建設省河政発第五号・建設省河計発第三号・建設省河環発第四号・建設省河治発第二号・建設省河開発第五号
平成一〇年一月二三日

各地方建設局河川部長・北海道開発局建設部長・沖縄総合事務局開発建設部長・各都道府県土木主管部長あて

建設省河川局水政課長・建設省河川局河川計画課長・建設省河川局河川環境課長・建設省河川局治水課長・建設省河川局開発課長通知


河川法の一部を改正する法律等の運用について


河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六九号)、河川法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成九年政令第三四一号)、河川法施行令の一部を改正する政令(平成九年政令第三四二号)及び河川法施行規則の一部を改正する省令(平成九年建設省令第一八号)の施行については、「河川法の一部を改正する法律等の施行について」(平成一〇年一月二三日建設省河政発第四号各地方建設局長、北海道開発局長、沖縄総合事務局長及び各都道府県知事あて河川局長通達)により通達されたところであるが、その運用に当たっては、下記の事項に留意し、遺憾のないようにされたい。
(なお、関係事項を関係市町村長に周知方取り計らわれたい。)

一 河川環境の整備と保全について

1 河川環境とは、河川区域内の「環境」であり、河川の自然環境と河川と人との関わりにおける生活環境を指すものであり、具体的には、以下のような内容であること。

イ 河川の水量及び水質
ロ 河川区域内における生態系
ハ 河川区域内におけるアメニティ、景観及び親水

2 河川環境の整備と保全の対象は、河川区域内の環境であり、具体的には以下のような内容であること。

イ 河川環境の整備とは、自然を活かした川の整備、水質の浄化、親水性の確保等により積極的に良好な河川環境を形成すること
ロ 河川環境の保全とは、水質の維持、優れた自然環境や景観の保全、河川工事等による河川環境に与える影響を最小限度に抑えるための代償措置等により良好な河川環境の状況を維持すること

二 河川整備基本方針及び河川整備計画について

1 河川整備基本方針の策定について

1) 河川整備基本方針で定める内容

河川整備基本方針では、その管理する河川について、河川の整備(河川工事及び河川の維持)を行うに当たっての長期的な基本方針及び河川の整備の基本となる事項を定めるものであり、具体の施設の整備内容等については、この河川整備基本方針に沿って策定される河川整備計画で住民等の意見を聴取して定めること。

2) 河川整備基本方針で定める事項

河川整備基本方針の「当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針」は以下のことを踏まえ策定すること。
当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針の内容は、当該河川の洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項並びに河川環境の整備と保全に関する事項であること。
河川環境の整備と保全に関する事項は、河川法施行令(昭和四〇年政令第一四号。以下「令」という。)第一〇条第三号に規定する事項を総合的に考慮した上で、当該河川の河川環境の特性を踏まえて記載すること。

2 河川整備計画の策定について

1) 河川整備計画の策定単位

河川整備計画は、河川整備基本方針に沿って計画的に河川の整備を実施すべき区間について定めるものであり、その策定単位は、一連の河川整備の効果が発現する単位として原則以下のとおりとすること。
イ 一級河川の指定区間外は、水系ごとを基本とすること。
ロ 一級河川の指定区間は水系ごと又は本川及び一次支川の流域ごと、二級河川は概ね水系ごとを基本とし、ダム等の洪水調節施設の設置箇所も含めること。
ただし、河川の状況に応じ上記単位によらないことができるものであること。
また、一級河川の指定区間及び二級河川において左右岸の河川管理者が異なる区間では共同して一の河川整備計画を策定すること。

2) 河川整備計画で定める事項

河川整備計画で定める事項及び策定の考え方は以下のとおりとすること。
イ 計画対象区間
ロ 計画対象期間

河川整備計画で定める整備内容の計画対象期間は、一連区間において河川整備の効果を発現させるために必要な期間とし、おおよそ計画策定時から二〇〜三〇年間程度を一つの目安とすること。

ハ 河川整備計画の目標に関する事項

河川整備計画の目標に関する事項の内容は、河川整備計画で対象とする期間における、洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項並びに河川環境の整備と保全に関する事項であること。
なお、これら三項目は互いに密接に関連していることから、項目の立て方は、各河川ごとの状況に応じてそれぞれ設定するものであること。
(1) 洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項

令第一〇条第一号に規定する事項を総合的に考慮した上で、当該区間の氾濫区域の人口、資産、上下流及び他河川の整備状況等を踏まえ、バランスのとれた目標を定めること。

(2) 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項

令第一〇条第二号に規定する事項を総合的に考慮した上で、当該区間の河川の利用状況、正常流量の確保状況等を踏まえて、当面確保する正常流量その他必要な事項を定めること。

(3) 河川環境の整備と保全に関する事項

令第一〇条第三号に規定する事項を総合的に考慮した上で、当該河川の河川環境の特性を踏まえて、当面の期間における河川環境の整備と保全に関する事項を定めること。

ニ 河川の整備の実施に関する事項

地域の意見を踏まえ、地域の実情に応じた河川整備を実施するため、計画対象期間中の個々の河川工事並びに河川の維持について令第一〇条に規定する事項を総合的に考慮した上で具体的に定めることとすること。
なお、令第一〇条の三第二号イにおいて、具体の河川整備に当たっての詳細な断面形を定めること。

3) 河川整備計画の作成に当たっての留意事項

河川整備計画の策定に当たっては、当該計画が地域住民等に十分に理解され、地域の意見を踏まえたものとすることが重要であることから、「2)河川整備計画で定める事項」の記載に当たっては、住民等に分かりやすい内容となるよう工夫を行うとともに、当該河川並びに流域の特性、現状での課題等を記載し、当該計画に定める河川整備の必要性、考え方が分かるようにすること。
また、河川整備計画の策定に際しては、策定に当たっての根拠となったデータ等の情報公開に努めるとともに、必要に応じ、河川整備による効果、河川整備計画で定める目標を達成するための代替案との比較等を説明すること。

4) 河川整備計画の策定の手続について

イ 河川整備計画の策定に当たって、規模が小さい河川で小規模な工事しかなく河川への影響が小さい場合や計画策定前より地域の要望が出されており、改めて住民の意見聴取等を行う必要がない場合等があることから、河川法(昭和三九年法律第一六七号。以下「法」という。)第一六条の二第三項及び第四項において「必要があると認めるときは」としたものであるが、両項の規定を設けた趣旨を踏まえ、適切な運用を図ること。
ロ 法第一六条の二第四項の関係住民とは、河川整備計画が対象とする区間と関係のある地域の住民であり、主として、当該河川の流域や洪水の氾濫想定地域内の関係者が想定されるが、個々の河川の特性、河川整備内容等を踏まえ、適切に判断すること。

また、具体の必要な措置としては、公聴会、説明会の開催等、河川の規模、地域の実情等を踏まえ、適切に実施すること。

5) 河川整備計画の変更について

河川整備計画は、流域の社会情勢の変化や地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものであること。

3 河川整備基本方針及び河川整備計画の公表について

河川整備基本方針は河川の整備の基本となるべき事項を定めるものであり、また、河川整備計画は当該河川の具体的な河川整備の内容を明らかにするものであることから、例えば、河川整備基本方針及び河川整備計画を決定又は変更した旨を官報又は公報に掲載することや、本文を事務所等へ備え置く等により、広く一般に周知されるよう適切に措置すること。

三 樹林帯制度の創設について

1 樹林帯制度について

樹林帯は、法第三条に規定するように「堤防又はダム貯水池の治水上又は利水上の機能を維持し、又は増進する効用を有するもの」であるが、具体的には次のような河川管理上の効用を有するものであること。
1) 堤内の土地に堤防に沿って設置する樹林帯にあっては、越水による洗堀の防止及び氾濫流による破堤部の拡大の防止による堤防の機能の維持・増進を図ることを通じ、洪水による災害の発生を防止・軽減すること(なお、堤防に沿って設置する樹林帯は利水上の機能を有するものではない)。
2) ダム貯水池に沿って設置する樹林帯にあっては、ダム貯水池への濁水の流入を防止することにより貯留水の汚濁を防止すること及び土砂の流入を防止することにより貯水池の堆砂を防止すること。

また、樹林帯は樹林により構成される河川管理施設であるため、河川管理施設の土地の区域界が従前の河川管理施設とは異なり外形上明確でないため、樹林帯の敷地である土地の区域(樹林帯区域)を指定し、公示することとするとともに、通常冠水しない堤内地等にある樹林帯については、現行の河川区域内における工作物の新築等の許可に係る規制のうち、樹林帯の機能を確保する上で必要のないものについては許可を受けることを要しないものとしたものであること。

2 樹林帯の整備について

1) 堤防に沿って設置する樹林帯は、破堤・氾濫により著しい被害を生ずるおそれのある場合に、越水時における洗堀の防止による破堤の防止及び破堤時において氾濫流による破堤部の拡大の防止を図るために設置するものであること。また、ダム貯水池に沿って設置する樹林帯は、従前より行われている法面保護工等に代替する工法の一つとして、樹林の整備によりダム貯水池への濁水や土砂の流入の防止を図るために設置するものであること。
2) 河川法施行規則(昭和四〇年建設省令第七号。以下「規則」という。)第一条第一号の「おおむね二〇メートル以内」及び同条第二号の「おおむね五〇メートル以内」とは、いずれも土地の勾配を考慮した斜距離であること。
3) 法第六条第三項にある「その管理する」とは、権原を有し又は法第三条第二項ただし書により権原に基づき管理する者の同意を得て管理するものであり、原則として、権原の取得は買収によること。

従って、樹林帯の整備は、既存の樹林地につき、それを買収し、又は樹林帯として管理することにつき権原に基づき管理する者の同意を得る場合と、裸地等の無樹林地を買収又は借地し、河川管理者が植林を行う場合があること。

4) 樹林帯は堤防又はダム貯水池に隣接して設置するものであること。なお、ダム貯水池に沿って設置する樹林帯は、道路(農道又は林道を含む)が規則第一条第二号の土地の範囲内にある場合は、道路の下方部のみに設置するものとすること。また、遊歩道等の小規模な施設以外は堤防又はダム貯水池と樹林帯の間に置かないこと。

3 樹林帯区域の指定及び公示について

1) 樹林帯区域の指定をしようとする土地の区域が既に河川保全区域に指定されている場合にあっては、樹林帯区域の指定と併せて当該河川保全区域の指定の廃止を行うものとすること。
2) 樹林帯区域(特定樹林帯区域を含む。以下4)及び5)において同じ。)の指定の公示が行われたときは、速やかに、規則別記様式第一河川現況台帳調書(丙の3の5(特定樹林帯区域にあっては、丙の3の6))及び河川現況台帳の図面に樹林帯区域の区間及び幅がわかるよう必要な記載を行うこと。
3) 樹林帯区域は、現地における当該区域の範囲等を明らかにするため、樹林帯区域の位置、範囲及び規制行為等を掲示する立札を現地に設置すること。
4) 地方建設局河川部長又は北海道開発局建設部長は、指定区間外の一級河川について、樹林帯区域を指定し、又はこれを変更し、若しくは廃止する必要があると認めるときは、建設省河川局水政課長に対し、次に掲げる図書を添付して、その旨を申し出ること。

イ 公示案
ロ 位置図
ハ 縮尺二五〇〇分の一の実測平面図
ニ 樹林帯の事業計画の概要
ホ その他参考となるべき事項を記載した図書

5) 不動産登記法(明治三二年法律第二四号)第九〇条が改正され、土地又はその一部が樹林帯区域となった場合には、登記簿上表題部に、河川区域内である旨の表示に加え、樹林帯区域内の土地である旨の表示も記載されることとされたところである。

このため、樹林帯区域の指定を行ったときは、別途送付する照会回答に従い、不動産登記法第九〇条第一項及び第二項の規定に基づき、遅滞なくその旨の登記を嘱託すること。
なお、樹林帯区域の変更又は廃止により土地の全部又は一部が樹林帯区域内の土地でなくなったときも、別途送付する照会回答に従い、同条第三項の規定に基づき、遅滞なく当該登記の抹消を嘱託すること。

4 樹林帯区域の許可関係について

1) 法第二六条第一項に基づく工作物の新築又は改築の許可について

特定樹林帯区域における工作物の新築等の許可に当たっては、次に掲げる事項について審査すること。
イ 当該工作物の荷重により堤防の荷重バランスを崩さないものであること。
ロ 基盤漏水の原因とならないものであること。
ハ 止水性のある工作物にあっては、堤防内の浸潤面の上昇の程度を把握し、堤防の法面の崩壊の原因とならないこと。

2) 法第二七条第一項に基づく土地の堀削等の許可について

イ 樹林帯区域における土地の堀削等の許可に当たっては、当該行為が、堤防に沿って設置された樹林帯にあっては氾濫流の、ダム貯水池に沿って設置された樹林帯にあっては表層水又は伏流水の変流等の原因となること等により、樹林帯の機能に悪影響を及ぼすおそれのないことを審査し判断すること。
ロ 特定樹林帯区域における土地の堀削等の許可に当たっては、上記イに加え、次に掲げる行為の形態に応じ、それぞれ次の事項について審査すること。

(1) 堀削及び切土について

a 当該堀削及び切土により堤防の荷重バランスを崩さないものであること。
b 基盤漏水の原因とならないものであること。

(2) 盛土について

a 堤防法尻に滞水することのないよう雨水等の排水に考慮したものであること。
b 河川管理施設の維持管理上支障がないこと。

3) その他

樹林帯区域内の土地における工作物の新築、改築及び除去は、法第二六条第四項により許可を要しないものとされているが、樹木の伐採を伴うものは、法第二七条第一項の許可が必要であること。
また、工作物の新築若しくは改築のためにする土地の堀削又は工作物の除却のためにする土地の堀削で当該堀削した土地を直ちに埋め戻すものであっても、樹木の伐採を伴うものは、法第二七条第一項の許可が必要であること。

四 渇水調整の円滑化のための措置について

1 渇水時における水利使用の調整について

渇水調整の円滑化を図るという本条の趣旨に鑑み、法第五三条の「水利使用者」には、実質的に渇水調整を行う能力を有する、水利利用者から渇水調整を任されている者を含めて取り扱うこと。

2 渇水時における水利使用の特例について

1) 渇水時における水利使用の特例を設けた趣旨

渇水時の水の融通で水利使用許可の変更を必要とするもののうち、水利使用が困難となった者が、他の水利使用者の許可に係る水利使用を行わせてもらうものは、既に審査済みである当事者の水利使用許可水量の範囲内で行われるものであること及び渇水時の水の融通は緊急的な措置であり、また、関係水利使用者間の合意形成が図られた上で行われている実態を踏まえ、法第二三条及び第二四条の特例として水融通の必要性に限った簡易な審査手続を設けるとともに、水利調整手続、特定水利使用の許可等に際して必要な関係行政機関の長との協議及び関係都道府県知事の意見聴取を不要としたものであること。また、同様の観点から、水利使用の特例は、水利使用の目的が異なる水利使用者間においても適用できることとしていること。

2) 水利使用の特例の承認について

河川管理者は、次の各号に掲げる事項が満たされる場合には、直ちに法第五三条の二第一項の承認を行うこと。
イ 水利使用の特例を受けようとする水利使用者が申請に係る水利使用の特例に同意していること。
ロ 水利使用の特例の期間が異常渇水時に限ったものであること。
ハ 水利使用の特例に係る水量、取水方法等が、水利使用の特例を行わせようとする水利使用者が受けた法第二三条及び第二四条の許可に基づく水利使用の範囲内であること。
ニ 水利使用の特例に係る水量が、水利使用の特例を受けようとする水利使用者が取水を困難としている量の範囲内であること。

3) 水利使用の特例を終了する場合の届出等について

法第五三条の二第二項の届出は、同条第一項の承認を受けた者の氏名、住所、承認番号及び当該承認に係る水利使用の特例を行わないこととした意思が明確に把握できるよう、必要に応じて書面の提出を求めることとし、同項の承認をする際に届出の方法を申請者に知らしめること。また、同項の承認に係る期間が満了するまでに水利使用の特例の更新等の申請を行わない者に対しては、当該期間の満了後、水利使用の特例が終了した旨を通知すること。

4) 承認の取消について

法第五三条の二第三項に基づく同条第一項の承認の取消は、同条第二項の規定による届出があった場合を除き、渇水が解消し、河川の流況やダム等の貯水量が回復して水利使用の特例を受けている水利使用者の法第二三条の許可に基づく水利使用が困難でなくなった場合に行うこととし、この場合、速やかに、当該水利使用者に対し水利使用の特例を取り消した旨を通知すること。

5) その他

水利使用の特例を行わせる者に対して水利使用の許可を行っている河川管理者と、水利使用の特例を受ける者に対して水利使用の許可を行っている河川管理者が異なるときには、法第五三条の二第一項の承認及び第三項の取消に当たり、相互に必要な連絡調整に努めること。

五 水質事故処理等の原因者施行・原因者負担制度の創設について

1 河川の汚損について

「河川の汚損」とは、水質事故等により、河川の流水、河川敷等を汚すことであり、具体的には、例えば、施設や船舶等の故障、事故等の突発的な事態により、原油、重油、灯油などの油や有害物質等が河川に流入し、河川の流水を汚したり、産業廃棄物、建築廃材、船舶、車両等の不法投棄により、河川敷を汚すことであること。

2 河川の維持について

「河川の維持」とは、河川又は河川管理施設の原状を良好な状態に保存する行為であり、具体的には破船、流木、ごみ、投棄車両等の障害物の除去、水質事故の応急措置等であること。
水質事故の応急措置としては、流出した油、酸・アルカリ等の拡散、流下、遡上等を防止するためのオイルフェンス、オイルマット等の設置、化学処理等で、いずれも河川の原状を良好な状態に保全するために行うものであること。

3 水質事故時の関係者への連絡通報について

河川を汚濁する行為があったことを知ったときには、都道府県環境担当部局等関係行政機関及び利害関係を有すると認められる関係河川使用者に対し速やかに通報するよう周知してきたところであるが、今後とも関係機関と十分な連絡通報体制の確保を図り、流水の清潔の保持の観点から適切に対処すること。
なお、連絡通報体制の確保に当たっては、既存の水質汚濁防止連絡協議会等の組織を活用すること。

4 原因者負担金について

原因者は、自らが生起させた水質事故等の結果に対して責任を有するものであり、衡平の原則から水質事故等の処理に要した維持行為についての費用負担を原因者に請求するものである。
したがって、原因者が個人、企業、法人を問わず、費用請求ができるものとする。なお、大震災等通常想定し得ない天災や第三者の犯罪行為により水質事故等が発生した場合で、原因となった施設の管理者に帰責理由が存しない場合においては、費用請求の対象とはならないものとすること。
原因者負担の範囲は、業者に依頼した場合の処理に要した経費及び水質分析費、処理に要した資材費等水質事故等の処理に直接要した維持行為に係る費用とすること。

六 不法係留船舶等の対策について

1 対象となる工作物について

不法係留船舶の除却については、法第二四条及び第二六条等の規定違反の係留施設に係留されている船舶及び法第二四条の規定違反の船舶に対して行われるものであり、従来法第七五条第一項本文の「その他の措置」として対応してきたところである。今回、法第二四条の規定違反の係留施設に係留されている船舶の除却については、当該係留施設の除却と併せて当該船舶が除却されている実態を踏まえて、本項柱書きの「工作物の改築若しくは除却」の次に括弧書きを追加したものである。したがって本項本文の内容は、本文全体として改正前と変わらないものであること。
本項第一号の改正は、従来「工作物等」として、なんら無定義で使用していた用語について、これは工作物と土地を指すものであったが、第四項以下は工作物についてのみ規定されることに伴い、工作物と土地として明記したものであること。
なお、対象となる「工作物」には、土地に定着しない物件も含まれ、その代表である「船舶」を、不法係留船舶対策についての第四項以下の改正に伴い、確認的に明記したものである(当該「工作物」には、法第二四条及び第二六条等の規定違反の係留施設に係留されている船舶及び法第二四条の規定違反の船舶を含む。)。

2 警察署長への通知等について

不法係留船舶等として河川管理者が除却・保管したものについても、その所有者等は遺失物として警察署に照会することが予想される。こうした状況に対応するため、河川管理者は、当該不法係留船舶等を除却・保管した場合には、当該不法係留船舶等が放置されていた場所を管轄する警察署の署長に対し、当該不法係留船舶等に係る令第三九条の二に掲げる事項を通知すること。

3 保管場所の確保等について

河川管理者は、不法係留船舶等を除却し、又は除却させた場合には、善良な管理者の注意をもって保管する義務を負うこととなる。従って、各河川管理者は、不法係留船舶等を保管する場合には、当該不法係留船舶等の種類に応じて必要とされる保管場所で、適切な方法により保管すること。
ただし、特別の施設において保管しなければ滅失・破損するような工作物については、これを保管せず、売却してその代金を保管することができること。

4 公示等について

1) 公示の方法

イ 不法係留船舶等の公示は、当該不法係留船舶等を保管した河川管理者の事務所において掲示板等を活用して行うが、同時に出張所にも通知し、問い合わせ等に対応できるようにすること。

なお、令第三九条の三第一項では、掲示期間を保管を始めた日から起算して一四日間としているが、この期間を過ぎても弾力的に掲示を行い、早期の返還に努めること。

ロ このほか、規則別記様式第一六の三に定める様式の保管工作物一覧簿を河川管理者の事務所に備え付け、閲覧の希望者がある場合には閲覧に供すること。
ハ 前記イの公示の期間(一四日間)が満了しても、当該不法係留船舶等の所有者等から連絡がなく、これを返還することができない場合には、以下の事項を留意の上、官報、関係都道府県の公報又は新聞紙に掲載を行うこと。

(1) 公示は原則として地方建設局長及び北海道開発局長(以下「地方建設局長等」という。)にあっては官報に、都道府県知事にあってはその統括する都道府県の公報に掲載して行うこととするが、官報、関係都道府県の公報又は新聞紙のいずれに掲載するかについては、評価額の大小など個別事情に応じて合理的に判断すればよいこと。
(2) また、官報等に掲載する場合の公示内容は、名称又は種類、形状、数量、放置されていた場所、除却した日時、保管の場所、問い合わせ先、その他必要と認められる事項とすること。
(3) 地方建設局長等は、官報により公示を行おうとするときは、官報報告主任(建設大臣官房文書課長)にその手続をとることを要請すること。

また、地方建設局長等以外の河川管理者は、官報により公示を行おうとするときは、各都道府県所在地の官報販売所に、所要の事項を記載した書面を提出すること。

2) その他

公示以外にも、不法係留船舶の速やかな返還を行うため、状況に応じ、通常の管理体制で可能な範囲で不法係留船舶の所有者等の氏名及び住所を早期に確認するよう努めること。

5 不法係留船舶等の売却等について

1) 売却できる場合の要件

河川管理者は、その保管した不法係留船舶等が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又は三月を超えて保管を行っている場合で、不法係留船舶等の評価額に比してその保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、当該不法係留船舶等を売却し、その売却した代金を保管することができるが、この場合の考え方は以下のとおりであること。
イ 「滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき」とは、通常の管理による保管を継続する場合に、工作物の価値が著しく減少するおそれがあるときをいうものであり、例えば、不法係留船舶に積み込まれた生鮮野菜や生鮮魚介類であるような場合をいうものであること。

なお、鉄骨等を屋外の資材置場等で保管する場合に、傷みが生じることをもって直ちに滅失・破損するおそれがあるとは認められないこと。

ロ 「保管に不相当な費用を要するとき」とは、その時点までの保管費用又は手数と当該不法係留船舶等とほぼ同質のものを購入するとした場合の価額を評価し、前者が大きいことが明らかなことをいい、「不相当な手数を要するとき」とは、保管に特別の勤務や人数を必要とする場合をいうこと。
ハ 不法係留船舶等の価額の評価は、当該不法係留船舶等の購入又は製作に要する費用、当該不法係留船舶等の使用年数、損耗の程度等を総合的に勘案して河川管理者が行うこととなるが、必要に応じて専門的知識を有する者の意見を聴くことができるものであること。

なお、専門的知識を有する者の意見を聴いた場合の査定料等の費用は、不法係留船舶等の所有者等の負担となること。

2) 売却の方法

イ 一般競争入札に付すか指名競争入札に付すかは、工作物の種類、その評価額、売却手続に要する費用等を勘案して決定すること。
ロ 令第三九条の五に規定する随意契約による場合とは、具体的には、例えば、入札によったのではその間に物件の価値が著しく減少するおそれがある場合であり、不法係留船舶に積み込まれた生鮮野菜や生鮮魚介類等がこれに当たるほか、入札の手続に要する費用に比して予定入札価格が低額である場合等が考えられること。

3) 廃棄できる場合

河川管理者は、不法係留船舶等の買受人がない場合において、その価額が著しく低いときは、これを廃棄することができるが、この場合、「価額が著しく低いとき」とは、河川法上不法係留船舶等の廃棄を認めた趣旨にかんがみて、当該不法係留船舶等の保管を続けることが明らかにその占有者の利益に反する場合をいうこと。なお、現実に売却手続を経なくても、もし売却をすればそれに要する費用が予定価格を上回ることが明らかである場合には、廃棄することができるものであること。

6 不法係留船舶等の返還について

1) 所有者等から返還の申出があった場合には、身分証明書、自動車運転免許証、保険証等によりその氏名及び住所を確認し、不法係留船舶等に氏名等の記載があればこれと照合するとともに、不法係留船舶等の種類、形状その他の特徴を申し立てさせ、実物と符号することを確かめる等、所有者等であることの確認に万全を期すること。
2) 返還に当たっては、除却、保管、売却、公示等に要した費用は所有者等の負担となり、後日連絡するところに従って納付する旨知らせておくこと。同時に、規則別記様式第一六条の四に定める受領書に必要事項を記入、署名等をさせること。
3) 保管工作物一覧簿にも返還済みである旨を記載し、後日照会のあった場合のために備えておくこと。

七 河川の台帳(河川現況台帳及び水利台帳)の磁気ディスク化について

1 河川の台帳を磁気ディスクをもって調製、保管する場合の留意事項等について

1) 磁気ディスクについては、令第四条第二項において、これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含むとされているが、これは磁気ディスクと同様に電子的又は磁気的方法によりデータを記録する物で、その記録の保存性が客観的技術水準により保障されているものをいい、磁気テープ、カートリッジ、光ディスク等がその例であること。
2) 河川の台帳を磁気ディスクをもって調製、保管することは、河川の台帳の一部のみについてもできること。ただし、河川の台帳の一部について磁気ディスクをもって調製する場合には、例えば、河川現況台帳ごと又は水利台帳ごと、台帳の調書ごと又は台帳の図面ごと、若しくは、河川の管理区間ごとといった、磁気ディスク化の効果が発現する単位で行うことが望ましいこと。
3) 河川の台帳を磁気ディスクをもって調製、保管する場合には、滅失、き損の防止のための必要な措置を講じるとともに不測の事態に備えて、同一事項の記録を備え、保管すること。磁気ディスクを規則第四条の三第二項の規定に基づき河川管理者の事務所以外の場所に備える場合においては、建設大臣の定める方法によること。
4) 河川の台帳に係る内容についての変更があった場合には、変更内容を的確に把握し、あらかじめ電子計算機の操作担当者を定めるなどにより、河川の台帳(磁気ディスク)の更新、修正等が迅速に行えるようにしておくこと。
5) 河川の台帳を磁気ディスクをもって調製、保管した場合には、法第一二条第四項の規定に基づく閲覧は、規則第四条の二第三項の規定に従って、磁気ディスクに記録されている事項を紙面又は入出力装置の映像面(コンピューターの画面)に表示する方法により行うこと。

2 河川の台帳の磁気ディスク化の推進について

河川現況台帳の磁気ディスク化については、現在地方建設局及び北海道開発局で行っている水文水質データベース及び河川地理情報システムの整備と合わせて行うこととし、整備の積極的な推進を図ること。
また、水利台帳の磁気ディスク化についても、整備の積極的な推進を図ること。

八 動植物の生息地等を保全するための自動車の乗入れ等の規制について

1 指定基準について

動植物の生息地又は生育地として特に保全する必要がある区域で、自動車を乗り入れること等により、動植物の生息地又は生育地が回復できないほどの影響が生じると認められる場合において、指定するものとすること(以下指定された区域を「生息・生育地保全区域」という。)。

2 指定する場合の留意事項について

1) 「河川環境管理基本計画の策定について」(昭和五八年六月二八日付け建設省河計発第五二号)に基づき河川環境管理の協議会等が設置されている場合には、当該協議会の意見を聴いた上で生息・生育地保全区域を指定すること。
2) 生息・生育地保全区域の指定は、既往文献、河川水辺の国勢調査等を活用し、動植物の生息地又は生育地の状況を十分に確認した上で行うこと。

その範囲は、動植物の生息地又は生育地を保全するのに必要な範囲の土地となるようにすること。

3 指定する区域の公示等について

生息・生育地保全区域を指定する場合には、規則第一八条の六により当該区域を明示して、地方建設局長等にあっては官報に、都道府県知事にあってはその統括する都道府県の公報に掲載して行うほか、生息・生育地保全区域の周辺の見やすい場所に掲示して行うこととされたところであるが、その表す範囲が明確なものとなるよう公示すること。この場合、生息・生育地保全区域を平面図に明示して行う方法(指定しようとする区域を着色することにより範囲を明確に示す方法)が望ましいこと。
また、一級河川の指定区間外の区間においては、官報に掲載して公示することとされていることから、公示する必要のある区域について、河川局水政課を経由して官報報告主任(建設大臣官房文書課長)にその手続をとることを要請するよう準備等を進めること。

九 二級河川に係る建設大臣の認可の範囲の縮小について

法第七九条第二項及び令第四六条において、改正前の河川法及び河川法施行令においては、工事実施基本計画において定められた河川の総合的な保全と利用に関する基本方針に沿つて計画的に実施すべき改良工事について建設大臣の認可を必要としていたが、今回の改正では、地方における施工実績や地方分権の主旨を踏まえ、施設の安全性について高度な技術的な観点から認可が必要なダム及び地下に設ける河川管理施設(水圧管路)に限定するものであること。

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