標記については、平成九年一一月八日付け建設省都計発第一〇一号「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律等の施行について」をもって建設事務次官から通達されたところであるが、さらに下記の事項に留意し、また、地域防災計画担当部局との間で十分調整を図ることにより、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(以下「法」という。)及び関係法律の円滑な運用に遺憾のないようにされたい。
1 防災再開発促進地区について
(1) 防災再開発促進地区の指定の基本的考え方
1) 防災再開発促進地区は、市街化区域の整備、開発又は保全の方針において、火災又は地震が発生した場合における防災及び安全に関する機能に支障を来している密集市街地のうち、建築物の不燃化及び公共の用に供する施設の整備又は延焼等危険建築物の除却を図ることにより、特に一体的かつ総合的な市街地の再開発を促進すべき相当規模の地区を、当該地区の整備又は開発の計画の概要とともに定めるものとすること。
2) 防災再開発促進地区の指定に当たっては、都市計画に関する基礎調査、都市防災構造化推進事業の災害危険度判定等調査、密集住宅市街地整備促進事業における事業計画作成に係る調査等を活用して必要な地区の選定を行うこと。また、当面、現に具体的な事業を実施中又は検討中の地区等緊急に整備が必要な地区について早急に指定に努めることとし、引き続き、その他の地区についても、地区の状況を十分把握しつつ、密集市街地の整備、改善に資すると見込まれる地区に幅広く地区指定を行うように努めること。
3) 防災再開発促進地区の指定により、建替計画の認定、延焼等危険建築物に対する除却の勧告、住宅・都市整備公団の業務の特例、公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四七年法律第六六号)の特例等が適用されることとなるので、これらの制度を積極的に活用する観点からも、防災再開発促進地区の指定の促進に特段の配慮を行うこと。
4) 防災再開発促進地区の指定により、3)に掲げる法的効果が生ずることから、地区指定に当たっては、地区の境界が明確に明示されるよう、図面その他の表記方法について十分配慮すること。
5) 防災再開発促進地区の指定に当たっては、公聴会、説明会の開催等住民の意向反映のための措置に配慮するとともに、地区指定の趣旨が住民に浸透し、積極的な協力態勢が確保されるよう努めること。
(2) 防災再開発促進地区に係る整備又は開発の計画の概要
1) 防災再開発促進地区に係る整備又は開発の計画の概要は、都市計画区域における計画的な再開発が必要な市街地に係る整備、開発又は保全の方針の一部であることから、「市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画の見直しの方針について」(昭和五五年九月一六日付け建設省都計発第一〇〇号建設省都市局長通達)記三(一)3)市街地の開発及び再開発の方針の一部として定めるものとすること。
2) 防災再開発促進地区に係る整備又は開発の計画の概要は、次の(イ)から(ニ)までの事項を定めるとともに、必要に応じ(ホ)から(チ)までの事項を定めることとすること。
(イ) 地区の再開発、整備等の主たる目標
(ロ) 防災街区の整備に関する基本的方針その他の土地利用計画の概要
(ハ) 都市施設、地区防災施設及び地区施設の整備方針
(ニ) 建築物の更新の方針(住宅地又は住宅地への土地利用転換が行われる地域の場合には、必要に応じ住宅供給と住宅地の環境改善の方針)
(ホ) 再開発の促進のために必要な公共及び民間の役割、再開発の促進のための条件の整備等の措置
(ヘ) 概ね五年以内に実施が予定されている公共施設整備事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅地区改良事業、密集住宅市街地整備促進事業、都市防災構造化推進事業、市街地住宅の供給に係る事業等のうち主要な事業の計画の概要
(ト) 概ね五年以内に決定又は変更が予定されている用途地域、防火地域、準防火地域等の地域地区、市街地再開発促進区域等の促進区域、都市施設、防災街区整備地区計画を始めとする地区計画等の都市計画に関する事項
(チ) その他特記すべき事項
(3) 防災再開発促進地区として指定された地区における措置
防災再開発促進地区として指定された地区においては、防災街区整備地区計画の策定の推進を図るとともに、街路、公園等の整備による災害時の避難路、避難地の確保や土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅地区改良事業、密集住宅市街地整備促進事業、都市防災構造化推進事業等の面的整備事業の施行による密集市街地の再整備を積極的に推進するよう努めること。
(4) その他防災再開発促進地区の指定に当たって留意すべき事項
1) 防災再開発促進地区に臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地を含めようとするときは、事前に港湾管理者と協議すること。
2) 防災再開発促進地区に関する都市計画について、市町村が都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一八条第一項の規定に基づく意見を作成する場合にあっては、当該地域を管轄する消防長と十分調整を図ること。
2 防災再開発促進地区の区域における建築物の建替え等の促進について
(1) 建築物の建替えの促進
1) 建替計画の認定
(イ) 法第四条第一項の「建築物の建替えをしようとする者」については、地権者であること等の限定はないこと。また、建替計画制度の積極的な活用が図られるよう貴管下市町村等を通じ同制度の周知徹底を図ること。
(ロ) 建替計画の認定を申請しようとする者は、原則として、建替計画について関係権利者のすべての同意を得なければならないこと(法第四条第二項及び第三項)。
2) 建替計画の認定基準
(イ) 建替計画の認定基準について、除却する建築物の建築面積の合計に対する、除却する建築物のうち延焼防止上支障がある木造の建築物で密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律施行規則(平成九年建設省令第一五号。以下「施行規則」という。)第四条の基準に該当するもの建築面積の合計の割合が、一〇〇分の五〇以上であることが認定基準であること(法第五条第一項第一号、施行規則第五条)。
(ロ) 法第五条第一項第五号の規定により資金計画が適切なものであるかどうかを判断するに当たっては、除却費、整地費等の算定が通常行われる建築物の建替費用に見合った適切なものであり、その所要資金予定額を確実に調達することができると見込まれるかどうかという観点から行うこと。
(ハ) 建替計画が建築確認又は計画通知を要するものである場合、計画の認定をしようとするときは、あらかじめ、建築主事の同意を得なければならないこと(法第五条第二項)。なお、建築確認又は計画通知が必要な建替計画については、建替計画の認定をもって建築確認又は適合通知があったものとみなすこととし、手続の簡素・合理化が図られている(同条第五項)ことから、関係部局間の連絡を密にすること。
(ニ) 建築確認又は計画通知を要する建替計画について建替計画の認定をしようとする場合については、法第五条第四項により消防長又は消防署長の同意を必要とすること。
(ホ) なお、建替計画の認定については、法第五条第一項各号の基準に適合する木造建築物への建替えを防げるものではないこと。
3) 建替計画の認定通知
建替計画の認定については、所管行政庁は、認定の方針等について、関係地方公共団体との間であらかじめ密接に調整することとし、所管行政庁である都道府県知事が建替計画の認定をしたときは、法第六条の規定により、関係市町村長に、速やかに、その旨を通知しなければならないこと。
4) 報告の徴収
法第八条に規定する報告の徴収については、認定事業者が認定建替計画に従って、建築物の建替えを実施しているかどうかの確認を行うための措置であり、例えば、建築物の建替えが認定建替計画どおりに行われたことの確認等について行うこと。
5) 地位の承継
法第九条の規定は、認定事業者が死亡又は破産した場合等に、相続等により認定事業者から認定建替計画に係る除却する建築物の所有権等を取得した者が建築物の建替えを継続する意思を有する場合に、所管行政庁の承認を受けて地位の承継を認めるものであること。したがって、承継者が建築物の建替えを認定建替計画に従って行う意思を有し、かつ、実施することができる者である場合に承認すること。
6) 改善命令
法第一〇条に規定する改善命令については、報告の徴収等により事情の把握を行い、事前に実情に即した改善措置を促した上で、なお改善がなされない場合に行うこと。
7) 建替計画の認定の取消し
認定の取消しに係る建替計画について国の補助がなされている場合は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三〇年法律第一七九号)に基づき補助金の返還等の措置を講ずることとなることから、地方公共団体においても認定事業者に対し補助金の返還を請求する等の適切な措置を講ずること。また、認定の取消しに当たっては、補助金の取扱いについて問題の生ずることがないよう、あらかじめ、建設省に連絡すること。
8) 費用の補助
(イ) 建築物の建替えに要する費用については、認定事業者に補助金を交付した市町村に対し、国が補助することができるが、本補助については、別に通知するところによること。
(ロ) 施行規則第八条の規定及び「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律施行規則第八条の規定に基づき建設大臣が定める者を定める件」(平成九年建設省告示第一八九八号)により国、地方公共団体並びにいわゆる共同建替え又は協調建替えによらない認定建替計画に係る認定事業者が本規定による補助の対象外とされていることに留意すること。
(2) 延焼等危険建築物に対する措置
1) 延焼等危険建築物に対する除却の勧告
(イ) 除却の勧告については、延焼等危険建築物に関する技術的基準(法第一三条第一項、施行規則第一一条から第一三条)等に留意しつつ、的確な運用に努めること。
(ロ) 除却の勧告をしようとする場合においては、所管行政庁は、法第一三条第二項の規定により関係地方公共団体に、あらかじめ協議しなければならず、勧告をしたときは、同条第三項の規定により、速やかに、その旨を通知しなければならないこと。
(ハ) なお、本措置は、木造の建築物の建築の振興を妨げるものではないこと。
2) 代替建築物の提供又はあっせん
代替建築物の提供又はあっせんの要請を受けた市町村長は、賃借人の利用に供すべき代替建築物を提供し、又はあっせんするよう努めなければならないこと。
3) 居住安定計画の認定
除却勧告を受けた賃貸住宅の所有者は、居住者の意見を求めて、居住安定計画を作成し、市町村長の認定を申請することができること(法第一五条第一項)。なお、居住安定計画の認定を申請しようとする者は、原則として、居住者以外の関係権利者の同意を得なければならないこと(同条第三項及び第四項)。
4) 居住安定計画の認定基準
(イ) 法第一六条第一項第二号の「その規模、構造及び設備並びに家賃が妥当な水準の代替住宅が居住者の生活環境に著しい変化を及ぼさない地域内において確保されることが確実であること」の判断に当たっては、居住安定計画に記載された事項等を十分に勘案の上行うこと。
(ロ) 法第一六条第一項第五号の規定により資金計画が適切なものであるかどうかを判断するに当たっては、除却費等の算定が通常行われる建築物の除却等に見合った適切なものであり、その所要資金予定額を確実に調達することができると見込まれるかどうかという観点から行うこと。
(ハ) 市町村は、居住安定計画の認定をしようとするときは、あらかじめ、当該居住安定計画に定められた代替住宅を示して居住者の意見を聴かなければならないこと(法第一六条第三項)。
5) 居住安定計画の認定の通知
市町村長は、居住安定計画の認定をしたときは、速やかに、代替住宅及び入居申出期間を示して、当該居住安定計画の認定をした旨を居住者に通知しなければならないこと(法第一七条第一項)。
6) 居住者の居住の安定に関する措置
(イ) 地方公共団体が代替住宅として提供する住宅については、公営住宅及び特定公共賃貸住宅といった既存の制度によるストックを活用することを原則とし、市町村借上住宅については、その補完的な役割を担うものであること。
(ロ) 市町村借上住宅の家賃の減額に要する費用に係る国の補助については、入居者の所得に応じて補助対象経費の限度額を算定して、行われるものであること(法第二二条第三項、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律施行令(以下「施行令」という。)第四条)。
7) 移転料の支払
居住安定計画の認定を受けた者は、居住者に対して、通常必要な移転料を支払わなければならないこと(法第二三条)。また、市町村は、認定所有者に対して、移転料の支払に要する費用の全部又は一部を補助することができるとともに、国は、市町村が補助する額に三分の一を乗じて得た額を補助することができること(法第二九条、施行令第五条)。
8) 賃貸借契約の更新拒絶等
除却の勧告を受けた賃貸住宅の所有者が居住安定計画について市町村長の認定を受けた場合には、居住者は、地方公共団体から公営住宅等への入居、家賃の減額等の支援を受けることができることとされたこととともに、正当事由に係る借地借家法(平成三年法律第九〇号)の規定は適用されず、認定所有者は、賃貸借契約の更新拒絶の通知又は解約の申入れを行うことができることとされたこと。
9) 報告の徴収
法第二五条に規定する報告の徴収については、認定所有者が認定居住安定計画に従って、認定居住者の居住の安定の確保及び延焼等危険建築物の除却を実施しているかどうかの確認を行うための措置であり、認定居住安定計画の実施状況を正確に把握するために行うものであること。
10) 地位の承継
法第二六条の規定は、認定所有者が死亡又は破産した場合等に、相続等により認定所有者から認定賃貸住宅の所有権等を取得した者が居住者の居住の安定の確保及び延焼等危険建築物の除却を継続する意思を有する場合に、市町村長の承認を受けて地位の承継を認めるものであること。したがって、承継者が居住者の居住の安定の確保及び延焼等危険建築物の除却を認定居住安定計画に従って行う意思を有し、かつ、実施することができる者である場合に承認すること。
11) 改善命令
法第二七条に規定する改善命令については、報告の徴収等により事情の把握を行い、事前に実情に即した改善措置を促した上で、なお改善がなされない場合に行うこと。
(3) 住宅・都市整備公団の業務の特例
住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)は、現行の業務のほか、都市再開発法(昭和四四年法律第三八号)第二条の三第一項に規定する都市計画区域について定められた防災再開発促進地区の区域内において、地方公共団体の委託に基づき、住宅の建設及び賃貸その他の管理等の業務を行うことができることとされたので、公団の住宅・まちづくりに関するノウハウを積極的に活用されたいこと。
3 防災街区整備地区計画について
(1) 防災街区整備地区計画制度についての基本的考え方
1) 防災街区整備地区計画は、密集市街地の区域内において、当該計画に従って防災街区の整備を計画的に誘導、規制することにより、当該区域における特定防災機能(火事又は地震が発生した場合において延焼防止上及び避難上確保されるべき機能)の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的とする都市計画であること。
2) 防災街区整備地区計画に関する都市計画の内容としては、種類、名称、位置、区域、区域の面積のほか、防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針、地区防災施設の区域(特定地区防災施設にあっては、特定地区防災施設の区域及び特定建築物地区整備計画)及び防災街区整備地区整備計画を定めるものであること。
3) 防災再開発促進地区の区域内で防災街区整備地区計画が定められた場合には、防災街区整備権利移転等促進計画制度、防災街区整備組合制度に係る規定が適用されることとなることから、これらの制度を積極的に活用する観点からも、防災街区整備地区計画の策定の促進に特段の配慮を行うこと。
(2) 防災街区整備地区計画に関する都市計画の決定について
1) 防災街区整備地区計画の区域
(イ) 防災街区整備地区計画の区域は、密集市街地の土地の区域内で法第三二条第一項各号列記の要件を満たす土地の区域のうちから、土地利用及び公共施設の現状及び将来の見通し等を勘案して、土地利用の一体性が確保されるような適正な規模で定めること。
(ロ) 防災街区整備地区計画の区域の境界、地区防災施設の区域の境界、法第三二条第六項の規定に基づき防災街区整備地区計画の区域の一部について防災街区整備地区整備計画を定めない場合における防災街区整備地区整備計画の区域の境界は、原則として道路その他の施設、河川その他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることとし、これにより難い場合には、土地所有の状況、土地利用の現状及び将来の見通し、用途地域の指定状況、防災街区整備地区計画において定めることとなる道路等の施設の配置等を勘案して、敷地境界線等によりできる限り整形となるように定めること。
(ハ) 防災街区整備地区計画の区域の設定に当たっては、地域的連帯感の保持等に配慮しつつ、地権者間の公平性を確保するため、地権者間の利害調整を図ることに努めること。
2) 防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針
(イ) 防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針は、当該区域の整備に関する総合的な指針であり、これに基づいて、地区防災施設の区域や防災街区整備地区整備計画が定められ、法第三二条第七項の規定に基づく要請が行われることとなるので、関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めること。
(ロ) 防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針は、次に掲げる事項を記載すること。
(i) 防災街区整備地区計画の目標
(ii) 土地利用に関する基本方針
(iii) 地区防災施設の整備の方針
(iv) 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の整備の方針
(v) その他当該地区の整備に関する方針
(ハ) 法第三二条第六項の規定により、特別の事情があるときは、防災街区整備地区計画の区域の全部又は一部について地区防災施設の区域又は防災街区整備地区整備計画を定めることを要しないとされているが、「特別の事情があるとき」とは、防災街区整備地区計画の区域のうち一定以上の範囲にわたり、土地の所有者その他利害関係を有する者の意見調整に時間を要する一方で、防災街区整備地区計画の方針をとりあえず定めておきたい場合等であり、当該事情が解消した場合には、速やかに地区防災施設の区域及び防災街区整備地区整備計画を定めること。
3) 地区施設の配置及び規模、地区防災施設(特定地区防災施設を含む。)の区域
(イ) 道路
(i) 当該区域の特定防災機能の確保に当たって基本となる道路については、地区防災施設として定めることとし、そのうち、建築物等と一体となって整備する必要があるものについては、特定地区防災施設として、当該建築物等に係る特定建築物地区整備計画と併せて定めること。当該区域の特定防災機能の確保に直接関係しない区画街路等については原則として地区施設として定めること。なお、都市の主要な骨格をなす道路等については、幹線街路の都市計画を定めるように努めること。
(ii) 地区防災施設については、都市計画施設と同様に「区域」を定めることとし、土地の境界線まで明確にする必要があること。なお、地区施設については、「配置及び規模」が明らかになれば足りること((ロ)において同じ。)。
(iii) 道路の配置及び規模又は区域については、防災街区整備地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている道路等と併せて一体的な道路網を形成し、区域内の特定防災機能の向上及び延焼により生ずる被害の軽減と良好な都市環境の形成に資するよう、必要な位置に適切な規模で配置すること。
(iv) 地区施設又は地区防災施設たる道路の幅員は、原則として六メートル以上とするよう努めること。なお、特別の事情によりやむを得ないと認められる場合は四メートル以上とすることができること。
(ロ) 公園、緑地、広場その他の公共空地
(i) 当該区域の特定防災機能の確保に当たって基本となる公園、緑地、広場その他の公共空地については、地区防災施設として定めることとし、そのうち、建築物等と一体となって整備する必要があるものについては、特定地区防災施設として、当該建築物等に係る特定建築物地区整備計画と併せて定めること。それ以外の、主として地区内の居住者等の利用に供される小規模な公園、緑地、広場その他の公共空地は、原則として地区施設として定めること。なお、都市における避難地、レクリエーション、交流の場としての機能を持つ基幹公園、広場等については、公園、広場等の都市計画を定めるように努めること。
(ii) 公園、緑地、広場その他の公共空地の配置及び規模又は区域については、防災街区整備地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている公園、緑地、広場その他の公共空地等と併せて一体的なオープンスペース系統が適切に確保され、区域内の特定防災機能の向上及び延焼により生ずる被害の軽減と良好な都市環境の形成に資するよう、必要な位置に適切な規模で配置すること。
(iii) 防災街区整備地区計画で道路の配置及び規模又は区域が定められている場合には、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第六八条の六の規定に基づく道路の位置の指定は、当該道路の配置又はその区域に即して行うこととされているが、歩行者用通路、緑道、駐車場の車路等でそれに即して道路の位置の指定が行われると防災街区整備地区計画の目標を達成する上で支障が生ずると判断するものについては、防災街区整備地区計画においては公共空地として定めておくこと。
(ハ) 地区防災施設及び地区施設には都市計画施設を含まないこととされているので、地区防災施設又は地区施設として定められている道路又は公園、緑地、広場その他の公共空地を都市計画施設として都市計画に定めようとするときは、併せて防災街区整備地区計画に関する都市計画を変更すること。
4) 特定建築物地区整備計画
(イ) 特定建築物地区整備計画は、建築物等が特定地区防災施設と一体となって防災街区整備地区計画の区域における特定防災機能を確保するとともに、適切な構造、高さ、配列等を備えた建築物等が整備されることにより当該区域内の土地が合理的かつ健全な利用形態となるように定めること。
(ロ) 特定建築物地区整備計画の内容として定める計画事項のうち、特定防災機能の確保に直接に関連するものについては、次の基準により定めること。なお、その他の計画事項については、「都市計画法及び建築基準法の一部改正について」(昭和五六年一〇月六日付け建設省計民発第二九号、建設省都計発第一二二号、建設省住街発第七二号、建設省計画局長、建設省都市局長、建設省住宅局長通達。以下「昭和五六年通達」という。)記の四の(2)の(二)の基準を適用すること。この場合において、昭和五六年通達中「地区計画」とあるのは「防災街区整備地区計画」と読み替えるものとすること。
(i) 建築物の構造に関する防火上必要な制限
特定建築物地区整備計画の区域内に存する建築物については、特定地区防災施設と一体となって当該区域の特定防災機能を確保するため、
・耐火建築物又は準耐火建築物であること
・特定地区防災施設に接する建築物については、高さ五m未満の範囲が空隙のない壁を設ける等防火上有効な構造であること
とする制限を規定するなど、防火上有効な構造となるように定めること。
(ii) 間口率の最低限度
特定地区防災施設の延焼防止機能、一次避難路・避難地としての機能を確保するため、建築物の後背地で発生した火災による輻射熱を有効に遮断できるように特定地区防災施設に面する建築物の間口率の最低限度を定めるものとし、原則として一〇分の七以上に定めること。
(iii) 建築物等の高さの最低限度
特定地区防災施設の延焼防止機能、一次避難路・避難地としての機能を確保するため、建築物の後背地で発生した火災による輻射熱を有効に遮断できるように特定地区防災施設に面する建築物の各部分の特定地区防災施設からの高さの最低限度を定めるものとし、原則として五メートル以上に定めること。
(iv) 壁面の位置として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域における工作物の設置の制限
建築物の敷地のうち建築物の壁面と道路等の間のセットバック空間を空地として確保し、当該区域の防災機能の向上に資するため、セットバック空間における建築物以外の工作物の設置について必要な制限を定めること。具体的には、垣、さく、看板、自動販売機等について、位置の指定、設置の禁止などの制限を定めること。
5) 防災街区整備地区整備計画
(イ) 地区施設の配置及び規模については、3)に従い定めること。
(ロ) 防災街区整備地区整備計画における建築物等に関する事項は、防災街区整備地区計画の区域の特性にふさわしい用途、容積、高さ、配列等を備えた建築物等が整備されることにより当該区域内の土地が合理的かつ健全な利用形態となるとともに、火事又は地震が発生した場合の当該区域における延焼により生ずる被害の軽減に資するように定めること。
(ハ) 防災街区整備地区整備計画の内容として定める計画事項のうち、建築物の構造に関する防火上必要な制限については、建築物相互間における延焼を一定程度遅延させ、避難行動に着手するまでの時間を確保するため、
・屋根が不燃材料で造られ、又はふかれたものであること
・木造建築物の場合は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が防火構造であること
とする制限を規定するなど、防火上有効な構造となるように定めること。
(ニ) 上記以外の計画事項については、昭和五六年通達記の四の(2の(ニ)及び(ホ)の基準を適用すること。この場合において、昭和五六年通達中「地区計画」とあるのは「防災街区整備地区計画」と読み替えるものとすること。
(3) 防災街区整備地区計画の策定手続
1) 防災街区整備地区計画の案を作成するに当たり意見の提出方法等について条例を制定することが前提条件とされているところであり、地区計画等の手続条例を定めていない市町村は、できる限り速やかに条例の制定を行うこと。
2) 意見を求めるべき利害関係を有する者の範囲は、都市計画法第一六条第二項及び都市計画法施行令(昭和四四年政令第一五八号)第一〇条の三に定められているが、その他の業務を行っている者や居住者等についても、その意見が十分反映されるよう配慮すること。
3) 市町村が防災街区整備地区計画に関する都市計画を決定しようとする際に都道府県知事の承認を受けなければならない事項は、都市計画法施行令第一四条の二及び都市計画法施行規則(昭和四四年建設省令第四九号)第一一条の二に定める一定の道路の配置及び規模又は区域並びに都道府県知事が定める都市計画の内容に直接かかわりを有する事項に限られているが、市町村と都道府県知事との間で適宜必要な連絡調整を行い、都市計画の一体性を確保すること。
4) 市町村が定める都市計画等について審議するため、市町村においても審議会を設置するよう従来より指導しているところであるが、防災街区整備地区計画については、市町村の果たすべき役割が大きいと思われるので、未設置の市町村にあっては、早急に審議会を設置し、また、審議会の適切な運営が図られるよう留意されたいこと。
(4) その他防災街区整備地区計画に関する都市計画を定めるに当たって留意すべき事項
1) 防衛施設(飛行場、演習場、訓練場、射撃場、駐屯地、通信・電波施設、燃料施設、弾薬庫、研究所その他これらに類する施設)は、防災街区整備地区計画の区域に含まないものとすること。
2) 市町村が防災街区整備地区計画を定める場合には、重要文化財、登録有形文化財、史跡名勝天然記念物、伝統的建造物群、埋蔵文化財等の文化財の保護に配慮すること。また、法第三三条第三項の規定による勧告等を行う場合も同様であること。
なお、防災街区整備地区計画に関する都市計画を定めるに当たり、都道府県及び市町村の都市計画担当部局は、必要に応じて文化財保護担当部局と協議を行うこと。
3) 市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域内の用途地域が定められている地域並びに市街化調整区域内における用途地域が定められている地域において、防災街区整備地区計画を定めようとする場合に、当該防災街区整備地区計画の区域内に農用地が含まれるときは、都市計画法第一九条第二項の規定に基づき都道府県知事が防災街区整備地区計画に関する都市計画の承認を行うに当たり、都市計画担当部局は、あらかじめ農林水産担当部局と、都市計画法第一二条の四第二項及び法第三二条第二項各号に定める事項の内容を示した資料を添えて協議を行うこと。
この場合において、当該農用地が四ヘクタールを超えるもの(農林水産大臣の転用許可権限の対象となり得るようなまとまったもの)であるときは、都道府県知事は、あらかじめ地方農政局長(北海道にあっては農林水産省構造改善局長、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部長)と、都市計画法第一二条の四第二項及び法第三二条第二項各号に定める事項の内容を示した資料を添えて協議を行うこと。
4) 防災街区整備地区計画の区域内に森林(森林法による保安林、保安林予定森林、保安施設地区及び保安施設地区予定地並びに保安林整備臨時措置法による保安林整備計画に基づく保安林指定計画地並びに森林法第五条第一項による地域森林計画対象民有林をいう。)、農林水産業用施設又は農林水産関連企業用施設が含まれる場合には、あらかじめ、市町村及び都道府県において、都市計画担当部局は、農林水産担当部局又は農林水産関連企業担当部局と十分調整すること。
5) 防災街区整備地区整備計画に定める事項のうち土地の利用に関する事項には、計画内容として農用地(生産緑地の対象となっている農用地を除く。)及び保安林又は保安施設地区の保全に関する事項は定めないこと。
6) 都市計画担当部局は、商工部局と内部調整を行い、防災街区整備地区計画の区域内の商工業者の経済力、店舗、工場等の新設・改造計画に配慮するとともに、当該区域内に商店街整備計画、店舗共同化計画等中小小売・サービス業振興のための諸施策その他の中小企業の振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合には、これらの諸施策との整合性を保つこと。
7) 電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)、ガス事業法(昭和二九年法律第五一号)及び熱供給事業法(昭和四七年法律第八八号)による事業については、その円滑な実施及び保安の確保に支障を及ぼすことのないように十分配慮すること。
8) ガソリンスタンド、LPGスタンド及び軽油スタンドは、その事業場の配置、形状等が特殊であることにかんがみ、その新設、改築又は増築に支障を来さないようにすること。
9) 工場立地法(昭和三四年法律第二四号)第六条第一項に規定する特定工場が立地している地区には、防災街区整備地区計画を原則として定めないこととし、防災街区整備地区計画の区域に含まれる場合には、同計画が同法第四条第一項に規定する工場立地に関する準則と調和が保たれるよう、十分配慮すること。
10) 臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地において、防災街区整備地区計画を定めようとするときは、事前にこれらの地域又は施設を管理する港湾管理者と事前に十分協議を行うこと。
11) 防災街区整備地区計画を定めるに当たっては、当該地域を管轄する消防長と十分調整を図ること。
(5) 地区防災施設の区域及び防災街区整備地区計画を定めるべきことの要請
1) 地区防災施設の区域(特定地区防災施設にあっては、特定地区防災施設の区域及び特定建築物地区整備計画)及び防災街区整備地区計画を定めるべきことを土地所有者等が要請する制度は、防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針等が定められた区域において、土地所有者等の間で防災街区整備地区計画に定められた内容に従った合意が成立した場合、このような合意を契機に地区防災施設の区域及び防災街区整備地区整備計画を定めることを可能とすることにより、地権者等のまちづくりに対する気運の高まり、事業の熟度等を的確に見定めつつ、防災街区の整備を円滑に進めることを目的としたものであるので、この趣旨に留意して、防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針を先行して定め、地権者等の創意工夫によるまちづくり活動を支援するなど、本制度の適切な運用に努めること。
2) 要請を受理した場合に、防災街区整備地区計画の決定の有無又はその内容について法的に拘束を受けるものではないが、当該要請の前提となった協定の内容を、防災街区整備地区計画の区域の整備に関する方針等に照らして支障のない限り尊重して、地区防災施設及び防災街区整備地区整備計画の策定に努めること。
3) 要請に当たっては、土地所有者等の間で防災街区整備地区計画の内容に沿った建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する合意が存在していることを客観的に明らかにする協定が締結されていることが要件とされているものであるので、この点に留意すること。
4) 要請に必要な書類の作成については、次の要領によること。
(イ) 地区防災施設要請書、特定地区防災施設及び特定建築物地区整備計画要請書、防災街区整備地区整備計画要請書は、要請に係る土地の区域内に土地の所有権又は借地権を有する者の住所、氏名及び押印又は自署並びに要請の内容を記載し、要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面及び協定の写しを添付して、都市計画の決定権者である地方公共団体の長あてに作成すること。この場合、要請する者が法人である場合においては、氏名は、その法人の名称及び代表者の氏名を記載すること。
(ロ) 要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面は、縮尺が概ね三〇〇〇分の一程度以上の図面に区域の境界が明確に判断できるように表示したものとすること。
(ハ) 法第三二条第七項の協定に定める内容は、建築物及び建築敷地の整備に関する事項については、用途構成、概ねの延べ面積、高さ、外構等とし、公共施設の整備に関する事項については、対象事業、整備に要する費用の分担、実施時期等とすること。また、協定の有効期間、協定に違反した場合の措置等についても併せて定めることができるものであること。
(6) 届出・勧告制度
1) 防災街区整備地区計画の区域のうち、地区防災施設の区域(特定地区防災施設が定められている場合にあっては、特定地区防災施設の区域及び特定建築物地区整備計画)又は防災街区整備地区整備計画が定められている区域については、一定の行為の届出が義務付けられるので留意すること。
2) 開発許可を要する行為については届出を不要とし、開発許可基準の一つとして取り扱うこととされているので、開発許可担当部局と緊密な連絡調整を図ること。
3) 届出が義務付けられる行為のうち、建築物等の建築又は用途の変更については、施行令第一二条第二号の規定に該当する場合を除き、届出と建築確認申請の両方の手続を要することとなるので、手続が煩雑にならないよう事務の簡素化及び迅速化に配慮すること。なお、防災街区整備地区整備計画に定められる建築物等に関する事項で、当該建築物等に係るものが、すべて条例に定められている場合であっても、当該建築物等に係る敷地について、地区施設の配置及び規模又は現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境の確保に必要なものの保全に関する事項が定められているときは、施行令第一二条第二号に該当しないものであるので留意すること。
4) 届出が義務付けられる行為は、土地の区画形質の変更、建築物等の建築のほか、防災街区整備地区計画に定められた内容によって、建築物等の用途の変更、建築物等の形態若しくは意匠の変更又は木竹の伐採がその対象となるので、防災街区整備地区計画の案の作成段階からこの旨周知させること。なお、店舗に取り付けられる看板等の設置は、工作物の新築、改築又は増築に該当しないものであること。
5) 勧告事務の運用に当たっては、地域の実情、建築物等の利用上の必要性等をも総合的に勘案し、過大な負担を課することとならないよう配慮するとともに、当該届出に係る行為が他の法令による許可、認可等を要するものである場合には、これらの手続の進行状況に留意し、適切な時期に適切な内容で行うこと。
6) 市町村長が法第三三条第三項の規定による勧告をした場合において、
・地区施設又は地区防災施設として定められた道路の位置の如何により、通常利用が困難と認められる土地が生じた場合の当該土地の権利のあっせん
・道路の位置の指定の前提としての道の区域内の土地の権利のあっせん
・技術的指導及び助言
等防災街区整備地区計画の内容を実現するため必要な範囲内の措置について特に必要があると認めた場合においては、市町村長は、同項の規定に基づき、これらの措置を講ずるよう努めること。
(7) 防災街区整備地区計画の区域内において市町村が定める条例による制限 8(2)を参照。
4 防災街区整備権利移転等促進計画について
(1) 防災街区整備権利移転等促進計画制度の趣旨
防災街区整備権利移転等促進計画(以下「促進計画」という。)は、密集市街地に設定される防災再開発促進地区のうち、防災性が特に低い防災街区整備地区計画の区域(その整備に関する方針のみ策定されている場合も含む。)において、当該地区計画の内容を実現する手法として創設されたものであり、散在的、自発的に発生する所有権等の移転の動きを捉え、耐火建築物の建築、地区防災施設・地区施設の整備等を独力で行い得ない地権者等が移転し、その跡地において、新しい地権者等がそれらの建築物や施設の整備等を主体的に行うことを促進することを目的としていること。
なお、促進計画は市町村が策定するものであるが、策定が義務付けられるものではなく、市町村が必要と判断した場合に定めればよいこと。
(2) 促進計画の対象となる権利移転等
1) 促進計画の対象となる権利の移転等とは、法第三四条第一項に規定されているとおり、所有権の移転又は地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転であるが、一時使用のためのものであることが明らかな地上権又は賃借権及び使用賃借については、土地の利用目的を安定的に実現する権利関係として不適切であるため、除外されていること。
2) 促進計画の対象となる土地からは、国又は地方公共団体が所有する土地で公共施設の用に供されているもの、農地、採草放牧地及び森林が除外されているが、これは、それぞれの土地が、防災街区整備地区計画の目的に照らし、現状のまま維持されることが望ましいことから措置されているものであり、関係法令の手続を経て土地利用の状況が除外用途から変更された場合においては促進計画の対象として差し支えないものであること。
3) 促進計画は、土地ごとに作成するものであり、一筆の土地に関する権利の移転等を内容として作成することも可能であるが、市町村が必要と認める範囲で、連鎖的に生じる権利の移転等や、連鎖的ではないものの同時に発生する複数の権利の移転等を一体的に定めることも可能であること。
(3) 促進計画の記載事項
1) 法第三四条第二項第二号の「土地の所在、地番、地目及び面積」には、権利の移転等の対象となる土地の登記簿上の所在、地番等を記載すること。また、権利の移転等の対象となる土地が複数の筆の土地である場合には、それぞれの土地ごとに第二項に掲げる事項を定めること。
2) 法第三四条第二項第四号及び第五号の「土地の利用目的」については、耐火建築物の建築、地区防災施設又は地区施設の整備等、法第三四条第三項第二号に掲げる要件に適合することの判断が可能である程度に具体的に記述すること。
3) 法第三四条第二項第四号の「所有権の移転の時期」及び同項第五号の地上権又は賃借権の「始期又は移転の時期」については、法第三七条の規定により、法第三六条第一項の規定による公告があった促進計画の定めるところによって所有権の移転等の効果が発生することから、当該公告を行う日よりも後になるように定めること。
4) 法第三四条第二項第六号に掲げる事項は、本来、同項第四号及び第五号に掲げる土地の利用目的に含まれるべき事項であるが、法第三三条第一項第六号の規定により防災街区整備地区計画の区域内における行為の届出の特例を設ける観点から、記載事項としたものであること。したがって、本号に掲げる事項については、防災街区整備地区計画の区域内における行為の届出書(施行規則別記様式第四号)における届出事項を参考として、防災街区整備地区計画に適合することが明らかになる程度に具体的な内容を定めるべきものであること。
(4) 促進計画の要件
1) 法第三四条第三項第一号により、促進計画の内容が、防災街区整備地区計画に適合することが要件とされているが、これは、同条第二項第四号及び第五号に規定する土地の利用目的並びに第六号に掲げる事項が防災街区整備地区計画に適合している必要があるという趣旨であること。
2) 法第三四条第三項第二号イに掲げる権利の移転等とは、例えば次のような場合が該当すること。
(イ) 地区防災施設を整備するために必要な土地で、従前、建築物の用に供されていた土地を取得して、地区防災施設の用に供する場合
(ロ) 地区防災施設を整備する場合に、当該施設の用地を提供した者に対しその代替地の権利の取得をさせる場合
3) 同号ロに掲げる権利の移転等とは、例えば次のような場合が該当すること。
(イ) 特定地区防災施設に接して低層の木造住宅の用に供されていた土地の所有権を取得した者が、当該土地に中層耐火建築物を建築する場合
(ロ) 特定地区防災施設に接する建築物の敷地の所有権を取得した者が、当該建築物の高さを上げる又は間口長を延ばす等の増築、改築又は移転を行い、特定防災機能の向上を図る場合
(ハ) 防災街区整備地区整備計画において、建築物の構造に関する防火上必要な制限が定められている土地の区域で、老朽化した木造建築物の用に供されていた土地の所有権を取得した者が、当該土地に防火性能の高い建築物を建築する場合
4) 同項第三号及び第四号の規定による関係権利者の同意は、促進計画に定められるすべての内容について全員の同意が必要であることを意味するものであること。なお、土地に関する抵当権その他の担保権の登記を有するものについては、権利の移転等によって担保価値に変動を生じないことから、関係権利者に含まれないこととされていること。
5) 同項第五号に規定する権利の移転等を受ける者の要件は、促進計画の目的が確実に実現されるよう、権利の移転等を受けた者が、当該権利を第三者に譲渡等することなく、計画に定めた利用目的を自ら適正かつ確実に実現するために必要な要件を規定したものであること。したがって、当該要件の判断に当たっては、権利の移転等を受けた者自身が、促進計画に定められた耐火建築物の建築等を行う資力及び信用を有するかどうかを確認すること。
(5) 促進計画の作成の要請
1) 法第三五条の規定による促進計画の作成の要請は、市町村が、地権者間で行われる土地に関する権利の移転等の状況を把握しやすくするとともに、地権者間での適切な権利移転等を促進することを目的として設けたものであること。
2) 要請を受理した場合には、市町村は、当該要請の前提となった協定の内容を防災街区整備地区計画の内容等に照らして支障のない限り尊重して、促進計画の作成に努めること。
3) 要請に必要な書類の作成については、次の要領によること。
(イ) 防災街区整備権利移転等促進計画要請書は、要請に係る土地についての所有権、地上権又は賃借権を有する者、当該土地について権利の移転等を受けようとする者並びに法第三四条第三項第三号及び第四号に規定する者の住所、氏名及び押印又は自署並びに法三五条の規定に基づき促進計画を定めるべきことを要請する旨を記載し、要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面、法第三五条の協定の写し及び関係権利者すべての同意を得たことを証する書面を添付して、市町村あてに作成すること。この場合、要請する者が法人である場合においては、氏名は、その法人の名称及び代表者の氏名を記載すること。
(ロ) 要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面は、縮尺が概ね三〇〇〇分の一程度以上の図面に区域の境界が明確に判断できるように表示したものとすること。
(ハ) 法第三五条の協定に定める内容は、利用目的が建築物に係るものであるときは、建築物の用途構成、概ねの延べ面積、高さ、外構等とし、利用目的が公共施設の整備に係るものであるときは、整備する施設の概要、実施時期等とすること。また、協定の有効期間、協定に違反した場合の措置等についても併せて定めることができるものであること。
(6) 促進計画の公告等
1) 促進計画の公告
(イ) 促進計画は、その策定主体である市町村がその内容を公告することによって特定人の権利義務を具体的に決定することとなることから、この公告は、行政処分に当たると解されるものであること。
(ロ) 促進計画の公告は、施行規則第三四条に定めるとおり、促進計画を定めた旨及び当該促進計画を市町村の公報に掲載することその他所定の手段により行うものとされているが、促進計画の分量等に応じ、適宜その手段を選定すること。
(ハ) 市町村が促進計画を定めてその旨を公告した場合には、(イ)の趣旨にかんがみ、法第三四条第三項第三号及び第四号の規定による関係権利者に対し当該公告を行った旨を通知すべきであること。
2) 促進計画の事前通知
(イ) 法第三六条第二項の規定による促進計画の都道府県知事に対する事前通知は、防災街区整備地区計画の決定について承認権限を有している都道府県知事が、促進計画の効力が発生する前に必要最小限の確認を行うことができるようにするために設けられたものであること。
(ロ) 促進計画を作成しようとする市町村は、都道府県知事に対する事前通知制度を設けた趣旨にかんがみ、公告までに、都道府県知事が促進計画の内容について判断可能な程度の期間を確保して通知を行うべきものであること。
(7) 促進計画に係る特例
1) 防災街区整備地区計画の区域内における行為の届出の特例
(イ) 促進計画は、防災街区整備地区計画に適合することが要件とされ、また、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日等防災街区整備地区計画の区域内における行為の届出の際に必要な事項はすべて定めることとされているため、促進計画に従って行う行為については、すでに市町村による促進計画作成の段階で防災街区整備地区計画に適合するとの判断が行われているものと解することができることから、防災街区整備地区計画の区域内における行為の届出義務を適用除外とするものであること。
(ロ) 法第三三条第一項第六号においては、「防災街区整備権利移転等促進計画に定められた土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他同条第二項第六号に規定する建設省令で定める行為に関する事項に従って行う行為」について届出の特例が認められているが、この場合の「行為に関する事項」には、施行規則第三〇条の規定による「行為の主体」も当然に含まれるものであること。したがって、促進計画に定められた行為の主体以外の者が促進計画に従って行う行為については、届出の特例は適用されないものであること。
2) 登記の特例
促進計画によって生じる権利の移転等については、権利取得者の請求に基づいて市町村が登記の嘱託を行う等の不動産登記法の特例が設けられる予定であること。
3) 課税の特例
促進計画に定められた土地の取得等について、事業用資産の買換特例(所得税、法人税)、登録免許税の税率軽減、不動産取得税の課税標準の特例及び特別土地保有税の非課税措置が講じられていること。なお、その運用については、別途通達するところによること。
(8) その他促進計画の作成に当たって留意すべき事項
1) 促進計画の作成に当たっては、(7)の特例に関係する部局と緊密な連絡調整を図ること。
2) 促進計画の対象となる土地が市街地開発事業の施行区域内にあり、建築物の建築を行うに当たり都市計画法第五三条の規定により許可を要する場合等、促進計画に定められた内容を実現しようとする際に他の法令に基づく制度により制限が課せられる場合には、当該制限により促進計画に定められた内容の実現に支障を来さないよう、当該制度の担当部局と緊密な連絡調整を図ること。
3) 促進計画に基づく権利の移転等は、市町村が作成する計画に基づき、行政処分である公告によりその効果が生じるものであることから、都市計画法第五二条の三第一項等の土地を有償で譲渡するに先立って土地の所有者に届出義務が課せられる制度については、その適用を受けないものであること。
4) 促進計画に基づく権利の移転等は、国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号。以下「国土法」という。)第一四条第一項の土地売買等の契約の締結には該当しないので、同項の許可並びに同法第二三条第一項及び第二項(同法第二七条の三第一項の規定により読み替えて適用される場合を含む。)の届出は不要であるが、当該権利の移転等が周辺の地価に悪影響を及ぼさないよう、次の点に留意すること。
(イ) 法第三四条第三項第二号にいう「土地の合理的かつ健全な利用」とは、促進計画において法第三四条第二項第二号に基づき定められる土地の一部又は全部が国土法第一二条に規定する規制区域内にある場合又は当該土地に関する権利の移転等が仮に国土法第一四条第一項の土地売買等の契約(以下「土地売買等の契約」という。)によるならば国土法第二三条第一項及び第二項(同法第二七条の三第一項の規定により読み替えて適用される場合を含む。)に基づく届出を要する場合(以下「促進計画が土地売買等の契約であれば国土法の許可又は届出の対象となる場合」という。)にあっては、それぞれ国土法第一六条第一項第二号から第四号までの要件又は同法第二四条第一項第二号及び第三号の要件に該当しないことを含意するものであること。
(ロ) 促進計画が土地売買等の契約であれば国土法の許可又は届出の対象となる場合において、促進計画に権利の移転等の対価を定めるときは、国土法第一六条第一項第一号又は同法第二四条第一項第一号若しくは同法第二七条の四第一項第一号の要件を十分勘案して取り扱うこと。
(ハ) 都道府県知事が法第三六条第二項に規定する通知を受けた際、促進計画が土地売買等の契約であれば国土法の許可又は届出の対象となる場合には、当該促進計画が指定都市(国土法第四〇条第一項の指定都市をいう。以下同じ。)の策定に係る場合を除き、都道府県の促進計画担当部局は、当該促進計画について都道府県の国土法担当部局と十分連絡調整を図ること。
(ニ) 指定都市が促進計画を定めようとする際、促進計画が土地売買等の契約であれば国土法の許可又は届出の対象となる場合には、指定都市の促進計画担当部局は、当該促進計画について指定都市の国土法担当部局と十分連絡調整を図ること。
(ホ) 促進計画の作成は行政処分の一環であり、権利の移転等については、国土法の適用を受けないが、促進計画において権利の移転等を受けようとする者と権利の移転等を行おうとする者との間で、促進計画が作成される前に、権利の移転等について当事者間に債権債務関係を生じさせるような合意を行う場合には、当該合意が国土法第一四条第一項の「予約」に当たると解されるので、その点に留意すること。
5 防災街区整備組合について
(1) 防災街区整備組合制度の趣旨
防災街区整備組合制度は、密集市街地の整備を進めるに当たっては、地方公共団体等による整備に加え、地権者による取組を計画的に誘導、促進していくことが重要であることにかんがみ、防災再開発促進地区内に定められた防災街区整備地区計画の区域において、当該計画の内容に沿って、
・土地の区画形質の変更及びこれに併せて整備することが必要な公共施設の整備
・耐火建築物又は準耐火建築物の建築、賃貸その他の管理又は譲渡
等を協同して行おうとする地権者の組織に対し、防災街区整備組合(以下「組合」という。)として法人格を与える制度であること。これにより、単独では、敷地条件、資力、意欲等の面で建築物の建替えが困難な地権者についても、組合員となり、基盤整備、建築物の建築、管理等を推進することが期待されること。
なお、組合は、三人以上の発起人が中心となって設立準備会、創立総会を開催し、定款、事業方針等を決定した上、都道府県知事の設立認可を受け、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立するものであること。
(2) 組合が行う事業
1) 通則
(イ) 組合は、防災再開発促進地区内の防災街区整備地区計画の区域における一団の土地の所有権者又は借地権者が、協同して、当該一団の土地の区域内の各街区を防災街区として整備することを目的として設立されるものであり、営利を目的として事業を行ってはならないものであること。
(ロ) 組合は、法第四五条第一項に定める事業を必須事業として、また、同条第二項に定める事業を任意事業として、行うことができるものであること。
(ハ) 組合は、定款に定める組合の地区内においてのみ事業を行うことができるものであること。組合の地区は、(3)に述べるように組合員の資格に直結するものでもあるので、地域の特性及び関係権利者の意向に十分配慮しつつ、地区全体の計画的な整備が図られるよう適切な地区を設定することが重要であること。
(ニ) 法第四五条第二項第一号の土地の賃貸その他の管理又は譲渡については、当該土地が更地のまま転売されることがないよう、相手方を一定の者に限定しているものであり(施行令第一四条)、その趣旨にかんがみ、組合が当該事業を行おうとするときは、土地の譲渡等の相手方から、建築計画の提出を求める等の措置を講じることが望ましいこと。また、同条第三号の、資力及び信用からみて当該土地に耐火建築物等を建築することが確実であると認められる者には、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社、民間ディベロッパー等が該当し得ること。
2) 組合が施行する土地区画整理事業及び第一種市街地再開発事業
組合が、その目的を達成するために行う事業の手法として、土地区画整理事業又は第一種市街地再開発事業(以下「土地区画整理事業等」という。)を施行することとなる場合があるが、その際、特に次の事項に留意すること。
(イ) 組合が土地区画整理事業等を施行する場合においては、法人格としては一であるが、実質的には、組合員である土地所有権者等が共同して関係権利者の同意を得つつ行うものであることにかんがみ、施行者である組合を数人が共同して施行する事業の施行者とみなすものであること(法第四六条第一項及び第四七条第一項)。これにより、組合が土地区画整理事業等を行う場合には、一人が施行者となる場合に作成する規準では記載することを要しない費用の分担や代表者、会議に関する事項を記載した規約を定め、都道府県知事の認可を受けることとなるものであること。
(ロ) 組合が法の規定に基づき数人共同施行者とみなされて土地区画整理事業等を施行しようとする場合には、施行地区が組合の地区と一致していなければならないものであること。これは、仮に、組合が土地区画整理事業等を組合の地区と一致しない範囲で施行すると、組合員と施行地区内の土地所有権者等との範囲が異なることとなり、施行地区外の組合員が、組合の事業基本方針の作成等を通じて事業の施行に当たり影響を及ぼすことができることとなって、施行地区内の土地所有権者等が合意により事業を進めていくという数人共同施行の趣旨と性格を異にするものとなることから、本来の数人共同施行と整合的なものとなるようにする趣旨であること。
(ハ) 組合が土地区画整理事業等を施行する場合には、当該事業に係る経理をそれぞれ他の事業に係る経理と区分して整理することにより、会計上の便宜を図ることとするものであること(法第八五条)。
(ニ) 土地区画整理事業等の施行の認可を受けた組合の組合員は、組合員資格の喪失、死亡等法定脱退事由に該当する場合を除き、事業施行中の脱退を禁止されるとともに、組合員以外の者が組合員が有する所有権又は借地権を承継した場合等には、その者が組合員となって、事業に関する権利義務もその者に移転するものとすることにより、組合が施行する土地区画整理事業等の安定的な施行を図るものであること(法第一一〇条、第一一一条)。
(ホ) 組合は、防災街区整備推進機構(7参照)が有する土地等を活用して第一種市街地再開発事業を施行し得るものであり、事業遂行上有益であると判断した場合には、機構が施行地区内に有する土地等を組合員等に対して移転するよう機構に要請することができるものであること(法第一一二条第一項)。
なお、都市再開発法第七〇条においては、第一種市街地再開発事業の施行地区内の権利処分について施行者の承認を要することとしているが、当該要請に基づく処分については、施行者である組合からの要請に基づくものであり重ねて承認に係らしめる必要性はないことから、この承認を不要としたものであること(同条第二項)。
(3) 組合の組合員
1) 組合員たる資格を有する者は、定款に定める組合の地区内の土地について所有権又は借地権を有する者であって、定款で、その資格に関する規定を定めることとされていること(法第四八条)。組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、過去に当該組合の事業活動を妨害したことがある等の理由がない限り、組合はその加入を拒んだり、加入に際して不当な条件を付けたりすることは認められないこと(法第五四条)。
2) 組合員は、出資(現物出資を含む。)一口以上(出資一口の金額は定款で定める。)を確実に払い込まなければならないこと。また、各組合員は、定款に別途定める経費の負担を除き、その出資額を限度に責任を負うものであること(法第四九条)。
3) 各組合員は、組合に対して持分権を有しており、組合の承認を得ることなくその持分を譲渡することはできないこと(法第五〇条)。また、組合が組合員の持分を取得することは認められていないこと(法第八七条)。
4) 各組合員は、出資口数にかかわらず各一個の議決権及び役員の選挙権を有すること(法第五一条)。
5) 組合員は、組合員たる資格の喪失、死亡又は解散、除名のいずれかの事由で組合を脱退するほか、自らの意思により、一定の予告期間の後に組合を脱退することができること(法第五五条、第五六条)。また、組合を脱退したときは、定款の定めにより持分の全部又は一部の払戻しを請求できること(法第五七条)。
(4) 組合の定款、事業基本方針等
1) 定款及び事業基本方針は、組合の存立及び組合が行う事業内容についての基本的事項を定めるものであり、創立総会の議決で決定し(法第九二条)、組合設立後にそれを変更する場合には総会の特別議決を経た上、都道府県知事の認可を受ける必要があること(法第七八条、第八〇条)。
2) 定款記載事項は法第六二条に、事業基本方針記載事項は法第九一条及び施行規則第四一条に定められていること。なお、定款の具体的内容については、追って、法第六二条第三項に基づく模範定款例を定める予定であるので、参考にされたいこと。
3) 組合が、組合の地区に関する定款の規定を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けるに当たり、施行規則第四〇条に定める一定の添付書類が必要となること。
4) 組合は、定款を変更して、出資一口の金額を減少することができるが、その際は、法第八二条に定める手続を経る必要があること。
5) 組合の役員たる理事は、組合の定款、事業方針及び法第六三条に基づく規約を各事務所に、また、組合員名簿及び決算関係書類を主たる事務所に、それぞれ備えて置き、組合員及び組合の債権者の閲覧に供することとされていること(法第七二条、第七三条)。
(5) 組合に対する指導監督
1) 国及び地方公共団体は、組合に対して、その事業の施行の促進を図るため必要な助言又は指導をすることができるとされており(法第一一四条)、各地方公共団体においても、組合の事業の円滑な実施が図られるよう適切な助言、指導をなされたいこと。
2) 組合の財務については、その健全かつ適正な運営を図るため、固定資産に対応する部分には、安定的な財源である自己資本を充てるとの基準を定めていること(法第八五条、施行令第一九条)。また、施行令第一九条第三項の規定は、固定資産の価額の算定に当たり、その取得のためにした一定の借入金を差し引くことにより、組合設立当初段階で事業が円滑に進むよう配慮を行っているものであること。
3) 組合の業務上の余裕金の運用先については、安全性、確実性を基本として、施行令第二〇条及び建設大臣告示で定めているものであること。
4) 都道府県知事は、設立認可した組合について、その自主的活動を阻害しないように配意しつつ、必要に応じ、当該組合が法令等に違反していないかどうかにつき報告の徴収、検査等を行い、違反等を認めた場合には、速やかに所要の措置を講じること。
(6) 組合に対する課税の特例
組合が施行する土地区画整理事業等に関する課税の特例が講じられていること。
なお、その運用については、別途通達するところによること。
6 建築物の敷地と道路との関係の特例について
特定地区防災施設である道については、単に道路空間としての機能のみではなく、これに接して建築される建築物の有する耐火性能と相まって一定の延焼遮断効果を有する特定地区防災施設としての機能を果たすものであり、その積極的な整備を誘導していくことが重要であることにかんがみ、特定防災街区整備地区計画に定められた特定地区防災施設である道が予定道路として指定された場合において、当該特定防災街区整備地区計画の区域内にある建築物で、当該特定防災街区整備地区計画の内容に適合し、かつ、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したものについては、当該予定道路を建築基準法第四二条第一項に規定する道路とみなして、同法第四三条第一項の規定を適用するものであること。
なお、本規定の適用に当たっては、次の点に留意すること。
(1) 許可をするとができる建築物は、特定建築物地区整備計画が定められている区域のうち、建築物の構造に関する防火上必要な制限、建築物の間口率の制限、壁面の位置の制限及び工作物の設置の制限が定められており、かつ、建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づく条例で、建築物の構造に関する防火上必要な制限、建築物の間口率の制限及び壁面の位置の制限が定められている区域内にあることが条件であること。
(2) 予定道路を接道対象道路とする許可を行うに当たっては、建築基準法第四三条第一項に規定する建築物の敷地と道路との関係に係る制限は、建築物の安全性の確保を目的とする建築基準法上の最も基本的な制限の一つであることにかんがみ、具体の建築計画、周辺の市街地の状況等を見定めつつ、総合的な判断に基づいて行うこと。
7 防災街区整備推進機構について
(1) 防災街区整備推進機構の指定
防災街区整備推進機構(以下「機構」という。)の指定は、各市町村長が、密集市街地における防災街区の整備の状況や必要性等を勘案して、法第一一七条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人について、その申請により行うこととなるが、その際、特に次の事項に留意すること。
1) 機構は、密集市街地における防災街区の整備をより積極的に推進していくために、市町村に代わって、密集市街地の住民の利害関係や要望を調整し、市町村、民間事業者等の各整備主体間の連携・調整を図るとともに、自らも積極的に事業を行う主体として位置付けられるものであり、この趣旨を踏まえて指定を行うこと。
2) 市町村が指定する法人としては、市町村が設立した既存の「まちづくり公社」等の公益法人が想定されるが、法第一一七条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人であれば、指定の対象となるものであること。
3) 指定しようとする公益法人が、法第一一七条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができるか否かについて、組織、資金、業務実績等の面から判断すること。
したがって、指定の申請に当たっては、定款又は寄附行為のほか、事業計画書、資金計画書等当該公益法人が当該業務を適正かつ確実に遂行する能力を有するか否かを判断するために必要となる書類を提出させること。
4) 法第一一七条各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができる公益法人であれば、複数の公益法人の指定も可能であること。
また、一の市町村の設立に係る公益法人では、財政上、組織上の基礎が十分ではないと認められる場合、又は指定しようとする公益法人が複数の市町村において業務を行う場合においては、複数の市町村が共同で設立し、又は都道府県が主導的に設立した公益法人等を、複数の市町村が機構として指定することができること。
5) 指定を行った場合の公示は、市町村の公報及び掲示板へ掲載することにより行うものとすること。
(2) 機構の業務
機構の指定に当たっては、当該公益法人の寄附行為又は定款の事業範囲の規定に、法第一一七条各号の業務が明記されていることを必要とするものではなく、その目的又は事業範囲の規定上、当該業務を適正かつ確実に行うことができると認められる公益法人であれば、機構として指定し得るものであること。
また、機構は、法第一一七条各号に掲げる業務を行うことのほか、公益法人として、その設立の目的の範囲内で業務を行うことができるものであり、同条各号に掲げる業務以外の業務を行うことを妨げるものではないこと。
このほか、機構の業務については、特に次の事項に留意すること。
1) 「密集市街地における防災街区の整備に資する事業を行う者に対し、情報の提供、相談その他の援助を行うこと」(法第一一七条第一号)とは、機構が、市町村や民間ディベロッパー等ではその役割を果たすことが困難な地域のコーディネーター役として、防災街区整備組合や住民、地権者等の利害関係や要望を把握し、これを情報として提供するなどして市町村、民間事業者等の各整備主体の支援を行う業務をいうものであること。
ここで、「防災街区の整備に関する事業」とは、密集市街地において実施される市街地再開発事業等の面的整備事業のほか、個別の延焼防止機能を有する建築物の建設事業、住宅の防火構造化工事等を含み、その「事業を行う者」は、地方公共団体、防災街区整備組合、市街地再開発組合等の公的主体、民間事業者のみならず、個々の住宅建設を行う個人等も含むものであること。
また、「情報の提供」とは、土地の売買等についての地権者、民間事業者等の意向、地方公共団体等による密集市街地の整備に関する事業の実施、各種の土地利用規制の内容、税制上の優遇措置等について情報提供を行うことをいうものであること。
2) 「防災街区整備地区計画の区域において、当該区域内の各街区の防災街区としての整備に資する建築物その他の施設であって建設省令で定めるものを当該防災街区整備地区計画の内容に即して整備する事業を行うこと又は当該事業に参加すること」(法第一一七条第二号)とは、機構が延焼防止建築物の建築又はその建築に関する事業に参加することにより、当該防災街区整備地区計画に適合し、防災性の向上に効果を発揮する建築物等の整備を促進しようとする業務をいうものであること。
ここで、「建築物その他の施設」とは、施行規則第四五条第一号に規定する建築物並びに同条第二号に規定する公共の用に供する施設及び公用施設であり、「事業に参加すること」とは、組合と共同して延焼防止機能を有する共同住宅を建設する場合や個々の建築物の建替えと併せて集会所や代替住宅等の建築を行うこと等をいうものであること。
3) 「防災街区整備地区計画の区域において、当該区域内の各街区の防災街区としての整備を図るために有効に利用できる土地で政令で定めるものの取得、管理及び譲渡を行うこと」(法第一一七条第三号)とは、機構による防災街区の整備に必要な用地の取得等の業務をいうものであること。
ここで、「政令で定めるもの」としては、施行令第二一条において、次のように規定されていること。
(イ) 道路、公園、緑地その他の公共の用に供する施設、公用施設の整備事業の用に供する土地
(ロ) 市街地開発事業又は地方公共団体が行うこれに準ずる事業(施行規則第四六条において住宅地区改良事業を規定)の用に供する土地
(ハ) 延焼防止建築物その他の施設の整備事業の用に供する土地
(ニ) 防災街区整備地区計画の区域内における(イ)から(ハ)までの事業の代替地の用に供する土地
また、これらの土地は、機構自らが(イ)から(ニ)までの事業等に直接活用することができるほか、防災街区整備組合への参加用地としての利用や、地方公共団体、民間事業者等に譲渡して、これらの者が(イ)から(ニ)までの事業等への活用を図ることも可能であること。
なお、機構がこの業務として行う一定の要件を満たす土地の買取りについては、土地譲渡者に係る所得税及び法人税について個人の長期譲渡所得の軽減税率の特例及び法人の一般重課の適用除外並びに一五〇〇万円特別控除が、機構に係る特別土地保有税にいて取得分・保有分の税額の三分の一の軽減措置が適用になるが、その運用については、別途通達するところによること。
4) 「密集市街地の防災街区の整備に関する調査研究を行うこと」(法第一一七条第四号)とは、機構が防災街区の整備について各種の調査や研究を行う業務をいうものであり、「調査研究」としては、土地利用の状況に関する調査、防災街区の整備に関する先進的事例に関する調査、土地の売買等についての密集市街地の住民、地権者等の意向調査、延焼防止上効果的な建築物や公共施設の規模・配置に関する調査研究等が想定されること。
また、地方公共団体等からの委託に基づく調査研究であると自主的な調査研究であるとを問わないこと。
5) 「前各号に掲げるもののほか、密集市街地における防災街区の整備を推進するために必要な業務を行うこと」(法第一一七条第五号)とは、密集市街地の住民の合意形成を図り、防災街区の整備を推進するための普及・啓発活動や、そのためのパンフレットの作成等の自主的な業務のほか、国、地方公共団体の委託に基づき防災街区の整備用地の取得業務を行うこと等、第一号から第四号までの業務以外に密集市街地における防災街区の整備の推進のために必要な業務であること。
(3) 機構に対する監督措置等
市町村長は、その指定に係る機構による法第一一七条各号に掲げる業務の適正かつ確実な実施を確保するために必要な監督等の権限を行使するに当たっては、特に次の事項に留意すること。
1) 市町村長は、その指定に係る機構の業務及び財産状況等について常時把握するものとし、必要な場合においては、法第一一八条第一項に定めるところにより、当該機構に対し、その業務に関する報告をさせるものとすること。
2) 法第一一七条第二項に定めるところにより改善命令を行う場合としては、例えば次の場合が想定されること。
(イ) 防災街区整備地区計画に適合しない等不適当な建築物を建築しようとした場合に、当該建築物の建築の中止を命ずること。
(ロ) 都市開発資金の貸付けを受けた資金を防災街区の整備用地の買入れ以外の業務に流用した場合に、当該流用を中止するよう命ずること。
なお、改善命令の趣旨からして、法第一一七条各号に掲げる業務以外の業務の実施が不適当である場合には、原則としてこの法第一一八条第二項の規定に基づく改善命令をすることはできないものであること。
(4) 機構に対する情報の提供等
法第一一九条の「必要な情報の提供又は指導若しくは助言」は、国及び地方公共団体は密集市街地整備に関するノウハウ等を活かして、機構に対してその業務の実施に関して必要な情報の提供又は指導及び助言を行う旨規定し、機構による適正な業務運営を確保することが必要であるとの趣旨に基づくものであり、その具体的な内容としては、密集市街地整備に関する先進的事例の紹介、機構が業務を行う地域の住民、地権者等の意向、地方公共団体等による事業の実施計画、土地利用規制の状況、税制上の特例等に関する情報の提供が想定されること。
(5) 組合の要請に基づく権利の処分
組合が施行者となる第一種市街地再開発事業の施行地区内において機構が有する土地の所有権等について、組合による法第一一二条第一項に基づく権利の処分の要請があった場合には、事業の円滑な施行を図るという同制度の趣旨にかんがみ、適切に対処するよう指導すること。
8 他の関係法令に係る主な改正内容について
(1) 住宅金融公庫法(昭和二五年法律第一五六号)の一部改正
延焼等危険建築物の除去の勧告を受けた家屋の所有者に対する代替家屋の建設に必要な資金等の貸付けを住宅金融公庫の地すべり等関連住宅貸付金として追加されたので、その周知徹底に努められたいこと。
(2) 建築基準法の一部改正
1) 防災街区整備地区計画の区域内に市町村が定める条例による制限
(イ) 建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づく条例(以下「条例」という。)による制限は、防災街区整備地区計画の内容のうち特に重要なものについて、建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第一三六条の二の二に規定する基準に従い、適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため合理的に必要と認められる限度のものとするとともに、個別の建築物又はその計画が当該制限に適合するか否かが一義的に判断されるように明確なものとすること。なお、条例で制限として定めることができる事項は、防災街区整備地区計画の内容として定められた事項のうち建築物に関するものに限られるものであり、建築物以外の工作物に関する事項を条例で制限として定めることはできないものであること。ただし、同法第八八条第二項において同法第六八条の二第一項の規定が準用されているので、同法第八八条第二項に規定する工作物の用途に関する事項については、この限りでないこと。
(ロ) 条例による制限は、当該防災街区整備地区計画の目的を達成する上で特に重要な制限につき、当該防災街区整備地区計画の区域及びその周辺の地域における建築物の建築の状況、道路、公園、広場等の施設の整備の現状及び将来の見通しその他の土地利用の状況等からみて、当該防災街区整備地区計画の区域における特定防災機能の確保、良好な市街地の環境の形成又は維持を図るために合理的に必要な限度において行うものとすること。なお、条例による制限は、防災街区整備地区計画の内容として定められたもののうちから定められるものであるので、条例で制限として定めることが見込まれる計画事項については、その内容について都市計画担当部局と緊密な調整を図ること。
(ハ) 条例には、建築物に関する制限の内容のほか、当該制限の適用の除外に関する規定、罰則その他の必要な規定を併せて定めること。
(ニ) 建築物の建築面積の最低限度の制限、建築物の形態若しくは意匠の制限又はかき若しくはさくの構造の制限を条例で定める場合においては、次の点に留意すること。
(i) 建築物の建築面積の最低限度の制限は、防災街区整備地区計画の区域内において建築物の敷地が細分化されることにより、又は建築物が密集することにより住宅等の敷地内に必要とされる空地の確保又は建築物の安全、防火又は衛生の目的を達成することが著しく困難となり、良好な市街地環境の維持増進に必要な場合において行うこと。
なお、建築基準法第六八条の二第三項の規定に基づき、条例に当該制限の適用の除外の規定を定めることとなる場合において、当該適用除外の規定の適正な運用を期するため市町村は当該条例の規定の施行又は適用に当たっては、現に建築物の敷地として使用されている土地及び現に存する所有権その他の権利に基づいて建築物の敷地として使用することとなる土地について、あらかじめ十分把握しておくこと。
(ii) 建築物の形態又は意匠及びかき又はさくの構造の制限は、周囲の環境と調和した優れた景観を有する街並みを形成する必要がある場合等において行うこと。建築物の形態又は意匠の制限の内容は、建築物の屋根又は外壁の形態又は意匠をその形状又は材料によって定めたものに限られていること。また、かき又はさくの構造の制限は、建築物に付属する門又はへいの構造を、その高さ、形状又は材料によって定めたものに限られていること。
(ホ) 建築基準法施行令第一三六条の二の二第一項第一二号イ(2)に規定する「防火上有効な構造」とは、建築物の構造に関する防火上必要な制限が間口率の最低限度及び高さの最低限度に関する制限と相まって特定防災機能を確保するため、建築物がいわゆるピロティ等の構造となることを禁止しようとするものであることにかんがみ、その敷地が特定地区防災施設に接する建築物の間口率の最低限度及び高さの最低限度により規定される部分が背後地と特定地区防災施設との間を遮へいして延焼等による被害を防止し、又は軽減する構造をいうものであること。したがって、ピロティ等の構造であっても更に耐火構造又は準耐火構造の壁等により背後地と特定地区防災施設との間が遮へいされているものや、窓、通風口等の開口部を有していてもそれらが防火設備を有すること等により防火上支障がないものはこれに該当するものであること。
また、建築基準法施行令第一三六条の二の二第一項第一二号ロに規定する防災街区整備地区整備計画の区域内の建築物の構造に関する防火上必要な制限は、主として地区防災施設が担うべき特定防災機能を補完し、当該区域内の住民が地区防災施設等を経由して広域避難路・避難地等に安全に避難するために必要な一定の延焼遅延効果を確保することを主たる目的とするものであることにかんがみ、防火地域又は準防火地域以外の区域であって、広域避難路との位置関係、地区防災施設の配置等を勘案して、当該区域において火事又は地震が発生した場合の延焼により生ずる被害の軽減に資するに真に必要と認める場合に行うこと。
(ヘ) 条例の制限に関する面積、高さ等の算定方法については、建築基準法の算定方法に関する一般的な原則によることができる場合には、条例の制定に当たり、当該条例に延べ面積、建築物の高さに関し、それぞれ建築基準法施行令第二条第一項第四号ただし書並びに同項第六号イ及びロの規定の例にならった必要な規定を設けること。
また、防災街区整備地区計画に建築基準法の一般原則と異なる算定方法が定められている場合において当該算定方法に係る制限事項を条例による制限とするときは、条例において当該算定方法と同一の算定方法を定めること。
(ト) 建築基準法施行令第一三六条の二の二第一〇項の規定は、建築基準法第三条第二項の規定により条例による制限のうち一定のものの適用を受けない建築物を一定の範囲内で増築、改築、大規模の修繕又は模様替をする場合において、なおこれらの制限を適用しない旨の規定を当該条例に設けるべき旨規定しているものであり、同項中「法第八六条の二の規定の例により当該条例に定める制限の適用の除外に関する規定を定める」とは、建築物の用途の制限にあっては建築基準法施行令第一三七条の四各号、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最高限度にあっては同令第一三七条の五各号、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度にあっては同令第一三七条の六各号の規定に相当する範囲内において増築若しくは改築をする場合又は同令第一三七条の九の規定に相当する範囲内において大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合(建築物の用途の制限に関する場合を除く。)におけるそれぞれの制限の運用の除外に関する規定を定めるべきものであること。この場合において、同令第一三七条の「基準時」に関する規定と同様の規定を条例に定めることとし、それぞれの「基準時」は、建築基準法第三条第二項の規定により条例で定めるそれぞれの制限の適用を受けない建築物について、同法第三条第二項の規定により引き続き当該規定(当該規定が改正された場合においては改正前の規定を含む。)の適用を受けない期間の始期をいうものであること。
(チ) 条例の制定に当たっては、建築基準法施行令第一三六条の二の二第一一項の規定に基づき、条例に定める制限の適用の除外の規定を条例に定めるほか、防災街区整備地区計画において定められた当該制限の趣旨に反しない限りにおいて、当該制限の内容に応じ、かつ、当該制限を適用しようとする区域の状況等に応じて個別に必要性を判断した上で、当該条例に建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合、建築物の高さその他の事項に関する条例の制限に関し、建築基準法の規定の例にならった適用の除外の規定を定め、同法第五九条の二第一項の規定に基づき許可を受けた建築物又は同法第八六条の規定に基づく特例の適用を受けた建築物に関し、それぞれ同法の該当する条文の規定の例にならって条例の制限の適用の除外の規定を定めること。
(リ) 学校、公民館、図書館、派出所、郵便局、第一種電気通信事業の用に供する建築物、電気事業法、ガス事業法又は熱供給事業法によって規制されている施設、駅舎等の鉄道・軌道施設、自動車ターミナルビル、流通機構上重要と認められる営業倉庫、上屋等の公益上必要な施設については、防災街区整備地区計画の趣旨をも十分考慮しつつ、それぞれの業務に支障を生ずることがないよう、条例の制定に当たって制限の適用の対象外とすることを含め十分な配慮を行うとともに、また、これらの施設のうち用途上又は構造上やむを得ないと認められるものについては、建築基準法施行令第一三六条の二の二第一一項に規定する例外許可による適用除外を行うことにより対処すること。
(ヌ) 防災街区整備地区計画の区域内において建築行為を行う場合には、施行令第一二条第二号の規定に該当する場合を除き、建築確認申請の届出を行わなければならないことが一般であり、特に条例で制限を定める場合には同一の事項について双方の手続で適合性を審査することとなるので、担当者間において密接な連絡を取りつつ、適切かつ迅速な事務処理が図られるよう特に留意すること。
2) 道路の位置の指定に関する特例
(イ) 道路の位置の指定に関する特例は、地区施設のみならず、地区防災施設にも適用されるものであること。
(ロ) 道路の配置及び規模又はその区域を定めた防災街区整備地区計画の区域内においては、道路の位置の指定は、防災街区整備地区計画に定められた道の配置又は区域に即し、かつ、建築基準法施行令第一四四条の四の規定に適合する場合について行うこと。
(ハ) 建築基準法第六八条の六本文でいう「道の配置に即して」とは、位置の指定に係る地区施設である道路が、防災街区整備地区整備計画で定められた道の配置に正確に一致している場合のほか、正確には一致していないが防災街区整備地区整備計画に定められた道との接続状況、位置関係から見て防災街区整備地区整備計画で定められた道の機能が確保されると認められる場合を含むものであること。また、同条本文の規定は、必ずしも防災街区整備地区整備計画に定められた道の規模に即する必要はない旨の規定であること。
なお、同法第六八条の六本文でいう「道の区域に即して」とは、位置の指定に係る地区防災施設である道の区域が、防災街区整備地区計画で定められた地区防災施設である道の区域と正確に一致している必要があるものであること。
(ニ) 建築基準法第六八条の六ただし書の規定は、現に存する道路が建築物の敷地として利用しようとする土地で著しく近接しており、計画に即して道路を築造する場合の負担が現に存する道路に至る道路を築造する場合に比して著しく大きくなるとき、防災街区整備地区計画に定められた道の区域内に建築物が存する場合、計画に即して指定を行う場合にはその計画に定められた道を含む土地についてその権利を有する者が当該土地をその権利に基づいて利用することが著しく妨げられることとなるとき等同条本文の規定により難い場合において適用すること。
3) 予定道路の指定について
(イ) 予定道路の指定は、防災街区整備地区計画で定められた道の実現を図るため、特定行政庁が能動的に予定道路と指定するものであり、当該防災街区整備地区計画の区域における特定防災機能を確保するために整備されるべき地区防災施設又は地区施設の整備を担保する上でも重要な処分であるので、指定に当たってはあらかじめ予定道路の指定に関する基本的な方針等について十分な検討を行った上、積極的に指定を行うこと。
(ロ) 予定道路の指定は、地区施設のみならず地区防災施設にも適用されるものであること。
(ハ) 予定道路の指定は、防災街区整備地区計画の区域及びその周辺の地域における土地利用の動向、道路の整備の状況及び将来の見通し、建築物の敷地境界線、筆界等の土地に関する権利の状況等を考慮し、建築物の建築等を禁止することにより防災街区整備地区計画で定められた道の予定地を確保することが必要な範囲において、その幅員、延長、道路境界等を明確にして行うこと。
(ニ) 建築基準法第六八条の七第一項第二号に該当する場合には、できるだけ細街路網を一体的に指定することにより、土地区画整理事業等により整備された区画道路と一体となった道路網の形成が効率的に図られるように努めること。
(ホ) 建築基準法第六八条の七第一項第三号の規定に基づく指定は、防災街区整備地区計画で定められた道の相当部分が道路の位置の指定又は開発許可を通じて実現されている場合において、当該道路と既に整備された他の道路(防災街区整備地区計画で定められた道に即して近い将来確実に整備されると見込まれる道路を含む。)との連続性を確保することが必要なとき等において積極的に行うこと。
(ヘ) 建築基準法第六八条の七第一項第二号又は第三号に該当しない場合であっても、防災街区整備地区計画で定められた道の予定地を確保することが必要であるときは、特定行政庁は、同項第一号の規定に基づき、利害関係を有する者の同意を得て指定を行うよう努めること。
(ト) 予定道路の土地の区域内における建築物の建築等の制限が適切に行われるよう予定道路の指定に係る台帳の整備等の措置を講ずること。
(チ) 予定道路が指定された場合には建築基準法第四四条の規定が適用され建築物の建築等が制限されるが、特定防災街区整備地区計画に定められた特定地区防災施設について、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第一一五条第一項の規定に基づく許可を受ける場合を除き、道路の位置の指定等により建築基準法第四二条第一項の道路になってはじめて法第四三条第一項の規定が適用されることとなることに留意すること。
(リ) 建築物の敷地が予定道路に接する場合又は敷地内に予定道路がある場合において、建築基準法第六八条の七第五項の規定に基づき、特定行政庁の交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については、予定道路を前面道路とみなして、同法第五二条第一項の規定による前面道路幅員による容積率制限を適用することが可能となり、また、建築基準法施行令第一三一条の二第二項の規定に基づき、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認める建築物については、予定道路を前面道路とみなして、建築基準法第五六条の規定による斜線制限を適用することが可能となるものであること。
(ヌ) 建築基準法第六八条の七第一項の規定中「即して」の意味については、道路の位置の指定に関する特例において述べたところと同様であるが、「計画に定められた道の配置及び規模又はその区域に即して、指定を行うこと」とされているので、地区施設として定められる道路であっても、道路の幅員その他の規模についても計画に即していることが必要である点に留意すること。
4) 総合的設計による一団地の建築物の取扱い
(イ) 建築基準法第八六条の規定に基づく一団地の総合的設計制度については、一団地内の建築物を原則として同時期に建築するものに加えて、同条第二項において、地区内に空地が適切に確保されるよう地区計画において地区施設等が定められていること等を条件として、一団地内に二以上の構えを成す建築物の建築を工区を分けて行うことができることとされているところであるが、今般、同条第三項が追加され、防災街区整備地区計画の区域のうち、次に掲げる場合にあっても、工区を分けて建築を行うことができることとされたので、その積極的な活用を図ること。
(i) 防災街区整備地区整備計画が定められている区域のうち、地区施設の配置及び規模並びに壁面の位置の制限(当該地区施設に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)が定められており、かつ、条例で当該壁面の位置の制限が定められている区域であること。
(ii) 地区防災施設(特定地区防災施設を除く。)の区域及び防災街区整備地区整備計画が定められている区域のうち壁面の位置の制限(当該地区防災施設に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)が定められており、かつ、条例で当該壁面の位置の制限が定められている区域であること。
(iii) 特定地区防災施設の区域及び特定建築物地区整備計画が定められている区域のうち壁面の位置の制限(当該特定地区防災施設に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)が定められており、かつ、条例で当該壁面の位置の制限が定められている区域であること。
(ロ) 「工区」とは、一団地の総合的設計制度を活用して既成市街地の段階的な建替え等を行う場合に同時期に建築を行う建築物の存する土地をいうものであること。
(3) 都市開発資金の貸付けに関する法律(昭和四一年法律第二〇号)の一部改正
法において防災街区整備地区計画及び機構等が制度化されたことに伴い、密集市街地における再開発を促進するに当たって極めて重要な用地の先行取得を促進するため、都市開発資金貸付金について、都市機能更新用地買取資金の対象に防災街区整備地区計画の区域が追加されるとともに、機構が法第一一七条第三号に規定する業務として行う防災街区整備地区計画の区域内の土地で都市機能更新用地に該当するものの買取りに必要な資金を貸し付ける地方公共団体への貸付制度が創設された(都市開発資金の貸付けに関する法律第一条第一項第三号、同条第二項)。これらに関しては、次の点に留意して、都市開発資金の一層の活用を図られたいこと。
1) 機構による土地の取得は、地方公共団体に代わり、その機能を補完して都市機能更新用地の買取りを行うものであり、また、機構は公益法人の監督権者としての都道府県知事及び指定権者としての市町村長が指導監督を行うものであることから、機構に対する都市開発資金の貸付けは地方公共団体を通じて行われるものであること。
2) 防災街区整備地区計画の区域内の土地については、早急な防災性向上のための整備用地としての取得の必要性が高いにもかかわらず、土地利用の細分状況、地域の開発ポテンシャル等からみて、再開発の事業化までにはある程度長期間保有することとなる可能性が高いことにかんがみ、特に当該都市機能更新用地貸付金及び機構に対する貸付金に係る土地の買取りが促進されるよう配慮して定める利率とされていること(同法第二条)。
3) 制度の運用については、別途通知する「都市開発資金貸付要領」によること。
(4) 都市計画法の一部改正
防災街区整備地区計画制度が創設されたことに伴い、都市計画基準(都市計画法第一三条)、都市計画の図書(第一四条)、開発許可の基準(第三三条)等の規定に、それぞれ防災街区整備地区計画に関する規定を追加したほか、市町村が防災街区整備地区計画について都市計画を決定する際の都道府県知事の承認事項を、一般の地区計画と同様の範囲に定めたので、周知徹底に努められたいこと。
また、第二種市街地再開発事業の施行区域要件が引き下げられ、施行区域面積一ヘクタール未満の事業も行われることとなった((五)参照)ことから、第二種市街地再開発事業に関する都市計画決定を、第一種事業と同様、一ヘクタールを基準に、都道府県知事決定と市町村決定に区分することとしたので、市街地再開発事業の都市計画決定に当たって留意されたいこと。
(5) 都市再開発法の一部改正
市街地再開発事業の施行区域等要件については、高度利用地区と同等の建築規制が行われている防災街区整備地区計画の区域が個人施行の第一種市街地再開発事業の施行地区要件及び市街地再開発事業の施行区域要件並びに市街地再開発促進区域の区域要件に追加された(都市再開発法第二条の二第一項、第三条及び第七条第一項)。また、第二種市街地再開発事業の施行区域要件については、面積要件が従前の一ヘクタール以上が〇・五ヘクタール以上に引き下げられるとともに、区域内の安全上又は防火上支障がある建築物が当該区域内のすべての建築物に対し、延べ面積の合計において一定割合を占める場合が追加された(同法第三条の二第二号)。これらに関しては、次の点に留意して、市街地再開発事業の一層の推進に努めること。
1) 防災街区整備地区計画の区域(特定建築物地区整備計画又は防災街区整備地区整備計画が定められていること、当該地区整備計画等において定められた高度利用地区について都市計画に定めるべき事項等に関し、建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づく条例で制限が定められていること等の条件に該当するものに限る。)内においても、市街地再開発事業を施行することができることとされたが、これにより、改めて高度利用地区の都市計画を定めることなく、防災街区整備地区計画の区域の整備手法として市街地再開発事業を実施することが可能となること。
2) 特定建築物地区整備計画において、間口率の最低限度及び建築物の高さの最低限度が定められている場合にあっては、高度利用地区について都市計画に定めるべき事項のうち、容積率の最低限度の定めを要しないこととされていること。これは、特定建築物地区整備計画において、建築面積の最低限度等に加え、間口率及び建築物の高さの最低限度が定められている場合には、建築物が満たすべき外形が定まり、延焼防止建築物として果たすこととなる延焼防止効果が担保されること等によるものであり、弾力的かつ多様な建築物等に関する制限を定めることができる防災街区整備地区計画の特性を活用することが可能となったものであること。
3) 本制度の適用に当たっては、条例において高度利用地区について都市計画に定めるべき事項等が定められていることが要件とされているので、都市計画担当部局と建築担当部局との間で一層の連携を図ること。
4) 第二種市街地再開発事業の施行区域の要件緩和については、前回面積要件が見直された昭和五五年以後の市街地における土地利用の細分化、権利関係の複雑化に対応するため、面積要件を更に引き下げるとともに、平成七年の阪神・淡路大震災において大規模延焼を生じた地域における従前建築物の状況等にかんがみ、密集市街地についての大震火災時の危険性や再開発の必要性をより適正に評価するため、安全上又は防火上支障がある建築物の数の割合だけではなく延べ面積の割合をも加味することにより、密集市街地において円滑に第二種市街地再開発事業の施行を可能にしようとするものであることを踏まえ、その積極的な活用を図ること。
5) 都市再開発法施行令(昭和四四年政令第二三二号)の一部改正により、安全上又は防火上支障がある建築物の当該区域内のすべての建築物に対する割合は、棟数及び延べ面積のいずれについても一〇分の七とされたこと(同令第一条の五第二項)。