河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)及び同法の附属法令は、昭和四十年四月一日から施行されることとなつたが、左記事項に御留意のうえ、同法の施行に遺憾なきを期せられるとともに、すみやかに関係事項を貴管下関係機関に周知方取り計らわれ、河川行政の運営の万全を期せられたく、命により通達する。
1 河川管理の基本方針について
河川の管理にあたつては、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号、以下「法」という。)の基礎理念である水系一貫管理の原則に従い、水系に係る河川における治水及び利水の行政の統一を確保するとともに、その公共用物としての性格にかんがみ、国民の生命及び財産を災害から防護することにより公共の安全を保持し、かつ、その適正な利用を推進し及び利水関係の調整を図ることによつて公共の福祉を増進するよう努めること。
2 一級河川の管理について
一級河川は、国土保全上又は国民経済上特に重要な水系に係る河川について指定されるものであるので、その管理を行なう者は、国家的、広域的見地に立つて国民全体の利益を増進するようにこれを管理する責務の存することを自覚し、管理の適正な執行に努めるべきものであること。
3 二級河川の管理について
(1) 河川法(明治二十九年法律第七十一号。以下「旧法」という。)が適用され、又は準用されていた河川は、河川法施行法(昭和三十九年法律第百六十八号。以下「施行法」という。)の規定により、本年四月一日現在において一級河川に指定されるものを除き二級河川となるものとされているが、これらの河川以外に公共の利害に重大な関係がある河川がある場合には、積極的に二級河川の指定を行なうこと。
(2) 二級河川については、その管理の責務は都道府県知事に存するものであるが、施行法の規定により、経過的に建設大臣がその管理の一部を行なう場合には、従来どおり、相互に緊密な連絡を保ち適正な管理の確保に努めること。
4 河川区域について
(1) 旧法においては、河川の区域は河川管理者の認定により定まるものとされていたが、法においては、社会通念上河川の区域であることの明らかである河状を呈している土地及び河川管理施設の敷地は、河川管理者の指定を要しないで河川区域として法の規定の適用を受けることとなるので、法の趣旨に従い、当該区域についての管理の徹底を期すること。
(2) 堤外の土地及びこれに類する土地についても河川管理上必要があると認められるものはすみやかに河川区域として指定し、管理の徹底を期すること。
5 河川保全区域について
河川保全区域の指定は、河岸又は河川管理施設の保全上必要がある場合においては積極的にこれを行なうものとし、その区域は、地形、地質等の状況を勘案して適正な範囲のものとすること。
6 河川予定地について
ダム、放水路等についての河川工事を行なう場合においては河川予定地の制度を積極的に活用し、河川工事の推進を図るものとすること。
7 河川の台帳の調整について
河川の台帳は、河川の現況を的確に把握し、かつ、河川の使用関係を明らかにすることにより、河川行政の適正な執行を図るため必要不可欠なものであるので、すみやかに調製すべきものであること。
8 工事実施基本計画の策定について
(1) 工事実施基本計画は、水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針を定め、河川工事の計画的な実施の基本となるべきものであるので、すみやかに策定するものとすること。
(2) 二以上の都府県にわたる水系に係る二級河川については、関係都府県知事が共同して一の工事実施基本計画を策定すること。
(3) 都道府県知事は、施行法の規定により建設大臣が工事等を行なう二級河川について工事実施基本計画を策定するときは、関係地方建設局長又は北海道開発局長と密接な連絡を保つこと。
9 河川の使用及び河川に関する規制について
河川の使用及び河川に関する規制については、河川の公共的性格にかんがみ、当該使用に係る事業の公益性、河川の保全及び既存の河川使用に対する影響等を総合的に考慮して河川の適正な利用を図るとともに、河川の管理に支障を及ぼす行為等の取締に万全を期すること。
なお、以下の諸点について、特に留意されたいこと。
(1) 水利使用について
新規水利使用と既存の河川使用との調和を図るため、水利調整の制度が新設されたので、この制度の趣旨を十分理解し、適切な処分を行なうことにより、水利使用秩序の維持に努めるとともに、水資源の合理的な利用と開発に資すること。
(2) 河川区域内の土地の占用について
河川区域内の土地の占用については、河川が公共用物として一般公共の用に供せられるべきものであることにかんがみ、公益優先の原則に従い、適切な処分等を行なうこと。
(3) 土石の採取について
土石の採取の許可については、河川の保全、骨材需要、骨材供給源の保存等を総合的に考慮して、河川ごとに砂利採取基本計画の樹立に努め、事業の協同化等業者の指導についても遺憾なきを期すること。
10 流水占用料等の徴収について
流水占用料等の徴収に関しては、左記によるものとすること。
(1) 国の行なう事業については、流水占用料等を徴収しないこと。
(2) 道路、公営の発電事業、水道事業及び工業用水道事業、かんがい並びに地方鉄道、軌道等の鉄道施設に係る流水の占用等についての流水占用料等の徴収に関しては、従前と同様の免除又は軽減の措置を講ずるものとすること。
(3) 上記のほか、公益性の高い事業のためにする流水の占用等に係る場合その他必要と認める場合については、流水占用料等を免除又は軽減することができるものとすること。
11 ダムに関する特則について
大規模な利水ダムについては、ダムに関する特則の制度を適切に運用することにより、ダムの設置による河川の従前の機能の減殺等の河川管理上の支障を生じないよう十分に措置すること。
12 洪水調節のための指示について
ダムを設置する者に対する緊急時の措置としての洪水調節のための指示を迅速かつ的確に行なうため、洪水調節の機能を有するダムの実態を把握し、洪水調節のための指示についてあらかじめ具体的方針を定めておくこと。
13 河川の監視について
すみやかに河川監理員を任命して河川監視を常時実施することにより、違法工作物に対する是正措置等を迅速に講ずるものとすること。
14 河川工事の施行等により取得した河川区域内の土地の帰属について
河川工事の施行等により取得した河川区域内の土地は、河川が国の公共用物であり、河川の管理は都道府県知事が行なう場合であつても国の事務であるので、国に帰属するものであること。なお、国に帰属したものについては、すみやかに国有に登記を行ない、かつ、管理に遺憾なきを期すること。
15 公有水面の埋立について
(1) 往来旧法が適用される河川の区域については公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)の適用はないものとされていたが、当該区域内の土地が国に帰属するものとされた結果すべての河川の区域について公有水面埋立法が適用されることとなつたものであること。
(2) 法が適用又は準用される河川の埋立については、公有水面埋立法の規定による免許又は承認のほか、埋立ての行為の実施について法の許可等を受けることを要するので、河川管理者及び公有水面埋立免許権者は、あらかじめ協議し、調整を図る必要があること。
(3) 公有水面埋立法の規定による竣功認可があつた場合は、法による廃川敷地等の処分は必要としないものであること。
16 関係行政機関等との連絡調整について
河川の管理はその関係する行政の分野が多方面にわたるため、これが実施にあたつては、関係行政機関、都道府県関係部局等と十分調整を図り、法の円滑な施行を図ること。