河川の管理に関する事務は、関係する行政の分野が多方面にわたることから、貴殿におかれてもこれを十分踏まえ、関係行政機関等との連絡調整等を十分図り、また、下記事項に留意し、円滑かつ適正な河川の管理に努めることとされたい。
一 河川整備基本方針及び河川整備計画について
(河川整備基本方針の策定手続等)
1 河川整備基本方針を定め、又は変更しようとする際には、あらかじめ地方建設局(北海道開発局建設部及び沖縄総合事務局開発建設部を含む。以下同じ。)は地方農政局(北海道開発局農業水産部及び沖縄総合事務局農林水産部を含む。以下同じ。)と当該河川整備基本方針に係る計画高水流量及び正常流量に関する算定根拠並びに当該河川整備基本方針策定の基本となるべき事項が明らかになる資料を添付した上で、十分事前調整を行うものとすることとし、これが了したものを農林水産大臣と建設大臣との協議にかけること。
2 都道府県知事が河川整備基本方針を定め、又は変更しようとするときは、当該都道府県の河川担当部局は、環境担当部局、水道担当部局及び関係地方通商産業局と連絡調整を図ること。
3 都道府県知事が河川整備基本方針の認可を申請しようとするときは、都道府県の河川担当部局は、河川整備基本方針に当該河川整備基本方針に係る計画高水流量及び正常流量に関する算定根拠並びに当該河川整備基本方針の策定の基本となるべき事項が明らかになる資料を添付し、あらかじめ十分な時間的余裕をもって農林水産担当部局と協議を行うこと。
4 地方農政局長(北海道開発局農業水産部長及び沖縄総合事務局農林水産部長を含む。以下同じ。)及び都道府県の農林水産担当部局並びに地方建設局長(北海道開発局建設部長及び沖縄総合事務局開発建設部長を含む。以下同じ。)及び都道府県の河川担当部局が行う河川整備基本方針及び河川整備計画に関する協議については、河川整備の重要性にかんがみ、速やかに進められるよう双方とも努めること。
(河川整備計画の策定手続)
5 地方建設局長が河川整備計画を定め、又は変更しようとするときは、関係地方通商産業局長と協議を整えること。
6 地方建設局長が河川整備計画を定め、又は変更しようとするときは、地方建設局長が学識経験者、関係住民及び関係都道府県知事からの意見聴取を経て河川整備計画を策定しようとする時点において、地方建設局長から関係地方農政局長と協議を行うこと。
7 地方建設局長が河川整備計画を定め、又は変更しようとする際に関係都道府県知事が意見を述べるときは、あらかじめ当該都道府県の河川担当部局は、水道担当部局、環境担当部局及び工業用水道担当部局と、また、河川整備計画の対象区域に文化財が存する場合には文化財保護担当部局と連絡調整を図ること。
8 地方建設局長が河川整備計画を定め、又は変更しようとする際に関係都道府県知事が意見を述べるときは、当該都道府県の河川担当部局は、農林水産担当部局とあらかじめ十分な時間的余裕をもって協議を行うこと。
9 都道府県知事が河川整備計画を定め、又は変更しようとするときは、当該都道府県の河川担当部局は、環境担当部局、水道担当部局及び関係地方通商産業局と連絡調整を図ること。
また、都道府県知事が河川整備計画の認可を申請しようとするときは、都道府県の河川担当部局は、あらかじめ十分な時間的余裕をもって農林水産担当部局と協議を行うこと。
10 都道府県知事が河川整備計画を定め、又は変更しようとする際に関係市町村長が意見を述べるときは、あらかじめ当該市町村の河川担当部局は、水道担当部局、工業用水道担当部局及び環境担当部局と、また、河川整備計画の対象区域に文化財が存する場合には文化財保護担当部局と連絡調整を図ること。
11 河川管理者は、河川区域と港湾区域が重複する区間について河川整備計画を定め、又は変更しようとする場合には、関係港湾管理者と協議すること。また、港湾管理者が港湾計画を定めるときは、円滑な調整が図られるよう努めること。
12 河川管理者は、漁港法(昭和二五年法律第一三七号)に基づく漁港区域について河川整備計画を定め、又は変更しようとする場合には、あらかじめ十分な時間的余裕をもって漁港管理者(北海道にあっては、北海道開発局農業水産部長を含む)に協議すること。
13 河川管理者は、高規格堤防に関する整備区間を河川整備計画に定め、又は変更する場合には、運輸省に事前に十分な時間的余裕をもって協議すること。また、相互に密接な関連がある港湾事業及び河川事業の実施に当たっては、円滑な実施及び連携を図ること。
14 河川管理者は、河川整備計画に樹林帯の整備区間を定め、又は変更しようとする場合には、当該整備区間に林野庁所管の国有林野及び公有林野等官行造林地を含むときは、当該国有林野等を管轄する営林(支)局長に、あらかじめ十分な時間的余裕をもって協議すること。
(学識経験者関係)
15 河川法(昭和三九年法律第一六七号。以下「法」という。)第一六条の二に規定する「学識経験を有する者」の中には、文化財に関する学識経験者、環境に関し学識経験を有する者が含まれること。
16 河川整備計画に水道原水の水質に関連するものが含まれる場合は、浄水場の水質試験所長等の水質に関する学識経験を有する者の意見を聴くこと。
17 河川整備計画の策定に当たり、法第一六条の二の規定に基づき学識経験を有する者の意見を聴く場合、関係水利及び関係漁業に学識経験を有する者の意見を聴くこと。
なお、地方建設局は、関係水利及び関係漁業に学識経験を有する者の選定に当たっては、地方農政局及び都道府県水産担当部局と協議を行うこと。また、都道府県河川担当部局は、関係水利及び関係漁業に学識経験を有する者の選定に当たっては、都道府県農林水産担当部局と協議を行うこと。
18 河川整備計画策定の手続を通じて関係水利使用者及び関係漁業者の意見を聴き、その意向を反映させるよう努めること。
また、公聴会等の開催については、広く利水者及び関係漁業者に知らしめるため、河川管理者は地方農政局及び都道府県水産担当部局にあらかじめ通知すること。
(その他)
19 二級水系において改正前の法第一六条の規定による工事実施基本計画が策定されていない場合には、早急に河川整備基本方針を策定すること。また、河川整備基本方針に沿って計画的に河川の整備を行う区間において河川整備計画を早急に策定すること。
20 河川整備基本方針及び河川整備計画に定められた事項に沿って実施される「河川の整備」は、河川管理者及び法第一六条の三の規定による市町村長(以下「河川管理者等」という。)が実施するものに限られるものであること。
21 河川整備基本方針には、具体の施設の整備内容に関する事項は記述しないこと。
22 河川整備基本方針において定める「当該水系に係る河川の総合的な保全と利用に関する基本方針」には、水質保全に関し、具体的な水質目標の数値を含め個別具体的な方針が定められないこと。
23 河川整備基本方針においては、ゾーンを設定しないこと。また、河川整備計画ではゾーニングによる規制はないこと。
24 河川整備計画における樹林帯に関する事項は、堤防に沿って設置する樹林帯についての整備の考え方及びその整備区間のみであること。
25 河川整備計画では、水質汚濁に係る環境基準が定められている水系については、当該水系についての環境基準の達成維持に向けた当面の整備の考え方を記載すること。また、水質保全に関し、具体的な水質目標の数値を定める場合には、環境基準で定められた数値とし、環境基準が変更された場合には、速やかに具体的な水質目標の数値を変更された環境基準に変更して定めること。
26 法第一六条の二第二項の「災害の発生を防止し、又は災害を軽減するために必要な措置を講ずるよう特に配慮」する対象として森林の状況が含まれないこと。
27 河川区域内の景観を構成する文化財が存する場合には、当該文化財にも配意しながら、治水、利水及び環境の総合的な管理の中で、河川整備計画を定めること。
28 河川整備計画に河川の整備に関する個別の事業が記載された後も、誠意をもって土地改良等個別事業との協議を進めるものとし、土地改良事業との間に調整の必要が生じた場合には、河川整備計画への記載をもって、調整を拒まないこと。
29 河川整備基本方針及び河川整備計画が定められていない河川において土地改良事業が実施される場合には、河川管理者と土地改良事業の実施主体は、当該河川における土地改良事業に係る水利使用等に関係する河川管理上の基本的事項についてあらかじめ協議するものとすること。なお、当該協議結果は、原則として、河川整備基本方針及び河川整備計画に反映するよう努めること。
30 河川整備計画において定める「河川の整備の実施に関する事項」には、河川法施行令(昭和四〇年政令第一四号。以下「令」という。)第一〇条第三号に規定する事項を総合的に考慮した上で、当該河川の河川環境の特性を踏まえて、当面の期間における河川環境の整備と保全に関する事項を記載すること。
二 樹林帯制度の創設について
1 樹林帯を設置する目的で土地を買収し、又は権利を設定する場合は、周辺地権者等に対して事前に十分計画内容の説明を行い、調整を図ること。
2 河川管理者等は極力、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号)第八条第二項第一号に定める農用地区域に樹林帯を設置しないこと。ただし、やむを得ず農用地区域内に設置しようとする場合には、あらかじめ十分な時間的余裕をもって、指定区間外にあっては地方農政局(北海道にあっては北海道農業担当部局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部)と、指定区間にあっては都道府県農林担当部局と協議すること。また、協議に当たっては地域農業の振興等に十分配慮すること。
3 土地改良事業施行区域(施行予定区を含む。)においては、極力、樹林帯を設置しないこととし、やむを得ず当該施行区域において樹林帯を設置する場合には、河川管理者等は、あらかじめ十分な時間的余裕をもって、国営事業については地方農政局と、農用地整備公団及び水資源開発公団(以下「公団」という。)の事業については、事業の進捗段階に応じて地方農政局又は公団と、国営及び公団事業以外の事業については都道府県土地改良事業担当部局と協議すること。
また、樹林帯を設置しようとする箇所に既存の農業用用排水施設等が存する場合には、事前に当該施設の所有者及び管理者と協議を行うとともに、樹林帯の設置により、当該施設の改築等を行う必要が生じた場合には公共事業の施行に伴う損失補償基準に基づき適正に対処するとともに、当該所有者又は管理者に樹林帯の維持又は保全に関する新たな負担を生じさせないようにすること。
なお、「施行予定区域」とは、具体的な事業実施を前提とした調査段階以降の施行予定区域であり、国営土地改良事業にあっては地区調査段階以降、補助事業にあっては、都道府県等による地区別調査計画段階以降のものであること。
4 樹林帯区域の指定の予定箇所が、
1) 自然環境保全法(昭和四七年法律第八五号)の原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の特別地区
2) 自然環境保全法の都道府県自然環境保全地域の特別地区
3) 自然公園法(昭和三二年法律第一六一号)の国立公園の特別地域
4) 自然公園法の国定公園及び都道府県立自然公園の特別地域
5) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三二号)の国設鳥獣保護区特別保護地区
6) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の鳥獣保護区特別保護地区(国設を除く。)
7) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七五号)の生息地等保護区(管理地区及び立入制限地区を含む。)
にかかる場合にあっては、樹林帯の整備に当たり、
1)及び5)にあっては環境庁
2)にあっては都道府県自然環境保全担当部局
3)及び7)にあっては環境庁国立公園・野生生物事務所
4)にあっては都道府県自然公園担当部局
6)にあっては都道府県野生生物担当部局
と事前に十分な調整を図ること。
5 運輸大臣が主務大臣である海岸保全区域において海岸保全施設(当該施設に係る整備計画が具体化しているものを含む。)に隣接して樹林帯を整備しようとする場合、又は港湾法(昭和二八年法律第二一八号)に規定する港湾隣接地域において樹林帯を整備しようとする場合は、あらかじめ十分な時間的余裕をもって海岸管理者又は港湾管理者と連絡調整を図ること。
6 樹林帯区域は、原則として保安林として指定することとし、農林水産大臣又は都道府県知事が保安林を指定しようとする場合は、河川管理者等は保安林の指定が円滑に行われるよう努めること。
7 河川管理者等は、法第三条第二項ただし書の規定により、樹林帯を設置し、樹林帯区域を指定しようとする場合においては、あらかじめ土地所有者に、樹林帯区域に指定される場合には原則として森林法(昭和二六年法律第二四九号)に基づく保安林に指定されるものであること及びその場合の指定施業要件について説明した上で、当該規定による同意を得ること。
8 河川管理者は、樹林帯区域又は特定樹林帯区域の指定(樹林帯区域又は特定樹林帯区域に係る法第五六条の河川予定地の指定を含む。以下同じ。)、変更又は廃止をしようとする場合は、林野庁長官に協議することとし、当該協議に当たっては、別途通達による連絡調整会議の場を活用して円滑な調整が図られるよう努めること。
9 河川管理者等は、樹林帯の設置及び管理(植栽、保育等を含む。)に当たっては、周囲の森林所有者の森林施業に配慮し、地域森林計画等との調和を図るとともに、樹林帯区域における林道の設置(災害復旧事業を含む。)等林業生産活動に必要な施設の整備等について十分配慮すること。
10 既存の鉄軌道施設(鉄道事業法(昭和六一年法律第九二号)第八条第一項及び軌道法(大正一〇年法律第七六号)第五条第一項の工事の施工の許可並びに全国新幹線鉄道整備法(昭和四五年法律第七一号)第九条第一項の工事実施計画の許可がされたものを含む。)の区域は、樹林帯区域には指定しないこと。
11 ダム貯水池に沿って設置される樹林帯については、以下の事項によること。
1) 既存のダム貯水池に沿って設置する樹林帯の整備に当たっては、河川管理者が設置するものとし、特定多目的ダムにあってはダム使用権者(ダム使用権の設定予定者を含む。)、共同ダムにあっては他のダム共同事業者(以下「他のダム共同事業者等」という。)に費用負担は求めないこと。河川管理者は、他のダム共同事業者等にその旨を確認した上で樹林帯を設置すること。
2) 新規のダム貯水池に沿って設置する樹林帯については、従来の施工法である法面保護工等の比較で管理費用を含め説明する等、河川管理者が他のダム共同事業者等にあらかじめ必要性、内容について十分説明を行い、他のダム共同事業者等が費用負担を含め合意した場合に、特定多目的ダムにあっては建設大臣、共同ダムにあってはダム共同事業者(河川管理者及び他のダム共同事業者)は樹林帯を設置するものであること。この場合、他のダム共同事業者等の負担は、樹林帯がダム貯水池の保全のためダムと一体として整備するものであることから、ダム全体の費用のアロケーションに基づき算定すること。
12 樹林帯の整備及び管理は、治水上又は利水上の機能を維持し、又は増進する目的で行うものであり、令第一〇条第三号に規定する人と河川との豊かな触れ合いの確保や景観という河川環境の整備と保全を目的として行うものではないことに留意すること。
13 地すべり等防止法(昭和三〇年法律第三〇号)に基づく行為の制限は、樹林帯区域の指定により何ら変わるものではないこと。
14 樹林帯区域における治山事業(治山治水緊急措置法(昭和三五年法律第二一号)第二条に規定する治山事業(保安施設事業及び地すべり防止工事等)に加え、災害関連事業、災害復旧事業を含む。)による行為について、法第二四条の土地の占用許可等法に規定する協議等に関して治山事業の円滑な実施を妨げないよう十分配慮すること。
15 河川管理者は、保安林又は保安施設地区に指定された樹林帯区域においては、次に該当する行為については、法第二七条及び第二九条の許可に際し、手続の簡素化に配慮すること。
1) 森林法第三四条第一項又は第二項(同法第四四条において準用する場合を含む。)の許可を受けた行為
2) 森林法第三四条第一項又は第二項の許可を受けることを要しない行為
16 土地改良施設は、樹林帯区域において設置し得るものであること。また、樹林帯区域の指定に伴い、既存の土地改良施設については、極力、廃止、移設又は撤去を求めないこと。
17 樹林帯区域に指定されている土地の区域、又は樹林帯を整備中の土地の区域に新たな水道の取水施設を設置しようとする者がある場合において、河川管理者は、当該施設を設置する土地が樹林帯区域であることのみ、又は樹林帯を整備中の土地の区域であることのみを理由として、当該申請者の法に基づく許可申請を拒否し、又は協議を拒否し、及び不許可としないこと。
18 河川管理者は、既存の水道の取水施設が整備されている場所に樹林帯を整備するに当たり、当該取水施設の重要性を踏まえ、むやみに当該施設の除去を求めないこと。
19 樹林帯を整備し、樹林帯区域の指定をしようとする場合には、河川管理者等は、権原取得の前に、樹林帯の事業に係る実施計画の策定の段階で、あらかじめ当該樹林帯の属する都道府県(法第一六条の三の規定による市町村長が行う場合にあっては市町村)の公園緑地担当部局と十分な連絡調整を図ること。
20 樹林帯制度の運用に当たっては、緑地保全地区制度等の良好な都市環境の形成のための既存の制度を最大限尊重すること。また、樹林帯区域が都市公園又は緑地保全地区等の区域と重複することとなる場合には、当該都市公園の管理等を行う公園緑地担当部局と連携を図ること。この際、法及び都市公園法(昭和三一年法律第七九号)の兼用工作物規定を必要に応じ適用すること。
三 渇水調整の円滑化のための措置について
1 水利使用の特例を行う期間については、渇水の状況にかんがみ妥当な期間であれば承認し、必要に応じて変更、更新していくこと。
2 水利使用の特例は、水利使用許可の内容の変更を伴わない取水制限による渇水調整(ダム貯留水の転用を含む)には適用されないものであること。
3 水道法(昭和三二年法律第一七七号)第四〇条に規定する水道用水の緊急応援は、今回の改正後においても水利使用許可を変更せずに実施できること。
4 実務上、水利使用の特例を受けようとする者が申請に係る事務を代行することにより、円滑な渇水調整が期待される場合もあると考えられることから、申請者の判断により代行申請によることもできること。
5 水利使用の特例の承認申請に際しては、水道法第一〇条及び第三〇条の規定による事業変更に係る認可がなされていることを要しないこと。
6 法第八七条の規定により水利使用の許可を受けたものとみなされる者が水利使用の特例を行わせようとする場合において、その者が占用している流水の量を記載せずに行った法第八八条の規定に基づく届出が受理されているときには、その者の許可を受けたものとみなされる取水量の提示は求めないこと。
7 今回の改正は、水利使用者に新たな規制又は義務を課し、若しくは従前の規制又は義務を強化する趣旨ではなく、水利使用の特例の承認に当たっては、事務処理が迅速に行われ、水利使用者に過重な負担が生じることのないよう努めること。
四 水質事故処理等の原因者施行・原因者負担制度の創設について
一般の経済活動、工事の実施、利水管理等に伴う通常のもの(具体的例示としては、以下のとおり。)には、法第一八条及び第六七条の適用されないこと。
1) 通常の営農活動、林業活動、漁業(養殖の事業を含む。)活動に伴う河川への排出。
2) 通常の経済活動による工場排水の河川への排出。
3) 治山事業、林道事業等の実施により、やむを得ず発生する土砂、濁水等の流入。
4) ダム等の管理行為(堆砂及び貯水池への濁水流入に伴う下流河川の濁流の長期化を含む。)としてやむを得ず行う濁水の流下。
5) 自然災害により発生した土砂、枝条、倒伏木等の河川への流入。
6) 汚損した河川水を取水した水道事業者・水道用水供給事業者が行う当該水の河川への排出。
五 不法係留船舶等の対策について
1 河川管理者が法第七五条の規定をもって不法係留船舶等の監督処分を実施するに当たり、当該不法係留船舶等が港湾区域又は漁港区域に移動するおそれがある場合、あらかじめ当該港湾の港湾管理者又は当該漁港の漁港管理者と十分協議し、その上で当該監督処分を実施すること。
2 法第七五条第四項について、河川管理者は、工作物の保管場所を漁港区域内に確保する場合には、あらかじめ十分な時間的余裕をもって、漁港管理者と協議すること。
六 動植物の生息地等を保全するための自動車の乗入れ等の規制について
1 動植物の生息地又は生育地として特に保全する必要がある区域の指定を行おうとする場合において、
1) 自然環境保全法に基づく原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の特別地区
2) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく国設鳥獣保護区の特別保護地区
3) 自然公園法に基づく国立公園の特別地域
4) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく生息地等保護区の管理地区
5) 自然環境保全法に基づく都道府県自然環境保全地域の特別地区
6) 自然公園法に基づく国定公園及び都道府県立自然公園の特別地域
7) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく都道府県設鳥獣保護区の特別保護地区
の区域内の土地に係るときにあっては、
1)及び2)については、環境庁
3)及び4)については、環境庁国立公園・野生生物事務所
5)から7)までについては、都道府県自然環境保全担当部局
と事前に調整を図ること。
2 防衛施設内において生息・生育地保全区域を指定する際には、十分な時間的余裕をもって当該防衛施設を管轄する防衛施設局又は防衛施設支局と事前に協議すること。
3 動植物の生息地又は生育地として特に保全する必要がある区域に、以下の行為のために自動車その他河川管理者が指定したものを入れることは、令第一六条の四第一項に規定する「みだりに行う行為」に該当しないものであること。
なお、当該行為を行う者は、当該区域が指定された趣旨を踏まえ、可能な限り動植物の生息地又は生育地の保全に配慮するよう努めることについて関係省庁と確認済みである。
1) 自衛隊法(昭和二九年法律第一六五号)第七六条に基づく防衛出動、同法第七八条又は第八一条に基づく治安出動及び同法第八三条に基づく災害派遣を命ぜられて自衛隊が行動するため
2) 自然公園法第二条第二号に規定する国立公園、同条第三号に規定する国定公園及び同条第四号に規定する都道府県立自然公園の管理又はその指定を目的とする調査のため
3) 自然環境保全法第四条の規定による基礎調査の実施又は同法第一四条第一項に規定する原生自然環境保全地域、同法第二二条第一項に規定する自然環境保全地域及び同法第四五条第一項に規定する都道府県自然環境保全地域の管理若しくはその指定を目的とする調査のため
4) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第八条ノ八第一項に規定する鳥獣保護区の管理又はその指定を目的とする調査のため
5) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律第四条第二項に規定する希少野生動植物種の指定を目的とする調査、同法第三六条第一項に規定する生息地等保護区の管理若しくはその指定を目的とする調査又は同法第四七条第一項に規定する認定保護増殖事業等の実施のため
6) 温泉法(昭和二三年法律第一二五号)の規定に基づく都道府県知事(同法第一八条の二第一項の政令で定める市の市長を含む。)による処分のための調査又は立入検査のため
7) 電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)に規定する電気工作物を設置する者が電気工作物を通常の方法で維持、管理し、又は電気工作物の設置・変更に係る調査のため
8) 以下に掲げることを内容とする農林水産業を営むこと等に係る行為のため
イ 農林水産業を営むために現に農林水産業を営んでいる区域に至る通常の経路の通行
ロ 農林水産業を営むために現に使用している農林水産業施設の操作、維持管理(巡視を含む。)のため、当該施設に至る通常の経路の通行
ハ 保安林、保安施設地区及び地すべり防止区域の指定の目的を達成するため、当該区域内で行う維持管理(巡視を含む。)及び当該区域に至る通常の経路の通行
ニ 林野庁所管の国有林野及び公有林野等官行造林地の管理経営のため、当該区域内で行う通行及び当該区域に至る通常の経路の通行
4 以下の土地は、動植物の生息地又は生育地として特に保全する必要がある区域に指定しないものとすること。
1) 農業を現に営んでいる土地の区域
2) 農林水産業を営むために現に使用している農林水産業施設の用地
七 その他
1 河川指定及び河川区域の指定は、法上、河川の総合的な管理の観点から行うものであり、「河川環境の整備と保全」のみを目的として行うものではないこと。
したがって、土地改良区等により管理されている農業用用排水施設について「河川環境の整備と保全」のみを目的として、河川指定し、又は河川区域の指定を行うことができないものとすること。
2 「河川環境の整備と保全」が河川管理の目的となったことのみをもって、水利使用(その変更を含む。)において、水利使用者に新たな規制若しくは義務を課し、又は従前の規制若しくは義務を強化することはないこと。
3 現在供用している許可工作物が「河川環境」に適合しないと判断される場合であっても、それのみをもって改築命令等を行わないものとすること。
4 「河川環境の整備と保全」が河川管理の目的となったことのみをもって、新たに水利使用の許可を得ようとする構造物に係る情報提供項目として、河川環境に関するデータを新規項目として追加し、又は従来の項目に追加して盛り込むことのないこと。このことは、既に水利使用の許可を得ている構造物(更新の場合を含む。)についても同様とすること。
5 河川区域内の景観を構成する文化財は、河川環境を構成する一つの要素であり、河川環境の整備と保全を推進するに当たって配意の対象となること。
6 「河川区域」のうち河川工事が実施されている区間及び河川整備(河川工事及び河川の維持)が予定されている区間を除き、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律第三七条の管理地区の指定の適否について協議に応じるものとすること。なお、この協議は環境庁長官が地方公共団体との内協議に入る前に十分な時間的余裕をもって、その時点での管理地区の指定の予定を表す図面を示して行われるものであること。
7 改正後の法は、現在制定されているいわゆる水上安全条例の効力に影響を及ぼすものではなく、かつ、今後都道府県が水上安全条例を制定し、又は改正することを妨げるものではないこと。