の運用実態を把握の上、運用上の課題を整理し、必要に応じて本指針の改訂を行うこととしているほか、土地区画整理事業に関する法制度の改正があった場合には、適宜本指針の改訂を行うものである。

(注) 本指針の語尾等の表現について
本指針に記述されている各事項間には当該事項によるべきとする考え方に差異があることから、次のような考え方で記述している。

1) 〜べきである。〜べきでない。〜必要である。

法令、制度の趣旨等から記述された事項による運用が強く要請されると国が考えているもの

2) 〜ことが望ましい。〜ことは望ましくない。

制度の趣旨等から、記述された事項による運用が想定されていると国が考えているもの

3) 〜ことが(も)考えられる。

記述された事項による運用を国が例示的に示したもの

III 土地区画整理事業の活用にあたっての基本的な考え方
III―1 土地区画整理事業の役割

1 概説

土地区画整理事業は、道路、公園等公共施設の整備・改善と宅地の利用の増進を一体的に進めることにより、健全な市街地の造成を図る事業手法として、我が国の都市整備上最も中心的な役割を果たしてきた制度である。
これまでに土地区画整理事業は、関東大震災や第二次世界大戦からの復興、戦後の急激な都市への人口集中に対応した宅地供給、都市化に伴うスプロール市街地の改善、地域振興の核となる拠点市街地の整備等、既成市街地、新市街地を問わず多様な地域で、多様な目的に応じて活用されてきた。土地区画整理事業による市街地の着工実績は、平成一二年度末までに、我が国の人口集中地区(DID)面積の約三割に相当する約三九万haにのぼる。また、新規の宅地供給の約三〜四割、開設されている街区公園、近隣公園、地区公園の約一/二は、土地区画整理事業で生み出されたものである。
しかしながら、我が国の都市は、依然として防災上危険な木造密集市街地が広く存在するなど、市街地整備の水準が低いことに加え、地方都市の中心市街地の空洞化、経済情勢や産業構造の変化に伴う大都市都心部での低未利用地の発生など、新しい課題が顕在化してきている。
このため、快適に暮らせるまち、活力ある経済社会活動が展開されるまちを創造していくために、地方公共団体や民間施行者等が、これまで以上に土地区画整理事業を積極的に活用することが求められている。

2 土地区画整理事業の特色

土地区画整理事業は、以下のような特色を有する事業であり、この特色を踏まえて事業の企画・立案を行うことが必要である。
(1) 施行者には権利制限を伴う事業執行の権能が与えられていること

土地区画整理事業の第一の特色は、公共施設の整備・改善と宅地の利用増進を図るため、施行者に換地処分や建物移転等の私権の制限を伴う事業執行の権能が与えられていることである。
このため、地権者の権利利益を保護するため土地区画整理法(以下「法」という。)では厳格な手続き規定が設けられている。
例えば、施行者となれるものが限定されているほか、施行者の種類別に事業の認可等の際に地権者の意見を反映させる手続きが規定されている。さらに、換地処分については、換地計画の決定にあたって照応の原則(法第八九条)の基準や必要な手続きが定められている。照応の原則とは、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めるという原則であり、これにより各権利者の間に不均衡が生じないように換地を定めることとなっている。

(2) 地権者参加型の事業手法であること

土地区画整理事業の第二の特色は、従前の地権者が事業後も引き続き地区内に残れるということである。
このため、土地区画整理事業は、計画段階から地権者が参加しながら事業を進められる地権者参加型の事業手法として、地権者の自主的まちづくりが期待できる。また、既存のコミュニティをそのまま維持することも可能である。

(3) 具体の土地利用は地権者に委ねられていること

土地区画整理事業の第三の特色は、施行後の各宅地の土地利用は、地権者の手に委ねられているということである。
土地区画整理事業は土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業であり、建築物の整備は通常は事業に含まれない。このため、建築物の整備計画の有無にかかわらず事業の実施が可能な手法であり、山林原野から密集市街地まで適用できるなど、事業の汎用性が極めて高い事業手法となっている。
しかし、一方で、市街地再開発事業のように建築物整備を一体的に実現できないことから、建築物整備も含めた総合的なまちづくりの実現を図る必要がある場合には、市街地再開発事業等の建築物整備が可能な事業との合併施行や建築物の規制誘導を行うことが可能な地区計画等の活用が必要となってくる。

3 土地区画整理事業の役割

都市は成熟の時代を迎え、今後は、都市の再生・再構築のため、既成市街地をさらに居住や経済活動の面で魅力的な空間として再整備することが重要な課題となっている。
土地区画整理事業は、換地という手法により土地の入れ替えを行い、土地の高度利用を図るための街区の再編が可能であることから、既成市街地の整備においても有効な事業手法であり、その積極的な活用が期待される。
一方、土地区画整理事業も時代の変化等に対応し、より適切で活用しやすいものとなるように、制度の運用を工夫していくことが必要である。例えば、既成市街地での事業実施においては、建築物の敷地として利用されている宅地が多いこと等、様々な制約が多いことから、事業計画の策定や事業推進方策の検討において、より柔軟な発想で考えていくことが求められる。また、建築物整備等の民間投資と一体的な事業展開ができるよう工夫していくことが必要である。今後、土地区画整理事業が、時代の要請に応えてその役割を十分かつ的確に果たしていけるように、各施行者等の創意工夫も求められている。

III―2 土地区画整理事業の活用にあたっての基本的考え方

1 都市計画制度との関係

(1) 土地区画整理事業と都市計画との関係

土地区画整理事業は、大きく分けて、都市計画における市街地開発事業として位置付け都市計画事業として実施する土地区画整理事業と、それ以外の民間の開発行為として都市計画で定められた規制・誘導に即して行われる土地区画整理事業とがある。
土地区画整理事業の活用を検討するにあたっては、このような都市計画における位置付けの違いにより、施行主体をはじめ事業の進め方、助成の考え方等が大きく違うことに留意し、都市計画との関係に応じた適切な事業の立ち上げ、促進方策を工夫することが望ましい。

(2) 都市計画事業として実施する土地区画整理事業

1) 土地区画整理事業の都市計画の策定の基本的考え方

土地区画整理事業については、公共施設の整備状況や土地利用状況を踏まえ、計画的かつ良好な市街地を一体的に整備する必要があるときには、用途地域等の土地利用や道路、公園等の都市施設に関する都市計画との整合性、一体性を確保しつつ、積極的に都市計画に定めることが望ましい。
特に既成市街地においては都市の再生・再構築を図る観点から、土地の高度利用、中心市街地の活性化、密集市街地の改善を図る地区や大規模土地利用転換が見込まれる地区等について土地区画整理事業を都市計画に定めることの検討を行うことが望ましい。一方、新市街地において土地区画整理事業を都市計画に定めるにあたっては、住宅地供給の必要性等の検討を行うことが望ましい。

2) 土地区画整理事業の都市計画決定にあたっての考え方

土地区画整理事業の都市計画決定にあたっては、都市計画区域マスタープラン(都市計画法第六条の二に基づく都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)及び都市再開発方針等(都市計画法第七条の二第一項に規定する都市再開発方針等をいう)に即する必要があり、また、市町村が定める土地区画整理事業の都市計画については、さらに、市町村マスタープラン(都市計画法第一八条の二に基づく市町村の都市計画に関する基本的な方針)に即する必要がある。
また、土地区画整理事業の都市計画の考え方については、都市計画運用指針「III―4 3 市街地開発事業の都市計画の策定の基本的考え方」及び「IV―2―3市街地開発事業」において、市街地開発事業の都市計画の基本的考え方のほか、施行区域、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項等、環境への配慮、市街地開発事業の都市計画の効果と理由の明確化についての考え方が示されているので、これを踏まえることが望ましい。

(3) 都市計画事業以外の土地区画整理事業

地方公共団体が都市計画事業以外の事業として実施される土地区画整理事業の認可を行うにあたっては、土地区画整理法(昭和二九年法律第一一九号、以下「法」という。)第九条又は第二一条に規定されている認可の基準への適合性について十分に検討すべきである。
個人施行又は組合施行の土地区画整理事業で都市計画事業以外の事業として実施される土地区画整理事業は、都市計画法上は開発行為のひとつとして位置付けられるものであることに留意すべきである。
このため、市街化調整区域で行う、個人施行(地方公共団体が同意施行による事業を行う場合も含む。)又は組合施行の土地区画整理事業については、法第九条又は第二一条の規定により、都市計画法第三四条の開発許可の基準に該当するものでなければ認可してはならないとされており、都市計画との整合性が確保されるようになっているので留意が必要である。
なお、都市計画法第二九条では、土地区画整理事業の施行として行う開発行為については、開発行為の許可が不要とされている。

(4) 土地区画整理事業と他の都市計画との関係等

土地区画整理事業は、公共施設と宅地を面的に整備する事業手法であるが、これにあわせて建築物等の整備・誘導を行い、目指すべき土地利用を計画的に実現することが可能な事業である。したがって、土地区画整理事業を計画するにあたっては、当該土地区画整理事業が都市計画において定めるものであるか否かにかかわらず、目指すべき市街地像について十分検討を行い、必要がある場合には、あらかじめ用途地域等の土地利用に関する都市計画の決定又は変更について適切な調整をすることが望ましい。
新市街地における土地区画整理事業など建築物整備計画が事業当初には明らかにできない場合でも、土地区画整理事業の事業展開に応じて、適切な宅地の利用により目指すべき市街地の形成や良好な都市環境の保全が図られるよう、関係権利者間の合意形成を図りつつ、適切な時期に地区計画等を都市計画に定めることが望ましい。
このほか、土地区画整理事業の検討にあたっては、都市計画運用指針「IV―2―3市街地開発事業、2 他の都市計画との関係等」において、用途地域等との整合性の確保、拠点開発等における施行区域外の都市施設の適切な見直し、連続立体交差事業と一体的な市街地開発事業の推進、地域に身近な施設の取り扱い、地区計画等の活用、事業完了後の市街地開発事業の都市計画の扱い及び都市計画法第五三条の制限の取扱い、環境影響評価、被災復興時における対応についての考え方が示されているので、留意すべきである。

2 民間活力を活かした土地区画整理事業の活用促進

(1) 民間事業者等主体の土地区画整理事業の積極的な支援

土地区画整理事業は民間活力を活用しやすい事業手法であるという特性を活かし、既成市街地の土地区画整理事業においても積極的に民間活力の活用を図ることが望ましい。
このため、既成市街地で行われる民間事業者等主体の土地区画整理事業に対しては、大規模低未利用地を活用した都市拠点開発はもちろんのこと、小規模な開発であってもまちづくりの観点からみて優良な事業については、積極的に資金面での助成や税制面での支援策の適用を検討することが望ましい。

(2) 民間や住民が主体となったまちづくりとしての土地区画整理事業の推進

地方公共団体施行の土地区画整理事業についても、地方公共団体と住民との両者が一体となって取り組むことが望ましい。
地方公共団体施行の土地区画整理事業の場合は、地方公共団体が計画を策定し、住民の理解を得るという形で事業が進められることが多いため、住民は事業に対して受身の姿勢となりやすく、事業に対する合意形成に多大な時間を要すること等の問題が生じやすい。一方、住民が土地区画整理事業の効果を十分に把握した上で、自ら主体的にまちづくりに取り組む場合には事業への合意形成などが円滑に進むことが期待される。
したがって、地方公共団体施行の土地区画整理事業において、事業の立ち上げの段階から住民との適切な連携を工夫し、住民を主体にしたまちづくりを行うことにより、事業の推進が図られることが望ましい。
また、木造密集市街地の改善等、身近な住環境の改善を主な目的とする事業では、住民の自主的な合意形成の熟度に応じて地方公共団体が支援をすることによって事業を推進することも考えられる。

3 公共団体の関わり方に応じた事業推進方策の工夫

土地区画整理事業の活用にあたっては、地方公共団体と権利者等の関わり方の違いによって、事業の進め方が大きく違うことに留意する必要がある。
土地区画整理事業は、それぞれの事業の公共性や開発利益の大きさによって地方公共団体と権利者等の関わり方が違い、その違いに応じて施行者など事業タイプが違ってくる。
また、このような事業タイプ別のそれぞれの関わり方の違いを踏まえて、法における事業の進め方や手続きについての考え方が大きく異なるものとなっている。例えば、土地区画整理事業の認可にあたっては、個人施行では、関係権利者の全員同意(法第八条第一項)が必要とされており、組合施行では、事業計画の縦覧により利害関係者が意見書を提出する機会が設けられていることに加え、宅地の所有者及び借地権者各々の三分の二以上の同意(法第一八条)が必要とされている。一方、地方公共団体施行の場合には、事業計画の縦覧、意見書提出機会は設けられているものの、関係権利者の同意の割合等については、認可の要件とされていない。
したがって、土地区画整理事業の事業化の検討、推進にあたっては、当該事業の位置付けや目的を判断した上で、地方公共団体が積極的に権利者の理解を得るための工夫を図り、地方公共団体施行として行う場合や、権利者の主体的な事業実施への情報提供や支援の工夫を図り、組合施行の誘導を行う場合など、適切な事業推進方策の創意工夫をすることが望ましい。

4 事業目的・対象地区の特性に応じた事業計画の考え方の工夫

1) 技術基準の適切な適用

土地区画整理事業は、多様な事業目的に対応し、既成市街地から新市街地にいたるまで、様々な特性をもつ地区において活用できる手法であるが、事業計画の策定にあたっては、事業目的や対象地区の特性に応じて、適切に技術基準を適用すべきである。
土地区画整理事業の事業計画において定めるべき施行地区、設計の概要等についての必要な技術的基準は、国土交通省令で定めることとされ(法第六条第九項)、施行地区及び工区の設定に関する基準は土地区画整理法施行規則(以下「規則」という。)第八条で、設計の概要の設定に関する基準は規則第九条で、資金計画に関する基準は規則第一〇条で示されており、施行者は、この基準に従って適切な内容を設定する必要がある。その際、地区特性や事業目的によっては、これらの技術的基準の範囲内で弾力的運用を図ることも必要である。
特に、既成市街地の土地区画整理事業では、関係権利者の合意形成が長期化することや事業費が増大すること等の事業施行上の課題も見受けられる。このため、施行地区設定、公共施設設計にあたっては、事業の目的から必要な整備区域の範囲及び公共施設の整備水準を認識した上で、事業期間や事業収支への影響も考慮して検討することが望ましい。また、その結果として施行地区設定や公共施設設計等について、土地区画整理事業関係団体等から出された技術書類の図書等が示すものと異なる場合もあるが、これらの技術書類は主として新市街地での宅地供給や新都市建設を対象としている場合が多いため、これらに拘ることなく、事業目的や対象地区の特性の違いに応じて適切な事業計画の考え方を適用することが望ましい。

5 経営意識、コスト意識のより一層の徹底

個人及び組合施行の土地区画整理事業においては、保留地処分金を主な財源としており、事業当初に借入金等により手当てした事業費を、後日の保留地処分金により返済するという収支計画が一般的である。バブル経済崩壊以前においては、旺盛な宅地需要と地価の上昇により、収支計画上の課題が顕在化することはほとんどなかったが、近年の組合事業においては、地価下落等の影響を受け、保留地処分がなかなか進まないほか、保留地売却による収入見込みが大きく減少するなど、事業経営の面からみて極めて厳しい状況にあるものもみられる。
今後は、少子化、人口減少の時代を迎えつつあり、これまでのような旺盛な宅地需要は見込まれず、また、地価の一律的上昇は望めない状況にある。このため、個人及び組合施行の土地区画整理事業は、より一層の経営意識を持って、保留地処分の確実性や事業施行期間の長期化に伴う金利負担等について十分な検討を行うことが必要である。
また、保留地処分金を主な財源としている個人及び組合施行の土地区画整理事業については、事業の認可にあたって、資金計画のうち保留地に関するものについて価格、規模、処分量等の観点について、周辺の宅地需要からみて適正なものであるか、十分精査するとともに、施行者が、常に経営意識、コスト意識を徹底し、事業費の圧縮、事業施行期間(投資回収期間)の短縮等、適切な事業運営に努めるよう、指導することが望ましい。
また、保留地処分金については、社会・経済情勢の変動により、大きく影響を受ける場合もあるため、組合施行の場合にはあらかじめ法第四〇条に規定する賦課金の考え方を定款において明確にしておくことも考えられる。
一方、地方公共団体施行の土地区画整理事業に関しても、限られた財政状況の中で効率的な事業施行を検討することが必要である。
このため、それぞれの事業においてコスト意識を認識して公共施設の設計水準や工事内容等を検討し効率的な事業運営を行うことは当然のこととして、さらに民間による事業が可能な区域は民間事業の誘導を図ることや、市街地再開発事業等の建築物整備事業や高規格堤防整備事業と一体的に事業を行うこと等、民間活力及び他事業等との連携及び役割分担を工夫することが望ましい。

IV 土地区画整理事業の事業化のあり方
IV―1 土地区画整理事業の事業化にあたっての留意事項

土地区画整理事業を円滑に進め、事業の効果を最大限に発揮するためには、事業化にあたって以下の点に留意することが望ましい。
1) 地方公共団体における総合的な部局間の連携体制の整備

土地区画整理事業は、地域の抱えている施策課題に総合的に取り組む絶好の機会である。例えば、事業を契機に、商店街の活性化、地場産業の育成強化、福祉サービスの充実、学校や病院等の公共的な施設の更新・再編などに取り組むことが可能である。
このため、地方公共団体は、部局間で十分な連携をとるための体制のあり方を検討し、常に地域の経済社会の動向に的確に対応できるようにしておくことが望ましい。

2) 地区の住民や企業による協議会組織の育成と活用

土地区画整理事業は、事業地区内の住民や企業等の権利者全員が関わる事業であることから、権利者のまちづくり参加をより積極的に促す仕組みを用意することが、事業の円滑な推進の面からも望ましい。
このため、地区内の権利者による協議会組織の立ち上げやその継続的な活動を、地方公共団体から専門家を派遣することにより支援するなど、協議会組織の育成と活用を図ることが考えられる。
なお、これについては、土地区画整理事業調査(道路整備特別会計)、都市再生事業計画案作成事業(一般会計)、まちづくり総合支援事業により国庫補助の対象である。

3) 土地区画整理士の活用

土地区画整理士は、法第一一七条の三に基づく検定により換地計画に関する専門的技術を有すると認められた者であることから、調査や事業の実施にあたっては、土地区画整理士を活用することが効果的である。

4) 同意施行制度等

組合等に資金力や技術的能力が不足している場合は、同意施行制度(法第三条第一項)、参加組合員制度(法第二五条の二)、業務代行方式(組合運営に関する業務その他の土地区画整理事業の施行に関する業務の相当部分を民間企業が代行する方式)を採用することが可能である。
なお、特に業務代行方式については、事業計画の変更や仮換地の指定等の主体はあくまでも施行者である組合であり、地権者及び組合役員の主体的な意思決定を行うことが望ましく、施行者と業務代行者の間のリスク分担についても明確な契約を行うことが望ましい。

5) 測量

測量法(昭和二四年法律第一八八号)第五条に規定する公共測量については、同法第三三条の規定に基づき国土交通大臣の承認を得て作業規程を定めて実施することが必要となる。
また、公共測量以外の測量についても、広範囲かつ高精度で実施される測量については、公共測量に準じて実施することが望ましい。
また、土地区画整理事業の測量の成果は、国土調査法(昭和二六年法律第一八〇号)第一九条第五項の規定に基づき国土交通大臣に申請し、国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定を受けるべきである。

6) 埋蔵文化財

埋蔵文化財の保護と関連事業との適切な調整等を図るため、土地区画整理事業を実施する際においても、発掘調査の範囲、費用分担などについては教育委員会と十分な連携を図ることが望ましい。

IV―2 土地区画整理事業の事業計画等の策定の考え方

1 土地区画整理事業の事業計画策定にあたっての基本的考え方

土地区画整理事業を施行する際には、法に基づき、施行者は、施行地区、設計の概要、事業施行期間及び資金計画を定めた事業計画を定めることが義務づけられており、事業計画では、環境の整備改善を図り、交通の安全を確保し、災害の発生を防止し、その他健全な市街地を造成するために必要な公共施設及び宅地に関する計画が適正に定められなければならないとされている。(法第六条)
事業計画の策定にあたって適用すべき技術的基準は、規則第八条、第九条及び第一〇条で定められている。しかしながら、土地区画整理事業が多様な地域で多様な目的に応じて活用できる手法であることから、事業計画の策定にあたっては、これら法令の規定の範囲内で地区特性や事業目的に応じて、柔軟かつ弾力的に対応することが望ましい。
<運用にあたっての基本的考え方>
(1) 整備しようとする市街地の将来像を明確にしておくこと

土地区画整理事業は、公共施設の整備改善と宅地の区画形質の変更を行うことにより、健全な市街地の形成を図る事業である。
主要幹線道路等都市の根幹的公共施設と、事業地内住民の生活上欠くことのできない区画道路や街区公園等の公共施設が一体的に整備されるが、特に主要幹線道路等都市の根幹的公共施設の整備に伴い、その周辺の土地利用は大きく変化することが予想される。
また、想定する地区の土地利用によって、区画道路や街区公園等の公共施設の整備、土地の区画形質のあり方は大きく異なるものである。
このため、施行地区をどのような市街地として整備しようとするのか、将来の土地利用を検討した上で、この市街地像に基づいて、事業計画を策定することが望ましい。

(2) 土地区画整理事業以外の方策との連携についても認識しておくこと

効果的な市街地の整備・形成を行うためには、土地区画整理事業と、土地区画整理事業以外の各種事業を同時に実施したり、建築物の規制・誘導手法を組み合わせて総合的に実施することが必要である。
このため、あらかじめ、各種事業等との連携のあり方について調整を図った上で、事業計画を策定することが望ましい。
また、事業地区へのアクセス道路や河川の整備等周辺で実施されている各種事業との連携・調整をとった事業計画を策定することが望ましい。

(3) 地域地区制度との調整を図ること

土地区画整理事業は、市街地の土地利用を転換するために実施される事業であることから、移転・工事の完了時期にあわせて用途や容積率等が変更されることが一般的であり、都市計画担当部局と用途や容積率等について調整を図り、なるべく早く将来の土地利用構想を策定することが望ましい。

(4) 事業計画は確実性の高いものとすること

事業計画は、法で定められた施行者が行うべき事業の計画を示すものであり、関係権利者にとって最も信頼すべき計画である。このため、事業計画を策定する際には、十分な検討を行い、確実な計画とすることが、施行者と権利者との信頼感醸成のために必要である。
なお、予期できない社会・経済情勢の変動への対応、当初想定していなかった公共施設の需要への対応、より望ましいまちとするための整備などを行うためには、積極的に事業計画の変更により対応することも必要である。

2 土地区画整理事業の事業計画の考え方

(1) 施行地区
<運用にあたっての基本的考え方>

1) 施行地区の定め方

施行地区は、その地域に求められている整備の目的や計画のテーマに即して、事業の効果が最大限かつ効率的に実現できるよう、都市計画における位置づけ及び事業の円滑な施行の両面から適切に設定するのが望ましい。
なお施行地区の設定にあたっては、以下の点について配慮し、総合的に判断することが望ましい。
・地域の根幹となるべき道路、公園等の都市計画施設等が計画されているときは、これらを故意に避けないこと。
・都市計画施設等の整備に伴う都市機能の向上や環境改善など事業による効果が地区の内外に発揮されることが見込まれ、かつ地区内において整備の波及効果に不均衡が生じないよう施行地区を設定すること。
・施行地区は、工事の施工性や土地利用効率の観点からも一団のまとまりをもつこと。
・施行地区の設定は、事業費、事業期間に大きく影響するものであり、地区特性、事業目的、事業期間、資金面での見通し、住民の合意形成の熟度、緊急性などを考慮し、適切に設定すること。
・施行地区内に都市計画施設を含む場合は、その効果的な整備が可能なものとすること。
・街区や排水施設の整備の面から適切な区域を含むものとすること。
施行地区界は、一体的に整備すべき市街地の区域を踏まえ、明確な地形・地物で設定し、形状はできるだけ整形とすることが望ましい。

2) 中抜き施行地区に関する留意事項

過去に基盤整備が行われている等、土地区画整理事業で整備する場合とほぼ同程度の公共施設が整備されており、また敷地の形状の変更も想定されない区域については、施行地区から除外することも検討できる。
ただし、当該地区を除外するにあたっては、公共施設の連続性に影響が生じないか、又は事業に伴う宅地利用の増進と減歩の関係で、権利者間の公平性が保たれているかについて検討した上で除外することが望ましい。

3) 飛び施行地区に関する留意事項

物理的に離れている地区であっても、両地区が密接不可分の関係にある場合には、飛び施行地区として捉えることができる。
この密接不可分の関係については、次の観点から検討することが望ましいが、都市計画事業として実施する場合、一つの都市計画で決定されている必要がある。
イ 都市施設上の密接不可分

都市計画道路の同一路線の未整備区間を含む等、公共施設の一体的整備上、密接不可分の関係にある場合。

ロ 土地利用上の密接不可分

市街地再開発事業等の施設建築物及び共同化住宅等への参加者の集約や、墓地、鉄道操車場等、立地が限定される施設の移転先の確保等、土地利用の整序を図るために土地の入れ替えが必要な場合等、土地利用上密接不可分の関係にある場合。

4) 施行区域内における段階的な施行地区設定

土地区画整理事業として都市計画決定された施行区域についても、事業の熟度や緊急性を考慮して施行区域の中を複数の施行地区に分割して段階的に事業を行うことも考えられる。
この場合には、当面施行地区に含めない区域についても将来の市街地整備の方針を明らかにしておくことが望ましい。
また、新たに土地区画整理事業に含むことが望ましい区域が生じたり、土地区画整理事業以外の手法での市街地整備が行われるような場合については、都市計画を定める部局と調整して、施行区域の見直しと施行地区の設定を一体的に検討することも考えられる。

<運用上の留意事項>
1) 敷地界による施行地区設定における留意事項

施行地区は、規則第八条第一号により、道路、河川、運河、鉄道その他の土地の範囲を表示するに適当な施設で土地区画整理事業の施行によりその位置が変更しないものに接して定めなければならないとされている。
ただし、次のような場合には、規則第八条の「ただし書き」を適用し、地形、地物のほか、敷地界をもって施行地区界に設定することが考えられる。
イ 既成市街地の低未利用地に係る小規模な土地区画整理事業

法第二条第一項にいう公共施設の新設又は変更には、区画道路の付け替えを伴うもののほか、土地の入れ替えと併せて道路の隅切りを行うもの又は地区計画、総合設計による公共的空地等の整備と一体となった道路の舗装の打替え・植栽を行うものを含むと考えられる。
これらを伴い、一定の基盤整備がなされている既成市街地内の地域で、早急に土地の有効利用を図ることが必要な地区において、相互に入り込んだ少数の敷地を対象として換地手法によりこれら敷地の整序を図る土地区画整理事業(以下、「敷地整序型土地区画整理事業」という。)については、積極的に推進されることが望ましい。

ロ 大都市地域の市街化区域内農地等に係る土地区画整理事業

大都市の市街化区域内農地については、良好な都市環境の形成に資するとともに、その積極的な活用により住宅宅地供給が期待されている。特に、三大都市圏の特定市(東京都の特別区及び首都圏、近畿圏、中部圏の既成市街地、近郊整備地帯等にある市)においては、平成四年度より市街化区域内農地を対象に課税の適正化が図られていることから、当該特定市の市街化区域内において、市街化が相当程度進んでいる地域に介在的に残されている農地等の低未利用地について、地権者が主体的に行う土地区画整理事業を円滑に推進し、健全な市街地を造成することが望ましい。
ただし、この場合次に掲げるような事項に配慮する必要がある。
・既存宅地または生産緑地を区域に取り込む場合の地権者の合意形成
・地区内の生活の軸となる道路と地区外道路の接続
また、当該施行地区の設計にあたっては、次に掲げるような事項に留意することが望ましい。
・地区特性に即して、農地所有者等の意向を踏まえつつ生産緑地の集約等を行うことができること
・当面の営農等の継続を希望する地権者については、施行地区及び施行地区周辺の市街地整備に支障の無い範囲で大規模な街区を設定し、当該街区への換地を定めることができること
なお、ただし書きの適用は上記例に限定されるものではなく、これら以外の施行地区においても、市街地の状況等に応じて、地形、地物のほか、筆界等による施行地区界の設定を行うことも考えられる。ただし、いずれの場合においても、公共施設の連続性や事業に対する負担と増進の公平性に十分配慮すべきである。

(2) 設計の概要(公共施設の整備改善の方針、宅地の計画の方針等)

<運用にあたっての基本的考え方>
1) 土地利用を考慮した公共施設の設計を考えること

設計の概要に係る技術的基準として、規則第九条に示されているとおり、道路の幅員等の考え方は土地利用によって異なるものである。このため、将来の土地利用を考慮して、これに応じた公共施設の設計を考えるべきである。
また、道路幅員によって建築可能な建物の容積率が規定される場合もあり、逆に建物の利用形態によって必要な道路幅員が決定される要素となる場合もあることから、公共施設の設計では、将来の建物形態等を想定しつつ考えるべきである。

2) 都市計画に定められた内容を実現するという観点とともに、コスト意識を念頭におき、投資効果を十分に吟味した計画とすること

公共施設の設計に際しては、土地区画整理事業の事業経営の観点から事業費・事業期間も勘案して投資効果の大きな事業となるように配慮すべきである。
そのため、移転物件を抑えるため、必要な機能を満たす代替案がある場合などは道路設計の再検討を行うことも考えられる。
なお、こうした際には、定量的な金銭評価だけでなく、地区の歴史や文化の活用についても十分配慮すべきである。

3) 面的整備事業の特長を生かすこと

土地区画整理事業では、既存の都市計画決定された都市施設がある場合、これに適合した整備を図っていくことが基本である。
しかし、土地区画整理事業では、新たに敷地の整形化や街区の再編を行うことができることから、これまでの条件の制約から離れて街区形態等を設定できる。このため、周辺地区の状況などにより必要であれば、既存の都市計画の変更については、区画整理の設計を進めていく中で都市計画担当部局と変更について協議を行うことが望ましい。

<運用上の留意事項>

設計の概要を構成する主なものとしては、道路の設計、公園の設計、排水施設の設計、街区の設計等である。
これらは、規則第九条第一号において施行地区または施行地区を含む一定の地域について近隣住区を想定し、その住区内に居住することとなる者の生活利便を促進するように考慮して定めなければならないと規定されており、特に次に掲げる事項については、留意が必要である。

1) 道路の設計における留意事項

道路の設計にあたっては、以下の点に留意すべきである。
イ 道路の段階構成の明確化

都市における道路の機能は、円滑な移動を確保する交通機能と、都市空間を形成し、供給処理施設等の収容空間を確保する空間機能、街区を構成するための市街地形成機能のように、多様な機能を有している。
このため、専ら自動車の交通の用に供する自動車専用道路から、地区における宅地の利用に供するための区画道路までそれぞれの道路の機能を明確にし、それらを適切に組み合わせて道路を配置することが望ましい。
その上で、規則第九条第二号に規定されているとおり、幹線道路と幹線道路以外の道路の交差が少なくなるように考慮して道路の設計をすべきである。

ロ 空間機能に配慮した道路の設計

良好な環境の確保の観点から、規則第九条第四号においては、住宅地においては、道路をできる限り通過交通の用に供され難いように配置しなければならないと規定されている。
道路は通風・採光・日照等の住環境の確保に重要な空間機能を有している。道路の配置・幅員等を計画する際には、住環境の改善・向上にも配慮する事が望ましい。
また、自動車交通と生活環境の調和を図り、歩行者や自転車の安全を守る立場からも、人や自転車と自動車交通の分離を行うよう配慮し、必要に応じて歩道・自転車道等を配置することが望ましい。
特に既成市街地においては、交通機能の観点からだけで道路拡幅や道路網の変更を行うのではなく、空間機能も含めた総合的な観点から設計すべきである。その際、既存道路の活用や家屋移転の抑制も配慮して道路設計を行うことが望ましい。

ハ 供給処理施設の設計との調整

規則第九条第七号において、設計の概要は、施行地区内の宅地が建築物を建築するのに適当な宅地となるよう必要な排水施設の整備改善を考慮して定めなければならないとされている。
道路の空間機能には、上記の他、上下水道や電気、ガス施設等の収容空間としての機能も有しており、道路の設計にあたっては、これら供給処理施設等との設計と調整をとるべきである。

ニ 区画道路の設計の特例

区画道路の幅員は、規則第九条第三号において「区画道路の幅員は、住宅地にあっては六m以上、商業地又は工業地においては八m以上としなければならない。」と規定している。
ただし、次のような場合には、同号の「特別の事情により、やむを得ないと認められる場合は、住宅地にあっては四m以上、商業地または工業地にあっては六m以上であることをもって足りる。」を適用することが考えられる。
1) 敷地整序型土地区画整理事業
2) 特定市の市街化区域内において、市街化が相当程度進んでいる地域に介在的に残されている農地等の低未利用地について、地権者が主体的に行う土地区画整理事業
上記2)に示す土地区画整理事業では、事業を契機として良好な市街地形成を推進するため、施行地区外の道路に接続して地区内及びその周辺地域の生活の軸となる区画道路を整備することが望ましい。
なお、ただし書きの適用は上記例に限定されるものではなく、これら以外であっても、周辺の道路状況、市街化の状況からみてやむを得ないと認められ、かつ交通機能及び宅地サービスの機能確保並びに災害時の避難、救助、消防活動等の円滑な実施に支障がない場合は、ただし書きの適用を図ることが考えられる。

2) 公園・緑地の設計における留意事項

公園・緑地の設計にあたっては、市町村の緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(緑の基本計画)等に基づき、街区公園、近隣公園、地区公園及び保全すべき緑地等の具体的な配置計画をたて、地区において緑のネットワークを確保することが望ましく、地区外に配置又は計画されている公園・緑地との関連についても留意すべきである。
また、緑のネットワークを構成する公園・緑地及びその他の緑地については、整備や保全の方策を検討するとともに緑の復元や創出に努めるべきである。
施行地区内に必要な公園面積は、規則第九条第六号において「公園の面積の合計が施行地区内に居住することとなる人口について一人当り三m2以上であり、かつ施行地区の面積の三%以上となるように定めなければならない。」と規定している。
ただし、次の場合には、同号の「ただし書き」を適用することができる。
イ 施行地区の大部分が都市計画法第八条第一項第一号の工業専用地域である場合
ロ 道路、広場、河川、堤防又は運河の整備改善を主たる目的として土地区画整理事業を施行する場合
ハ 敷地整序型土地区画整理事業を施行する場合
また、同号の「ただし書き」の「健全な市街地を造成するのに支障がないと認められる場合」としては、以下のようなものが考えられる。
イ 施行地区が周辺における既存の公園(整備されることが確実と見込まれるものを含む)の誘致距離内にある場合
ロ 地区計画の地区施設等、総合設計制度の公開空地等により、同等のオープンスペースが整備されることが確実な場合
なお、特定市の市街化区域内において、市街化が相当程度進んでいる地域に介在的に残されている農地等の低未利用地について、地権者が主体的に行う土地区画整理事業で、施行地区内に生産緑地を含む場合には、施行地区の面積から生産緑地の面積を控除した面積の三%以上を公園として確保すれば、健全な市街地を造成するのに支障がないと考えられる。

3) 排水施設の整備改善との調整

規則第九条第七号において、設計の概要は、施行地区内の宅地が建築物を建築するのに適当な宅地となるよう必要な排水施設の整備改善を考慮して定めなければならないとされている。
このため、道路の設計との調整は先述の通りであるが、河川については次に掲げるような事項についての調整を図る必要がある。
・関係河川の改修計画の有無、又は将来計画
・現在整備中の河川改修事業と土地区画整理事業の実施スケジュールの調整
・下流の河川改修計画と土地区画整理事業による雨水流出増の対応の必要性
・河川管理上の事項(橋梁、排水口等)
また、市街地整備上の観点からは、排水施設は都市の下水道計画の一環として実施されることが望ましく、下水道整備計画との調整が必要である。
なお、農業用用排水路等の施設がある場合は、施設管理者と調整することが望ましい。

4) 環境の保全における留意事項

規則第九条第八号において、施行地区及びその周辺の地域における環境を保全するため、当該土地区画整理事業の目的並びに施行地区の規模、形状及び周辺の状況並びに施行地区内の土地の地形及び地盤の性質を勘案して、施行地区における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全その他の必要な措置が講ぜられるように設計の概要を定めなければならないと規定されている。
よって、造成等に関する設計は、予想される将来の土地利用の状況等との調整を図りつつ、次に掲げる事項に留意して定めることとする。なお、関係法規が定められている場合はこれに準拠すべきである。
イ 防災上の安全・法面の安全

造成による排水上の安全性については、排水計画の中で流出機構の変化による雨水流出増に対する措置を検討するとともに、造成等に関する設計では造成工事による一時的な雨水流出増に対する工事用調整池、宅地内貯留等による対応を定めることが望ましい。

ロ 現況保存区域の取り扱い及び表土の保全・活用

造成に関しては、緑地の保全と回復を図るため、公園・緑地・民有緑地等を設計上配慮するとともに、造成等に関する設計では、現況保存及び表土の保全・活用方針を検討することが望ましい。

5) 電線類の地中化に関する留意事項

電気・電話の架空電線、電柱の道路占用は、景観上及び道路の有効幅員の確保の点、都市防災上の観点からも好ましくなく、地区の状況により、各事業者との協議の上、積極的に電線類の地中化を図ることが望ましい。また、地域や沿道の状況に応じて、裏回し配線等による無電柱化等、柔軟な整備手法も検討する事が望ましい。
なお、土地区画整理事業と一体的にケーブルボックス、CATVなどの高度情報通信基盤を整備しようとする場合には、これら整備事業者に対する融資や税制特例の適用がなされる事業制度があるので、この活用をはかることが望ましい。

(3) 事業施行期間

事業施行期間は法第六条第七項に定められている通り、適切に定めるものとする。
事業施行期間は、事業計画の決定又は組合設立認可の公告の日から、清算金の徴収交付事務をも含め土地区画整理事業の全てが終了する日(個人施行の場合は終了認可の日、組合施行の場合は解散認可の日)を予定して定めることとする。
事業施行期間を定める際には、以下に掲げるものに留意することが望ましい。
<運用上の留意事項>
1) 極力、早期の事業完了に留意すること。

既成市街地においては、大量の建物移転等があることから、事業施行期間が長期化する傾向にある。このため、極力早期に事業を完了させることを意識した上で、移転の工程等を配慮して実現可能な事業施行期間を検討することが望ましい。

2) 資金計画との関連性に配慮すること。

土地区画整理事業の事業施行期間は資金計画と密接な関係にあることに留意すべきである。特に、組合施行等においては事業施行期間により金利負担や事務費等が影響を受けることが考えられるので、資金計画の確実性の面からも、事業施行期間が適切であるかどうか検討することが望ましい。

(4) 資金計画

規則第七条において、資金計画は、資金計画書を作成し、収支予算を明らかにして定めなければならないと規定されており、規則第一〇条において、収入予算については収入が確実であると認められるもの、支出予算については適正かつ合理的な基準によりその経費を算定したものを計上しなければならないと規定されている。
資金計画を定める際には、上記に加え、以下に掲げるようなものに留意されることが望ましい。
<運用にあたっての基本的考え方>
1) 精度の高い資金計画を作成すること

資金計画は土地区画整理事業の成立を考える上で重要な要素の一つであるため、規則第七条及び第一〇条に定められている通り、正確な情報の把握と的確な分析により、精度の高い資金計画書を作成することが必要である。

2) 支出予算(事業費)の妥当性について検討すること

施行地区の特性や整備水準等を考慮して、合理的な基準に基づいた支出予算を算定し、その額が妥当なものであるか、確認しておくことが望ましい。

3) 収入の可能性について早期に明確化を図ること

助成金や公共施設管理者負担金の公的資金等については、可能な限り早い段階から、関係機関と十分協議をし、どれだけの活用が考えられるのか確実な額を明らかにする必要がある。
また、保留地処分金については、地価の動向や宅地需要を勘案し、現実的な処分が可能な設定とすることが必要である。

4) スケジュール的な不確定要素があることに配慮すること

収入面では、公的機関の補助金等や保留地処分金には、事業工程により不確定な要素があることに留意する必要がある。

5) 継続的に資金計画の妥当性を保持すること

事業経営の観点からも、資金計画に課題が生じた場合には、事業計画の変更を検討することが望ましい。
事業計画の変更は、事業進捗が進むにつれその選択肢が限られてくる。よって、事業の初期段階から、常に資金計画について注視し、課題が生じる恐れのあるときは速やかにその対応策を講じることが必要である。

<運用上の留意事項>
1) 個人及び組合施行の場合における留意事項

個人及び組合施行の場合は、保留地処分金が基本的な財源となるが、保留地が処分できるようになるまでに、移転補償費用や工事費用などの支出が必要となるため、資金フローに十分に留意することが必要である。
このため、事業の実施工程から、毎年度の必要支出額、収入額を精査し、事業進捗に合わせた資金調達が必要な金額、その資金調達方策について検討することが必要である。
このため、施行者は事業経営上の工夫事例も参考としつつ、事業初動期の収入確保につながる手法を講じることが望ましい。
イ 公的融資制度等の活用による低金利の資金確保

組合施行の土地区画整理事業に対しては、都市開発資金等による融資制度が設けられているので、必要に応じて活用し、出来る限り低金利の資金を調達することが必要である。

ロ 保留地処分リスクの事前認知

保留地の処分は、社会経済動向の影響を受けやすいため、これらに十分配慮して安定的な事業経営を行うことが重要であるが、保留地処分に伴うリスクをあらかじめ踏まえた上で、事前に賦課金導入に対する合意形成を図るなど、事業経営上のリスクヘッジを図ることが望ましい。

ハ 事業資金融資の先行確認

資金計画の策定にあたっては、あらかじめ金融機関と協議し、事業資金融資の可能性を確認した後に策定することが望ましい。

ニ 保留地予定地を担保とした事業資金融資

組合施行の土地区画整理事業においては、保留地予定地を担保とした事業資金融資を受けることを、検討することも考えられる。

2) 公共施設管理者負担金に関する留意事項

法第一二〇条に規定する公共施設の用に供する土地の取得に要すべき費用とは、当該土地を当該公共施設の用に供しうる状態にするために必要な費用であり、当該公共施設の用に供する土地等を買収することとした場合における用地費及び補償費の他、工事雑費及び事務費を含むものである。
土地区画整理事業の施行者が、公共施設の管理者に対して、法第一二〇条の規定により、管理者の負担金の負担を求めようとする場合には、事業の円滑な推進の観点から、その内容について、覚え書きを交換することが望ましい。覚え書きには例えば以下の項目について記載することが考えられる。
・負担金の総額
当該公共施設の用に供する土地等を買収することとした場合における用地費及び補償費の他、工事雑費及び事務費を含む。
・負担の期間
土地区画整理事業の事業施行期間内で定める。
・公共用地の帰属時期
法第一〇五条により当該公共施設の用に供する土地は、土地区画整理事業に係る換地処分の公告の日の翌日において、その公共施設の管理者に帰属する。
・負担の方法
年度ごとの負担金の額及び支出の時期については、協定を締結し定める。
この場合、施行者はこの覚え書きに基づき、年度ごとに当該年度の負担金の額、負担の時期及び清算方法等について管理者と協定を締結することが望ましい。協定書には例えば以下の項目について記載することが考えられる。
・当該年度の負担金の額
・負担金の支出時期等について定める。
負担金の支払い開始時期は、仮換地の指定の日又は仮換地の指定が確実に予定される日以降を目途とすることが望ましい。
この他にも公園等、取り決めがなされているものがあるので、留意する必要がある。

3) 通信・鉄道等との費用負担協議における留意事項

通信・鉄道等事業者等との費用負担協議については、国と当該事業者との間で、取り決めが決められているものがあるので、留意する必要がある。

4) 関係事業者との調整について

事業の施行のため、若しくは土地の利用の促進のため必要な工作物その他の物件の設置、管理及び処分に関する事業又は埋立若しくは干拓に関する事業を合わせて実施する場合には、土地区画整理事業に含まれるものとされている(法第二条第二項)。
上下水道・ガス等の供給処理施設等については、この法第二条第二項の事業として土地区画整理事業の中で整備するか別途関連事業として整備するかについて、それぞれの管理者と協議の上決定することが望ましい。
また、事業施行のため隣接する鉄道の踏切や橋の新設・変更の必要が生じた場合、施行者はその受益の限度においてその費用を負担することとされている(法第一三五条)。事業計画作成にあたり、その施行方法、施行範囲、費用負担等を定めておかなければならない。
さらに、調整池や貯留管等の排水施設の整備改善についても、河川管理者と施行方法や費用負担等について、予め協議の上決定することが望ましい。

(5) 住宅先行建設区等の考え方

事業計画においては、法第六条第二項に規定される住宅先行建設区及び同条第四項に規定される市街地再開発事業区を定めることができるとされており、それぞれの設定にあたっては次の事項について留意する必要がある。
1) 住宅先行建設区設定にあたっての留意事項

住宅先行建設区制度は、住宅を早期に建設しようとする者の換地を住宅先行建設区内に集約することにより、住宅先行建設区において早期にコミュニティ形成が実現し、良好な居住環境が整備され、この結果、住宅先行建設区周辺の施行地区内の公益的施設(購買施設、学校等)の立地が容易となり、ひいては施行地区全体の住宅建設が促進され、もって住宅供給に資するものである。事業計画における住宅先行建設区の設定にあたっては次のことに留意すべきである。
イ 法第六条第二項の「新たに住宅市街地を造成することを目的とする土地区画整理事業」とは、従前が農地等の非建付地が大部分を占める地域において施行される土地区画整理事業であり、造成される住宅市街地が施行地区の大部分を占め、又は相当規模の住宅市街地が造成されるものをいう。
ロ 法第六条第二項の「施行地区における住宅の建設を促進するため特別な必要があると認められる場合」とは、具体的には、住宅先行建設区制度により住宅の建設が促進されなければ住宅建設が円滑に行われないと認められる場合であり、施行地区の状況としては、既に形成された市街地から離れている場合や施行地区内及びその周辺において公益的施設が立地していない場合をいう。
ハ 法第六条第三項の「施行地区における住宅の建設を促進する上で効果的であると認められる位置」とは、先行的に住宅を建設することによりその効果が地区全体に及ぶような場所、施行工程から先行的に仮換地の指定が可能な場所等をいう。また、住宅先行建設区は、施行地区内における新たな市街地の核の形成を図ることを目的とするものであるため、既存集落等の既に住宅等がまとまって建設されている区域を原則として含まないように定めるべきである。
ニ 住宅先行建設区は、健全な住宅市街地における良好な居住環境を形成することができる相当規模の一団の土地の区域について定めるべきである。
ホ 法第六条第三項の「住宅が先行して建設される見込み」の把握にあたっては、あらかじめ、当該施行予定地区の整備の目的、将来の土地利用等の啓蒙、普及により住宅建設の気運を高めることを努めるとともに、施行予定地区内の住宅需要の動向、土地所有者等の意向を十分調査することが望ましい。
ヘ 住宅先行建設区内に定められるべき宅地のおおむねの総面積に、事業計画において定める住宅先行建設区内の宅地の面積が相応しない場合においては、施行者は速やかに事業計画の変更を行い、住宅先行建設区の面積等の変更を行うべきである。
ト 既に施行中の土地区画整理事業についても、住宅先行建設区制度を活用して施行地区における住宅の建設を促進する必要があると認められる場合には、事業の円滑な施行に支障がない限り、事業計画を変更して住宅先行建設区を設定することも考えられる。

2) 市街地再開発事業区設定にあたっての留意事項

土地区画整理事業において特定仮換地(土地区画整理事業の換地計画に基づき換地となるべき土地に指定された仮換地)が指定された段階において、当該特定仮換地を含む地域において市街地再開発事業を施行すること(以下「一体的施行」という。)により市街地再開発事業への参加を希望する権利者を集約することは、土地区画整理事業及び市街地再開発事業の円滑な施行を促進する上で極めて有効である。
そこで、市街地再開発事業区(土地区画整理事業と市街地再開発事業を一体的に施行すべき土地の区域)への申出換地制度があるが、市街地再開発事業区を土地区画整理事業の事業計画に設定するにあたっては次の点に留意すべきである。
イ 市街地再開発事業の施行区域をその施行地区に含む土地区画整理事業の事業計画においては、当該施行区域内の土地の全部又は一部について、市街地再開発事業区を定めるべきである。
ロ 既に施行中の土地区画整理事業についても、市街地再開発事業区制度を活用しての一体的施行を行う必要があると認められる場合には、事業計画を変更して市街地再開発事業区を設定することも考えられる。
ハ 市街地再開発事業区の面積は、市街地再開発事業区への換地の申出が見込まれる所有権又は借地権についての換地の地積の合計を考慮して相当と認められる規模とすべきである。
ニ 土地区画整理事業の施行者は、市街地再開発事業区を定める際に、一体的施行制度の趣旨、仕組みその他の施行地区内の宅地の所有者又は借地権者が申出を行うために必要な情報の十分な提供を図るとともに、施行地区内の所有者等の意向等を十分調査することが望ましい。
ホ 市街地再開発事業区は、市街地再開発事業への参加希望者を換地によって集約する手続きを明示したものであって、法第八九条の照応の原則に適合した換地設計をする場合には市街地再開発事業区を定めずに一体的施行を行うことも考えられる。
ヘ 都市計画決定を要しない個人施行の市街地再開発事業については、市街地再開発事業区を定める場合を除き、都市計画において施行区域を定める必要はない。

(6) 共同住宅区等の考え方

大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五〇年法律第六七号、以下「大都市法」という。)では、特定土地区画整理事業(大都市法第一〇条に基づく特定土地区画整理事業)の事業計画において、共同住宅区や集合農地区等を定めることができるとされており、それぞれの設定にあたっては、次の事項について留意する必要がある。
1) 共同住宅区設定にあたっての留意事項

事業計画における共同住宅区の設定にあたっては次のことに留意すべきである。
イ 共同住宅区の制度は、住宅・宅地の供給に資するとともに、施行地区を市街化するための中核としようとするものであるので、共同住宅区を積極的に事業計画に定めることが望ましい。
ロ 共同住宅とは、一棟が二以上の住宅からなり、それぞれの住宅が壁、廊下、階段又は外部への出入口の全部又は一部を共同で使用する建築物で、耐火構造、準耐火構造又は不燃組立構造である。
ハ 事業計画に共同住宅区を定めるにあたっては、あらかじめ施行予定地区内の住宅需要の動向、土地の所有者等の意向等を十分調査することにより、「共同住宅の用に供される見込み」を把握するとともに、共同住宅の概略の建設計画を作成すべきである。
ニ 共同住宅区に定められるべき換地の概ねの総面積に、事業計画において定める共同住宅区内の宅地の面積が相応しない場合には、施行者は速やかに事業計画の変更を行い、共同住宅区の区域等の変更を行うべきである。
ホ 共同住宅区を連続した街区にわたって定める場合は、これらの街区に挟まれる区画道路、街区公園等を含むものとし、原則として共同住宅区の周囲には、道路等を設けて、その他の土地と区画することが望ましい。
ヘ 共同住宅区に接続する道路はできる限り、その一以上が歩車道区分のある幅員九m以上の道路とする等集中して発生する交通量に対応するよう配慮することが望ましい。

2) 集合農地区設定にあたっての留意事項

事業計画における集合農地区の設定にあたっては次のことに留意すべきである。
イ 集合農地区を定めるにあたっては、あらかじめ、施行予定地区内の土地の所有者等の意向、所有規模、農地等の種類を十分に調査し、集合農地区への換地の申出をする者及び当該申出に係る農地等を把握しておくべきである。
ロ 集合農地区を、連続した街区にわたって定める場合には、これらの街区に挟まれる区画道路等を含むものとし、集合農地区の周囲には道路等を設けて、その他の土地と区画すること。
ハ 集合農地区内における公共施設の配置設計は、地区内の連絡及び地区外の連絡上必要な道路、水路その他の最小限度の公共施設の設計にとどめることが望ましい。ただし、土地の所有者等との意向調整により集合農地区が将来市街化した場合に必要な公共施設が整備されること等が見込まれない場合においては集合農地区内の土地が将来市街化した場合を想定し、他の土地の区域と同程度の公共施設の設計を行うこととすることも考えられる。
ニ 集合農地区内に定められるべき換地の面積と集合農地区内の宅地の面積が相応しない場合においては、施行者は速やかに事業計画の変更を行い、施行地区面積の概ね三〇%を超えない範囲内において、集合農地区の区域等の変更を行うべきである。

3) 義務教育施設用地設定にあたっての留意事項

事業計画における義務教育施設用地の設定にあたっては施行地区の周辺を含む地域における将来の義務教育施設の配置等について義務教育施設設置義務者と事前に十分調整することが望ましい。

V 土地区画整理事業制度の運用のあり方
V―1 土地区画整理事業の施行に係る運用のあり方

1 事業計画の決定
<運用にあたっての基本的考え方>

事業計画においては、環境の整備改善を図り、交通の安全を確保し、災害の発生を防止し、その他健全な市街地を造成するために必要な公共施設及び宅地に関する計画を適正に定めることになっている(法第六条第六項)。さらに、公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関して都市計画が決定されている場合には、都市計画に適合して定めることとされており(法第六条第八項)、その内容は施行地区、設計の概要、事業施行期間及び資金計画からなっている(法第六条第一項)。

<運用上の留意事項>

(1) 組合設立の認可について

組合設立の認可基準は、法第二一条に規定されているとおりであり、施行地区となるべき区域内の宅地の所有者及び借地権者の同意割合については、同法第一八条に定めるように三分の二以上の同意があれば適法な申請といえるものである。したがって、これを超える一定の同意割合をもって認可の基準とし、これを満たさない限り認可をしないとすることは不適当と考えられる。

(2) 意見書の処理について

地方公共団体が事業計画を定めようとする場合、法第五五条に事業計画の縦覧と意見書提出の制度が規定されている。同条では、意見書は都道府県知事に提出するものとし、都道府県知事はそれを都道府県都市計画審議会に付議しなければならず、都道府県都市計画審議会はその内容を審査するものとされている。この場合、都道府県知事は、提出されたすべての意見書を付議しなければならないのではなく、同条第二項の規定に適合した意見書であるかどうか、すなわち、1)意見書の提出が利害関係者であるか否か、2)意見がその事業計画についてのものであるか否か、3)意見書の縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに提出されたものであるか否か、4)意見が都市計画において定められた事項についてのものでないかどうかについて判断し、それらの要件を満たさない意見書はこれを付議しないことも考えられる。
しかし、1)、2)については内容に関する実質的判断を含む場合もあり、利害関係者でないこと、当該事業計画に関するものでないことが明白である場合以外は、付議をなすべきである。
1)の「利害関係者」とは、「土地区画整理事業に関係のある土地若しくはその土地に定着する物件又は当該土地区画整理事業に関係のある水面について権利を有する者」(法第二〇条第二項)をいう。ここで「権利」とは、所有権、借地権に限らず土地又は物件について使用又は収益することができる権利である。また、施行地区内に限らず、土地区画整理事業に事実上関係のあるその周辺の一定の区域内の土地、物件又は水面について、権利を有する者も関係権利者に含まれる。
組合が施行する土地区画整理事業においては、都道府県知事が意見書の内容を審査し、意見書に係る意見を採択するか、採択すべきでないと認めるかの判断をすることになる(法第二〇条第三項)。
都道府県知事は、事業計画に対して利害関係者から意見書が提出された場合において、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときは、その旨を意見書を提出した者に通知しなければならないとされている(土地区整理法第二〇条第三項、第五五条第四項等)が、この通知に際して理由を付す必要があるか否かは法律上規定されておらず、都道府県知事が理由を付さずに不採択となったことを通知しても違法な取扱いとはいえないものである。
しかしながら、意見書を提出した者に、不採択となった理由を示し、なお一層の事業への理解を求めることも円滑な事業の進捗のために重要であると思われるから、意見書の不採択の取扱いについては適切に対処することが望ましい。

(3) 設計の概要等の認可申請について

1) 都道府県等の認可申請

法第三条第三項又は第四項の規定により、都道府県又は都道府県知事が施行する土地区画整理事業では、事業計画に定める設計の概要又はその変更の認可の申請は次のように行うことが必要である。
イ 認可の申請は、別記様式第1による申請書に、別記様式第2(土地区画整理事業計画様式)による図書を添付して行う。
ロ 法第五五条又は第六九条の規定による事業計画の縦覧及び意見書の処理の経過を記載した書類を添付する。
ハ 本認可については、事前に国土交通省と十分連絡調整をすることにより、円滑な運用を図る。

2) 市町村等の認可申請

法第三条第三項又は第四項の規定により市町村又は市町村長が施行する土地区画整理事業の事業計画において定める設計の概要又は変更の認可の申請にあたっては、上記1)に準じて行うことが望ましい。

3) 個人又は組合の認可申請

法第三条第一項又は第二項の規定により個人又は組合が施行する土地区画整理事業における施行の認可又は組合設立の認可の申請にあたっては、上記1)に準じて行うことが望ましい。

4) 都市基盤整備公団等の認可申請

法第三条の二又は第三条の三の規定により、都市基盤整備公団又は地域振興整備公団が施行する土地区画整理事業の施行規程及び事業計画又はそれらの変更の認可の申請にあたっては上記1)に準じて行う。この場合において、ロは適用しない。

5) 地方住宅供給公社の認可申請

法第三条の四の規定により、地方住宅供給公社が施行する土地区画整理事業の施行規程及び事業計画の認可の申請は、それぞれの設立団体である市又は都道府県を経由して上記4)に準じて行うことが望ましい。

(4) 事業計画認可前の組合設立

法第一四条第二項では、事業計画の決定に先立って組合を設立する必要がある場合には、定款及び事業基本方針を定め、都道府県知事の認可により組合を設立することができるが、この場合以下について配慮すべきである。
1) 定款と事業基本方針を定めて組合を設立しようとする場合には、定款及び事業基本方針の内容について、説明会の開催等により関係権利者に十分かつ具体的に周知するよう努め、事業に対する積極的な協力体制を確保することが望ましい。
2) 施行地区となるべき区域内の宅地の所有者及び借地権者の同意の手続が必要である
3) 事業基本方針においては、施行地区及び土地区画整理事業の施行の方針として次に掲げる事項を定める必要がある。

イ 当該土地区画整理事業の目的
ロ 土地区画整理事業の施行後における施行地区内の宅地の地積(保留地の予定地積を除く。)の合計の土地区画整理事業の施行前における施行地区内の宅地の地積の合計に対する割合
ハ 保留地の予定地積
ニ 事業施行予定期間
ホ 事業計画の認可を受けるまでの資金計画

このうち、ロ及びハについては、その概数を記載すれば足りるものであり、例えば、約○○パーセント(ヘクタール)から約○○パーセント(ヘクタール)といった記載方法も可能である。
また、ニについては、事業計画の認可の申請の予定時期、おおむねの事業の完了の時期を示すことが望ましい。

4) 事業計画がいまだ作成されていない段階であることにかんがみ、当該設立しようとする組合が「事業を的確に遂行するために必要な能力」を十分に備えているか否かについて、施行地区となるべき区域内における土地区画整理事業の施行機運、可能性等を勘案して行うこと。

(5) 関係行政機関との調整

1) 公安委員会への意見聴取

施行者は、土地区画整理事業の結果、道路が新規に築造されることから、事業計画の認可申請時に先立ち、あらかじめ関係都道府県公安委員会の意見を聴くことが望ましい。

2) 施行区域内に農地が存在する場合の留意事項

土地区画整理法第四条第一項又は第一四条第一項の認可をしようとする場合は、同事業の施行に伴う農地の転用が農地法施行規則(昭和二七年農林省令第七九号)第五条第七号の規定により許可除外とされていること等にかんがみ、都道府県都市計画部局は、あらかじめ都道府県農林部局と調整を行うとともに、施行地区内において四ヘクタールを超える農地を含む場合は、地方農政局と調整することが望ましい。ただし、都市計画法第七条の市街化区域若しくは同法第八条第一項第一号の用途地域(農業上の土地利用との調整が調ったものに限る。)が定められている区域内で行われるものについてはこの限りではない。

3) 同意施行事業についての留意事項

次に掲げる区域以外の区域における同意施行による事業について、都道府県知事が法第一三六条の規定により意見を聴いた場合においては、その意見の内容を十分把握するとともに、都道府県都市計画部局は、都道府県農林担当部局と十分協議することが望ましい。
・市街化区域
・用途地域(農業上の土地利用との調整が整ったものに限る。)

4) 二線引国有畦畔等の存在する場合の留意事項

土地区画整理事業の施行地区内に二線引国有畦畔等(不動産登記法(明治三二年法律第二四号)第一七条に規定する地図又は旧土地台帳法施行規則第二条に規定する地図(以下「公図」という。)に二本の実線をもって図示されている無地番の国有の土地をいう。以下同じ)が存在する場合について、事業計画を公衆の縦覧に供しようとするときには、施行地区となるべき区域を管轄する地方財務局、財務事務所、又は出張所の長に規則第五条に規定する図書を添付して、土地区画整理事業を行う旨を通知するものとする。
二線引畦畔で道路等、法第二条第五項に規定する公共施設の用地として、一般公衆の用に供されているものについては次により処理するものとする。
イ 法第二条第五項に規定する公共施設の用地として一般公衆の用に現に供されていることの判断、確認は原則として施行者等が行い、市町村長の証明書を添付して、土地区画整理事業を行う旨の通知とあわせて財務局長等に通知するものとする。この場合、財務局長等が特に必要があると認めるときは、財務局等の職員が現地を確認し、施行者等及び市町村長と協議して決定することが望ましい。協議した結果、公共施設の用地として一般公衆の用に現に供されていると認められないものが含まれている場合は、財務局長等は事業計画に関する意見書提出期間内に意見書を提出するものとする。
ロ イにより公共施設の用地として確認された二線引畦畔については、法第一〇五条第一項により処理するものとする。

また、二線引畦畔で民法(明治二九年法律第八九号)第一六二条に規定する取得時効が完成していると認められるものがある場合は、施行者等において「普通財産にかかる取得時効の取扱い」(昭和四一年四月二一日付蔵国有第一三〇五号通達)の趣旨を、関係者に十分周知徹底させ、後日紛争の生じないよう努めるとともに、取得時効確認の申請を希望する者については、事業開始前に権利関係が確定できるよう申請書の作成等の指導、補助を行い、とりまとめて財務局長等に提出するよう措置するものとする。
公共施設の用地や取得時効として処理する以外の二線引畦畔及び二線引畦畔以外の脱落地等で国有財産台帳に未登載の地形狭長等単独利用困難なものについては、施行者等において、公図上の求積又は実測により数量を確定するものとする。
施行者は、数量が確定した二線引畦畔等については、財務局長等に対して、法第九〇条に規定する換地不交付の同意を求めるものとし、財務局長等は単独利用可能な国有地に隣接する二線引畦畔等で一体として換地を受ける必要のあるものを除き同意するものとする。同意がなされたものについては、法第九四条の規定による金銭清算により処理するものとする。
国有財産台帳に未登載のもので、数量を確定する以外のものについては、施行者が定款又は施行規程に定める期間内に財務局長等が実測により数量を確定し、施行者に届出るものとする。

5) 道路環境保全のための道路用地の取得及び管理にあたっての留意事項

道路環境保全のための道路用地の取得及び管理に関する基準に基づき施策を講じようとする場合には、国土交通省地方整備局等とあらかじめ協議することが望ましい。

6) 事業計画に係る農林部局との調整について

(1) 都道府県地方公社の事業計画について、法第七一条の三第三項(同条第一五項において準用する場合を含む。)の規定により、都道府県知事の意見を求められた場合においては、都道府県の農林部局と十分連絡調整することが望ましい。
(2) 市地方公社の事業について、法第一三六条の規定により都道府県知事が、都道府県農業会議及び土地改良区の意見を聴いた場合においては、その意見の内容を十分把握するとともに、農林部局と十分連絡調整することが望ましい。

2 公共施設充当用地等の取得
<運用にあたっての基本的考え方>

(1) 公共施設充当用地の買収について

土地区画整理事業の施行後の公共用地率が大きい地区等においては、当該事業施行地区内の権利者に対する宅地の減歩負担のみによって公共施設用地を生み出すことが困難である場合は、事業の迅速かつ適切な施行を図るため、施行地区内において、道路、広場等の公共施設の用地に充当すべき土地(以下「公共施設充当用地」という。)を取得し、これを当該公共施設用地にあてているところである。公共施設充当用地を取得する土地区画整理事業は、当該用地の取得がなければ事業施行後の宅地の価格の総額が事業施行前の宅地の価格の総額より減少する地区(法第一〇九条に規定する減価補償金を交付しなければならない地区。)で行われてきたところである。

(2) 公益的施設用地の買収について

土地区画整理事業は、市街地整備及び宅地利用の両面において、中心的役割を果たしている事業であるが、国民生活の向上を図る上で、土地区画整理事業の施行地区内における宅地利用の促進が望まれている。
また、既成市街地の特に主要駅周辺、中心市街地等における土地区画整理事業施行地区においては、計画的な土地の高度利用と都市機能の更新の観点から、総合的なまちづくりの促進を行うことが必要となっている。
このため、事業の施行と併せて公益的施設用地を取得し、公益的施設等の形成を図り、計画的かつ早期に健全な市街地として成熟させるとともに土地の高度利用の促進を図ることも考えられる。

<運用上の留意事項>

(1) 公共施設充当用地の買収に係る留意事項

1) 公共施設充当用地として取得すべき土地は、減価補償金の額に相当する価格の範囲内の価格のものでなければならない。
2) 公共施設充当用地として取得すべき土地は、施行地区内における事業施行前の宅地の価格の平均額以下の価格であるものが望ましい。
3) 公共施設充当用地として取得すべき土地は、当該施行地区内の宅地であって、更地又は当該地上の物件の除却が容易なものであることが望ましい。
4) 公共施設充当用地を取得した場合においては、法務局と十分に調整の上現況に照らして当該土地は公共施設の用に供する土地として登記申請することが望ましい。

(2) 公益的施設用地の買収に係る留意事項

土地区画整理事業と併せて公益的施設用地を取得する場合が、「市街地宅地利用促進事業制度要綱」のとおり定められているので、今後、その積極的活用に努めることが望ましい。

3 事業運営
<運用にあたっての基本的考え方>

(1) 土地区画整理審議会について

地方公共団体、公団等が事業を施行する場合には、施行者と施行地区内の土地の権利者とは必ずしも一致しないので、事業の施行にあたり、施行者が換地計画の決定、仮換地の指定等施行地区内の土地の権利者に重大な利害関係のある処分を行う場合において、土地の権利者の意見を反映させるため、土地区画整理事業ごとに土地区画整理審議会(以下「審議会」という。)を置くことになっている(法第五六条、第七〇条、第七一条の四)。
審議会の委員は、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者の意思を代表して表明するものであることから、所有権又は借地権を有する者からそれぞれ選挙で選出することになっている(法第五八条)。また、審議会は、施行者と施行地区内の地権者の間に立って、その関係を調整し、事業の適正な運営に資する機関であるので、都道府県知事等は、委員の定数の五分の一をこえない範囲内で学識経験を有する者を委員として選任できることになっている(法第五八条第三項)。

<運用上の留意事項>

(1) 学識経験者委員の選任についての留意事項

施行地区内の宅地の所有者又は借地権者が、たまたま同時に、土地区画整理事業について直接の学識若しくは経験を有する者である場合、又は地元の信望が厚く公正な立場に立っての調整役として判断を求めることができる者である場合、その他特別の事情がある場合には、学識経験者として選任することも差し支えないが、このような特別の事情がある場合を除き、施行地区内の宅地の所有権者又は借地権者を学識経験委員として選任することは望ましくない。

(2) 法人が委員に当選した場合について留意事項

法人が審議会の委員に選挙されている場合において、委員としての権限を行使する者は、その法人の代表権を有する者が適当であるが、その者から審議会の委員としての権限を受けた者(その法人に属する者に限る。)が、委員として出席することも可能である。

(3) 共有者等の選挙権の取り扱いについての留意事項

審議会委員選挙において宅地の共有者等の選挙権は次の様に取り扱うべきであるので、留意する必要がある。
1) 宅地の共有者が、これとは別に、同一施行地区(又は工区。以下同じ。)内にそれぞれ所有地を所持している場合においては、選挙権は、所有権にもとづき発生する各一箇の選挙権を有するのみで、法第一三〇条の規定による共有権に基づく選挙権は有しない。
2) ただし、上記1)の共有権者のうちのいずれかが同一施行地区内に別に所有地を所持していない場合においては、所有権にもとづき発生する各一箇の選挙権の他に法第一三〇条の規定により共有地の代表者が行使し得る一箇の選挙権を有する。

この場合においては、共有地の代表者が同一施行地区内に別に所有地を所持していると否とを問わない。

3) 借地権とその同一施行地区内にある共同借地権又は宅地の同一部分に二箇以上の借地権が存する場合及び共同借地権とその同一施行地区内にある宅地の同一部分に二箇以上の借地権が存する場合における選挙権については1)及び2)の場合と同趣旨により取扱う。
4) 宅地の共有者若しくは共同借地権者又は宅地の同一部分に二人以上の借地権者がある場合のこれらの借地権者(以下「関係人」という。)が、法第一三〇条第二項の規定による代表者を選任しない場合においては、選挙人名簿には、関係人の全員を記載するものとし、これらの関係人が選挙当日迄に、代表者を選任して施行者に届出た場合に限り投票権を行使し得る。

(4) 審議会委員選挙に係る期間計算の留意事項

審議会委員選挙に係る期間について、次のように取り扱うべきであるので、留意が必要である。
1) 土地区画整理法施行令(昭和三〇年政令第四七号、以下「政令」という。)第二〇条では「選挙期日の公告をした日から起算して二〇日を経過した日現在における選挙人名簿を作成しなければならない」とされているが、これは公告の日から起算して二〇日目の午後一二時までの異動によって二一日目に決定すればよいとの趣旨である。
2) 政令第二一条第一項では、「選挙人名簿を作成した後二週間公衆の縦覧に供しなければならない」とある。この縦覧の取り扱いについては、同条第二項により同令第三条の規定を準用するため、あらかじめ、縦覧場所及び縦覧時間を定めてなされることになる。所定の場所で、所定の時間だけ公衆の縦覧に供すれば足りるのであるから、初日及び末日の縦覧は所定の時間を充たす限りにおいてこれを期間に算入すべきであり、従って期間の算え方はかぞえて一四日目で足りるものとする。なお、縦覧場所及び縦覧時間については、原則として所轄の役場において当該役場の開庁時間一杯が適切と考えられる。
3) 政令第二四条第二項では「委員を候補者のうちから選挙するものと施行規程で定めている場合においては、選挙人は選挙人名簿の確定及び選挙すべき委員の数の公告があった日から一〇日以内に立候補届又は立候補推薦届を市町村長等に提出することができる」とされているが、これは、公告の次の日から起算して、一〇日目迄である。
4) 政令第二五条では、「市町村長等は、選挙場並びに投票時間及び開票の日時を定め、選挙期日の少なくとも五日前にこれらの事項を公告しなければならない。」とされているが、これは、中五日を要するものである。
5) 政令第二一条第一項の規定による選挙人名簿の縦覧期間の初日又は末日が祝祭日、日曜日その他の休日(以下単に「休日」という。)に当る場合若しくは縦覧期間中に休日が存する場合においては、これらの休日も期間に算入する。この場合には、当該選挙人名簿は休日といえども所定の場所に所定の時間だけ公衆の縦覧に供しなければならない。従って役場等に縦覧する場合は休日であっても役場は開庁し、所定の時間だけは縦覧に供しなければならない。

なお、政令第三章中土地区画整理審議会の委員の選挙に関する期間で上記以外の期間の計算についても、上記に準じて取り扱うものとする。

(5) 選挙人名簿の作成に関する留意事項

選挙人名簿の作成に当って関係人(法人を含む。以下同じ。)の住所及び生年月日(法人にあっては、主たる事務所の所在地。以下同じ。)が不明の場合においては、不明の部分に該当する記載欄は空白のままとする。このため、政令第二二条第三項の規定により名簿が確定してから選挙当日迄の間にこれらの関係人から住所及び生年月日の届出があっても名簿の修正はできない。
ただし、選挙当日迄に、選挙権を主張するこれらの関係人が真実に選挙権を有するものであると、確認し得る場合に限り、投票させることは可能である。

(6) 評価員の選任にあたっての留意事項

土地区画整理審議会の委員と評価員は兼職を禁止する規定がないので審議会の同意があれば兼職も可能であるが、評価員には客観的判断が要求されることから、事業地区内に利害関係を有しない者を選任することが望ましい。

4 建築行為等の制限
<運用にあたっての基本的考え方>

施行者の事業の障害とならないため及び権利者の二重投資を防ぐため、事業計画の決定の公告等があった日後、換地処分の公告がある日まで、施行地区内において建築行為等をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないことになっている(法第七六条)。

<運用上の留意事項>

(1) 都市計画法第五三条による建築行為の制限は、土地区画整理事業に関する都市計画が定められてから、施行の認可等の公告がある日までの間適用され、法第七六条による建築行為等の制限は、施行の認可等の公告日以後、換地処分の公告の日まで適用される。施行の認可等の公告があった日以後は、建築物の建築だけでなく、事業施行の障害となる土地の形質の変更、移動の容易でない物件の設置等も制限の対象となり、この場合には、都市計画法第五三条による許可は必要でなく、法第七六条による許可のみが必要である。
(2) 法第七六条第一項の許可は、施行地区内の建築行為等について、それらが事業施行の障害となるおそれがあるかどうかという点を考慮してなされればよいのであって、建築行為者が土地について正当な所有権又は借地権等の権利を有するものであるかを許可に際し考慮することまで要求されるものではない。

5 建築物等の移転・除却
<運用にあたっての基本的考え方>

施行者は、法九八条第一項の規定により仮換地を指定した場合、法第一〇〇条第一項により従前の宅地の使用収益を停止させた場合又は公共施設の変更若しくは廃止に関する工事を施行する場合において、建築物等を移転し、又は除却することが必要となったときは、これらの建築物等を移転し、又は除却することができる(法第七七条第一項)。この場合、施行者は、相当の期限を定め、その期限後においてはこれを移転又は除却する旨をその建築物の所有者及び占有者に対し通知するとともに、その期限までに自ら移転又は除却する意思の有無をその所有者に対し照会しなければならない(法第七七条第二項)。
建築物等の移転又は除却は、これらの規定に基づき権利者自らが行うことが一般的であるが、施行者が建築物等を移転又は除却したことにより損失を与えた場合には、損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない(法第七八条第一項)。この場合の損失補償については、施行者と損失を受けた者が協議によりその額等について決定するものであるが、協議が成立しない場合においては、収用委員会に裁決を申請することができる(法第七八条第三項)。

<運用上の留意事項>

(1) 移転が必要な場合、その間、建築物等の所有者、利用者は、建築物の利用ができないことを余儀なくされるため、できるだけ移転期間が短くなるよう施行者は配慮する必要がある。また、施行者は、事前に適切な情報を提供、説明することにより、関係権利者が移転に十分な準備をできる対応を行うことが望ましい。
(2) 建築物等の移転、除却にあたっては、権利者に適正かつ公平な補償をする必要がある。移転補償等の算定においても、社団法人日本土地区画整理協会の「土地区画整理事業の施行に伴う損失補償基準(案)及び同細則(案)」を参考に、施行者が補償基準を作成し、適切な工法選択を行うことが考えられる。

6 仮換地指定
<運用上の留意事項>

施行者は、換地処分を行う前において、土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合、又は換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合、施行地区内の宅地について仮換地を指定することができる(法第九八条第一項)。
仮換地の指定においては、施行者は、換地計画において定められた事項又は照応の原則等の法律で定められた換地計画の決定の基準を考慮しなければならない(法第九八条第二項)ことに留意すべきである。

V―2 土地区画整理業の完了手続に係る運用のあり方

1 換地計画
<運用にあたっての基本的考え方>

(1) 換地計画の作成

土地区画整理事業の施行者は、施行地区内の換地処分を行うため換地計画を定めなければならない(法第八六条)。換地計画は、その内容として換地設計、各筆換地明細、各筆各権利別清算金明細、保留地その他の特別の定めをする土地の明細を定めなければならないことになっている。(法第八七条)

(2) 基準に基づく換地計画

換地計画では、客観的な判断基準に基づく換地設計と土地評価が必要であり、これらは地区の特性を考慮した換地設計基準及び土地評価基準を定め、これらに基づいて換地計画を作成することが望まれる。

(3) 換地照応の原則

換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない(法第八九条)。

(4) 換地の特例

換地はそれぞれの従前地に対して照応するように施行者が定めることが原則である。法第八九条の照応の原則の例外として、法では以下のことを規定しているので、当該地区の実状に応じて、これらを適切に組み合わせて換地設計を行うことが望ましい。
1) 所有者の申出により住宅先行建設区に換地を交付する場合(法第八五条の二)
2) 所有者又は借地権者の申出により市街地再開発事業区に換地を交付する場合(法第八五条の三)
3) 所有者の申出又は同意により換地を定めない場合(法第九〇条)
4) 宅地地積の適正化(過小宅地)の場合(法第九一条)
5) 宅地の共有化(共有換地)の場合(法第九一条第三項)
6) 借地地積の適正化(過小借地)の場合(法第九二条)
7) 宅地の立体化(立体換地)の場合(法第九三条)
8) 特別の宅地に関する措置の場合(法第九五条)
9) 保留地を定める場合(法第九六条)

(5) 土地評価にあたっての基本的考え方

土地評価は土地区画整理事業を公正かつ公平に行うための基本であり、地権者等にとって最大の関心事の一つであることから、周辺地域の地価動向や経済・社会情勢を踏まえ、土地の利用価値が的確に反映されているとともに、合理的な説明により、地権者等の理解の得られるものでなければならない。また、適切な評価に基づき、施行前後及び宅地相互の均衡・公正に配慮すべきである。
このため、地方公共団体等が施行する土地区画整理事業においては、事業ごとに土地又は建築物の評価について経験を有する者三人以上を、審議会の同意を得て評価員として選任することになっている(法第六五条、第七一条、第七一条の五)。

<運用上の留意事項>

(1) 換地計画の策定にあたっての留意事項

法第八九条でいう「照応」とは、換地及び従前の土地の位置、地積、土質、水利、利用状況及び環境等の諸事情を総合勘案して、指定された換地がその従前の土地と大体同一条件にあり、かつ、土地区画整理地区全域にわたるすべての換地が概ね公平に定められるべきことをいうものと解釈されている。さらに、指定された換地が、位置、地積その他個々的な点において従前の土地と必ずしも符号しない場合であっても、当該換地指定処分が直ちに違法とされるものではなく、それが、諸事情を総合的に考察してみてもなお、従前の土地と著しく条件が異なり、または、格別合理的な根拠なくして、近隣の権利者と比較して甚だしく不利益な取り扱いを受けたという場合でないかぎり、違法ではないと解されている。
なお、照応の原則の各要素の判断にあたっては、以下のことに留意すべきである。
1) 位置

土地区画整理事業は、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更を行う事業であり、換地をすべての従前の宅地と同一の場所に定めることは困難である。従って、位置については、宅地の性格、利用状況、周辺の土地との関係等から妥当な位置を決めることが望ましい。なお、何ら合理的な理由もなく飛換地を定めることは、照応の原則に反することになるので留意すべきである。

2) 地積

宅地の利用増進が著しいことにより減歩率が高くなったとしても、宅地の評価が適正に行われている限り、減歩率が高いことのみをもって照応の原則に反することになるものではないが、減歩率が高くなった結果、換地が過小宅地となるような場合には、過小宅地に配慮した換地を行うことも考えられる。

3) 土質・水利

土質・水利は、従前地と全く同一でなくても、従前地と同様の利用状況が確保できるものであれば、必ずしも照応の原則に反するものではない。

4) 利用状況

利用状況については、従前の宅地の利用状況を確保できるか否かにより判断するものであるが、権利者の主観的な事情や将来の利用計画等については考慮する必要はない。

5) 環境

環境とは、日照、通風、騒音、公害等をいうが、これらについて照応を判断する場合、土地区画整理事業によるものか否か、例えば日照が悪くなったことが事業そのものに起因するか否かによって判断すべきである。

(2) 住宅先行建設区設定にあたっての留意事項

住宅先行建設区への換地の申出については次のことに留意すべきである。
1) 住宅先行建設区への換地の申出に際しては、施行者は、住宅先行建設区制度の趣旨、仕組み(指定期間、指定期間内の建設義務、建設が行われない場合に講じられる措置等を含む)、仮換地の使用収益開始見込み時期、金融面での措置その他の施行地区内の宅地の所有者が申出を行うために必要な情報の十分な提供を図ることが望ましい。
2) 住宅の建設に関する計画(以下「建設計画」という。)に係る建設時期については、住宅先行建設区の目的上、住宅先行建設区に仮換地が指定され、使用収益が可能と見込まれる段階からなるべく早期の一定期間に住宅の建設が行われるよう申出者を指導すべきである。
3) 建設計画に係る住宅は、次のものが考えられる。

イ 専用住宅(共同住宅、寄宿舎及び下宿を含む。)
ロ その他の用途を兼ねる住宅(併用住宅)で、次の条件に該当するもの

・延べ面積の二分の一以上を居住の用に供すること
・その他の用途が住宅先行建設区内の良好な居住環境の形成等から先行的住宅建設を促進する上で支障がないと認められること

4) 住宅先行建設区への換地の申出は、申出に係る宅地の所有者又は借地権者が住宅を建設する場合のほか、住宅建設事業者等へ宅地を譲渡する旨の契約に基づき当該事業者等が住宅を建設する場合等も可能である。
5) 建設計画は、住宅先行建設区における住宅建設の適切な遂行を確保する上で支障がないと認める場合についてのみ変更を認めることとし、変更後の建設計画を速やかに施行者に提出させるべきである。
6) 建設計画の提出は、施行者が宅地の所有者の住宅を建設しようとする意向を把握するための手続きとして設けられたものであり、建設計画の受理が建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第六条第一項に規定する建築物の建築等に関する申請及び確認を意味するものではないことを申出者に周知徹底すべきである。
住宅先行建設区への換地にあたっては次のことに留意すべきである。
1) 住宅先行建設区内には換地が定められるべき旨の指定を受けた宅地についての換地のほか保留地等も定めることが考えられる。ただし、当該保留地等の処分にあたっては、建設計画の提出、一定期間内の早期の住宅建設を行う建設義務特約等の住宅先行建設区の目的達成のために必要な措置を講じることが望ましい。
住宅先行建設区における住宅の建設にあたっては次のことに留意すべきである。
1) 施行者は、住宅先行建設区の目的上、住宅先行建設区に仮換地が指定され、使用収益が可能となった段階において、なるべく早期の一定期間に住宅の建設が行われるよう申出者を指導することが望ましい。
2) 法第一一七条の二第一項の「指定期間を経過する日までに、当該宅地についての換地に、建設計画に従っての住宅を建設しなければならない」とは、指定期間が経過する日までに住宅の建設が完了していることを要するものである。
3) 住宅先行建設区に換地が指定された宅地については、早期に建設計画に従った住宅の建設が図られるよう、市町村及び施行者は必要な技術的援助及び特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づく特定優良賃貸住宅供給促進制度、住宅金融公庫等による融資、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(昭和四六年法律第三二号)に基づく利子補給等の啓蒙・普及に努めることが望ましい。
4) 住宅先行建設区に換地を指定された者が法第一一七条の二第三項の勧告に従わないときは、施行者は、指定の取消し、換地計画の変更のほか、土地の所有者等と協議のうえ、地方公共団体、地方住宅供給公社等による住宅建設等の用に供すべき土地として当該土地の買い取り、住宅建設の代行等について関係機関と連絡調整に努めることが考えられる。

(3) 市街地再開発事業区設定にあたっての留意事項

市街地再開発事業区への換地等にあたっては次のことに留意すべきである。
1) 市街地再開発事業区が定められたときは、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、土地区画整理事業の施行者に対し、換地計画において換地を市街地再開発事業区内に定めるべき旨の申出をすることができる。施行者は、当該申出があった場合は、当該申出に係る換地を市街地再開発事業区内に定めるように指定するか、又は当該申出に応じない旨を決定しなければならない(法第八五条の三第四項)。この場合、申出により指定を受けた宅地の換地に加えて、他の宅地の換地を法第八九条の照応の原則に従い市街地再開発事業区内に定めることも考えられる。
2) 土地区画整理事業の施行者は、一体的施行が行われる場合における仮換地の指定にあたっては、市街地再開発事業における手続きを円滑に行うことができるようにするためにも、仮換地指定通知書において特定仮換地の番号(街区番号及び符号又は記号等)を明記する必要がある。

(4) 共同住宅区設定にあたっての留意事項

共同住宅区への換地等にあたっては次のことに留意すべきである。
イ 共同住宅区内に換地又は土地の共有持分を定められるべき土地の指定をするにあたっては、当該指定を希望する土地の所有者等に対しては、共同住宅建設についての意向及び実現性をあらかじめ、十分に確認しておくべきである。
ロ 共同住宅区内の宅地については、速やかに住宅建設が行われるよう、関係都府県及び市町村は、次の措置を講ずることが望ましい。

1) 共同住宅の建設及び経営についての必要な技術的援助を行うとともに、賃貸住宅等の建設等についての利子補給及び融資が活用されるように指導することが望ましい。
2) 共同住宅区内の土地の所有者等による共同住宅の建設が、当該宅地の使用又は収益が可能となった時より相当の期間経過後においてもなされない場合においては、土地の所有者等と協議の上、地方公共団体、地方住宅供給公社による公営住宅等の用に供すべき土地として当該土地の買取り、共同住宅の建設の代行等について、関係機関と連絡調整を図ることが望ましい。

(5) 集合農地区設定にあたっての留意事項

集合農地区への換地等にあたっては次のことに留意すべきである。
イ 集合農地区については、生産緑地地区に関する都市計画の要請の制度(大都市法第一〇六条)が設けられているので、関係市町村は、集合農地区への換地の申出がなされるにあたって、あらかじめ当該制度について土地の所有者等に対し十分周知徹底を行うとともに、集合農地区への換地の申出に係る従前の土地に対する換地を定めるにあたっては、生産緑地地区に関する都市計画の要請の申出のあるものとその他のものに分類し、それぞれまとめて換地を定めるべきである。

(6) 申出換地等に伴う留意事項

住宅先行建設区や市街地再開発事業区制度等以外の、法律に基づかない申出換地は、より良い市街地の形成のため等事業上必要となる場合に行われる。申出換地とは、土地区画整理事業の換地計画において換地を定めるにあたり、施行地区内の特定の数筆の土地につき所有権その他の権利を有する者全員が他の土地の換地に影響を及ぼさない限度内において、これらの土地に対する換地の位置、範囲に関する合意をし、この合意による換地を求める旨の申出があった場合に、施行者は、公益に反せず、事業施行上支障を生じない限り、法第八九条第一項所定の基準によることなく当該合意されたところに従って各土地の換地を定めることができるものである。
申出換地を行う場合には、上記の趣旨の他、申出をしなかった者についての換地を定めるにあたって、照応の原則に従って換地を定める必要があることのほか、さらに以下の点に留意する必要がある。
1) 情報提供と機会均等

申出換地を行おうとする場合には、権利者全てがその情報を知らされる必要がある。このため、施行者は、申出換地の実施理由、申出換地を行う街区の位置、換地者選定の時期・方法等の周知を行うと共に、各地区の換地設計基準に明記する等、申出換地にかかる情報の提供に努める必要がある。
また、換地の申出にあたっては、地区内権利者の誰もが申出に参加できるよう機会均等に配慮することが望ましい。ただし、土地利用上の要請から、敷地規模等の条件を付与する場合も考えられるが、このような場合にも共同利用等の広範な参加を可能とするような方策を工夫することが望ましい。

2) 権利者の意思確認

申出換地の実施にあたっては、関係する権利者の合意が必要であり、権利者の意思の確認を文書により行う等、十分に権利者の意思を確認した上で行うことが望ましい。

2 換地処分、保留地処分、清算金
<運用上の留意事項>

(1) 換地処分における留意事項

換地処分は、換地計画において定められた関係事項を関係権利者に通知して行うことになっている(法第一〇三条)。換地処分が行われると、法律上公告のあった日の翌日から換地は従前の宅地とみなされ、また、従前の宅地に存した権利又は処分の制限の目的たる宅地又はその部分は、これらの権利又は処分の制限の目的たる宅地又はその部分とみなされる。

(2) 保留地処分における留意事項

組合等の施行者が保留地を公募して譲渡しようとしたにもかかわらず、譲渡できなかった場合、保留地管理法人(都市開発資金の貸付けに関する法律(昭和四一年法律第二〇号)第一条第四項第三号に規定する法人をいう。以下同じ。)に保留地を譲渡した上で、組合等の事業完了後の早期解散を図ることが望ましい。
なお、この場合、保留地取得費用について都市開発資金の無利子貸付けを受けることができるので、当該貸付金制度を積極的に活用することが望ましい。
以上のほか、保留地管理法人の活用を検討するにあたっては下記の事項に留意することが必要である。
1) 保留地管理法人については、施行者が出資して新規に設立する方法の他、保留地の管理・運営等についてノウハウを有する既存の株式会社や土地開発公社等を利用する方法が考えられる。
2) 保留地の売却にあたっては、保留地管理法人が、当該保留地を効果的に活用(例えば、住宅地として売却したり、商業、業務系用地として賃貸する等)する長期的な計画や能力を備えているかどうか検討する必要がある。

(3) 個人施行者が保留地を取得する場合の留意事項

法第三条第一項に規定する施行者が、法第一〇四条第一一項の規定により取得する保留地について保存の登記を申請する場合においては、当該登記の申請書に、以下の事項を記載した都道府県知事の証明書(別記様式第3)を添付する必要がある。
イ 同意施行者の有無
ロ 土地区画整理事業の施行前の当該土地区画整理事業の施行地区内のすべての宅地又は借地権の価額の合計額のうちに同意施行者が有する宅地又は借地権の価額の合計額の占める割合

(4) 清算金等の徴収交付における留意事項

施行者は、換地処分によって確定した清算金を徴収し、又は交付しなければならない。清算金は、第一回目の分割徴収又は交付すべき期日の翌日から起算して五年以内(資力の乏しい者については分割徴収期間は一〇年以内)の期間で、経済情勢をかんがみた利子(分割徴収の場合は年六%以内で規準、規約、定款又は施行規程で定める率、分割交付の場合には年六%)を付して、分割徴収又は交付することができる。また、清算金を滞納する者があるときは、国税滞納処分又は地方税滞納処分の例により強制徴収することができる。
なお、換地処分後に土地の所有権又は借地権等の異動があった場合、施行者に対抗できる特約(民法第四六七条の対抗要件を備えた交付清算金債権の譲渡又は施行者の承諾のある徴収清算金債務の引受の特約)がないかぎり、清算金の徴収又は交付は換地処分時の権利者に対して行うものとして取り扱うべきである。
土地区画整理事業においては、法第一〇四条及び第一一〇条の規定により、換地処分の公告の日の翌日における土地所有者等に対し清算金の徴収又は交付が行われるが、当該事業の施行地区内における仮換地の売買等が行われた場合、売買等の当事者間において前記のことを十分認識しないまま取引が行われているため、後日清算金の徴収等が行われる際、売主、買主、当該事業の施行者等の間でその処理をめぐって深刻な争いとなっている場合が多い。
このような事態を未然に防止し取引の公正と安全を図るため、宅地建物取引業者が施行地区内の仮換地の売買等の取引に関与する場合は、重要事項説明時にその売買、交換及び貸借の当事者に対して「換地処分の公告後、当該事業の施行者から換地処分の公告の日の翌日における土地所有者及び借地人に対して清算金の徴収又は交付が行われることがある」旨を物件説明書に記載のうえ説明すべきである。
なお、仮換地指定があった段階で売買が行われた場合には、新たに土地を取得した者が組合員となること(法第二五条)、組合員の地位に伴って権利義務が発生すること(法第二六条)、さらに総会の議決により組合員に対して賦課金が課せられる場合もあること(法第四〇条、第三一条)、についても説明すべきである。

3 公共施設の管理引継

土地区画整理事業の施行により設置された公共施設は、河川法(昭和三九年法律第一六七号)、道路法(昭和二七年法律第一八〇号)その他の法律等に定めがない限り、換地処分の公告があった日の翌日において、その公共施設の所在する市町村の管理に属する。
なお、換地処分の公告以前においても、工事の完了した公共施設については、公共施設管理者に管理を引き継ぐことができるので、この規定を活用し、工事の完了した公共施設については速やかに本来の管理者に引き継ぐことが望ましい。

V―3 事業完了後も見通した事業の進め方
土地区画整理事業により公共施設等が整備された市街地を権利者等が活き活きと使えるものとするためには、地区の住民や企業等によるまちづくり活動を継続的に展開するとともに、建築物の用途・形態等を土地柄に相応しいものへと誘導することが重要である。
1) 土地区画整理事業を通じて育ったまちづくり組織の継続的活動

土地区画整理事業の立ち上げや実施に際して組織化された土地区画整理組合や地元協議会等や組合等の組織が、事業後においても自主的なまちづくり活動を継続できるよう、地方公共団体等による技術者の派遣、専門的な情報提供を行うなどの支援策を用意しておくことが考えられる。

2) 建築活動等の誘導に対する配慮

用途地域等の都市計画を土地区画整理事業と併せて変更したり、地区計画や建築協定、緑化協定の活用により建築活動等に関する規制・誘導措置を講じることが考えられる。
また、政策的に特に積極的な誘導が必要な場合は、市街地再開発事業等の建築物整備事業や商店街活性化に関する施策等を併せて実施することも考えられる。



別記様式第1
<別添資料>



別記様式第2
<別添資料>



別記様式第3
<別添資料>


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