建設省河政発第七三号、建設省河計発第六七号、建設省河治発第五八号
平成三年一一月一日

各都道府県土木主管部長あて

建設省河川局水政課長、建設省河川局河川計画課長、建設省河川局治水課長


高規格堤防の整備に係る関係行政機関等との協議等について


高規格堤防の整備の円滑な推進を図るため、河川法の一部を改正する法律(平成三年法律第六一号)及び同法の付属法令は、平成三年一一月一日から施行されることとなった。高規格堤防は大規模な河川管理施設であり、その整備に当たっては、関係方面との密接な連絡調整が必要であることから、下記1のとおり、関係行政機関との協議等を行うこととしているものであり、貴職におかれてもこれを十分踏まえ、今後、高規格堤防の整備及び管理を行うに当たっては、下記2及び3の事項に十分留意し、関係行政機関等との連絡調整を十分図るとともに、円滑かつ適正な高規格堤防の整備及び管理に努め、遺憾のないようにされたい。

1 建設大臣と関係行政機関との協議等について

(1) 建設大臣は、工事実施基本計画に高規格堤防の設置区間、その横断形等高規格堤防の整備に関する事項を定めようとするときは、あらかじめ建設大臣から農林水産大臣へ公文書をもって協議を行い、これについての農林水産省からの公文書による了解がなされない限り、同工事実施基本計画を河川審議会に付議しないものとするものであること。

また、この協議に当たっては、あらかじめ地方農政局と地方建設局との間において十分事前調整を行うものとし、この事前調整を了したものを本省間の協議にかけるものとするものであること。

(2) 工事実施基本計画については、「河川法施行令の制定に関する覚書」(昭和四〇年二月三日付け四〇農地A第一八七号、建設省発河第一八号の二)の記の2において、農林水産省又は都道府県農林水産担当部局との事前協議の実施について確認されているところ、高規格堤防の整備に関する事項に係る工事実施基本計画以外の工事実施基本計画についても、これを誠実に履行するものであること。
(3) 建設大臣は、上記(1)の協議に当たっては、次の具体的な資料をもって説明を行うものであること。ただし、1)については、その後の地盤高の変化又は現地の地質調査の結果による高規格堤防の幅の微小な変更が伴う値であること。

1) 高規格堤防の必要最小限の幅及び現況の堤防幅がわかる高規格堤防の設置区間全体の縮尺二五、〇〇〇分の一の平面図
2) 主要な地点における現況の地形に基づく堤防幅、法勾配及び高規格堤防特別区域となることが予定される区域の具体的な数字を記載した高規格堤防の横断図並びにそれらの算出の基礎となる高規格堤防の構造検討に係る項目及びその算定方法
3) 主要な地点における高規格堤防の横断形の設計要件となる超過洪水位(仮称)及びその算定の基礎となる事項
4) 主要な地点における高規格堤防の横断形の設計要件となる超過洪水位(仮称)から求められる越水量とその算出方法

(4) 現在、高規格堤防についての記載がなされている五水系六河川の工事実施基本計画については、「河川法の一部を改正する法律等の運用及び解釈について」(平成三年一一月一日付け建設省河政発第七二号等、建設省河川局水政課長等通達)の記の3に即し、平成三年度中を目途に改定を行うものとしており、この場合の農林水産大臣への協議については、上記(3)が適用されるものであること。
(5) 建設省は、国営土地改良事業施行区域、国営以外の土地改良事業施行区域、農用地区域、国有林野、保安林、保安施設地区及び漁港区域における高規格堤防の整備に係る具体的な事業について、毎年、概算要求前及び事業予算決定後速やかに、農林水産省に説明するものであること。その際に、農林水産省と建設省は、下記2(3)の河川管理者と農林水産省又は都道府県農林水産担当部局との協議の状況について確認するものとするものであること。これらの説明及び確認については、その具体的な方法について今後両省で早急に検討を行い、平成四年度から実施するものとするものであること。
(6) 「河川法制定に関する覚書」(昭和三八年五月二四日付け三八農地A第一五三八号、建設省発河第一二四号)、「河川法の運用に関する了解事項」(昭和三八年五月二四日付け農林事務次官、建設事務次官)、「河川法施行令の制定に関する覚書」(昭和四〇年二月三日付け四〇農地A第一八七号、建設省発河第一八の二)、「河川の使用に関する処分についての協議要領」(昭和四〇年四月一七日付け四〇農地A第七九七号、建河発第一三四号)、「河川法の一部を改正する法律案の提出について」(昭和四七年二月一七日付け四七農地A第二二九号、建設省河政発第一三号)、「河川法施行令等の一部を改正する政令の制定に関する了解事項」(昭和四七年九月二〇日付け四七農地A第一五六九号、建設省河政発第八七号)及び「治山治水緊急措置法及び河川法の一部を改正する法律に関する覚書」(昭和六二年二月九日付け六二構改C第六三号、建設省河政発第一一号)については、本改正後もその効力に影響を生じないこと。

なお、「河川法の運用に関する了解事項」(昭和三八年五月二四日付け農林事務次官、建設事務次官)及び「河川の使用に関する処分についての協議要領」(昭和四〇年四月一七日付け四〇農地A第七九七号、建河発第一三四号)中「第二六条」とあるのは、「第二六条第一項」と読み替えるものとすること。

(7) 今回の法改正により、農林水産省と建設省との間の権限関係は、何ら変更されるものではないこと。
(8) 建設大臣は、工事実施基本計画に高規格堤防の整備に関する事項を定めようとするときは、河川審議会の意見を聴く前に、あらかじめ通商産業大臣に協議するものとするものであること。
(9) 建設省は、工事実施基本計画に高規格堤防に関する整備区間を定め、又は変更しようとするときは、運輸省に協議するものとするものであること。

2 関係行政機関との連絡調整について

(1) 都道府県知事は、二級河川について工事実施基本計画に高規格堤防の整備区間を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、十分な時間的余裕をもって運輸省に協議するものとすること。
(2) 都道府県知事は、二級河川について工事実施基本計画に高規格堤防の整備に関する事項を定めようとするときは、あらかじめ、十分な時間的余裕をもって通商産業局長(沖縄県にあっては、沖縄開発庁沖縄総合事務局通商産業部長。)に協議するものとすること。
(3) 国営土地改良事業施行区域、国有林野及び漁港区域における高規格堤防の具体の事業化に当たり、具体的な設置区間、断面及び敷地幅を決定しようとするときは、その内容について、河川管理者は、あらかじめ十分な時間的余裕をもって農林水産省に協議するものとすること。

また、国営以外の土地改良事業施行区域、農用地区域、保安林及び保安施設地区における高規格堤防の具体の事業化に当たり、具体的な設置区間、断面及び敷地幅を決定しようとするときは、その内容について、河川管理者は、あらかじめ十分な時間的余裕をもって当該都道府県の農林水産担当部局に協議するものとすること。

(4) (3)の協議に当たっては、河川管理者は、高規格堤防の具体的な設置区間、断面及び敷地幅が確認できる次の資料を付して協議するものとすること。

1) 高規格堤防の工事区間(平面図)
2) 高規格堤防の断面(断面図)
3) 高規格堤防の敷地幅(平面図)
4) 高規格堤防の区間別の施行時期
5) 高規格堤防の工事区間(その隣接地を含む。)に存する農地、森林等及び土地改良施設

(5) 高規格堤防の設置予定地域に計画中(法定計画により具体の計画が明確な場合に限る。)又は実施中の土地改良事業が存する場合には、高規格堤防の工事は、(3)の協議が了する前には実施しないものとすること。
(6) 河川管理者及び農地転用許可権者は、高規格堤防特別区域内の農地について、農地転用に伴う河川法(昭和三九年法律第一六七号。以下「法」という。第二六条第一項若しくは第二七条第一項の許可又は農地法(昭和二七年法律第二二九号)第四条若しくは第五条の転用許可をしようとするときは、あらかじめ相互に連絡するものとすること。
(7) 河川管理者又はその命じた者若しくはその委任を受けた者が、国有林野において高規格堤防の原状回復措置等を行おうとする場合には、事前に河川管理者は、農林水産大臣と十分な時間的余裕をもって調整するものとすること。
(8) 高規格堤防の建設予定箇所が、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園の特別地域又は鳥獣保護区特別保護地区にかかり、自然公園法(昭和三二年法律第百六一号)(都道府県自然公園条例を含む。)及び鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三二号)に基づく協議等が必要な場合にあっては、高規格堤防の詳細な計画を定める前に、国立公園にあっては国立公園管理事務所と、国定公園及び都道府県立自然公園にあっては都道府県自然公園担当部局と、国設鳥獣保護区にあっては環境庁と、その他の鳥獣保護区にあっては都道府県野生生物担当部局と十分な調整を図るものとすること。

3 高規格堤防の事業実施及び管理に当たって留意すべき事項について

(1) 高規格堤防整備事業の実施に際しては、事前に十分な時間的余裕をもって、事業実施地区内に存する鉄道、軌道、道路、公園、下水道、水道、工業用水道、電気、ガス、熱供給、石油パイプライン等の各施設管理者等と、事業計画及び事業実施についての協議調整を行うこととし、その意向を十分尊重するものとすること。
(2) 高規格堤防の整備により、上記(1)の各施設を移設、改築等する必要が生じた場合には、必要を生じさせた限度において、河川管理者がその費用(各施設管理者等の要請により行われる施設の改良等機能増進に要する費用を除く。)を負担し、各施設管理者の施設管理、経営に悪影響を及ぼさないよう措置すること。
(3) 高規格堤防の整備に伴い、補償工事により、管渠施設、街路整備、区画割り等を行う場合には、昭和六二年八月三一日付事務次官通達「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う代替地対策に係わる事務処理要領について」に準拠し、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第三三条に規定する開発許可基準を遵守するものとすること。
(4) 高規格堤防の堤体の材料については、高規格堤防上及びその周辺の農地、森林、農業用施設等に悪影響を与えないよう配慮するものとすること。
(5) 河川管理者は、高規格堤防の整備に関する事項に係る工事実施基本計画の決定をもって、道路事業、下水道事業、土地改良事業等の計画及び実施について、国又は都道府県の道路、下水道、土地改良等担当部局に対し、高規格堤防の設置を前提とした調整を一方的に求めないものとすること。
(6) 高規格堤防を設置しようとする場合に、その設置予定地において土地改良事業等が計画され、又は実施されている場合には、当該土地改良事業等の工事の実施主体は、河川管理者ではなく、当該土地改良事業等の事業主体であること。なお、高規格堤防の設置に伴う土地改良事業等の増嵩分はその必要を生じさせた限度において河川管理者が負担するものであること。
(7) 法第六条第二項の「通常の利用に供することができる土地」には、農地、森林等農林水産業の用に供する土地が含まれるものであること。
(8) 高規格堤防特別区域において、農林水産省所管の直轄事業、補助事業等の実施を妨げないこと。
(9) 高規格堤防特別区域内において実施する土地改良事業等の工事の実施主体は、河川管理者ではなく、当該土地改良事業等の事業主体であること。
(10) 高規格堤防特別区域及び高規格堤防の敷地予定地の農地、森林、農業用施設等の農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律に基づく災害復旧事業の工事については、河川管理者ではなく、当該事業の事業主体が実施するものであること。
(11) 高規格堤防特別区域内における法第二六条第一項及び第二七条第一項の許可等の河川法上の規制については、迅速に許可事務を行うとともに、通常の土地利用に供することができる当該区域の特性に十分配慮することとし、鉄道、軌道、道路、公園、下水道、水道、工業用水道、電気、ガス、熱供給、石油パイプライン等の公共公益事業の公益性を損ない又はこれらの事業の健全な発展に著しい支障が生ずることのないよう格別の配慮をするものとすること。
(12) 高規格堤防設置区間の堤外地における農業用に供する許可工作物の構造基準については、高規格堤防の設置に伴い変更を生ずるものではないこと。

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