建設省都再発第一二九号
昭和六三年一二月二二日

都道府県知事あて

建設事務次官通達


都市再開発法及び建築基準法の一部改正について


都市再開発法及び建築基準法の一部を改正する法律(昭和六三年法律第四九号)は昭和六三年五月二〇日に、都市再開発法及び建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(昭和六三年政令第三二二号)及び都市再開発法施行規則の一部を改正する省令(昭和六三年建設省令第二一号)は、同年一一月一一日に公布され、いずれも同年一一月一五日から施行された。
本改正は、都市環境の改善、住宅、業務床等の供給の促進等の必要性が高まつている現状にかんがみ、市街地の計画的な再開発の一層の推進を図るため、市街地再開発事業について施行区域要件の緩和及び権利変換手続の特則の拡充等を行うとともに、一体的かつ総合的な市街地の再開発を誘導するための再開発地区計画に関する都市計画を創設し、当該再開発地区計画の区域内における建築物等に対する制限の特例等を定めるものである。
今後、都市再開発法及び建築基準法の施行に当たつては、本改正法制定の際に国会においてなされた別添の附帯決議の趣旨を十分尊重するとともに、左記の事項に十分留意してその運用に遺憾のないようにされたく、命により通達する。また、貴管下関係機関に対しても、この旨周知徹底方お願いする。

第一 市街地再開発事業の推進について

市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備を一体的かつ総合的に行う市街地再開発事業については、都市再開発の中核的手法として近年その一層の活用を図ることが求められているところであり、本改正による制度拡充の内容を適切にいかしつつ、市街地再開発事業の一層の推進に努めること。

第二 再開発地区計画制度の創設について

一 再開発地区計画制度の意義について

再開発地区計画制度は、近年、都市環境の改善、住宅、業務床等の供給の促進等の要請が高まつている一方、産業構造及び輸送体系の変化等に伴い都市の枢要な位置において相当規模の低・未利用地が発生してきており、これらが都市の再開発に重要な機会を提供するものであることにかんがみ、これらの土地の区域における土地利用転換を一体的かつ総合的に誘導することにより、都市環境の整備・改善及び良好な地域社会の形成に寄与しつつ、良好な市街地の形成による土地の高度利用と都市機能の更新を図ることを目的として創設されたものであること。
本制度においては、このような目的を達成するため、再開発地区計画において土地利用転換の方向を示しつつ、事業の熟度に応じて、土地利用転換に必要な道路、公園その他の公共施設の配置及び規模を定め、さらに、再開発地区整備計画において地区施設及び建築物の整備等に関し必要な事項を一体的かつ総合的に定めることとされるとともに、再開発地区整備計画の策定の要請の制度が設けられているほか、規制又は誘導の手段として届出・勧告制度、開発許可制度、建築基準法に基づく市町村の条例による制限並びに道路の位置の指定に関する特例及び予定道路の指定の制度に加え、特定行政庁の認定等による容積率制限等の特例措置が講じられるものであること。

二 再開発地区計画制度の活用について

本制度においては、都市の良好な資産の形成に資する優良なプロジェクトを誘導して、土地利用転換の円滑な推進を図ることとされているので、次の基本的事項に配慮しつつ、その積極的な活用に努めること。
(一) 必要な都市基盤施設の一体的整備

合理的かつ健全な高度利用を目的とした土地利用転換を図るためには新たな土地利用を支える都市基盤施設の整備が行われる必要があり、建築物等の計画は道路等の施設の計画と一体的に定められ、建築物等の建築は当該施設の整備と併せて行われるべきものであることにかんがみ、本制度では、地区施設のほか、都市再開発法第七条の八の二第二項第二号に規定する道路、公園等の施設(以下「二号施設」という。)を定めることとされるとともに、必要な施設の整備状況等を見定めつつ特定行政庁の認定により容積率制度を緩和することができることとされたので、この趣旨に留意して運用すること。

(二) 魅力ある都市空間の形成

本制度は、相当規模の土地の区域における市街地の形成を一体的に計画するとともに、容積率等建築物に関する一定の事項についてきめ細かな規制を行うことができる手法であるので、この特長をいかして当該区域にふさわしい用途及び空間の構成を備えた魅力ある都市空間の形成を誘導するよう努めること。

(三) 良好な地域社会の形成

相当規模の土地の区域における土地利用転換は、都市の抱える諸々の課題の改善を図る上で重要な機会を提供するものであることにかんがみ、本制度の活用に当たつては、地域活力の創出、市民の交流の場の提供、地域の交通条件の改善等都市政策上の広い観点からの要請を踏まえ、誘導されるプロジェクトが良好な地域社会の形成に資することとなるよう努めること。特に大都市地域等住機能の確保が強く要請されている地域において、相当戸数の住宅の供給を図るプロジェクトについては、容積率の制限はこれに配慮して定めること。

(四) 段階的整備への対応

相当規模の土地の区域における再開発にあつては、その事業が逐次段階的に行われる場合が想定されることにかんがみ、本制度においては、あらかじめ再開発地区計画の区域の全域について当該再開発地区計画の目標、当該区域の整備及び開発に関する方針を定めることにより計画の一体制を確保しつつ、その後の事業の熟度に応じて順次二号施設の配置及び規模並びに再開発地区整備計画等においてきめ細かな制限を定めることにより、計画の一体性及び詳細性の確保が可能であるので、この趣旨に留意して活用に努めること。

三 再開発地区整備計画の策定の要請について

都市の開発及び整備においては、公的主体及び民間主体が一体となつて総合的な都市環境の形成が図られるものであることにかんがみ、本制度においては、民間主体の事業意欲、企画能力等を適切に活用しつつ都市の良好な資産の形成を図るため、再開発地区計画の区域内の権利者が、建築物、公共施設等の整備に関する事項を内容とする協定を締結し、再開発地区整備計画を定めるべきことを要請できることとされたので、この趣旨に留意して運用すること。

四 容積率制限等の緩和措置について

本制度においては、都市環境の整備・改善に資する良好な建築行為を誘導し、これと併せて都市基盤施設の整備を促進するため、再開発地区計画の内容に照らし特定行政庁の認定等により、一定の良好な建築計画について容積率制限、斜線制限又は用途制限を緩和することができることとされたので、特定行政庁は、この認定等が再開発地区計画の内容に即した市街地形成を実現する上で極めて重要な役割を果たすことに留意するとともに、認定等を行うに当たつては、具体の建築計画の内容、必要な公共施設の整備状況等を総合的に判断して、円滑な土地利用転換が進むよう適切な運用を図ること。

五 執行体制の整備について

本制度においては、従来の地区計画制度の仕組みに加え、再開発地区計画に関する都市計画に定められた内容に照らして特定行政庁が認定等を行うことにより用途地域による建築物の制限を緩和する特例措置が新たに創設されたところであるので、本制度の運用に当たつては、都市計画担当部局と建築担当部局が一層の連携を図りつつそれぞれの役割を適切に遂行するよう努めること。


別添 略


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