建設省都計発第九九号・建設省都再発第九三―二号・建設省住街発第八七―二号
平成一〇年八月二八日

各都道府県知事及び各指定都市の長あて

建設省都市局長・住宅局長通達


都市再開発法及び都市開発資金の貸付けに関する法律の一部改正について


都市再開発法及び都市開発資金の貸付けに関する法律の一部を改正する法律(平成一〇年法律第八〇号)は平成一〇年五月二九日に、都市再開発法施行令の一部を改正する政令(平成一〇年政令第二八六号)及び都市再開発法施行規則の一部を改正する省令(平成一〇年建設省令第三三号)は同年八月二六日に公布され、いずれも同年八月二八日から施行された(ただし、都市開発資金の貸付けに関する法律の一部改正に係る部分については同年五月二九日付けで既に施行されているところである。)。
都市再開発法(昭和四四年法律第三八号。以下「法」という。)に係る本改正は、民間事業者の活力を一層活用することにより、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新が必要な区域における市街地の再開発の促進を図るため、都市再開発方針の策定対象区域の拡大、地方公共団体等施行の市街地再開発事業における特定事業参加者制度の創設、民間事業者主導の再開発を支援する再開発事業計画の認定制度の創設を行うものである。
今後、法の施行に当たっては、下記の事項に十分留意して、その運用に遺憾のないようにされるとともに、速やかに関係事項を貴管下関係機関に周知徹底方取り計られたく命により通達する。

第1 都市再開発方針の策定対象区域の拡大について

法第二条の三に規定する都市再開発の方針(以下「都市再開発方針」という。)は、都市再開発の長期的かつ総合的なマスタープランであり、法に関する個々の事業について都市全体からみた効果を十分に発揮させること、民間建築活動を適正に誘導して民間投資の社会的意義を増加させること等をねらいとして、昭和五六年の法の改正により、人口の集中の特に著しい政令で定める大都市を含む都市計画区域を対象として、その策定義務が法定化されたものである。
都市再開発方針の策定の推進については、従来より、政令で定める大都市を含む都市計画区域以外についても、必要がある場合には、市街化区域の整備、開発又は保全の方針においてその策定を図ることとしてきたところであるが、今般の改正を受けて、法に基づく策定義務の対象として拡大された都市計画区域については、次の事項に留意の上、速やかな策定に向けて一層積極的な取組みを図られたい。なお、政令で定める大都市を含む都市計画区域以外の区域について、市街化区域の整備、開発又は保全の方針において都市再開発方針が既に定められており、当該方針が改正により追加された法第二条の三第二項において明らかにすることとされている内容を明示している場合には、当該都市再開発方針を同項に基づくものと扱ってさしつかえない。この場合、直近の都市計画地方審議会において、当該都市再開発方針が同項に基づくこととなった旨を適宜報告されることが望ましい。
1 策定対象区域拡大の趣旨

今回の改正において、都市開発方針の策定義務の対象区域が市街化区域を有するすべての都市計画区域にまで拡大されたところであるが、その目的は、人口、産業が都市へ集中し、都市が拡大する「都市化社会」から産業、文化等の活動が都市を共有の場として展開する成熟した「都市型社会」への移行が進展する中にあって、都市の再構築の推進が都市行政の重要な課題となってきているとともに、とりわけ地方都市の中心市街地における空洞化の進展など、法第二条の三第一項に規定する人口の集中の特に著しい大都市以外の都市においても、既成市街地の再開発を戦略的に推進する必要性が高まっていることを踏まえ、これらの都市における都市再開発方針の策定を法的に位置付けることにより、長期的かつ総合的なビジョンの下に、地方都市を含む都市の再開発の一層計画的な推進を図ろうとするものである。
なお、法改正により追加された法第二条の三第二項の規定は、「計画的な再開発が必要な市街地」の有無、さらにはその市街地のうち、「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区」として選定すべき地区の有無等についての判断を個々の都市計画決定者に委ねた上で、必要性が認められた場合の策定義務を定めたものであり、必要性が認められない場合には定めることを要しない。

2 都市再開発方針の構成

都市再開発方針は、都市再開発の長期的かつ総合的なマスタープランであり、今回の法改正により新たに策定義務の対象に追加された都市計画区域においても、その性格は変わらないため、法第二条の三第一項に規定する都市計画区域の場合と同様に、
1) 「計画的な再開発が必要な市街地」について、長期的な視点から、当該市街地の再開発の目標並びに土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針を策定する。
2) 「計画的な再開発が必要な市街地」のうち、特に緊急に整備することが必要で、当該地区を整備することが広域的な波及効果を及ぼす地区等について、「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区」を指定するとともに、当該地区の整備又は開発の計画の概要を策定する。
という二段階構成とすることが望ましい(なお、法第二条の三第一項第二号又は第二項に基づき指定される「特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区」を「再開発促進地区」と称することとする。)。
改正により追加された法第二条の三第二項においては、同条第一項第一号に相当する方針の策定について規定されていないが、これは、今回の改正により新たに策定対象区域とされた都市のうち、比較的小規模な都市においては、「計画的な再開発が必要な市街地」の大部分を「再開発促進地区」とすることが適当な場合も想定されることから、必ずしも法第二条の三第一項第一号に相当する方針の策定を前提とせず、「再開発促進地区」のみを定めることをもって足りることとしたものである。
なお、法第二条の三第二項の都市再開発方針を定めるに当たっては、個別の地区における再開発の必要性や整備又は開発の具体的計画について住民等の合意形成を段階的に推進するため、「計画的な再開発が必要な市街地」のうち、再開発の推進の必要性が高いものの「再開発促進地区」に係る整備又は開発の計画の概要を定めるほどの熟度に至っていない地区について、それぞれの都市計画区域の実情に応じて「戦略的地区」、「要整備地区」、「再開発誘導地区」等独自の位置づけを任意に定め、再開発の推進における当該地区の意義等を明らかにするなど、必要に応じて、都市計画決定権者の創意工夫により1)の方針の充実を図ることが望ましい。この場合、戦略的地区の考え方等については「都市再開発方針の策定とこれに基づく再開発の推進について」(昭和五七年五月二七日建設省都計発第四三号、同都再発第七一号、同都区発第三五号、同住建発第九六号、同住街発第四二号)を適宜参考とすること。

3 防災再開発促進地区との関係

「再開発促進地区」のうち、密集市街地の土地の区域内の各街区について防災街区としての整備を図るため、特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区については、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成九年法律第四九号)第三条に基づく「防災再開発促進地区」としても別途積極的に位置付けること。この場合、「都市再開発方針」と「防災再開発促進地区」とは根拠法の異なる独立の計画事項であることに留意するとともに、市街化区域の整備、開発又は保全の方針における定め方については、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律等の施行について」(平成九年一一月八日建設省都計発第一〇二号、同住市発第三三号)を参考とすること。

第2 特定事業参加者制度の創設について

市街地再開発事業においては、事業により整備された建築物の処分が事業の成否を左右しているものであるため、その処分の目途をあらかじめ確定しておくことは、事業推進を図る上で有効である。民間施行主体による第一種市街地再開発事業においては、従来より、個人施行の場合のいわゆる同意施行者(施行地区内の宅地所有者又は借地権者の同意を得て事業を施行する個人施行者)制度や、組合施行の場合の参加組合員制度のように、民間事業者の資力、技術力を活用するための制度が位置付けられ、これらの制度により事業への参加者による施設建築物等の取得が円滑に行われるよう措置されてきたところである。今回、同様の観点から、地方公共団体及び公団等による市街地再開発事業において、事業初期の段階で、施行規程において、負担金を納付し、権利変換計画又は管理処分計画の定めるところに従い施設建築物の一部等又は建築施設の部分を取得する者を特定事業参加者として定めることができることとし、施設建築物の一部等又は建築施設の部分の処分先を早期に確定することによる事業リスクの低減、特定事業参加者が納付する負担金による初動資金の圧縮、金利負担の軽減、特定事業参加者の意向の事業計画への反映等を図ることとするが、その運用に当たっては、特に次の事項について留意すること。
1 特定事業参加者の公募

特定事業参加者の公募は、対象となる市街地再開発事業の概要、特定事業参加者が取得することとなる施設建築物の一部等又は建築施設の部分の概要、負担金の納付方法、選定基準、応募期間、応募に必要な書面等必要な事項を示し、地方公共団体は公報への登載等により、公団等は掲示等により、その旨を周知して行うこと。

2 特定事業参加者の選定

特定事業参加者の選定は、当該応募者が、施設建築物の一部等又は建築施設の部分の価額に相当する額を負担するのに必要な資力及び信用を有する者であり、かつ、取得後の施設建築物の一部等又は建築施設の部分を市街地再開発事業の目的に適合して利用する者であることを判断するため、当該応募者の負担金の支払能力を判別しうる書類の他、施設の管理計画書、資金計画書等の当該応募者が施設建築物の一部等又は建築施設の部分を適正かつ確実に取得、管理を行うか否かを判断するために必要となる書類を必要に応じて提出させて行うこと。

3 特定事業参加者に関し施行規程等において定める事項

施行規程においては、特定事業参加者の氏名又は名称及び住所、当該者が取得することとなる施設建築物の一部等又は建築施設の部分の概要とその概算額、負担金の納付に関する事項等を定めること。
また、事業計画のうちの資金計画において、収入金として特定事業参加者の負担金の概算額を計上すること。

4 事業計画、権利変換計画の縦覧

事業計画、権利変換計画の縦覧において特定事業参加者により提出される意見書については、当該特定事業参加者が取得する予定である施設建築物の一部等又は建築施設の部分に係るもの等その意見書に係る内容を適切に反映するよう努め、適正な手続により処理すること。

5 負担金の納付額及び納付方法

特定事業参加者の負担金の納付額及び納付方法の施行規程への規定については、当該特定事業参加者と十分に協議のうえ適切に行うほか、当該負担金に係る滞納処分については、法の定めるところにより適正に行うこと。

6 登録免許税の課税

特定事業参加者の取得する施設建築物又は施設建築敷地に関する権利に係る登記については、登録免許税の非課税措置の対象から除外されるものであることに留意すること(登録免許税法施行令(昭和四二年政令第一四六号)第二条の三第一号)。

第3 再開発事業計画の認定制度(認定再開発事業制度)の創設

既成市街地の再構築が強く求められている中、市街地再開発事業等の強制力を伴う都市計画事業や高度利用地区等の都市計画による規制誘導といった既存の手法に加え、民間活力を誘導してより機動的に都市の再開発を進めることが必要となっている。
認定再開発事業は、高度利用地区や再開発事業に関する都市計画決定を要件とせず、優良な再開発事業であることについての都道府県知事の認定という簡便な手続により、税制特例を適用し、民間活力による都市の再開発を積極的に誘導するものであるが、その運用に当たっては、次の事項について留意すること。
1 再開発事業計画の認定申請について協議すべき者

都市再開発法施行令(昭和四四年政令第二三二号)第四六条の一五の規定は、大規模な認定再開発事業の実施が、水道、電気、ガス又は鉄軌道施設について新たな投資を必要とする等これらの施設の整備計画に影響を及ぼすので、このような大規模な認定再開発事業が行われる場合に限り、あらかじめ認定再開発事業を行おうとする者とこれらの施設の管理者との事前の話合いを行わせて、施設の管理者が当該認定再開発事業の実施に合わせて適時適切に施設の整備を行いうるようにするという趣旨から定められたものである。従って、小規模な認定再開発事業については対象とならないこと、また、認定再開発事業を行う者に特別な負担を課する趣旨のものではないことに留意して運用すること。

2 再開発事業計画の認定

再開発事業計画の認定については、法第一二九条の三及び都市再開発法施行規則(昭和四四年建設省令第五四号)第三七条の一二の規定による基準により、土地の有効高度利用に資するよう運用することとするが、なお次の事項に留意すること。
(1) 建築する建築物の建築面積の敷地面積に対する割合について、法第一二九条の三第二号ニにいう建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第五三条の規定により建築面積の敷地面積に対する割合の限度が定められていない場合には、同条第四項第一号に基づき建築面積の敷地面積に対する割合に関する制限が適用されない場合も含まれること。
(2) 事業実施期間については、事業者が任意に定めるものであるが、事業の関係権利者を長期間不安定な地位におくことのないよう、また、事業遂行の確実性を担保するよう、いたずらに長期に渡らないものとするよう運用すること。

3 税制特例

認定再開発事業については、次のような税制上の特別措置が講じられていることに留意すること。
(1) 所得税、法人税に係る事業要資産の買換特例

租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第三七条第一項の表の第一号の上欄に規定する規制市街地等及び都市再開発方針の再開発促進地区の定められた市又は道府県所在市の区域の都市計画区域のうち人口集中地区の区域内にある土地若しくは土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)、建物又は構築物を譲渡し、認定再開発事業に係る土地等、建物、建築物又は機械及び装置を取得した場合、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(課税の繰延べ又は圧縮記帳、繰延割合八〇%)の対象となる(平成一三年三月三一日まで)(租税特別措置法第三七条第一項表第一二号、第六五条の七第一項表第一二号)。

(2) 特別土地保有税の特例

認定再開発事業計画に従って建築される建築物の敷地の用に供する土地については、取得分、保有分とも特別土地保有税が非課税となる(地方税法(昭和二五年法律第二二六号)第五八六条第二項第二〇号の五。第六〇一条第一項)。

(3) 事業所税の特例

中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(平成一〇年法律第九二号)第七条第一項に規定する特定中心市街地において認定再開発事業に従って建築される建築物で事業所等の用に供するものの新増設に係る事業所税について、その課税標準の算定につき、床面積の四分の三が控除される(平成一五年三月三一日まで)(地方税法附則第三二条の九第七項)。

4 その他の支援措置

認定再開発事業の推進には、三の税制上の特例措置のほか、任意の再開発事業に対する支援措置を併せて用いることが有効である。
任意の再開発事業に関する支援措置としては、税制として、特定民間再開発事業(平成一〇年度の税制改正により適用対象地区が再開発促進地区等に拡充されたところである。)が、補助制度とし優良建築物等整備事業、地区再開発事業などが、また、融資制度として、住宅金融公庫、日本開発銀行等による再開発関係融資制度が用意されており、民間活力による都市再開発の一層の推進に向けては、これらの制度を組み合わせて適用することが有効であることから、その積極的活用を図ること。

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