河川区域内のプレジャーボート等の不法係留船は、洪水の流下の阻害、護岸への係留杭の設置や船舶が流出した場合の河川管理施設等の損傷、河川工事の実施の支障等の治水上の支障のほか、一般公衆の自由使用の妨げ、騒音の発生、景観の阻害等様々な面で河川管理上の支障を引き起こしているところである。
このような状況に対処するため、平成七年度及び九年度に河川法(昭和三九年法律第一六七号。以下「法」という。)の改正が行われ、簡易代執行制度の創設等の措置が執られたところである。しかしながら、不法係留船はかなりの数になりつつあり、また、マリーナ等の恒久的な係留・保管施設の建設は十分に進んでいない。このような状況の下では、河川によっては一挙に強制的な撤去措置を執ることが困難な状況にある。
一 不法係留船対策に係る計画の策定について
河川区域内におけるプレジャーボート等の船舶の係留については、係留杭等の施設を設置して係留する場合には法第二四条、第二六条等の規定に基づく河川管理者の許可が必要であり、また、係留施設を設置することなく係留する場合においても、当該係留が通常の一時係留でない場合には、法第二四条等の規定に基づく河川管理者の許可が必要である。したがって、河川管理者の許可に基づかず河川区域内に係留している船舶は不法係留船であり、法に基づく強制的な撤去措置の対象となるものである。
このため、河川管理者は不法係留船対策を適正に実施する必要があり、不法係留船の現状を踏まえ、以下により、計画的かつ段階的な不法係留船対策を実施することとされたい。
1 計画の策定
不法係留船の数が多い等の理由により計画的な不法係留船対策を講じる必要がある河川については、河川管理者は、不法係留船対策に係る計画(以下「計画」という。)を地域の実態に応じて水系又は主要な河川ごと等に策定し、不法係留船の計画的な撤去を行うこととする。
なお、その他の河川においても、河川管理上の必要性に応じ、不法係留船の強制的な撤去措置を適正に実施することとする。
2 計画の内容
(1) 計画における不法係留船対策の基本的考え方は、次のとおりである。
1) 不法係留船の係留による河川管理上の支障の程度等を勘案し、重点的に強制的な撤去措置を執る必要があると認められる河川の区域(以下「重点的撤去区域」という。)を年次的に設定し、この区域において強制的な撤去措置を実施するものとする。なお、重点的撤去区域は年次的に拡大していくものであり、恒久的係留・保管施設の設置が認められた区域を除き、最終的には全ての河川の区域が重点的撤去区域となるものである。
2) 洪水時、高潮時等における治水上の支障のおそれが少なく、かつ、河川環境の保全上も比較的問題のない場合のうち、係留施設の適切な構造及び係留船舶の適切な管理方法と相まって、治水上及び河川環境上支障のない場所については、暫定的な係留施設(以下「暫定係留施設」という。)を設置し得るものとし、この場合には計画に暫定係留施設の区域(将来的に恒久的係留・保管施設の設置が容認される区域を含む。以下「暫定係留区域」という。)を設定するものとする。
3) 重点的撤去区域及び暫定係留区域以外の河川の区域については、法第七七条の規定に基づく河川監理員の指示も含めて適切な指導を行うものとする。ただし、河川管理上の必要が生じた場合には、強制的な撤去措置を実施するものとする。
(2) 計画には、1)重点的撤去区域の設定に係る年次計画及び同区域における不法係留船の強制的な撤去措置に係る年次計画、2)暫定係留区域における暫定係留施設の設置に係る年次計画(暫定係留区域が存する場合に限る。)、3)斜路及び船舶上下架施設の設置に係る年次計画、4)河川における恒久的係留・保管施設の整備に係る年次計画等を定めるものとする(4)については、他の公共水域及び陸域における恒久的係留・保管施設(民間主体が整備するものを含む。)の整備に係る計画を添付する。)。
当該年次計画には、各年次における撤去対象船舶数、恒久的係留・保管施設及び暫定係留施設の収容能力等の必要事項を定めるものとする。
なお、暫定係留施設に係留する船舶は、将来的には当該地域等における恒久的係留・保管施設に収容されるべきものであるため、暫定係留施設の設置に係る計画は、恒久的係留・保管施設(民間主体が整備するものを含む。)の整備計画を勘案しつつ策定するとともに、暫定係留施設は段階的に解消していくべきものであることに留意されたい。また、暫定係留施設のうち恒久的係留・保管施設の設置が可能なものについては、暫定係留施設を改築等の上、恒久的係留・保管施設に移行するものとして、計画を策定するものとする。
3 計画の策定手続
計画は、次の手続に基づき策定するものとする。
1) 河川管理者、地方公共団体、他の公共水域管理者、警察機関、学識経験者等からなる河川水面の利用調整に関する協議会(以下「協議会」という。)を地域の実態に応じて水系又は主要な河川ごと等に設置すること。なお、既に類似の組織が地方公共団体にある場合には当該組織を活用しても差し支えないものとする。
2) 協議会は、地域住民の意見を聴きつつ、計画の内容を検討すること
3) 河川管理者は、協議会の意見を聴きつつ、計画を策定すること
二 重点的撤去区域における不法係留船対策の実施について
重点的撤去区域は、不法係留船の係留による河川管理上の支障の程度等を勘案して重点的に強制的な撤去措置を執る必要がある区域であるため、計画に基づき、法第七七条の規定に基づく河川監理員の指示等並びに強制的な撤去措置である法第七五条に基づく監督処分、簡易代執行及び行政代執行法(昭和二三年法律第四三号)第二条の規定に基づく代執行を重点的に実施することとされたい。
簡易代執行については、船舶検査番号に基づく日本小型船舶機構へ照会を行ったにもかかわらず所有者が判明しない場合、あるいは船舶検査番号に基づく照会が不可能である場合のほか、所有者であった者が譲渡により所有を否定し、譲渡先を明らかにしない場合等も、過失がなくて監督処分を命ずべき者を確知することができない場合に該当するものであり、積極的に簡易代執行を実施されたい。なお、監督処分を命ずべき者を確知できる場合には、代執行を行うに当たり事前に監督処分を行うべきことはいうまでもないが、念のため申し添える。
強制的な撤去措置の実施に当たっては、必要に応じて、地方公共団体等の関係機関と連絡調整を図りながら実施することとされたい。
また、重点的撤去区域を定めた場合は、その区域及び内容を適切な公示方法(地方公共団体の広報への掲載、現場における看板の設置等)により周知を行うこととされたい。
三 暫定係留区域における不法係留船対策の実施について
暫定係留区域は、暫定係留施設の設置が認められる区域である。暫定係留施設を設置するためには、法第二四条、第二六条等の規定に基づく河川管理者の許可が必要であり、当該許可に当たっては以下の点に留意されたい。
1 設置主体
暫定係留施設の設置主体は、地方公共団体、第三セクター等の公的主体とする。
2 占用許可条件等
河川管理者は、暫定係留施設の設置者に法第二四条、第二六条等の規定に基づく許可を行う場合は、次の事項に留意して許可を行うとともに、必要な許可条件を付することとする。
1) 暫定係留施設は、原則として、係留環等からなる極めて簡易な施設であること
2) 暫定係留施設は、他の水面利用に著しい支障を与えないものであること
3) 係留する船舶は、洪水時、高潮時等には撤去又は移動すること。ただし、当該船舶の係留が治水上の支障を生じない場合はこの限りではない。
4) 占用許可期間は、概ね一〇年以内で計画において認められた期間とすること
5) 占用許可期間経過後は、暫定係留施設を撤去すること
6) 占用許可の更新は認められないこと
7) 暫定係留施設の使用者から使用料を徴収することができること
8) 暫定係留施設に係留する船舶の所有者名等を河川管理者に登録するとともに、登録内容に対応したナンバープレートの船外への貼付を義務付けること。なお、登録は、暫定係留施設の設置者が河川管理者に対して行うものであり、河川管理者は登録簿を整備する必要があるが、条例等に基づく登録制度により必要事項の把握が可能な場合においては、当該登録で差し支えないものとする。
9) 暫定係留施設の使用者との間の契約に、許可条件を遵守するために必要な条件等を明記すること
四 斜路及び船舶上下架施設の設置について
船舶の河川区域外の陸上における保管を促進するため、計画に基づき、河川区域外の陸上保管施設に保管された船舶が河川にアプローチするために必要な斜路及び船舶上下架施設が地方公共団体等の公的主体によって設置されるよう関係機関に積極的に要請を行うこととする。
なお、当該保管施設が無秩序な水面係留を防止する等河川の適正な利用を推進する上で有効であると判断される場合には、公的主体以外にも必要最小限の斜路等の設置が認められるものである。
五 その他
(1) 本通達による計画的な不法係留船対策を実施する中で、より適切で効果的な対策等が考えられる場合には、積極的に当職あて報告されたい。
(2) 計画を策定中の河川においても、河川管理上の必要に応じ、不法係留船の強制的な撤去措置を適正に実施することとされたい。
(3) 地方公共団体、第三セクター等の公的主体から、計画に則った恒久的係留・保管施設に係る法第二四条、第二六条等の規定に基づく許可申請があった場合は、河川管理者は積極的に対処するものとする。
(4) 恒久的係留・保管施設に係る法第二四条、第二六条等の規定に基づく許可を行う場合においても、今後、当該施設に係留する船舶の所有者名等の登録及び当該登録内容に対応したナンバープレートの船外への貼付の義務付けを許可条件とされたい。この場合においても、条例等に基づく登録制度により必要事項の把握が可能な場合においては、当該登録で差し支えないものとする。