河政発第一〇五号
昭和四五年一〇月七日

各地方建設局河川部長・北海道開発局建設部長・各都道府県土木主管部長あて

河川局水政課長通達


河川法施行令の一部を改正する政令の運用及び解釈について(抄)


河川法施行令の一部を改正する政令(昭和四五年政令第二三五号。以下「令」という。)の施行については、昭和四五年九月一〇日付け建設省河政発第一〇〇号により河川局長名をもって通達したところであるが、同令の運用及び解釈にあたって、下記の事項に留意のうえ、遺憾のないようにされたい。

第1 令第一六条の二関係

本条にいう「いかだ」は、舟が引航し、又は人が添乗しているものをいう。
1 閘門関係

1 閘門を通航する舟又はいかだの長さ、幅、水面上の高さ若しくは喫水の最高限度又は閘門の通航方法は、閘門の特性、舟又はいかだの通航の状況等を勘案し、閘門の損傷を防止し、その機能を維持するために必要な事項を指定するものとするが、舟又はいかだの通航の便宜を可能な限り考慮すること。
2 舟又はいかだの通航の用に供されている水門でその通航の制限を行なう必要のあるものについては、すみやかに指定し、前記1に準じて必要な制限を行なうこと。

2 河川管理者の指定する水域関係

水域又は当該水域の通航方法の指定による舟又はいかだの通航の制限は、舟又はいかだを利用して行なわれる事業にできる限り支障を及ぼさないよう配慮して行なうとともに、これらの事業を行なうものに対し、制限の内容を周知徹底させること。
1 水域の指定

それぞれの指定の目的を達成するため舟又はいかだの通航を制限する必要のある水域を指定すること。ただし、漁港区域については、河川工事又は河川管理施設の操作に支障が生ずるおそれがある場合に限り指定すること。

2 通航方法の指定

舟又はいかだの通航すべき航路又は速度のほか、必要に応じ警笛の吹鳴等について必要な期間を限って制限するよう指定すること。ただし、河川工事に支障が生じないようにするため指定する水域においては操業中の漁船について速度の制限をしないものとし、河川が損傷し、又は他の河川の使用に著しい支障が生じないようにするため指定する水域においては一〇トン未満の小型漁船(漁業取締船を含む。)について通航方法を制限しないようにすること。

3 関係行政機関との連絡調整

1 内航海運業を営む者が利用する閘門又は水門について舟若しくはいかだの長さ等の最高限度又は通航の方法を指定するときは、関係地方海運局長(この指定が港則法の区域(港の区域から入出港する船舶が通常運航する港の周辺の水域を含む。)に係る場合にあつては、関係地方海運局長及び関係管区海上保安本部長。以下第一六条の二関係において同じ。)と、漁業又は林業を営む者が利用する閘門又は水門について舟又はいかだの長さ等の最高限度を指定するときは、関係都道府県の水産担当部局又は林産担当部局と協議するものとする。
2 漁業又は内航海運業を営む者が舟又はいかだで通航する水面について水域を指定し、又は当該水域について通航方法を指定するときは、関係都道府県水産担当部局又は関係地方海運局長と協議するものとする。
3 漁港区域について、河川工事の施行又は河川管理施設の操作に支障が生じないようにするため水域を指定しようとする場合においては、関係漁港管理者と協議するものとする。

第2 令第一六条の三関係

本条の許可は、期間を限って許可する等実態に応じて包括的な許可をすることができること。また、本条にいう「竹木」には、いかだで舟が引航し、又は人が添乗していないものも含むものであること。
1 許可を要しない竹木の流送

許可を要しない竹木の流送の指定は、地形、河川管理施設又は河川区域内に設置されている工作物の状況、河川の自由使用の状況等(以下「河川の状況等」という。)を勘案して、支障を生ずるおそれがないと認められる水域において行なわれる竹木の流送及び河川の状況等を勘案して一定の寸法に満たない竹木の流送であれば支障が生じないと認められる水域において行なわれる当該竹木の流送を指定すること。

2 竹木の流送の許可について

おおむね次の各号に例示する事項に該当しない場合には、許可すること。
1 出水時に流送するものであること。
2 流送区間内に河川トンネル、樋門樋管等の暗渠の区間が存在すること。
3 流送区間内に存在する河岸、河川管理施設又は許可工作物を損傷するおそれがあること。
4 流送区間内における河川工事に支障を生ずるおそれがあること。
5 流送区間内における河川管理施設の操作に支障を生じ、又は他の河川の使用に著しい支障を生ずるおそれがあること。
6 流送する竹木が流送区間内に停滞するおそれがあること。
7 流送する竹木が流送区間外に流失し、流送区間外において前記2から6までの一に該当するおそれがあること。

第3 第一六条の四関係

1 第一項第一号関係

法第二六条第一項又は第二七条の許可を受けて行なう行為は、本号に該当しないものであること。

2 第一項第二号関係

1 汚物には、ごみ、ふん尿、鳥獣の死体のほか燃えがら、汚でい等が含まれ、廃物には、建築廃材、産業廃棄物等が含まれるものであること。
2 汚水を樋門、樋管を通じて河川に排出する行為は、本号に該当せず、第一六条の五の規定による届出の対象となるものであること。
3 左記に掲げる行為は、「みだりに行なう行為」に該当しないものであること。

(1) 河川の流水により貯水池、取水口、沈砂池に運ばれてくる汚物の処理
(2) 道路事業その他の公共事業の施行に伴いやむを得ず行なわれる一時的な行為及び公共施設を管理し、若しくは利用する行為であって止むを得ないもの
(3) 河川区域内の農地において行なわれる肥料の散布、漁網に付着したゴミの除去、伐採した下枝の放置等農業、林業又は漁業を営むために通常行なわれる行為

3 第一項第三号関係

1 自動車を入れることを禁止する場合には、必要に応じ重量等により区分し、その荷重に耐えられない区域又はその通行により保全上支障が生ずるおそれがある区域を指定すること。なお、本号により指定した土地の区域以外の土地において自動車の乗入れを防止する必要がある場合には、従来の例により必要な措置を講じて差支えない。
2 自動車のほか、牛馬等の有蹄の動物を指定することとし、それらの動物を入れることを禁止する河川管理施設(原則として、堤防とする。)についておおむね左記に例示する場合に指定するものとする。

(1) 工事中(維持、修繕を含む。)
(2) 新築又は改築後三年を経過していないこと。
(3) 法面保護のために植えた芝が完全に定着していないこと。
(4) その他牛馬等を入れることにより法面の弱体化を助長するおそれのあること。

4 関係行政機関との連絡調整

第一六条の四第一項の規定に基づき、同項第三号の区域を指定する場合は、左記によること。
1 造船所の敷地として利用され、又は船舶運航事業若しくは船舶運航の事業を営む者がその事業のために使用している河川区域内の土地の区域を指定するときは、関係地方海運局長に協議すること。
2 畜産業が行なわれ、牛馬等が飼育されている土地について牛馬等を入れることを禁止する区域の指定をするときは、一級河川の直轄区間については、地方建設局が関係地方農政局畜産担当部局(北海道開発局の場合は、農林省畜産局)と、一級河川の指定区間及び二級河川については、都道府県建設担当部局が畜産担当部局と協議すること。

第4 第一六条の五関係

1 別表に掲げる法令による規制事務を行なう行政機関とは管理区間を通知する等密接な連絡を保ち、遅滞なく所要の通報を得るようにつとめること。また本条の施行に伴い、届出義務が課せられるものであることを汚水の排出を行なう者に対し周知徹底させること。
2 「五〇立方メートル」は、通常の量(稼働動八〇%以上の状態において排出される量の三〇日間の平均の量)について判断すること。
3 水力発電のために使用された水及び冷房用水は、汚水に該当しないものであること。
4 坑道の掘さく等により自然に流出してくる「坑水」は、これを利用したうえで廃棄する場合を除き、廃水に該当しないものであること。
5 農業の用排水路の管理者以外の者が、当該用排水路に排出する都市排水等の汚水については、水路管理者は、届出義務者に該当しないこと。
6 届出等の整理

届出又は通報を受理した場合には、汚水の排出状況が的確に把握しうるように整理しておくこと。

7 通報の方法等

(1) 地方海運局長が行なう通報は、毎月末に一括して地方建設局長を経由して行なうことができるものであること。
(2) 通商産業局長又は鉱山保安監督局部長が行なう通報は、おおむね二月以内になされるものであること。この場合において口頭による連絡もありうるものであること。
(3) 河川管理者は、通商産業省所管の工場、事業場等に係る汚水の排出に関する届出の内容をおおむね二月以内に関係通商産業局長又は関係鉱山保安監督局部長に連絡すること。
(4) 河川管理者が受理した届出又は通報の内容について関係行政機関の職員、農林漁業者等が閲覧を希望した場合には、これを認めるものとすること。

8 関係行政機関との連絡調整

河川管理者は、第一六条の五第一項の規定に基づき、五〇立方メートル未満の量を指定する場合には、一級河川の直轄管理区間については、関係通商産業局長若しくは関係鉱山保安監督局部長又は関係地方農政局長(北海道開発局の場合は農林本省)と、一級河川の指定区間又は二級河川については、関係通商産業局長若しくは関係鉱山保安監督局部長又は関係都道府県農林担当部局と協議すること。

第5 第一六条の五関係

1 緊急時の要件

(1) 異常な渇水等とは、次の各号の一に該当する場合をいうものとする。

一 河川の流量が当該河川の平均渇水流量以下に減少した場合
二 事故による汚水の流入その他突発的な事態が発生した場合

(2) 河川の管理に重大な支障を及ぼすおそれがある場合とは、河川の汚濁が進行し、次の各号に例示するような事態が生じた場合をいうものとする。

一 上水道等の原水として利用することが不可能となるおそれがある場合

上水道等の原水として利用することができるかどうかは、各施設の浄化能力に左右されるが、上水道の場合を例にとれば、原則としてBOD値が簡易水道の場合には四PPm以上、高級水道の場合には六PPm以上となつた場合とする。

二 シアン、クロムその他の劇毒物による汚染により上水道水源が汚染され人の健康の保持に影響が生ずるおそれがある場合
三 魚類等の異常斃死があった場合又は魚類等が急激に棲息できなくなるおそれがある場合
四 BOD値が二〇PPm以上となり悪臭が発生した場合環境の保全に影響が生じた場合

2 緊急時等の措置

異常な事態が生じた場合に汚水の排出者に求めるべき内容は、当該河川の水質の状況、利用の状況及び開発の状況を勘案し、特に上水道原水及び魚族の棲息を重視して河川の特性に応じて決定するものとする。この場合、河川ごとに設けた関係機関等による協議会であらかじめ汚濁の進行状況に応じて、次に例示するように段階的に減量すべき量を定めておく等適切な措置を講ずること。
(1) 異常渇水時の場合

あらかじめ、次の例のような段階別の措置を年度ごとに定め、状況に応じて適用するものとする。この場合、原材料の面で操業時期に制約のある季節的な事業については、その特殊事情を配慮し、シアン、カドミウム等の健康項目を含む排水については、その排水が人の健康に及ぼす影響を十分配慮して決定するものとする。
(A) 段階

主要な汚濁負荷工場について業種、排出量、排水の水質等に応じて定める割合の排水量の減量を求める。

(B) 段階

その他の排水者に排水規制の協力を求め、かつ、主要な汚濁負荷工場に対し、業種、排出量、排水の水質等に応じて定める割合の排水量の減量、排水の停止等を求める。

(2) 突発的な事態が発生した場合

排水者に対し、異常水質の状況を示し、適正な排水規制を求める。

3 一般への周知と関係行政機関への通報

異常な渇水等が生じた場合には、その旨を流域主要汚濁源地域の住民に対し、ラジオ・テレビ等の報道機関等を通じて周知徹底するとともに、関係行政機関等に通報する。

4 1の緊急時の要件及び2の緊急時において求める措置の内容を、汚水を排出する者に周知徹底させること。
5 河川に流入する水路についても緊急時には河川管理者が当該水路管理者に協力を求め、当該水路管理者は当該水路への排出者に排出量の減量等の措置を求めることとすることが望ましいので、前記2の協議会に当該水路管理者を加え、所要の措置を定めておくこと。
6 河川管理者が通商産業省所管の工場、事業場に対し、汚水の排出量の減量その他の必要な措置を講ずべきことを求める場合には、関係通商産業局長又は関係鉱山保安監督局部長に協議するものとする。
7 河川管理者が病院に対し、緊急時の措置を求めようとするときは、緊急性の度合に応じ、当該病院を所管する関係行政部局又は関係行政機関に協議することとし、当該病院の医療に支障をきたさないように配慮すること。
8 緊急時の措置を求める場合には、公害防止に関する条例による類似の措置を尊重して行なうこと。

第6 第一六条の七関係

ダム設置者は、貯水池等に河川の流水により運ばれ浮遊している竹木等の漂流物の所有者、管理者又は占有者に該当しないものであること。

第7 第一六条の八関係

1 本条に規定する「堆積」は多数を集合しておくことも含むものであること。
2 法第二四条に規定する河川区域内の土地において物件を堆積し、又は設置する場合は、本条のほか同条の許可を要すること。また法第二六条の許可を受けて工作物を設置する場合は、本条の許可を要しないこと。
3 本条の許可は、期間を限つて許可する等実態に応じて包括的な許可を与えることができること。
4 許可を要しない行為

(1) 「日常生活のために必要な行為」とは、日常生活において通常行なわれる軽易な行為をいうものであること。
(2) 「農業又は漁業を営むために通常行なわれる行為」とは、農具、漁具、農作物等の洗浄又は堆積等の農業又は漁業に伴つて通常行なわれる軽易な行為をいうものであること。
(3) 砂利採取法の認可採取計画に基づいて行なわれる行為については、河川管理者の行なう採取計画の認可が本条の許可とみなされること。
(4) 本条ただし書の行為を指定する場合には、下記の行為が許可を要しない行為となるように措置すること。

(1) 林業のため通常行なう行為(竹木の堆積を除く。)並びに道路事業その他の公共事業の施行に伴い、やむを得ず行なわれる一時的な行為及び公共施設を管理し、若しくは利用する行為であってやむを得ないもの
(2) 河川の流水により貯水池、取水口等に運ばれてくる竹木を貯水池等の機能の保全のため引き上げ、河川区域内の土地に堆積する行為

5 許可の基準

物件の洗浄については、流水の正常な機能の維持が不可能となる場合又は他の河川の使用に支障を及ぼす場合以外は許可し、物件の堆積又は設置については、治水上支障を及ぼすおそれがある場合又は河川を汚損する場合以外は許可すること。

6 関係行政機関との連絡調整

港湾区域を含み、又は港湾区域若しくは海岸保全区域に隣接する河川について許可を要しない行為を指定しようとするときは、関係地方海運局長に協議すること。

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