建設省河政発第三二号、建設省河計発第三七号、建設省河治発第一〇号
平成四年二月一日

各地方建設局河川部長、北海道開発局建設部長、沖縄総合事務局開発建設部長、各都道府県土木主管部長あて

建設省河川局水政課長、建設省河川局河川計画課長、建設省河川局治水課長通達


河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について

河川管理施設等構造令の一部を改正する政令(平成四年政令第五号)及び河川管理施設等構造令施行規則の一部を改正する省令(平成四年建設省令第二号)の施行については、平成四年二月一日付け建設省河政発第三一号により河川局長名をもって通達したところであるが、河川管理施設等構造令(昭和五一年政令第一九九号。以下「令」という。)及び河川管理施設等構造令施行規則(昭和五一年建設省令第一三号。以下「規則」という。)の運用にあたっては、同通達によるほか、左記の事項に留意のうえ遺憾のないようにされたい。
なお、貴管下関係市町村に対しても周知徹底のうえ、遺憾なきを期されたい。

1 条文関係について

(1) 令二条関係

1) 「高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用」とは、高規格堤防設計水位以下の水位の流水に伴う河道内の洗掘作用、越流水による洗掘作用、静水圧の作用、間隙圧の作用、浸透水による作用、揚力、抗力、波圧による作用等であること。
2) 「高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用に耐えるようにし、」とは、高規格堤防設置区間及び当該区間に係る背水区間についてのみ適用されるものであること。
3) 「当該区間の河道内の最高の水位」とは、高規格堤防設置区間の断面ごとに決定される最高の水位であること。

(2) 令第一八条関係

高規格堤防の構造は、河道内流水によるせん断力、揚力、抗力、流水圧、越流水によるせん断力、堤体の自重、静水圧、間隙圧、地震時慣性力、浸透水による浸食力、波圧等で決定されるものであること。

(3) 令第二九条関係

高規格堤防設置区間に係る背水区間は、令第二九条第二項に規定されているとおり、同条第一項の規定に基づき定められる支川(同規定において「乙河川」。)の堤防高と背水が生じないとした場合の当該支川の堤防高とが一致する地点から本川(同規定において「甲河川」。)合流箇所までの間であること。

(4) 令第四六条関係

1) 高規格堤防設置区間及び当該区間の背水区間の水門及び樋門の構造計算は、設計における安定計算に用いる荷重条件をこれまでの計画高水位での静水圧としていたものを高規格堤防設計水位での静水圧に置き換えて検討するものであること。また、その場合の構造計算はゲートが全閉のケースで行うものであり、強度に係る変更はあっても、基本形状の変更はないこと。
2) 高規格堤防特別区域内での水門及び樋門の方向は、滑らかに通水され、土砂等の堆積のおそれがない限り、堤防法線に対して直角でなくてもよいこと。
3) 高規格堤防設置区間及び当該区間に係る背水区間に設置する樋門の最小断面は、内径一mとするものとすること。

(5) 令第五四条関係

高規格堤防特別区域には、高規格堤防の機能に支障を及ぼすおそれがない限り、揚排水機場及びその付帯施設を設置することができるものとすること。

(6) 令第五七条関係

第一項本文においては、「揚水機場及び排水機場の樋門と樋門以外の部分とは構造上分離するものとする。」とされているが、この規定はポンプによって発生する連続振動等により堤防の構造に悪影響が及ぶことを防止するためのものであり、高規格堤防の機能に支障を及ぼすおそれがない限り、高規格堤防特別区域においては同項ただし書きの適用を受けるものであること。

(7) 令第七〇条関係

伏せ越しの構造は、高規格堤防の機能に支障を及ぼすおそれがない限り、第一項のただし書きの適用を受け、高規格堤防特別区域の下に設けるものと堤内地の部分とは構造上分離する必要はないこと。

(8) 規則第一三条の二関係

1) 平水位とは、非洪水時の通常の水位であること。
2) 水位が急速に低下する場合とは、高規格堤防設計水位から平水位に水位が低下する場合であること。
3) 高規格堤防設計水位から平水位に水位が低下する場合の構造計算は、滑り計算を行うものであり、その時の荷重は高規格堤防の自重、間隙圧の力、河道内流水による静水圧の力、地震時慣性力であること。
4) 高規格堤防の設計上前提とする高規格堤防上の土地利用は、通常最も高い建ペイ率である八〇%、標準街区における最低の道路面積率一八%である場合の利用を基本とすること。

(9) 規則第一三条の五関係

高規格堤防の安定性の検討は、別紙のとおり行うものとすること。

2 河川整備計画について

(1) 高規格堤防を整備する河川の河川整備計画においては、高規格堤防設置区間に係る背水区間を含めた高規格堤防を設置するすべての区間を定めるとともに、当該河川整備計画の「(参考)」に主要な地点の高規格堤防設計水位に加え、高規格堤防設置区間に係る背水区間が設定される支川と本川との合流点のすべてについて、当該合流点における高規格堤防設計水位を記載することとすること。
(2) 高規格堤防を設置する高規格堤防設置区間に係る背水区間を河川整備計画に定めるに当たっては、以下の1)の記載事項の箇所に、以下の2)の記載例のとおり規定するものとすること。

1) 主要な河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される主要な河川管理施設の機能の概要
2) (記載例)「……○○地点から◇◇地点までの区間、並びに当該区間に係る背水区間(別表)については、高規格堤防の整備を図る。」


(別表)○○地点から◇◇地点までの区間に係る背水区間

河川名
区間
□□川
□□地点から本川合流点
△△川
△△地点から本川合流点
▽▽川
▽▽地点から××川合流点



3 その他

(1) 「高規格堤防の整備に係る関係行政機関等との協議等について」(平成三年一一月一日建設省河政発第七三号等)における「超過洪水位(仮称)」は、高規格堤防設計水位のことであること。
(2) いわゆる「二Hルール」は、高規格堤防の堤内地において適用はないこと。



(別紙)
(1) 河道内洗掘破壊に対する安定性について

水衝部等においては、必要に応じ護岸、水制等を設けるものとし、高規格堤防設計水位以下の水位の流水の作用による河道内の洗掘に対し、必要な抵抗力を有するものとする。

(2) 越流水洗掘破壊に対する安定性について

越流水によるせん断力が堤防上部のせん断抵抗力以下となるよう、以下の式を基に、高規格堤防の川裏側の勾配を定めるものとする。

τ=Wo・hs・Ie=0.3446・q3/5・I7/10
τ≦τa

ここに、τ;越流水によるせん断力(tonf/m2)

Wo;水の単位体積重量(tonf/m3)
hs;高規格堤防の表面における越流水の水深(m)
Ie;越流水のエネルギー勾配
q;単位幅越水量(m3/s/m)

(q=1.6hk3/2:hkは計画堤防天端高を基準とする高規格堤防設計水位の水深(m))

I;堤防の川裏側の勾配(I=Ie)
τa;許容せん断力(0.008tonf/m2)

(3) 滑り破壊に対する安定性について

各荷重条件において、第三項に示すとおり、高規格堤防の地盤面の付近における滑りが生じないよう、円弧滑り法によって検討するものとする。

(4) 浸透水による浸食破壊に対する安定性について

高規格堤防において、有限要素法による非定常浸透流解析により算出した浸潤線が川裏側の堤体の法先より高い位置に浸出することのないものとする。

(5) 浸透破壊(パイピング破壊)に対する安定性について

高規格堤防の地盤面の付近は、パイピング破壊が生じないよう必要な有効浸透路長を確保することとし、以下のレーンの加重クリープ比で評価するものとする。

C≦(L+V)/H=(L1+L2/3+V)/H
ここに、C;レーンの加重クリープ比(以下の表の値とする)

L;水平方向の有効浸透路長
L1;水平方向の堤体と基礎地盤の接触長さ
L2;水平方向の地盤と構造物の接触長さ
V;鉛直方向の地盤と構造物の接触長さ
H;水位差

地盤の土質区分
C
地盤の土質区分
C
極めて細かい砂又はシルト
八・五
細砂利
四・〇
細砂
七・〇
中砂利
三・五
中砂
六・〇
栗石を含む粗砂利
三・〇
粗砂
五・〇
栗石と砂利を含む
二・五

(6) 液状化破壊に対する安定性について

高規格堤防の地盤について、液状化に対する抵抗率FLが一・〇以下の土質については液状化するものとする。なお、地震時には設計震度が生じた時点より後の過剰間隙水圧の上昇により、安全度が低下する場合もあるので、このような場合には過剰間隙水圧の算定によりチェックを行うものとする。
なお、液状化に対する抵抗率FLの求め方及びその他の細部事項については道路橋示方書・同解説 V耐震設計編(社団法人日本道路協会)に準拠するものとする。



<参考>

高規格堤防に関する河川管理施設等構造令及び同令施行規則の運用について(補足説明)

(平成一〇年二月一〇日)
(事務連絡)
(関東地方建設局河川計画課長、近畿地方建設局河川計画課長あて河川局治水課課長補佐)
標記については、平成一〇年一月三〇日付建設省河政発第一二号、建設省河計発第一三号、建設省河治発第七号の通達により運用の変更を通知したところですが、当該通達の取り扱いについては左記によるようお願いします。
課長通達の別紙(6)については、設計震度に係わる取り扱いに変更はないので、道路橋示方書にある標準設計水平震度Khcoには、従前通り施行規則第一三条の三第二項に規定する設計震度を用いるものである。
なお、液状化破壊に対する安定性についての具体的な検討方法については、「高規格堤防盛土設計・施工マニュアル」(平成一〇年二月発行予定、(財)リバーフロント整備センター)等を参照されたい。


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