建設省都計発第四三号・建設省住街発第六六号
平成一一年七月二三日

都道府県知事及び政令市長あて

建設省都市局長・建設省住宅局長通知


工場跡地等の有効利用の推進について

都市の枢要な位置において、工場跡地等相当規模の低・未利用地が発生しており、これらの土地利用転換による有効利用が、当該土地のみならず、都市機能の更新や市街地環境の整備・改善等に対しても、極めて重要であると認識されているところである。
また、「雇用創出・産業競争力強化のための規制改革」(平成一一年七月一三日産業構造転換・雇用対策本部決定)においても、その必要性が指摘されたところである。
これらを踏まえ、貴職におかれては、工場跡地等の土地利用転換について、下記に留意し、その積極的な推進に努められたい。
あわせて貴管下市町村にも周知方お願いする。

1 工場跡地等の低・未利用地のうち、有効活用を図るべき相当規模の土地の区域において、将来の土地利用の転換の方向に関する見通しが明らかなものについては、用途地域の変更、又は、再開発地区計画の活用を図るものとすること。なお、用途地域の変更については、その規模等について、柔軟に対応するものとすること。また、再開発地区計画の活用にあたっては、個別プロジェクトの具体的な意向について積極的に把握するよう努めること。
2 工業専用地域等で、土地利用転換が見込まれるものの、将来の土地利用の転換の方向が明らかでなく、変更後の用途地域に関する見通しが確定していない地区のうち、その有効利用が都市機能の更新に貢献すると認められるものについては、別添のとおり、地方公共団体が地区を先行的に決定し、実質的に土地利用を変更する旨宣言することにより、段階的な土地利用転換を実現する「用途変更先導型再開発地区計画」を創設することとしたので、この活用を図ること。
3 1及び2の土地利用の転換にあたっては、必要に応じ、国、地方公共団体、土地所有者等により構成される協議会において、土地利用転換の方向性に関する関係者間の合意の醸成を図る等の措置を講ずるとともに、都市再構築総合支援事業、大都市居住環境整備推進制度等を活用すること。あわせて、土地利用転換に必要な基盤整備等を推進すること。
4 これらのほか、用途地域に基づく用途制限に適合しない個別の建築計画について、市街地の環境に支障がない場合等にあっては、建築基準法第四八条各項ただし書きの規定に基づく許可を適切に行なうこと。


(別添)

用途変更先導型再開発地区計画制度の創設について

用途変更先導型再開発地区計画制度は、土地利用転換が見込まれる工業専用地域等の工場跡地等において、開発計画が明確に定まらない場合であっても、再開発地区計画制度の活用により、用途地域の変更に先行してより幅広い用途の建築を可能とし、段階的かつ円滑な土地利用転換を実現する手段として、以下のとおり創設した。

(1) 用途変更先導型再開発地区計画は、工業専用地域等の工場跡地等で、土地利用転換は見込まれるものの、プロジェクトが個別的かつ具体的に確定していない場合にあって、適用されるものであること。
(2) 本制度は、都市計画において、土地利用転換を図るべき地区として幅広い用途を許容するよう、区域、目標、土地利用に関する基本方針のほか、少なくとも再開発地区整備計画を定めた上で、特定行政庁が、個別の建築計画について、その市街地の環境に与える影響等に配慮しつつ、用途の制限の特例許可等を行うものであること。この際、再開発地区整備計画等を段階的に定めることを妨げるものではないこと。
(3) さらに、用途制限の特例許可等を活用した個別の建築計画の集積を踏まえ、土地利用の方向が確定し本制度の目的が達成されたと認めるときは、遅滞なく、用途地域が変更されるものであること。
(4) また、区域の全部又は一部について、個別の建築計画と二号施設等が一体的な計画として確定し、二号施設を定め又は再開発地区整備計画等を変更することができるようになった段階で、従来型の再開発地区計画の運用とすることができるものであること。

上記の(1)から(4)のほか、「都市再開発法及び建築基準法の一部改正について」(昭和六三年一二月二二日付け経民発第五二号・都計発第一四〇号・都再発第一三一号・住街発第一二四号建設省建設経済局長・都市局長・住宅局長通達「第二再開発地区計画制度の創設について」(以下「運用通達」という。))について、用途変更先導型再開発地区計画制度に限り、下記により実施するものとすること。
1 用途変更先導型再開発地区計画においては、運用通達1及び2にある「プロジェクト」について、その内容が個別的かつ具体的なものでなく、幅広い内容を含む大まかな土地利用等の方向で足りるものであること。
2 運用通達2(3)1)については、用途変更先導型再開発地区計画については、個別の建築計画の積み重ねを踏まえ、土地利用の方向が確定しその目的が達成されたと認めるときは、遅滞なく用途地域を変更するものとすること。
3 運用通達4(1)の、(ニ)の「土地利用に関する基本方針における土地利用転換の方向及び市街地の環境形成上の目的」並びに(ホ)の「誘導すべき都市機能」については、個別の確定的なプロジェクトを前提とするものではないことから、大まかな方向を示すことで足りること。また、(ト)の「就業人口、住宅の予定戸数等に関する事項」については、必ずしも記述する必要はないこと。
4 運用通達4(2)の「二号施設及び地区施設」については、土地利用転換により新たに形成される市街地における建築物の用途及び空間の構成等が明確になっていないことから、予め必ずしも定めることを要しないこと。ただし、大きな発生集中交通を生じる建築物であることが明確になった場合には、これらの交通を処理するため、再開発地区計画において予め又は変更することにより二号施設若しくは地区施設を定め、又は敷地内に有効な通路等を設けた建築計画とする必要があること。
5 運用通達4(3)(ロ)の「建築物等の用途の制限」においては、1)及び2)に関わらず、土地利用に関する基本方針において幅広い用途を許容し、想定しうる用途の範囲等を定めるものとし、用途地域による制限を緩和する内容も定めることができるものとすること。
6 運用通達4(3)(ハ)の「容積率」においては、用途地域に関する都市計画に定められている制限を超えた内容を定めないこと。なお、具体的な建築計画と二号施設等とが一体として定められる場合や、住宅等特定の用途を誘導する場合等個別の建築計画を踏まえ、従来型の再開発地区整備計画等を定めることが可能な場合にあっては、用途地域に関する都市計画に定められた制限の緩和を行いうるものであること。また、運用通達9(1)について変更はないこと。
7 運用通達4(3)(ニ)の「その他の建築物等に関する制限」は、個別の確定的なプロジェクトを前提とするものではないことから、予め必ずしも定める必要がないこと。
8 運用通達10(2)の「容積率制限の緩和の特例」、同10(3)の「道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の緩和の特例」は、原則として適用されないこと。ただし、従来型の再開発地区整備計画等が定められる場合にあっては、この限りではないこと。
9 運用通達10(5)の「用途制限の緩和の特例」は、土地利用に関する基本方針及び再開発地区整備計画の建築物等の用途の制限が幅広い用途を許容していることを前提とし、この特例の適切な活用を図ること。また、住宅の用に供する建築物の建築についても積極的に対応するものであること。


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