都再発第一九号
昭和五一年四月一日

各都道府県知事・指定都市の長あて

建設省都市局長・建設省住宅局長通達


都市再開発法の一部改正について


都市再開発法の一部を改正する法律(昭和五〇年法律第六六号)、都市再開発法施行令の一部を改正する政令(昭和五〇年政令第三〇四号)及び都市再開発法施行規則の一部を改正する省令(昭和五〇年建設省令第二一号)は、それぞれ昭和五〇年七月一六日、同年一〇月二四日及び同年一二月二三日に公布され、法律及び政令については同年一一月一日、省令については公布の日から施行された。本改正法は、最近における都市問題の深刻化に対処するため、各都市における既成市街地の再開発を積極的に推進し、公園、緑地、街路等のオープンスペースを十分に確保しつつ、中高層の耐火建築物を建設し、併せて職住近接を図るべく、公益性が高い大規模な事業の円滑な実施を図るための手法として第二種市街地再開発事業の制度を創設するとともに、主として権利者による計画的な再開発の実施を促進するために市街地再開発促進区域及び個人施行者の制度の創設及び高度利用地区の制度の改正等を行ったものである。
今後、都市再開発法の実施に当たっては、左記の点に十分留意して、その運用に遺憾のないようにされるとともに、速やかに関係事項を貴管下関係市町村に周知徹底方取り計られたく命により通達する。
また、昭和四五年六月二二日付け建設省都再発第六三号「標準施行規程について」を別紙のとおり改正するので周知徹底方同様措置されたい。
なお、高度利用地区制度の改正に関する事項については別途通達する。

1 市街地再開発促進区域について

市街地再開発促進区域(以下「促進区域」という。)の制度は、高度利用地区内にあること等第一種市街地再開発事業の施行区域の条件に該当する土地の区域について、民間の再開発への機運が盛り上ってはいるが、直ちに事業に着手するには至らない地域につき促進区域として都市計画上位置づけるとともに、促進区域内における再開発に対する助成・指導及び建築行為等の規制を行いおおむね五年以内に第一種市街地再開発事業、開発行為、都市計画適合建築物の建設等に着手することを期待することにより区域内における再開発を促進する制度であるので次の点に留意すること。
(1) 促進区域の指定は、民間の旺盛な建築活動を計画的な再開発に誘導し、官民が協同して良好な都市環境を創造して行くために、積極的に行うように努めること。
(2) 促進区域は、制度の趣旨にかんがみ、都市再開発法(以下「法」という。)第七条第一項各号に掲げる条件に該当するほか、権利者の第一種市街地再開発事業の施行等についての能力及び事業化への機運が十分であると判断される土地の区域について定めるものとすること。
(3) 促進区域に関する都市計画を決定するに当たっては、説明会の開催等により関係権利者の意向を十分把握し、その意向を反映するよう努めるとともに都市計画の目的を達成するための積極的な協力態勢が確保されるようにすること。
(4) 促進区域においては、個人施行の第一種市街地再開発事業のうち一定の要件に該当するものについて、都市計画事業として施行されない場合においても組合施行と同様の国庫補助を行うこと等により促進区域内の再開発が促進されることとなるので、個人施行又は組合施行の場合の事業計画の素案の作成、組合の設立手続の指導その他の技術的援助を行うとともに、市街地再開発事業に対する助成資金を確保する等により当該区域内において速やかに再開発が行われるよう配慮すること。
(5) 促進区域は、五年以内に区域内の権利者により自発的な再開発が実施されることを期待する制度であるが、他方一定の期間内に第一種市街地再開発事業を行う必要性の高い土地の区域でもあるので原則として促進区域に関する都市計画の決定の告示の日から起算して五年以内に権利者による再開発が行われない場合には、市町村が第一種市街地再開発事業を施行する責務を負うものであること。

なお、当該都市計画決定の告示の日から五年を経過した後における組合の設立の認可等を妨げるものでないので、早急に権利者による事業実績が期待される場合にはこれらの者による事業の実施が可能となるよう努めること。

(6) 一の単位整備区の区域内の土地所有者等がその区域内の土地所有者等の三分の二以上の同意を得て第一種市街地再開発事業を施行すべきことを市町村に対して要請し、市町村等が第一種市街地再開発事業を施行しようとするときにおいても、できるだけ多くの者の同意を得て円滑に実施するよう努めること。
(7) 促進区域に関する都市計画において定める単位整備区は、促進区域内において建築敷地の造成及び公共施設用地の造成を一体として行うべき土地の区域の最小単位というべきもので、一の単位整備区ごと又は数個の単位整備区を合わせて第一種市街地再開発事業を施行し、又は開発行為及び高度利用地区適合建築物の建設等により、促進区域に関する都市計画の目的を達成しようとするものであるので、単位整備区を定めるに当たっては次に掲げる事項に適合するよう留意すること。

イ 各単位整備区が、都市計画上当該地区にふさわしい容積、建築面積、高さ、配列及び用途構成を備えた健全な高度利用形態の建築物を建築しうる位置及び形状を備えているとともに、当該建築物を主として土地所有者等の創意工夫により自主的に建築することができる大きさの区域であること。
ロ 単位整備区の位置及び配列は、適正な配置及び規模の道路、公園その他の公共施設を備えた良好な都市環境のものとなるように定めること。
ハ 単位整備区内の建築敷地の造成と併せて一体として造成すべき公共施設の用に供する土地を避けて定めないこと。
ニ 単位整備区内にある公共施設の敷地の地積の合計の当該単位整備区の地積に対する割合が、容積率、当該公共施設の機能等を勘案して、各単位整備区の間に著しい不均衡を生じないように定めること。ただし、当該公共施設の位置及び地形上やむをえない場合はこの限りでない。

(8) 促進区域内の建築行為の制限の制度(法第七条の四)は、促進区域内においては建築物は高度利用地区に関する都市計画に適合しなければならないが、これに適合することが要求されない木造等の二階建て以下のものについてその建築を放任すると一定期間内に大規模な共同建築物を建築しようとする促進区域制度の趣旨に反することとなるため、これらの建築について都道府県知事の許可を必要とすることとしたものであること。また、促進区域内の開発行為の制限の特例の制度(法第七条の八)は、促進区域内の開発行為は通常は市街地再開発事業として行われるものと考えられるが、これ以外の開発行為が行われるときは、促進区域制度の趣旨から規模の大小にかかわらず、促進区域に関する都市計画(公共施設の配置、単位整備区域等)等に適合して行われるものでなければならないこととしたものであること。

2 個人施行者制度について

今回、民間の旺盛な建築活動を計画的な再開発に誘導するため、個人施行者の制度が認められたがその指導監督に当たっては、特に次の事項について配慮すること。
(1) 個人施行者制度は、土地所有者又は借地権者(以下「権利者」という。)が五人未満である場合、市街地再開発事業の施行には賛成であるが組合員になることは希望しない者がある場合等組合設立に至らない場合において、権利者が一人で又は数人が共同して第一種市街地再開発事業を施行することができることとしたものであるので、このような組合設立に至らない場合に個人施行者制度を活用するよう指導すること。
(2) 個人施行者の場合には全員同意方式であるため、高度利用地区内であれば市街地再開発事業の都市計画決定を要することなく第一種市街地再開発事業を施行することができるが、高度利用地区の決定及び事業の認可に際しては地元の意向を十分把握するとともに公共的な目的が十分確保されるよう配慮すること。
(3) 事業計画の作成に当たっては、各種公共施設の整備計画、公的住宅の建設計画等との調整が必要であるので、事前に関係部局と密接な連絡をとるよう指導すること。
(4) 権利変換計画の作成に当たっては、必要に応じて法第一一〇条の特則を活用する等により、できる限り円滑な権利変換が行われるよう指導すること。
(5) 個人施行者の指導監督には、個人施行者の資金状況、事業の進捗状況等を把握する必要があるので、これらの事項を定期的に報告させるような措置をとること。
(6) 個人施行者への技術的援助等は、適宜適切な方法で行うこと。
(7) 個人施行者による第一種市街地再開発事業については、組合に対する税制上、金融上の措置と同様の措置が受けられるほか財政上の措置として、個人施行者(一人で施行する者にあっては、その施行の認可の際、施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者が五人以上であるものの施行者に限る。)でその施行地区が市街地再開発促進区域内又は第一種市街地再開発事業の施行区域内にあるものに対しては組合と同様の補助を行うこととしているので、これらの措置を有効に活用して事業の促進を図り円滑に施行されるよう指導すること。
(8) 個人施行者の事業の継続が困難となるおそれがある場合においては、組合の場合と同様、都道府県知事又は市町村長による事業代行の制度が設けられていること。

3 第二種市街地再開発事業について

権利変換方式による従来からの第一種市街地再開発事業については、従前の資産は権利変換期日において一挙に新しい資産に変換することが必要なため、大規模で権利者の数が非常に多い地区を再開発する場合には権利の調整にかなりの期間を要し、急施を要するものについて適切に対処できない嫌いがあることにかんがみ、施行区域の面積が三ha以上の大規模な事業で、かつ公益性及び緊急性の高いものについて事業の円滑な実施を図ることを目的として、権利の個別的処理を認める買収方式による第二種市街地再開発事業の制度が設けられたものである。
すなわち、第二種市街地再開発事業においては、施行者が施行地区内の土地又は建築物に関する権利を契約又は収用によりいったん取得し、又は消滅させその対償に代えて建築施設の部分を権利者に給付する方式を採り、第一種市街地再開発事業における権利変換計画に対応するものとして管理処分計画を作成するものとしているが、この場合((イ))譲受け希望の申出をした者については管理処分計画を定めた後でなければ用地買収等はできないが管理処分計画は権利変換計画と異なり地区外転出者には関係がなく、地区内残留者についてのみ定めればよいこと、((ロ))従前の権利についても一応の見積額を示すにとどめており従前の権利の評価額はおって個々の買収協議の際決定すればよいこと、((ハ))用地買収の済んだ所から順次再開発ビルの建築等の事業にかかることができ、地区内の居住者を希望に応じ次々とこれに入居させうること等により第一種市街地再開発事業では適切に対処することが困難な大規模な事業についてもその進捗が期待できるとともに、第一種市街地再開発事業では実施が困難であるためにその事業計画を作成できなかった地域についても第二種市街地再開発事業による事業計画を作成しうることとなるものである。
第二種市街地再開発事業は以上の特色を有するほか、手続等事業の実施上第一種市街地再開発事業と異なるものであるので、次の点に留意すること。
(1) 大震火災の危険が大きい地域、低層木造住宅の密集地域等著しく環境が悪化した地域等の防災、環境整備を図ることが緊急の課題となっていることにかんがみ、法第三条の二各号に掲げる要件に該当する土地の区域については第二種市街地再開発制度を活用することにより速やかに当該区域の再開発が図られるよう努めること。
(2) 第二種市街地再開発事業は、用地買収方式であり、第一種市街地再開発事業と権利の処理につき異なる制度となっているが、関係権利者に関しては、((イ))地区内居住を希望すれば譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出ができること、((ロ))この場合管理処分計画ができないうちは、従前の権利が消滅させられることはないこと、((ハ))譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出は原則としていつでも撤回できること、((ニ))担保権者の権利は権利変換方式と異なって移行しないが物上代位の規定(法第一一八条の一三)、譲受け希望の申出の撤回とみなす規定(法第一一八条の一九)を新たに設け担保権者の保護を図っていること等権利の保護に関しては第一種市街地再開発事業と異なるものでないこと。
(3) 第二種市街地再開発事業は特に公益性の高い再開発であることから土地等の収用権が認められているが極力関係権利者と協議を行い任意買収によるよう努めること。
(4) 施行地区を二以上の工区に分け事業を実施する場合、第一種市街地再開発事業について工区ごとに権利変換計画を定める場合には工区間の関係権利者の移動はできないが、第二種市街地再開発事業における管理処分計画では工区間の関係権利者の移動が可能であること。
(5) 第二種市街地再開発事業の工事の完了後、施行者は建築施設の部分を与えられた者ごとに従前の宅地等の価額と取得した建築施設の部分の価額を確定することになるが、この場合施行者が従前の資産を取得する時点が権利ごとに同一ではないので物価変動による修正を行うこと。
(6) 第二種市街地再開発事業は第一種市街地再開発事業とは、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一二条第二項に規定する市街地開発事業の種類が異なること。
(7) 第二種市街地再開発事業に関する財政上、金融上及び税制上の助成制度については、地方公共団体施行の第一種市街地再開発事業と同様に措置されていること。

4 借家権者の保護について

促進区域の指定、市街地再開発事業に関する都市計画の決定、市街地再開発事業の施行等に当たっては、借家権者はその地区内に居住し、又は営業している者であり、事業の施行により直接的な影響を受けるものであるのでその意向を十分把握し反映させることに努めるとともに、市街地再開発事業の施行区域内に居住する借家権者等で、市街地再開発事業の施行により住宅に困窮することとなる者に対しては再開発住宅の制度(昭和四九年一〇月一日付け建設省住街発第七四号建設事務次官通達「再開発住宅制度について」参照)があるので、その積極的活用を図ること。
また、組合施行の市街地再開発事業については、借家権者は法律上組合員となることはできないが、組合の発起人が事業計画を作成するときは借家権者と協議し、また組合の設立後当該組合が事業計画の変更又は権利変換計画の作成若しくは変更をするときは借家権者の組織する協議会等と協議し、その意見を十分考慮してこれらの計画を定めるよう組合等を指導すること。

5 その他

(1) 都市防災上必要な市街地再開発事業の推進について

都市の防災機能の強化の観点から、今後の事業推進に当たっては、地震、火災等の非常災害の発生に際して住民の安全を確保するための防災拠点の整備その他都市防災上必要性の高いものを重点とし、その他のものについても都市防災上の効果について十分配慮すること。

(2) オープンスペースの確保による良好な都市環境の創造について

市街地再開発事業は市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用により良好な都市環境を創造することを目的とするものであるが、これまで実施された事業においては施設建築敷地内でのオープンスペースの確保が必ずしも十分でなかったことから、今回の改正により高度利用地区内の建築規制の項目に新たに建ぺい率の最高限度及び壁面の位置の制限を追加して施設建築敷地内の周辺部にオープンスペースの確保を図ることとしたので、今後の事業については、極力施設建築敷地内の周辺部にオープンスペースを配置することにより、道路及び建築敷地の空間的一体化を図り、良好な都市環境を創造するよう努めること。

(3) 保留床の公的住宅等への優先的活用について

保留床の処分については、これまで主として商業施設に充てられる事例が多くみられるが、今後の事業の施行に当たっては、既成市街地における住宅の確保に資するため保留床を公営住宅等の公的住宅に優先的に活用するよう努めるほか、公民館等地区住民の生活上必要な公益施設として積極的に活用するよう配慮すること。
なお、この場合保留床処分の対象となる公的住宅又は公益施設に関する全体的整備計画との関連があるので、関係部局と密接な連絡をとること。

(4) 施行区域の条件の改正について

従来、施行区域内にあるすべての建築物の建築面積を合計した場合に耐火建築物以外の建築物で地階を除く階数が二以下のものの建築面積が三分の二を超えていなければならないものとされていたが、耐火建築物であっても建替えを必要とする老朽建築物等が多い場合にも再開発を行い得るものとするため、耐火建築物で地階を除く階数が三以上であるもの(施行令第一条の二で定める耐用年限の三分の二を経過しているもの等を除く。)の建築面積が三分の一以下であることと改めている(法第三条第二号)ので留意すること。

(5) 助成の拡充について

市街地再開発事業については、昭和四四年の法制定以来税財政金融措置等の助成制度の拡充がなされているが、特に税制上の特別措置につき、次の点に留意すること。
イ 今回の改正に伴う地方税法の改正により、権利床に対する固定資産税につき、その税額から、一〇年間(第七七回国会に提出された地方税法等の一部を改正する法律案の成立により、昭和五一年度より七年間に短縮された。)、政令で定める住宅についてはその三分の二を、その他の住宅及び非住宅部分についてはその三分の一を、それぞれ減額されること。
ロ 登録免許税については、今回の法改正により新設された個人施行者及び第二種市街地再開発事業においても従来と同様の扱いとなる。したがって、第二種市街地再開発事業における権利床(譲受け予定者に係るもの)の取得は、権利変換の場合と異なる法的構成をとっているが、その登記に係る登録免許税は非課税とされること。
ハ 組合に対する不動産取得税の課税については、地方税法(昭和二五年法律第二二六号)第七三条の二七の四の本法の規定との関連において、従来疑義の生じていたところであるが、組合に対しては参加組合員が権利変換処分により取得する保留床以外の保留床部分につき不動産取得税が課せられるものであり、その場合においても、建物については六箇月以内に未使用で譲渡するときは、解釈上非課税とされ(地方税法第七三条の二第二項)、土地については住宅に係るものであれば非課税又は減額の扱いとされること(地方税法第七三条の二四)。なお、これについては自治省と了解済みであること。

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