都再発第八八号
昭和四四年一二月二三日

都道府県知事・指定都市の長あて

建設省都市局長・建設省住宅局長通達


都市再開発法の施行について


標記については、昭和四四年一二月二三日建設省都再発第八七号をもって建設事務次官名により通達されたところであるが、市街地再開発事業の施行、市街地再開発組合(以下「組合」という。)の指導、監督等都市再開発法(以下「法」という。)の運用については、さらに左記の諸点に留意し、遺憾のないようにされたい。
なお、貴管下関係市町村に対しても、この旨周知徹底方取り計らわれたい。

1 都市再開発に関する基本構想の策定について

(1) 都市再開発を強力かつ計画的に推進するため、地方公共団体は、都市計画法第七条第四項の整備、開発又は保全の方針に基づき、それぞれの都市について高度利用地区を指定すべき地区、再開発の目標及び手法、再開発に関する事業実施の方針等に関する都市再開発の基本構想を策定するように努めること。
(2) 地方公共団体は、都市再開発の基本構想に基づき、地区ごとに再開発計画を策定するように努めること。

2 高度利用地区の指定について

(1) 高度利用地区の指定は、都市再開発の基本構想に定められた高度利用地区指定の全体計画に基づき行なうものとする。この場合、それぞれの市街地における再開発に関する事業の実施の見通し等を勘案のうえ、部分的、段階的に行なうことができるものとする。
(2) 高度利用地区の指定の際には、あらかじめ、地区再開発計画を勘案し、地域地区及び都市施設に関する都市計画が当該高度利用地区の内容にふさわしいものとなるよう検討を行ない、必要に応じて、これらの都市計画について変更又は新たな決定を行なうこと。
(3) 高度利用地区を指定したときは、その指定の内容その他必要な事項を関係者に十分かつ具体的に周知させること。

3 市街地再開発事業に関する都市計画の決定について

(1) 市街地再開発事業に関する都市計画において定める施行区域の規模は、少なくとも適正な一街区を形成することが可能なものでなければならない。この場合、その街区の規模は、市街地の実態に応じたものとなるよう弾力的に運用すること。
(2) 住宅不足の著しい地域においては、都市計画上住宅を建設することがふさわしくない場合を除き、法第五条の規定により市街地再開発事業に関する都市計画において住宅建設の目標を定めることとされているが、この場合「住宅不足の著しい地域」とは、次に掲げる土地の区域をいう。

イ 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域
ニ イ、ロ、ハに該当するもののほか、人口増加率が全国の人口の自然増加率(昭和三五年と同四〇年の国勢調査の結果による五年間の全国の人口の自然増加率はおおむね五パーセント)をこえる区域(町、丁、字界等の区域による。)又は人口一〇万以上の市で非住宅居住、老朽住宅居住、同居若しくは狭小過密居住の状態にある普通世帯数の総普通世帯数に対する割合が全国の平均値(昭和三八年住宅統計調査の結果による全国の平均値はおおむね二〇パーセント)をこえるものの区域の全部若しくは一部を含む都市計画区域

4 関係権利者への事業の内容の周知徹底について

市街地再開発事業の施行にあたっては、関係権利者に事業の概要を周知させることとなっているが(法第六七条)、説明会は、必要に応じて、随時開催するとともに、事業の内容を説明した図書の配付、掲示等を行ない、関係権利者への事業の内容の周知徹底を図ること。

5 施設建築物の一部等の交付を受けない関係権利者に対する救済措置について

施行地区内の関係権利者のうちその権利又は資力が零細であるために施設建築物に入居することができない者、法第七一条の申出をした者その他事業の施行により施行地区外に転出する者に対しては、次に掲げる救済措置について十分配慮すること。
イ 公営住宅への特別入居のあっせん(公営住宅法施行令第四条の五参照)
ロ 住宅金融公庫資金の個人住宅特別貸付けのあっせん(住宅金融公庫貸付方針参照)
ハ 住宅金融公庫資金による賃貸、分譲住宅への特別入居、譲渡のあっせん(住宅金融公庫法施行規則第四条第二項第三号及び第三項、第一二条第二項第三号、第一四条参照)
ニ 日本住宅公団による賃貸住宅への特別入居等のあっせん(日本住宅公団業務方法書第二〇条第一項、第三五条第二項参照)

6 組合の指導、監督について

組合の指導、監督にあたっては、特に次の事項について配慮すること。
(1) 組合の設立にあたっては、組合の事業の規模、事業施行能力等を勘案して、必要かつ相当と認められる場合には、資力及び信用のある参加組合員が参加するよう指導すること。また、法第五条の規定により住宅建設の目標が定められた場合には、できる限り、公的資金による住宅を建設する者が参加組合員として参加するよう指導すること。
(2) 組合の資金の借入れについては、必要な場合には、組合役員又は参加組合員が連帯保証をする等の措置をとるよう指導すること。
(3) 組合の指導、監督には、組合の資金状況、事業の進捗状況等を把握する必要があるので、これらの事項を定期的に報告させるような措置をとること。
(4) 事業計画の作成にあっては、各種公共施設の整備計画、公共住宅の建設計画等との調整が必要であるので、事前に関係部門と密接な連絡をとるよう指導すること。
(5) 事業計画の内容は関係権利者の資力、組合の資金調達能力等を十分勘案し、事業採算上無理のないようなものとするよう指導すること。
(6) 組合への技術的援助等は、地方公共団体の能力に応じ、適宜、適切な方法で行なうこと。

7 設計の概要の設定の基準について

事業計画において定める設計の概要の設定に関する技術的基準は、都市再開発法施行規則第七条各号に規定されているところであるが、設計の概要の設定にあたっては、関係権利者が従前の資産の価額の範囲内で、できる限り従前の利用面積と同程度の権利床を取得することができよう、階高及び廊下、階段等の共用部分の規模は、施設建築物の講造、用途構成及び居住性に応じた最小限度のものとし、また全体的にいたずらに華美とならないよう設計するなど施設建築物の低廉化を図ること。

8 事業の施行に伴う損失補償等について

(1) 市街地再開発事業の施行に伴い権利の変換を希望しない旨の申出をし、又は借家権の取得を希望しない旨の申出をして施行地区外に転出する者等に対しては、その者が施行地区内に有していた宅地、借地権、借家権等の資産の価額を事業計画の決定等の公告の日から起算して三〇日を経過した日(以下「評価基準日」という。)における取引価格等を考慮して評価し(法律第八〇条)、これに利息相当額を附した補償金を支払うこととなるが(法第九一条)、借家人又は家主が転出する場合における家主の資産の評価については、次のようになること。

イ 家主が転出する場合に、家主に補償すべき資産の価額は、家主の有している宅地、借地権又は建築物の評価基準日における価額から借家人の有している借家権の評価基準日における価額を控除した価額であること。
ロ 借家人のみが転出する場合に、家主の資産として権利変換を受けることとなる資産の価額は、イと同様に家主の資産の価額から借家権の価額を控除した価額であること。

なお、イの場合において借家人が転出しないときは、施行者が従前の家主にかわって借家人の家主となるが、この場合、標準家賃の額の確定にあっては、当該借家人の有している借家権の価額に応じて必要な補正を行なう必要があること(都市再開発法施行令第四一条)。
(2) 権利変換期日後に、施行地区内の土地又は物件を占有している者に対して土地の明渡しを求める場合には、それらの者が通常受ける損失を補償しなければならないが(法第九七条)、その場合の金銭補償の内容としては、次のようなものがある。

イ 動産移転料
ロ 家賃減収補償
ハ 営業の廃止、休止又は規模縮少の補償
ニ 仮住居等取得費用

なお、施設建築物に入居することとなる者を一時収容するために必要な仮設店舗、仮設住宅等の建設のためには、施行地区外の土地の使用(法第六九条)、道路の占用(道路法施行令第七条第五号)、都市公園の占用(都市公園法施行令第八条第九号)が認められているので、仮住居等取得費用等の金銭補償にかえて、できる限り、これらの制度を活用し、権利者が従前の生活又は営業を継続することができるよう図ること。

9 事業代行の制度について

事業代行の制度は、組合による市街地再開発事業の継続が困難となる場合に、都道府県知事又は市町村長が組合にかわって事業を完成させ、関係権利者の権利の保護を図ろうとするものであり、本事業に特有の制度である。組合の施行する市街地再開発事業は、あくまで組合がその責任において遂行することが建前であるので、組合の指導、監督にあたっては、事業代行の事態に立ち到ることのないよう十分配意するとともに、やむを得ず事業代行をすることとなった場合には、次の点に留意すること。
(1) 事業代行の開始の決定は、組合又は相当数の組合員の申請によることを原則とし、職権による代行は組合の事業の現況等から緊急性の高い場合に行なうこと。
(2) 事業代行開始の公告後は組合の代表権、業務執行権等は事業代行者たる都道府県知事又は市町村長に専属するが(法第一一五条)、実際の組合の事務処理は、事業代行者たる都道府県知事又は市町村長が、支障のない限り、組合の役職員をして行なわせること。
(3) 事業代行期間中の組合の債務について地方公共団体が債務保証をする場合には、その必要性を十分検討したうえで行なうものとし、保証契約は、組合の取得する施設建築物の一部の価額の範囲内において行なうこと(法第一一六条参照)。
(4) 施設建築物が完成したときは、都道府県又は市町村の債務保証に係る債務のうち未弁済のものについては、当該施設建築物に対する物的担保に切り換え、又は組合の取得した施設建築物の一部等を処分して、債務の弁済にあてる等の措置を講ずること。
(5) 地方公共団体が債務保証に係る債務を弁済したときは、組合の取得する施設建築物の一部の上に先取特権を取得するが、先取特権の行使には当該施設建築物の一部の売渡代金等の払渡し前の差押えが必要であるので、この点に留意すること。
(6) 事業代行を終了したときは、組合に対する求償権の保全について特に注意するとともに、財産の処分等に関する計画の承認(法第一一七条第三項)にあたっては、地方公共団体の保証にかかる債務が優先的に弁済されるよう十分考慮すること。

10 施設建築物の一部等の交付を受けない者に対する租税特別措置の適用について

市街地再開発事業については、法附則各案により地方税法、租税特別措置法等を改正し、不動産取得税、所得税、法人税、印紙税及び登録免許税についての特別措置を講じているが、特に過小床のため施設建築物の一部等の交付を受けない者及び権利変換を希望しない旨の申出をした者等が取得する補償金(利息相当額を含む)。に係る所得税及び法人税については、次のように定められているので、留意すること。なお、借家人についても別途同様の取扱いがなされる予定である。
(1) 過小床のため施設建築物の一部等の交付を受けない者、やむを得ない事情により法第七一条第一項の申出をしたと認められる者及び借地法の適用を受けない賃借権等新たな権利に変換をすることのない権利を有する者が支払いを受ける補償金については、代替資産の取得の特例又は一、二〇〇万円控除の特例を適用する(租税特別措置法第三三条第一項第三号の二及び第六号の二、第三三条の四、第六四条第一項第三号の二及び第六号の二、第六五条の二第二項)。
(2) 前項のやむを得ない事情は、施行者が次の各号の一に該当するものとして審査委員の過半数の同意を得、又は市街地再開発審査会の議決(学識経験者委員の過半数を含む委員の過半数の賛成による)を経て認めた場合とする(同法施行令第二二条第九項、第三九条第五項)。

イ 申出人に係る建築物が建築基準法第三条第二項の既存不適格用途のものである場合
ロ 申出人が施行地区内で施設建築物の保安上危険であり、又は衛生上有害である事業を営んでいる場合
ハ 申出人が施行地区内で施設建築物に居住する者の生活又は施設建築物内における事業に対し著しい支障を与える事業を営んでいる場合
ニ 申出人又はその者と住居及び生活を一にしている者が老齢又は身体上の障害のため施設建築物において生活し、又は事業を営むことが困難となる場合
ホ 前各号の場合のほか、施設建築物の構造、配置設計、用途構成、環境又は利用状況につき申出人が従前の生活又は事業を継続することを困難又は不適当とする事情がある場合

(3) 施行者は、過小床のため施設建築物の一部等の交付を受けない者及び借地法の適用を受けない賃借権等新たな権利に変換をすることのない権利を有する者には、その旨を証する書類を、やむを得ない事情により法第七一条第一項の申出をしたと認められる者には、当該申出の事情が(2)の各号の一に該当する旨を証する書類及び審査委員の同意又は市街地再開発審査会の議決のあったことを証する書類を交付する(同法施行規則第一四条第六項第五号の六、第七号の二)。

11 市街地改造事業等の経過措置について

法の施行に伴い公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三六年法律第一〇九号。以下「旧市街地改造法」という。)及び防災建築街区造成法(昭和三六年法律第一一〇号)は廃止されたが(法附則第三条)、市街地改造事業及び防災建築街区造成組合等に関しては、次のように経過措置が定められている。
(1) 法の施行の際(昭和四四年六月一四日)に、現に市街地改造事業に関する都市計画において施行区域として定められている土地の区域について施行される市街地改造事業については、旧市街地改造法(都市計画法施行法第七二条による一部改正参照)は、法の施行後も、なおその効力を有すること(法附則第四条第一項)。なお、市街地改造事業の旧都市計画法(大正八年法律第三六号)の廃止に伴う経過措置は、法附則第二一条の規定による一部改正後の都市計画法施行法第七一条及び第七三条の規定によること。
(2) 法の施行の際に、現に存する防災建築街区造成組合、現に施行されている旧防災建築街区造成法第五四条に規定する防災建築街区造成事業及び現に同法第五六条の規定による補助金の交付の決定のあった防災建築物に関しては、同法は、法の施行後も、なおその効力を有すること(法附則第四条第二項)。
(3) (1)及び(2)に規定する市街地改造事業、防災建築街区造成組合、防災建築街区造成事業及び防災建築物に関する地方税法、租税特別措置法、住宅金融公庫法等の適用については、なお従前の例によること(法附則第二二条第一項)。ただし、市街地改造事業については、法の施行後に旧市街地改造法第四〇条の工事完了の公告により権利者が不動産を取得した場合には、当該権利者が従前有していた土地、借地権又は建築物の対償の額の範囲内においては不動産取得税が課されない旨の特別措置が適用されること(法附則第二二条第二項)。

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